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今年のCOMDEXはデジタルイメージング系の出展品に関しては意外に豊富な内容だ。今回はCOMDEXのメイン会場であり、比較的大手のメーカーが集う、LVCC(ラスベガス・コンベンション・センター)での話題をまとめて紹介しよう。
●MP3とPCカメラ機能は当たり前。PDAや通信機能まで網羅した韓国・台湾メーカー
デジタルカメラ系で急速な進化を遂げているのが、台湾や韓国メーカーだ。なかでも本会場のLVCCに出品して大手のメーカーは、画質よりもコストや機能を重視する米国市場向けに、低価格かつ多機能な方向へシフトしている。
先日のWorld PC Expoで出品されCOMDEXでも人気を集めている、LG電子の「Digital Music Eye」のようなMP3再生やUSB接続によるPCカメラ機能は常識になりつつある。
台湾のCMCも、VGA(640×480ピクセル)のCMOSセンサーを搭載し、MP3とPCカメラ機能を装備したモデル「MP3 Camera MC-100」を199ドル以下という価格で出品。もちろん、光学ファインダー専用でカラー液晶モニタはないが、それでも安い。
韓国のDIGITRAも参考出品ながらも、VGAのCMOSセンサーを搭載し、PCカメラとしても使えるスタイリッシュな「n.cam」を出品。価格は未定だが、それでも200ドルを切るのは確実だろう。
さらに目立ったのが、PDAや通信との融合。上記のCMCは、大型のタッチセンサー式モノクロ液晶パネルを使った、デジタルカメラ機能搭載のPDA「PDA Plus PA-100」を出品。
このモデルも、撮像素子はVGAのCMOSセンサーながらも、一台でMP3プレーヤーやFMラジオ、ボイスレコーダーはもちろん、PDAとしてのアドレスブックやスケジューラー機能、さらにはメールやWebもサポートしている。それでいて、価格は399ドル以下と、手頃なところに仕上がっている。
また、韓国のVARO VISIONは、携帯電話との連携を図った、コンパクトで超多機能な「PAVIC」を出品。こちらも回転式のVGA CMOSセンサーで、データ保存も32MBの内蔵メモリのほか、スマートメディアまで使えるという、なかなかの本格派。
機能的にも、内蔵のフォトアルバム機能、Webやメール、MP3再生、ボイスレコーダー、ゲームなどフル装備。操作性もなかなかこなれており、液晶モニターも1.8インチのカラータイプで、表示も280×220ピクセルと、2Byte文字でもなんとか実用レベルで使える品質を備えている。現時点では韓国内のみで販売だが、米国での価格は399ドルを予定しているという。
●オリンパス
カメラメーカー系で最大級のブースを構えるオリンパス。派手なパフォーマンスで人気の高いデモ・ステージも健在だ。
今回は、日本で先だって発売された「E-10」や発売間近の「E-100RS」を出品した。北米市場では、低価格機が大量に販売される一方、「E-10」のような上級機への関心も高まっており、その人気はかなりのもの。こちらは女性でも結構体格がいいため、「E-10」のデモを見ていても、結構コンパクトに見えるから不思議だ。
本機は前夜のDigitalFoucusにも出品されており、こちらでは自由に触れることができた。同じコンセプトの「富士フイルム・プリンカム」に比べ、結構背が高く、意外なほど薄型に見える。このサイズながらも、光学ファインダーはなく、液晶モニターのみという割り切ったもの。画質はサンプルプリントを見る限り、プリンカムほどクリアで鮮やかなものではなく、全体にやや渋めな印象。これは感材に起因するもののためしかたないだろう。
●HP、PhotoSmart715での実写デモを展開
あまり日本では知られていないが、米国でトップシェアを誇るプリンターメーカーであるHPは、デジタルカメラの大手メーカーでもある。
米国でのデジタルカメラは、メールへの添付などネットでの利用が主で、あまりプリント用途には使われていない(したがって、VGAから100万画素クラスの低価格モデルの人気が高い)。HPでは、今後はインクジェットプリンターなどによるプリント用途への展開を目論んでおり、今回のデモも、その第一歩という意味合いのようだ。
●iomega、メモリーカードのデータ保存やTV再生が簡単に楽しめる「PhotoShow」をアピール
iomegaは今回、ブースの全面を使い、新製品である「PhotoShow」をアピール。このモデルは米国では299ドルで今夏から市販されている。
主な機能は、デジタルカメラで撮影したメモリーカードのデータを、PCなしに本機単体で内蔵の250MB Zipドライブで保存できることだ。前面には、CFカード(MicroDriveも使用可能)とスマートメディアの各専用スロットが装備されており、アダプターの追加なしにデータの保存ができる。
もちろん、USBでPCに接続することで、画像データの転送ができる上、通常の250MB Zipドライブとしても利用できる。
また、先だって同社は、来春からmicrodriveをiomegaのブランドで販売することを正式に発表。ブースではウインド越しに展示されていた。
●デジタルカメラのデザインモックアップを出展した「アイワ」と「東芝」
前回のレポートでは、ソニーがメモリースティックDuoをベースにしたデジタルカメラなどを出品していたことをお伝えしたが、メモリースティックパビリオンではアイワがデジタルカメラのデザインモックアップを出展していた。
●デジタルカメラとの連携が期待できるUSB2やBluetooth
今回のCOMDEXで注目される新展開である「USB2.0」と、ようやく現実のものになりつつある「Bluetooth」。それぞれのパビリオンでも、デジタルカメラ関連の製品や技術が公開されていた。
まず、ラトックシステムは、PCカードタイプでUSB2.0対応のUSBカード「CBU2(dongleless USB 2.0 CardBus PC Card)」を公開。
このカードは、USB1.1と2.0との切り替えは、接続されたデバイスでカード自体が自動的に判断し、ハード的に回路を切り替える。そのため、現時点でもUSB1.1対応のアダプターカードとして利用でき、来年、USB2.0用のドライバーが配布された時点で、それに対応した機能を利用できるようになるという。実際にUSB2.0対応のDVD-ROMドライブを使っての動画再生デモが行われており、その高速さの一端を体感することができた。
また、Bluetoothパビリオンでは、川崎製鉄がASICなどのLSIチップメーカーとして出展。デジタルカメラ用チップに組み込むBluetooth機能のデモを展開している。
デモの内容は、「Cyber-shot S70」で撮影したMPEG4データ(約500KB)を、評価用ボードを搭載したデスクトップPC間でBluetoothを使って転送するという内容だ。まだBluetoothの仕様上の限界には到達してないというが、それでも実際に体感してみると、遅いイメージがあるBluetoothでも、意外に実用になる印象を受けた。
IEEE802.11bに比べれば、かなり遅いが、シリアルケーブルで接続することを考えれば、その10倍以上は速く十分に実用的だ。また、デジタルカメラと携帯端末やプリンターなどを、互換性の問題をさほど考えずに、気軽で簡単にワイヤレス接続できる環境さえ整えば、結構便利に使えそうだ。
ブースでの説明によれば、すでにBluetooth用の回路を、単体の専用チップではなく、デジタルカメラ用の処理チップのなかに内蔵する方向での検討が進められているという。もし、これが早期に実現できれば、さほど価格が上昇することなく、デジタルカメラの標準的な機能としてBluetoothが加わる日も、そう遠くないかもしれない。
●番外:米ニコン、海外専用のブラックボディーCOOLPIX880や学習用ビデオを展示
なお、ニコンは本会場にブースを設けておらず、今回はCOMDEX前日に開催されたデジタルフォーカスのみの出展だった。その模様をレポートしておこう。
米Nikonは、海外専用モデルである、ブラックタイプの「COOLPIX880」を出品。といっても、米国では日本国内のようなシルバータイプはないため、日本人にとっては物珍しいが、こちらでは普通の存在だ。
また、米国のみでの販売ではあるが、デジタルカメラやフィルムスキャナーの基礎から使いこなしまでを広く学ぶことができるオリジナル学習ビデオも出品されていた。価格は30ドルと比較的手頃で、内容もかなり充実しており、ぜひとも日本語版を作成して欲しいところだ。
なお、いずれも米ニコンのWeb上で販売されているが、日本からのオーダーはシステム上できないという。
□COMDEX/Fall 2000のホームページ(英文)
http://www.key3media.com/comdex/fall2000/
(2000年11月17日)
[Reported by 山田久美夫]