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Matroxから久しぶりに登場したMillennium G450の実力は?



 Millennium G400の登場以来、1年半近くも新製品が登場しなかったMatroxから、久しぶりに新しいビデオカードMillennium G450が登場した。Matrox製ビデオカードは、昔から画質の高さで定評があり、ファンも多い。今回は、Millennium G450を取り上げて、その真価を探ってみよう。


●Millennium G450とは?

 Matroxといえば、古くからのPCユーザーなら、高速ビデオカードの代名詞的な存在であった初代Millenniumがすぐに頭に思い浮かぶであろう。Millenniumは、ビデオメモリにWRAMを採用したことで、その当時としては驚異的な描画速度を実現したビデオカードである。しかし、Millennium以降、Millennium IIやMystique、Millennium G200などの製品が登場したが、初代Millenniumほどの支持を得るにはいたらなかった。NVIDIAやATIに押され気味のMatroxが起死回生を狙って'99年夏に投入したのが、Millennium G400およびその高速版のMillennium G400 MAXである。G400/G400 MAXは、Matrox製ビデオカードの弱点であった3D描画性能を大幅に向上したことで人気を集めたが、その後、1年半近くも新しい製品は投入されなかった。

 登場当時は、最速を誇ったG400/G400 MAXだが、ハードウェアT&Lエンジンを内蔵したNVIDIAのGeForceシリーズやATIのRADEONが登場した現在では、3D描画性能もトップクラスとはいえなくなってしまった。G400の後継としては、Millennium G800(仮称)と呼ばれる製品が開発中とされているが、今のところ正式なアナウンスはされていない(2000年末までにはなんらかのアナウンスがされる可能性が高い)。

Matrox G450

 その隙間を縫って登場したのが、今回紹介するMillennium G450である。G450は、その型番からもわかるように、G400シリーズをベースにいくつかの改良がほどこされた製品であり、コア自体のアーキテクチャは変更されていない。G400と比べたときのG450の改良点は、

 1. DDRメモリをサポート(そのかわりバス幅が64bitに制限された)
 2. セカンダリRAMDAC(ドットクロック200MHz)を内蔵
 3. 0.18μmプロセスルールで製造される

といったところである。

 まず、最初の改良点だが、G400/G400 MAXではSDR SDRAM/SGRAMしかサポートしていなかったのに対し、G450ではDDR SDRAM/SGRAMをサポートするようになった。DDR SDRAM/SGRAMは、クロックの両エッジ(立ち上がりと立ち下がり)に同期してデータ転送を行なうため、SDR SDRAM/SGRAMに比べて、同じクロックでも2倍のバンド幅を実現できることが特徴である。NVIDIAのGeForce256の登場以降、DDR SDRAM/SGRAMをサポートする製品が増えてきている。しかし、G450の場合、単純にDDRメモリに対応したからといって喜んでばかりはいられない。G400/G400 MAXでは、128bit幅でビデオメモリにアクセスしていたが、G450ではピン数を減らしてコストダウンをはかるために、メモリバス幅が半分の64bitに削減されている。つまり、DDRメモリのサポートによって増大するはずであったバンド幅はバス幅が半分になったことで相殺されてしまっているわけだ。メモリクロックも166MHz(DDRメモリの場合は333MHz相当)と変わっていないので、バンド幅は約2.7GB/秒(DDRメモリの場合)のままである。

 2つ目の改良点は、G400/G400 MAXの特徴の1つであったDualHead Display機能と深い関わりがある。DualHead Displayとは、1枚のビデオカードで2つのディスプレイに出力する機能で、最近ではNVIDIAのGeForce2 MXが同様の機能「TwinView」を実装している。G400/G400 MAXの場合、2つ目のディスプレイに出力するためのRAMDAC(セカンダリRAMDAC)を内蔵していなかったため、DualHead Display機能を利用するには外付けRAMDACが必要であった。しかし、セカンダリRAMDACを内蔵したことで、G450では外付けRAMDACがなくともDualHead Display機能を利用できるようになった。また、G450ではテレビ出力用のビデオエンコーダや液晶パネル出力用のTMDSトランスミッタも内蔵している。

 また、G400/G400 MAXは、0.25μmプロセスルールで製造されていたため、発熱や消費電力が大きかったが、G450では、0.18μmプロセスルールで製造されるようになったので、発熱も小さくなり、コスト的にも有利になっている。


●シンプルですっきりしたボードレイアウト

 Millennium G450の現在の販売状況だが、正規代理店であるインフォマジックとシネックスからパッケージ版が販売されているほか、秋葉原などではバルク品も売られているようだ。ビデオメモリ容量やメモリ種別(DDRメモリかSDRメモリか)、DualHead Display機能のサポートの有無などによっていくつかの製品が存在するが、今回はインフォマジックから販売されている32MB DDRメモリ搭載版(DualHead Display対応)を利用することにした。

 DualHead Display対応版のG400と比べると、ビデオカード上に実装されているパーツは少なく、シンプルですっきりしたレイアウトである。ビデオメモリとして、Hyundai製64MbitDDR SDRAM(HY5DV651622 TC-G6:166MHz対応品)が4個、合計32MB実装されている。ビデオチップには、比較的小型のヒートシンク(ファンなし)が装着されている。0.18μmプロセスルールで製造されているため、発熱もかなり小さいようで、ヒートシンクもそれほど熱くはならなかった。ヒートシンクと基板を結ぶ1本のリード線があるのが珍しいが、おそらくノイズ対策のためにヒートシンクを接地(アースに接続)しているのであろう。

DualHead接続用TV-Outケーブルが付属する
 アナログRGB出力端子は、プライマリとセカンダリの2つを装備している。カード上にはビデオ出力端子は設けられていないが、付属のDualHead接続用TV-Outケーブル(VGA出力をS-Video出力およびコンポジット出力に変換するケーブル)を利用することで、ビデオ入力端子を備えたテレビなどへの出力が可能になる。なお、TwinView対応のGeForce2 MX搭載ビデオカードの場合、プライマリのVGA出力端子はAGPスロットのコネクタに近い側に装備されているのが一般的だが、Millennium G450では、逆にAGPから遠い側がプライマリ出力端子となっている。


●2D性能は現時点でもトップクラスだが、3D性能には期待できない

 前述したように、Millennium G450の描画エンジン自体は、Millennium G400と同じであり、メモリのバンド幅もほぼ同じであることから、描画性能はG400と同程度であると推測される。しかし、実際にはDDRメモリのレイテンシなどを考えると、128bit幅のSDRメモリのほうが64bit幅のDDRメモリよりも、実効バンド幅は広い。Millennium G400の登場当初は、3D描画性能もトップクラスであったが、この進化の早いビデオカード業界では、半年で性能が2倍以上になることも珍しくない。1年半近く前の製品であるMillennium G400と同程度の性能で、現在でも通用するのかベンチマークテストを行なってみた。なお、比較のために、Millennium G450と同程度の価格帯で販売されており、DualHead Display機能と似た機能であるTwinViewをサポートしたGeForce2 MX搭載ビデオカード(SUMA SYSTEM製PLATINUM GF2 MX TwinView)を用意した。Millennium G450のビデオドライバは製品に付属していたものを利用した(バージョン4.12.01.1640)。

(1)2D描画能力

 2D描画能力の計測には、Ziff-Davis,Inc.のWinBench99 Version 1.1に含まれるBusiness Graphics WinMark99とHigh-End Graphics WinMark99を用いた。計測は、1,024×768ドット16bitカラー(65,536色)で行なった。Matrox製ビデオカードは、初代Millenniumから2D描画性能の高さには定評があったが、Millennium G450でも、その伝統は受け継がれているようだ。GeForce2 MXも2D描画が遅いというわけではないのだが、Millennium G450は、さらに高い値となっている。

【WinBench99 Version 1.1】
Business Graphics
WinMark 99
High-End Graphics
WinMark 99
Millennium G450220620
GeForce2 MX214593

(2)DirectX 7環境での3D描画性能

 DirectX 7環境での3D描画性能の計測には、MadOnion.comの3DMark2000 Version 1.1を用いた。3DMark2000は、ハードウェアT&Lエンジンに対応したベンチマークプログラムである。結果のグラフをみればわかるように、Millennium G450は、どの解像度・色数において、GeForce2 MXの半分以下の値しか出ていない。3DMark2000は、ハードウェアT&Lエンジンを内蔵したGeForce2 MXの場合、ハードウェアT&Lエンジンが利用されるのに対し、Millennium G450は、ハードウェアT&Lエンジンを内蔵していないので(Pentium III最適化で計測)、かなり不利な結果になったものだと思われる。現在はハードウェアT&Lの内蔵が一般的になっていることを考えるとやはりアーキテクチャ的に古くなったという感は否めない。息抜きに3Dゲームを遊ぶ程度なら、Millennium G450でも十分な3D描画性能を持っているのだが、高解像度・多色環境で本格的に遊びたいというヘビーゲーマーには力不足であろう。

【3DMark2000 Version 1.1】
1,024×768ドット16bitカラー1,024×768ドット32bitカラー1,280×1,024ドット16bitカラー1,280×1,024ドット32bitカラー
Millennium G4501,5241,1701,123 800
GeForce2 MX3,6842,7742,7991,884

(3)OpenGL環境での3D描画性能

 OpenGL環境での3D描画性能の計測には、id Softwareの3DゲームQuake III Arenaを利用した。Quake III Arenaは3Dシューティングゲームだが、フレームレート(1秒間に何フレーム表示できたか)を計測するテストとしても利用することが可能だ。

 結果はグラフの通りで、3DMark2000の結果ほどは差が開いていないが、やはりGeForce2 MXには及ばない。特に、高解像度・多色環境になるほどGeForce2 MXとの差が開く傾向にあるようだ。

800×600ドット16bitカラー800×600ドット32bitカラー1024×768ドット16bitカラー1024×768ドット32bitカラー
Millennium G45031.428.524.720.8
GeForce2 MX35.634.834.030.6

【テスト環境】
CPU:Pentium III 550E MHz
マザーボード:DCS P3/370A-VP(ApolloPro133A搭載)
メモリ:PC100 SDRAM 128MB(CL=2)
OS:Windows 98 SE+DirectX 7.0a


●高い画質と充実したDualHead Display機能は魅力

 Matrox製のビデオカード(特にMillenniumを頭に冠した製品)は、従来から画質の高いことで定評がある。チップをビデオカードベンダーに供給しているNVIDIAなどとは異なり、ATIのように自社でビデオカードまで製造しているため、品質管理が容易で、画質のチューニングもよくされているのであろう。Millennium G450も、プライマリ用にドットクロック360MHzの超高速RAMDAC(UltraSharp RAMDACと呼んでいる)を内蔵しており、2,048×1,536ドット32bitカラーモードでもリフレッシュレート85Hzでの表示が可能である。

 Millennium G450の最大の売りともいえるのが、DualHead Display機能である。G450のDualHead Display機能には、次の5つのモードがあり、用途に応じて使い分けることができる。

 1. DualHead Multi-Displayモード
 2. DualHead DVDMaxモード
 3. DualHead Zoomモード
 4. DualHead Cloneモード
 5. DualHead TV Outputモード

 Multi-Displayモードは、いわゆるマルチモニタ環境を実現するモードであり、プライマリディスプレイとセカンダリディスプレイのそれぞれに別々のデスクトップを表示することができる。DVDMaxモードは、プライマリディスプレイでウィンドウ表示されているDVD-Videoなどの映像を、セカンダリディスプレイにフルスクリーン表示させるモードだ。プライマリディスプレイでほかのアプリケーションを動作させていても、DVDなどの映像のみがセカンダリディスプレイにフルスクリーン表示されることが特徴である。セカンダリディスプレイとして家庭用の大型テレビを繋げば、快適にDVD-Videoタイトルを楽しむことができる(ただし、DVDMaxモードを利用できるのは、デコードカードなどのハードウェアを利用しないプレーヤーを使っている場合に限られる)。

 Zoomモードは、プライマリディスプレイ上の任意の領域を、セカンダリディスプレイにフルスクリーンで拡大表示するための機能である。Zoom画面にはアンチエイリアス(スムージング)をかけることもできる。

 Cloneモードは、プライマリディスプレイと同一の画像をセカンダリディスプレイに表示する機能である。TV Outputモードとは、PC用モニタの替わりに家庭用テレビなどに画像を出力する機能であり、ほかの4つのモードと併用できる。

 GeForce2 MXのTwinViewでは、上記の1および4の機能しか利用できないので(テレビへの出力は可能)、DualHead機能の充実という点では、Millennium G450のほうが優秀である。また、G400/G400 MAXの場合、セカンダリディスプレイ出力用のRAMDACが外付けで、ドットクロックが135MHzであったため、セカンダリディスプレイへ出力できる最大解像度は1,280×1,024ドットまでだったが、Millennium G450では、ドットクロック200MHzのセカンダリRAMDACを内蔵しているので、セカンダリでも1,600×1,200ドットリフレッシュレート75Hzでの出力が可能になったことも評価できる(カタログや資料によると最大1,600×1,200ドットとなっているが、実際に試してみたところ、セカンダリディスプレイでもプライマリと同じく2,048×1,536ドットでの出力が可能であった)。

 なお、OSによってDualHead機能のサポート状況には違いがあり、Windows 98では全機能がサポートされているが、Windows 95ではMulti-Displayモードが利用できず、Windows NT 4.0ではDVDMaxモードを利用することはできない。また、Windows Me/2000では、Mutli-Displayモードを利用する場合、OSに用意されているマルチモニタ機能を利用するのではなく、Matrox独自の機能でマルチモニタを実現する。

Millennium G450のDualHead Display機能設定画面。日本語化されているのでわかりやすい Zoomモードでは、プライマリディスプレイ上で指定した任意の範囲をセカンダリディスプレイでフルスクリーンに拡大して表示できる。マウスカーソルにあわせて自動的に表示領域をスクロールさせることもできる


●ゲームユーザーには向かないが、大型ディスプレイを2台持っているユーザーやデザイナーなどには向く

 Millennium G450は、ベンチマーク結果からもわかるように、3D描画性能を追求するヘビーゲームユーザーなどには向いていない。3D描画性能を重視するのなら、ハードウェアT&Lエンジンを搭載し、アーキテクチャが一新されるG800を待つのが賢明であろう。せっかく0.18μmプロセスにシュリンクされたのであるから、コアクロックも上げて欲しかったところだが、G400とG450のコアクロックはともに125MHzで変わっていない。

 しかし、画質に関しては、Matroxらしいシャープで美しい表示を実現しているので、3D描画速度より画質を追求するユーザーにはお勧めできる。特に、セカンダリディスプレイでも1,600×1200ドットという高解像度を実現できるので、デザイナーなど広いデスクトップ画面を要求するユーザーには向いている。またDVDMaxモードは、PCをDVDプレーヤーとして使う場合にはとても便利な機能である。オールラウンドに使えるビデオカードが欲しいのなら、GeForce2 MX搭載ビデオカードをお勧めするが、PCであまりゲームをするつもりはないというユーザーなら、画質の高さと多彩なDualHead Display機能が魅力のMillennium G450も有力な選択肢となるだろう。

□Akiba PC Hotline!関連記事
【10月28日】Millennium G450の日本語版リテールが代理店2社から発売に
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20001028.html

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(2000年11月6日)

[Text by 石井英男@ユービック・コンピューティング]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp