Desi Rhoden氏 |
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DDR SDRAMのメモリモジュールはSDRAMのメモリモジュールと物理的なサイズはほぼ同じだが、互換性はなく、ピン数も異なる。当初は、184ピンのDIMMと200ピンのSO-DIMMの2種類が提供される。184ピンのDIMMはデスクトップPCからサーバー、ワークステーションで利用される。サイズの小さな200ピンSO-DIMMは、ノートPCだけでなく、薄型デスクトップでの利用も見込んでいる。
今回のDDR SDRAMの立ち上げにあたって、DDRサポーターは協力して共通仕様のガーバーの開発とシミュレーションを行なっているという。各モジュールベンダーは、その共通ガーバーに従って製品を製造する。そのため、原則として各メーカーのモジュールの電気的、タイミング的な仕様は同じとなるという。DRAMベンダーやモジュールメーカーがそれぞれ自社独自のガーバーを開発していたSDRAMよりも、DDR SDRAMの方がメモリモジュール間の互換性が高くなるという。
●200MHzと266MHzで立ち上がるDDR SDRAM
コンピュータのメインメモリ向けDDR SDRAMチップは、まずクロックが100MHz、データ転送レートが200MHzの製品と、133MHz/266MHzの製品が立ち上がる。これは、それぞれ「DDR200」と「DDR266」と呼ばれている。DDR200のCASレイテンシ(CL)は2で、DDR266のCLは2と2.5の2タイプが出荷されると見込まれている。CL2のDDR266は「DDR266A」と呼ぶこともある。ちなみに、以前はDDR200を「PC200」、CL2のDDR266を「PC266A」、CL2.5のDDR266を「PC266B」と呼んで区別していた。これをもう少しわかりやすく整理すると次のようになる。
DDR200 | 旧PC200 | クロック100MHz | CL2 |
DDR266 | 旧PC266B | クロック133MHz | CL2.5 |
DDR266A | 旧PC266A | クロック133MHz | CL2 |
製品の流れとしては、まずDDR200とCL2.5のDDR266で立ち上がり、その後CL2のDDR266へと移行すると見られている。ややこしいことに、DDR SDRAMではモジュールにもメモリ帯域別に名称がつけられている。
PC1600 | DDR200を搭載 | メモリ帯域1.6GB/sec |
PC2100 | DDR266を搭載 | メモリ帯域2.1GB/sec |
この呼称は、多分にPC800という名前でパフォーマンスをアピールするRDRAMを意識したものだと思われる。RDRAMはピン当たりの転送レートを示す数値だが、DDR SDRAMはモジュール当たりのメモリ帯域を示すというところがややトリッキーだ。実際には、PC800のRDRAMのピーク帯域はモジュール当たり1.6GB/secで、DDR SDRAMのPC1600と同等(RDRAMの方が原理的に実効帯域が高い)となる。 PC1600とPC2100は帯域が異なるだけで、同じ184ピンDIMMと200ピンSO-DIMMを使う。PC1600は性能よりも信頼性を要求するサーバー&ワークステーションで、PC2100はデスクトップで立ち上がる見込みだ。また、166/333MHzのDDR333と、それを搭載するPC2600モジュールが、2001年後半から2002年にかけて登場するという。 コモンガーバーは、RegisteredとUnbufferedの両タイプで開発されており、両方とも市場に登場する。Registeredバージョンはサーバー向け、UnbufferedバージョンはPC向けにおもに採用され、ワークステーションはOEMによってどちらを採用するかが分かれるだろうという。
●低コスト化の切り札はSDRAMとの共用ダイ
ベンダーはDDR SDRAMの利点を、広メモリ帯域に加えて低コスト、低レイテンシ、低パワーであることだとする。
メモリ帯域の広さは、高パフォーマンスCPUと、グラフィックス統合チップセットで効果が高いと主張する。例えば、AthlonのFSB(フロントサイドバス)の帯域は200MHzで1.6GB/secだが、メモリ帯域はPC133 SDRAMでさえ1GB/secに過ぎず、もしFSBをフルに使うような場合があれば、メモリがボトルネックとなり性能が発揮できないはずだった。また、グラフィックス統合チップセットでは、グラフィックスコアとCPUがメモリ帯域を共有するため、性能を上げるにはFSB以上の帯域がメモリに必要とされる。
広帯域はRDRAMも提供できるわけだが、なぜDDR SDRAMかというと特に低コストが大きなアドバンテージだという。DDR SDRAMは、チップコストに影響するバンク数が4バンクとSDRAMと同様に少なく(RDRAMは32バンク)、低コストなTSOPパッケージで、テスタなども共用できるという。また、ローデン氏は、現在、DDR SDRAMベンダーがSDRAMとDDR SDRAMを共通ダイ(半導体本体)で製造する方向へ向かっていることを、低コストの重要な要因として挙げていた。つまり、同じウエーハから採れたDRAMチップから、SDRAMとDDR SDRAMを選別して出荷できると言っているわけだ。その場合には、SDRAMとDDR SDRAMの基本的なコスト差はなくなる。Infineon TechnologiesのGill Russel氏(Technical Marketing Manager)も、これを裏付けており、一部のメーカーがSDRAM/DDR SDRAM共通ダイに向かっているのは確からしい。
また、チップセットの対応も進んでいるという。ローデン氏によると、RDRAM対応チップセットは現在アナウンスされているだけで17、アナウンスされていないものを含めれば25のデザインが進んでいるという。PC市場ではデスクトップPC向けにVIA Technologies、Acer Laboratories(ALi)、AMDが、モバイルPC向けにALi、VIA、Transmetaが開発をしている。AMD、VIA、ALiは、Platform 2000でそれぞれのセッションでDDR SDRAMチップセットの年内投入計画を明らかにしている。チップセットの詳細は、笠原一輝氏のレポートを参照して欲しい。
●すぐには離陸するとは思えないDDR SDRAM
いよいよ、メインメモリへと離陸の準備が整い始めたDDR SDRAMだが、実際にはまだ道のりは長そうだ。PCベンダーはRDRAMのインプリメンテーションで苦労したが、そのRDRAMに対してDDR SDRAMは周回遅れでこれからようやくスタートするところだ。PCベンダーは、様子見からようやく動き始めたところで、DDR SDRAMが離陸に成功するとしても、すぐにPC市場に浸透するとはとても思えない。とりあえずは、ハイエンドAthlonデスクトップやTransmeta、AthlonノートPCあたりでポツポツという程度を期待しておくのが穏当だ。
また、DDR SDRAMの価格も、どういった動きになるのかが明瞭でない。AMI2などは年末までに数%の差になるとしているが、これを非現実的と見る業界関係者も多い。また、製造面でも、はたして共用ダイで順調に生産できるのかどうかがまだ見えない。これに関しては、DRAMベンダー間で見方が完全に分かれているようだ。
DRAMの場合、怖いのはうまく立ち上がらないと価格がなかなか下がらない悪循環に陥る可能性があることだ。「新DRAMの価格が高い→新DRAMが普及しない→普及しないためインフラが整わない→売れないので生産数が増えない→価格が高い」というスパイラルだ。知っての通り、今、RDRAMはこのスパイラルに陥りかけていて、RDRAMの普及はPentium 4にすべてがかかってしまっている状態だ。この悪循環が怖いため、新DRAMは「せーの」でDRAMベンダーみんなで一気に立ち上げる必要がある。DDR SDRAMにしても、Intelチップセットを欠いた情勢で、これがうまくいくかどうかがわからない。
もっとも、DRAMがPC中心に動く市場ではなくなる兆候が見えてきているのも確かで、DRAM市場のこれまでの考え方が通用しなくなる可能性もある。つまり、PCのメインメモリに使われる一品種に集中するのではなく、PC以外のアプリケーションに使われる多種多様なDRAM品種がある程度の規模の生産量で混在するようになる可能性もある。
いずれせよ、これからしばらくはDDR SDRAMがメモリのひとつの焦点になることだけは確かだ。
(2000年7月19日)
[Reported by 後藤 弘茂]