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SIGGRAPH 2000展示会場レポート1

SCEI、プレイステーション2エンジンを使った
リアルタイム映像制作システム「GScube」を技術参考出展

コンファレンス:7月23日~28日(現地時間)
展示会:7月25日~27日(現地時間)

会場:New Orleans Ernest N.Morial Convention Center


■16ユニットのEmotionEngineとGraphic Synthesizerを搭載する「GScube」

約42cmの立方体である「GScube」。内部は16ユニットのGraphics Synthesizerボードと、4ユニットごとにひとつのピクセル・マージャー、さらにそれを統合するもうひとつのピクセル・マージャーで構成される
 株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)は、コンピュータグラフィック関連の展示会「SIGGRAPH 2000」の展示会場において、プレイステーション2のアーキテクチャを大幅に拡張したリアルタイム・ビジュアライザー(グラフィック生成システム)「GScube」を中心とする、高精細度リアルタイム映像製作システムを公開した。なお、今回の公開は正式な製品発表ではなく、技術参考出展に位置付けられる。SCEIの広報担当者によれば、今後、協力各社などからのフィードバックを経たうえ、約半年後の今冬をめどにして正式発表を行ないたいとしている。

 展示された「GScube」のプロトタイプには、プレイステーション2の心臓部としてお馴染みの「Emotion Engine」と「Graphics Synthesizer」が搭載されている。ただしEmotion Engineのメインメモリ容量は大幅に拡張され、さらにGraphics Synthesizerもメモリ容量が8倍にあたる32MBを搭載した「Graphics Synthesizer 1-32」が採用されている。この構成を単位ユニットとして、計16のユニットが本体内に収められる。搭載されるEmotion Engineは、0.18μmプロセスで作られたものだ。なお、SCEIではこれまでグラッフィクプロセッサの呼称として用いていた「Graphics Synthesizer」により広範な意味をもたせることとし、搭載されているユニットや「GScube」も幅広い意味での「Graphics Synthesizer」と位置付けている。

 今回の展示では、SGIの「Origin 3000」をホストにして「GScube」に搭載された16のユニットそれぞれと、64bitのPCIバスを並列に接続。従来のCG制作過程では難しかったリアルタイムでのCG映像確認を実演してみせた。生成される映像は1,920×1,080ドットで毎秒60フレームのプログレッシブスキャン。劇場映画並の高画質CG映像をブース内の高精細度モニタに表示させたり、プロジェクタを利用してブース中央に設置されたシアターで公開した。ちなみに、デモンストレーションに利用されたソニー製のディスプレイも、1,080ドット表示のプログレッシブに対応した製品で、こちらもまだ型番などが設定されていないプロトタイプである。

 「GScube」に搭載されているOSは制御用のものだけで、運用にはデモで利用された「Origin 3000」のようなホストシステムを必要とする。「GScube」自体はあくまでグラフィック・ビジュアライザーという位置付けで、単独で稼働するワークステーションというわけではない。ただし、長期的な開発や発展の過程において、将来的に何らかのOSを搭載する可能性については含みを残している。

 デモンストレーションには、SQUARE PICTURESをはじめとする4社の映像が使用された。このなかでSQUARE PICTURESのデモンストレーションでは、2001年に公開予定の映画「FINAL FANTASY」の1シーンを利用して、リアルタイムにカメラ位置や光源を変化させながらCG映像を作り出していた。SCEIでは、今回映像を公開した4社を皮切りに、放送、映画製作、ゲーム制作などの各分野にソリューションを提案。プレイステーション2の構想のなかでも触れられている「e-distribution」によるコンテンツ配信の実現に向けて力を注ぐ。


16ユニットのGraphics Synthesizerボードは縦向きで本体内に収納される。前面のスリットには放熱用のファンがぎっしり。ボード上部に位置する銀色の部分にインターフェイスが配置されている 稼働中の「GScube」。デモ映像の表示に利用しているディスプレイは1,080ドット表示のプログレッシブに対応した高精細度のもの。やはりソニー製のプロトタイプで、型番などは未定となっている Graphics Synthesizerボード。Emotion EngineとGraphics Synthesizer 1-32チップにはヒートシンクが取り付けられている。0.18μmプロセスの採用で、ヒートシンクはプレイステーション2のものに比べて小さめの印象
上部にあるイルミネーションは、各ユニットの稼働状況を表わしている。青はそれぞれのGraphics Synthesizerユニットで、緑は計5つあるピクセル・マージャーの状況。青と緑は、それぞれアイドリング状態を表す グラフィックの生成がスタートして、各ユニットの稼働状況がピークに近づくと、イルミネーションは白へと変化する。ちなみに、ウォームアップ中は赤のイルミネーションが点灯していた ブース中央に位置するシアターで公開される映像を提供する4社。それぞれ約15分間のステージで、CG制作過程などをデモンストレーションしている


CPU128bit EmotionEngine×16
システムクロック周波数249.912MHz
メインメモリDirect RDRAM
メモリ容量2GB(128MB×16)
メモリバス・バンド幅50.3GB/秒 (3.1GB/秒×16)
浮動小数点演算能力97.5GFLOPS (6.1GFLOPS×16)
三次元CG座標演算能力10.4億ポリゴン/秒(6,500万ポリゴン/秒×16)
グラフィックスGRAPHICS SYNTHESIZER1-32×16
クロック周波数147.456MHz
VRAM容量512MB(32MB混載×16)
VRAMバンド幅755GB/秒(47.2GB/秒×16)
ピクセル・フィルレート37.7GB/秒(2.36GB/秒×16)
最大ポリゴン描画性能12億ポリゴン/秒(7,370万ポリゴン/秒×16)
最大表示色数32ビット(RGBA:各8ビット)
Zバッファ32ビット
最大表示解像度1,080/60p(1,920×1,080、60fps、プログレッシブ)
映像合成機能シザリング/アルファテスト/Zソーティング/アルファブレンディング
サウンドEmotionEngineネイティブ・オーディオ
最大出力チャンネル数16
サンプリング周波数48KHz
出力データ長16ビット
出力データフォーマットAES/EBU デジタルオーディオフォーマット
その他
ホストインターフェースデータ用1024bit / 制御用32bit パラレルバス
ピーク転送速度約2.4GB/秒
外形寸法424×424×424mm(幅×奥行き×高さ)
質量約48Kg
電源100-240V 50/60Hz

□SIGGRAPH 2000のホームページ
http://www.siggraph.org/s2000/index.html
□ソニー・コンピュータエンタテインメントのホームページ
http://www.scei.co.jp/

(2000年7月26日)

[Reported by 矢作 晃(akira-y@st.rim.or.jp)]


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