Microsoftの、次世代Windows「Whistler(ウイスラ)」は、これまでにも何回か伝えてきた通り、Windows 2000とWindows 9xの両方を置き換え、ビジネスとコンシューマの両方のWindowsをNTカーネルに統合する初めてのOSとなる。ゲイツ氏によると、来年後半に登場するWhistlerには、さらに.NETテクノロジを組み込む最初のWindowsになるという。
例えば、Whistlerでは、ファイルをセーブする場合にMicrosoftのコミュニティサイト、つまりネットワーク経由でサーバーにデータを保存することが簡単にできるようになるという。.NETではローカルのPCのハードディスクではなくネット上のストレージサービスにデータを保存することで、ユーザーがデータをどこからでも利用できるようにすると説明されたが、その機能がWhistlerから組み込まれることになるようだ。この機能は、Whistlerのユーザーインターフェイスに組み込まれるという。
また、Whistlerでは、Windows 2000/98よりも、さらにブラウザがユーザーインターフェイスの中核として統合されるという。これは、Whistlerでは大がかりなユーザーインターフェイスの変更は行われないというこれまでの情報と矛盾するように聞こえる。また、具体的なインターフェイスがどうなるかは、何もアナウンスされていない。このほか、Whistlerでは、複数のインターネットサイトでの認証(Authentication)情報を統合的に管理するPassport機能などが組み込まれるという。
Whistlerの次のWindows「Blackcomb(ブラックコーム)」は、現在2002年後半に予定されている。Blackcombは、Whistlerよりさらに.NET技術が統合されたプラットフォームになる。おそらく、Blackcombで.NETテクノロジの統合の第1段階がようやく完成するものと思われる。
ゲイツ氏によると、Blackcombのもっとも大きな変化はユーザーインターフェイスになるという。より人間にとってフレンドリな次世代のインターフェイスを、OSに組み込むつもりらしい。例えば、ごく普通の文章をユーザーが入力すると、コンピュータが理解し、サーチなどを行なってくれる機能を取り入れるという。また、Blackcombは高度なインフォメーションエージェントを備え、情報のフィルタリングなどを行なってくれるという。
また、ゲイツ氏は.NETへの移行を、MS-DOSからWindowsへの移行と同程度の大きな移行と位置づけ、Microsoftにとって大きな節目であることをしきりに強調した。例えば、Windowsのファイルシステムは、.NETワールドではネット上のXMLストアに変わる。アプリケーションはブラウザの上に構築されるようになり、ブラウザはユーザーインターフェイスの土台として「Universal Canvas」へと進化する。また、アプリケーションは、サービスへと変わる。APIはオブジェクトのレイヤーであるビルディングブロックにカバーされる。つまり、Microsoftは、Windowsで築いたモデルのすべてをドラマチックに変化させようとしているのだ。
ゲイツ氏が6,000人の開発者が集まるPDCで、改めて.NETへのパラダイムシフトの大きさを強調したことは重要だ。
前回のステップ、すなわちMS-DOSからWindowsへの進化では、Microsoftは最初は苦労をした。DOS上のGUIテクノロジのひとつに過ぎなかったWindowsがここまで成功したのは、開発者たちを味方につけたことだった。今回も、Microsoftはこの大きなステップで、開発者たちの助けを必要としている。開発者たちが支持しなければWindowsが成功しえなかったように、今回も開発者が.NETを支持しその上に自分たちのサービスを載せてくれない限り、.NETの成功はありえない。
Microsoftにとっては、正念場であり、それがわかっているからこそ、ゲイツ氏は.NETへの進化の大きさを強調し、支持を求めているのだろう。
(2000年7月13日)
[Reported by 後藤 弘茂]