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西川和久の
「もうすぐ登場!! Windows Me」

Windows Me

 前回「今年も宜しくお願いします!!」と書きながら、気がつけばもう夏は終わりかけ……。編集部から「今年下半期の原稿お願いします」とのことでこの原稿を書いている。

 さて、今回のお題はWindows Millennium Edition、通称Windows Meだ。既に色々な誌面でβ版などをベースに取り上げている関係もあり「何を今更……」という感じもするが、新しいWindowsが出る時のお約束とのことでお付き合い願いたい。もちろん、ここで扱っているWindows Meは出荷版(Build 4.90.3000)である。

Text by Kazuhisa Nishikawa


●Windows Meって何!?

 ここで説明するまでもないが、Windowsには大きく分けて2種類存在する。1つは32ビットと16ビットがハイブリッドになったWindows 9x系列、もう1つが完全に32ビットで構成されるWindows NT系列。前者はWindows 95→Windows 98→Windows 98 Second Editionという流れ、後者はWindows NT 3.51→Windows NT 4.0→Windows 2000となる。そしてWindows MeはWindows 98 3rd Edition的な位置付けであり、Windows 9x系列としては最後のOSになる予定だ。MS-DOS、Windows 1.x、Windows 2.x、Windows 3.x、Windows 9xと、長年続いた16ビットの世界は、このWindows Meをもってやっと終了。ある意味Microsoftの集大成だ。それが、2000年に出るとはごく最近までMicrosoft社内でも考えていなかったのではないだろうか!?

CPUには150MHz以上必要!!
Windows 98 SEは問題なくインストールできる。486DX4/75MHzのマシンはセットアップでけられてしまった
 最小システム構成(英語版)は、Pentium 150MHz以上、32MB以上のメモリ、295MB以上の空きエリアを持つハードディスク。Windows 98 SEで486DX/66MHz以上、24MB以上のメモリ、210MB以上の空きエリアを持つハードディスクが条件だったが、時代を反映した程度の増大と見てよいだろう。

 この条件は、実際にインストーラでチェックしており、左の画面キャプチャは、バタフライという愛称で有名だったThinkPad 701C(i486DX4/75MHz、RAM:24MB、HDD:700MB)へWindows Meをインストールしようとしたところ、「150MHz以上のプロセッサが必要です」と、セットアップできなかったシーンである。これは極端な例であるが、少し前のマシンだとPentium (MMX)120~133MHz程度のものがかなりあり、メモリやハードディスク容量的には条件を満たすのにプロセッサチェックでNGになってしまうケースが考えられる。理屈の上ではメールチェックなど、ちょっと動かすだけならWindows 98 (SE)とWindows Meでそこまでプロセッサに差が必要ではないと思うのだが、古いマシンはもうサポートしたくないという意志の現れなのだろうか!?


●Windows Meの改良点

大きく分類してWindows Meの改良点は、以下の6つ

  1. 使い易さの向上
    Windows 2000のユーザーインターフェイスの取り込み、Fast Boot(但し、BIOSなどの対応が必要)、OSとして休止状態/サスペンド対応
  2. デジタルメディアへの対応
    Media Player 7、Movie Maker、WIA(Windows Image Acquisition)、DVD Player(デコーダーは含まない)、My Picturesの機能拡張
  3. システムの信頼性・保守性の向上
    システムファイル保護(SFP/System File Protection)、システムの復元、ヘルプセンター
  4. ネットワーク機能強化
    ホームネットワークウィザード、インターネットゲーム
  5. 新しいハードウェアへの対応
    UPnP、DV、IEEE1394など
  6. その他
    Cドライブ以外へのインストール、MS-DOS(CONFIG.SYSの中は空、MS-DOSコマンドの削除)の排除など

 もちろん、Internet Explorer 5.5やOutlook Express 5.5、Media Player 7など、インターネット上で既に公開しているものも含まれWindows Me固有とはいえない部分はあるが、これはいつものパターン。Microsoftのお家芸だ。

 今回の改良点を見る限り、最近のパソコン用途としてかなりの割合を占めるインターネット関連、デジタルカメラやデジタルビデオ、そしてユーザー層の拡大によるトラブルなどに対応できるシステムへと変化した。またWindows 2000とほぼ同じ構成に加え、約半年遅く出荷される分、更に新しい機能が組み込まれているとの見方もできる。中でもWIAは従来のTWAIN(32)インターフェイスに置き換わるものであり、デジタルカメラなどの画像データをパソコンへ取り込む手順の標準化に役立つだろう。いずれにしても時代にマッチした改良が施され、最後のWindows 9xを飾るには十分な内容だ。

Media Player 7
Media Player 7
Windows Meにしか含まれないスキン
Movie Maker
Movie Maker
簡単な動画編集が可能
ホームネットワークウィザード
ホームネットワークウィザード
これまで色々な場所に分散していたネットワークに関する設定を一括で行なえる
システムの復元
システムの復元
復元ポイントで設定したシステムの状態へ戻せる
ヘルプとサポート(トップメニュー)
ヘルプとサポート/トップメニュー
全てのヘルプがhtml形式となり、インターネット上のヘルプとシームレスにアクセスできる
ヘルプとサポート(システム情報)
ヘルプとサポート/システム情報
これまで別アプリケーションであったが、このヘルプとサポートへ統合された


●インストール実験

 現在筆者手持ちのパソコンは、そのほとんどがWindows 2000 Professionalになったこともあり、実験に使ったマシンは3台で、スペックなどは表の通りだ。

  Toshiba DynaBook
SS3010
IBM ThinkPad 240X
2609-61J
AOpen AX6B
CPU モバイル MMX Pentium
266MHz
モバイル Pentium III
500MHz
Celeron
300A(450MHz)
Memory 96MB 192MB 128MB
HDD 4.3GB 12.0GB 10.0GB
HD I/O E-IDE Ultra ATA/33 Ultra ATA/33
Video MagicGraph128/2MB
PCI
SMI LynxEM+/2MB *
PCI
3D RAGE Pro/8MB *
AGP
インストール方法 新規 アップグレード アップグレード
その他 Internal Sound Internal FAX Modem
Internal Sound
Adaptec AHA-2940
ATI TV-Wonder
*
corega FastEther PCI-TX
*
YAMAHA DS-1

*印のものは、Windows 9xのドライバを使用

 Windows Meが対応していないデバイスに関しては、Windows 98用のものを流用したが全く問題なく作動し、まるでWindows Meプリインストール・マシンのように動いている。ATI TVに関しては、Windows Me標準のディスプレイドライバでは機能しないのでATI版のものを組み込み使用した。中でもDynaBook SS3010は、筆者の記事で頻繁に登場したWindows 95プリインストールモデル。Windows 95から数えてWindows 98、Windows 98 SE、Windows 2000 Professional、Windows Meと、5世代のWindowsで完全に作動している優秀なノートパソコンだ。Windows 2000ではPIOモードでしか動かなかったHDDもWindows MeではDMAモードで動くようになり、ディスクアクセスに関してはパフォーマンスが向上した。ベンチマークテストを使って測ったわけではないが、全マシンともWindows 98 SEと比較して体感速度は変わらず。特に重くなった様子はない。

電源管理
休止状態に必要なファイルサイズが192MBではなく半分の96MBになっているのに注目!!
 一部で問題があったのは、ThinkPad 240Xだ。Windows Meの休止状態を使用すると復帰できずにハングアップしてしまった。ただし、ThinkPad付属のハイバネーションを使えばOK。この件は、正式にWindows Meが出荷される頃には直るであろう。

 また、Windows Meで休止状態に必要なファイルサイズは、Windows 2000とは違い、メモリ容量の半分だ。圧縮か何かを行なってサイズを減らしているのだろうか!? もちろんほかのマシンでもメモリ容量/2のサイズになっているため、Windows Meの仕様だと考えられるが、これでうまく動くのであれば、逆にWindows 2000も同じ仕掛けにして欲しかったと思うのは筆者だけではないだろう。

 今回試した範囲では大きな問題の生じなかったWindows Meだが、各誌の編集部によると、「ハードウェアDVDカードがあるとセーフモードでしか起動しない」、「Windows 2000 Professionalプリロードの国産ノートパソコンでシリアル経由のTAを認識できず、手動設定しても使えない」などトラブルも出ているようだ。基本的にはWindows 98と同じVXDとWDM混在のドライバモデルなので、Windows 98が動いているマシンであれば大丈夫のハズであるが、インストールする時には事前にメーカーやベンダーのホームページを見て確認した方がよい。


●終わりに

 冒頭で書いたように、Windows MeはWindows 9x系列最後のOSとなり、以降はWindows 2000を拡張したコードネーム「Whistler Personal」へ統合される。従って動作条件さえクリアすればWindows 9xを使っているユーザーにとって最後のアップグレード・チャンス。“もとの環境を保存しインストール”するオプションもあるので、中級者以上の方であれば一度セットアップしてみるのもいいだろう。少なくともWindows 98からWindows 98 SEの時よりは新しいOSを使っている気分を味わえるハズだ。もちろん、既にWindows 2000を使っているユーザーは余程の理由がない限りWindows Meへ乗り換える必要はない。

[Text by 西川和久]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp