スーパーCCDハニカムの240万画素原色系CCDを搭載した、FinePixシリーズの上級モデルで、主に写真を撮ることを楽しむユーザー層をターゲットに開発された本格派モデルとなっている。
レンズは非球面レンズ2枚を採用した「スーパーEBCフジノン」を搭載。35mmカメラ換算で35~210mmレンズ相当の光学式6倍ズーム。明るさも、F2.8~3.1と明るい。ただし、オリンパス「C-2100 UltraZoom」のような手ぶれ補正機能は搭載されていない。
撮影した本体はβ版。特に指定のない画像は2,400×1,800ピクセル、圧縮はノーマルモードで撮影している。また、縦位置の画像はサムネールのみ縦位置とし、画像データは回転させていない。スペックなどについては参考記事を参照されたい。(編集部)
●ゴツイが軽量で携帯しやすいボディー
カタログなどの外観写真を見ると、かなりゴツイ印象を受けるが、実機を手にしてみると結構コンパクトに仕上がっているので一安心。とくに、レンズが沈胴式のため、収納時はかなりコンパクトで、この手の高倍率ズーム付きモデルとしては、なかなか携帯性がいい。
また、重さは電池なしの状態で410gしかなく、手にしてみると呆気ないほど軽く仕上がっている。
ボディー外観はマグネシウム合金、レンズ鏡胴はアルミ素材を採用。操作ボタン類にも金属が多用されており、クラス相応の質感はある。ただ、デザインは好みが別れるところ。スイッチONで鏡胴が出っ張ったスタイルは、あまりスマートとはいえない。
このあたりの雰囲気は先代の「FinePix2900Z」に相通じるところがあり、富士フイルムの上級機に共通したデザインスタイルともいえる。ややクラシカルな雰囲気はあるものの、個人的にはもう少しスタイリッシュでシャープな雰囲気が欲しいところだ。
一方、ホールド感はなかなか良好。グリップ部がしっかりとしているうえ、グリップの厚みが薄めなので、手の小さな私でも安定したホールディングができる。また、液晶ビューファインダー使用時には、35mm一眼レフと同じスタイルでホールドできるため、35mm一眼レフユーザーにとって違和感なく扱える点が好ましい。
■屋外撮影
●2つのズームレバー
操作性は比較的よく考えられている。使用頻度の高いズーム操作は、レンズ側面のズームレバーとボディー背面の十字パッドの両方で操作できる。従来のFinePixシリーズに慣れている人には後者の位置の方が使いやすいだろうが、一眼レフ感覚でホールドし撮影するのであれば、前者の位置のほうが使いやすい。
また、ボディー側面には、このほかにも露出補正ボタンやホワイトバランス設定用ボタンが個別に設けられている点も好ましい。
全体にボタンやレバーなどの操作部が多いため、最初は操作にとまどう人もいると思うが、ちょっと使っていると、すぐになれてしまうだろう。ただ、ボタンの大きさやレイアウトに関しては、もう少し洗練して欲しいところもあり、まだ改善の余地がありそうだ。
●初搭載の液晶ビューファインダー
ファインダーには、富士フイルムのデジタルカメラで初めて液晶ビューファインダーが標準採用された。そのため、ボディーのホールド感や撮影感覚も、35mm一眼レフに近い感触だ。
液晶サイズは0.55インチとオリンパスのC-2100と同じサイズ。もちろん、光学式一眼レフのようなクリアな見え味は期待できないが、ビデオカメラのファインダーと同じような感覚で撮影することができる。
液晶ビューファインダーの場合、実際に写る画像が表示されるため、背景のボケ具合もきちんと確認できる。一方、液晶の解像度(画素数)の関係で正確なピントは把握しにくいが、ボディー背面の拡大ボタンを押している間、画面中央が2倍に拡大表示される機能を装備している。
液晶ビューファインダーの場合、背面の液晶モニターに比べ、日中の炎天下でも視認性が落ちないため、屋外での撮影に有効だ。ただ、液晶が高密度で画素サイズが小さいせいか、コントラストが高く、ハイライトが飛んだように見える点は少々気になった。また、リフレッシュレートの関係で、きわめて動きの速いシーンには対応しにくく、シャッターチャンスがごくわずかに遅れる傾向がある。このあたりは今後の課題といえる。
一方、背面の液晶パネルは2インチの低温ポリシリコンTFTタイプを採用しており、明るさも十分にあり、屋外での視認性もよい。また、再生時の表示品質も上々で、見る楽しさを感じられるレベルといえる。
気になったのは、液晶ビューファインダーと背面の液晶モニターとの関係。本機の場合、基本的に撮影時は液晶ビューファインダー、再生時は背面の液晶モニターを利用するのが標準設定となっている。
そのため、液晶ファインダーで撮影中に再生モードに切り替えると、自動的に背面のモニターが点灯し、再生表示される点は便利だ。
ただ、両方のモニターを同時に点灯させることができないため、撮影中に露出補正をはじめとしたモード設定をするときには、液晶ビューファインダー内に表示が出るため、一瞬戸惑ってしまう。
もちろん、モニター切り替えはファインダー横のボタンで簡単に切り替えられるわけだが、やはり撮影中のモード切替時だけでも、背面のモニターが自動点灯して欲しいところだ。
■マクロ撮影
●軽快な使用感
起動時間は約3秒と沈胴式のズーム機としては十分に高速。撮影間隔は約1秒と短く、軽快に撮影できる。また、オートフォーカスの測距時間も短い。
さらに、液晶ビューファインダー内に、絞りとシャッター速度、露出補正量、マクロモード表示などが表示されるため、安心して撮影できる。
●階調を優先させた大人の絵づくり
今回、ごく短時間だが、β機で実写することができたので、その印象をレポートしよう。
まず、印象的なのが絵づくりの柔らかさ。これまでのFinePix4700に比べ、全体に階調がややマイルドになって、大人の絵づくりといった雰囲気がある。そのぶん、パッと見たときのメリハリは、FinePix4700Zのほうが強いが、このクラスの作画派向けのカメラであれば、このようなセッティングのほうが好まれることだろう。
また、解像度もFinePix4700Zよりもやや向上した印象だ。とくに、画像の輪郭部分が従来機よりも素直になったようだ。
今回は絞り優先AE機能を使って、絞り開放にセットし、意識的に背景をぼかした撮影もしてみた。このような条件は、本機のような高倍率ズームが苦手とするシーンだが、ボケ味は比較的素直で、適度な立体感のある描写を実現している。もともと、CCDが1/1.7インチと大型のため、被写界深度も浅めなので、その分、前後のボケを楽しめる。
■絞り優先AE
時間の関係で今回は試せなかったが、本機は実効感度を従来のISO 200/400/800のほかに、より低感度なISO 125にセットできるモードが新設されている。これはノイズを軽減し、画質を向上させるために設けられたもので、その実力にも期待したいところだ。
なお、本機には35mmカメラ換算で約800mmレンズ相当になるデジタルズーム機能が搭載されている。だが、本機のデジタルズーム機能は画質を優先させるため、他機種のような拡大リサイズをするものではなく、単純に最大解像度時の画面の一部分トリミングしたときと同じような効果しか得られないのが残念。そのため、撮影時にデジタルズーム機能を使って撮影しても、最大解像度で最望遠側で撮影したものを、あとからトリミングしても同じ結果となるので注意が必要だ。
■ズーム
ワイド端 | テレ端 |
デジタルズーム時640×480ピクセル |
ワイド端 | テレ端 |
デジタルズーム時640×480ピクセル |
●コンパクトで実用的な高倍率ズーム機
スーパーCCDハニカム搭載のFinePixシリーズも、本機の登場で4700Z、40i、S1Pro、そして今回の4900Zで、ほぼフルラインナップとなった。しかも、4700Z、40i、そして4900Zと、画質が向上しており、ハニカムCCDの本領のポテンシャルの高さがようやく発揮されてきた感じだ。
この「FinePix4900Z」は、パーソナル向けのハイエンド機種として企画されたモデルであり、デジタル一眼レフのような高価なモデルでなくても、本格的な作品づくりを楽しめるモデル目指している。
このクラスは、大型CCDによるデジタル一眼レフシステムと違い、1/2~2/3インチクラスの比較的小型でコスト面で有利なCCDを使うことで、手頃な価格帯のコンパクトで高倍率なレンズ一体型モデルを成立させている点が最大の特徴といえる。
もちろん本機も、128,000円(実売は99,800円か?)と、決して安くはないが、これ一台で、いろいろな撮影が楽しめることを考えれば、結構楽しめるモデルになりそうだ。
デザイン的に見て、やや実用機寄りの印象があるが、高機能できれいな写りが得られるパーソナル・ハイエンドモデルといえそうだ。
□富士写真フイルムのホームページ
http://www.fujifilm.co.jp/
□nニュースリリース
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj660.html
□関連記事
【8月1日】富士フイルム、光学6倍ズームのハイスペック機「FinePix4900Z」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000801/fuji.htm
(2000年8月1日)
■注意■
[Reported by 山田久美夫]