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PC EXPO 2000レポート

NVIDIA、メインストリーム向けGPU
“NV11”ことGeForce2 MXを発表

6月29日発表(現地時間)

会場:Pier Sixty(New York)


 米NVIDIAはPC EXPO会場近くで同社の新しいGPU「GeForce2 MX」を発表した。GeForce2 MXはこれまでNV11のコードネームで知られてきたハードウェアT&L対応の3Dグラフィックスアクセラレータ(GPU)で、4月に発表されたGeForce2 GTSの廉価版という扱いになる。NVIDIAはこのGeForce2 MXで、ハードウェアT&Lに対応したチップをメインストリーム市場やモバイル市場に投入していくことを明らかにした。


●ハードウェアT&L対応GPUをメインストリームやモバイル市場へ

 今回発表されたGeForce2 MXはこれまでNV11というコードネームで呼ばれてきたチップで、GeForce 256のモバイル版ないしは4月に発表されたGeForce2 GTS(こちらはNV15のコードネームで呼ばれていた)の廉価版という位置づけであるとされてきた。というのも、GeForce256やGeForce2 GTSは、チップサイズも非常に大きく、コストや消費電力の面からメインストリームPCに採用することは難しかった。同様の理由から、モバイルへの採用はさらに難しいという状況だった。

 しかし、今回のGeForce2 MXはそれらを解決して、企業向けPC、メインストリームのPC、モバイル、マッキントッシュなどといった市場にもハードウェアT&Lに対応したGPUを採用してもらおうという製品だ。最近では企業のホームページなどに3D表示を利用したページも増えてきており、実際にGeForce2 MXを利用したデモンストレーションではそうしたホームページに接続して、コンシューマユーザーでも高い3D表示能力が必要であるということを強調した。

 しかし、既に述べたようにGeForce256の値段をただ下げただけでは、消費電力やスペースの問題を解決することができない。そこで、NV11では基本的にはGeForce 256のコアをベースとして、製造プロセスルールを0.22μmから0.18μmへとオプティカルシュリンク(半導体の機能などはそのままに、製造プロセスルールを微細化すること)して、クロックを上げることにより、GeForce 256よりも性能を向上させながら、チップ自体のコストや消費電力、必要とするスペースなどを減らしたというわけだ(ただし、NVIDIAによればチップ単体の消費電力で4Wだという。これにビデオメモリの消費電力を足すと、モバイル向けにはやや厳しいとは思うが……)。


●3つの特徴を持つGeForce2 MX

 GeForce2 MXはこれまでにない新機能も追加された。それは以下の2つだ。

 (1)TwinView
 (2)Digital Vibrance Control

 TwinViewは一言で言ってしまえば、1枚のビデオカードでマルチディスプレイ環境を実現するテクノロジだ。既にS3のモバイルPC用チップのほか、Matrox GraphicsのMatrox G400で実現されている機能だ。これを利用することで、ユーザーは1枚のビデオカードでデュアルディスプレイ環境を実現できる。プレゼンテーションでは、GeForce2 MXを利用したデモンストレーションが行なわれ、1枚のビデオカードで2つのディスプレイの双方にプレゼンテーションを表示したり、3Dグラフィックスの表示を2つの画面いっぱいに表示して見せていた。なお、デモに利用したマシンに搭載されたビデオカードの背面をチェックしたところ、2つのVGA出力のほか、コンポジットのS端子もあり、計3個の端子が用意されていた。

 Digital Vibrance Controlは3D画面などを明るく見せる技術で、ユーザーはプロパティなどで簡単に設定が可能だ。これまでの3Dゲームで、画面が暗いと感じた時でも、この機能を利用することで明るい画面でゲームができる。さらに、これまでのNVIDIAのビデオチップと同じように、ドライバはNVIDIA標準のUnified Driver(いわゆるリファレンスドライバ)が利用可能で、現在TNT2やGeForce 256などを利用しているユーザーは、カードを入れ替えるだけで現在利用しているドライバをそのまま利用することができる(ビデオカードベンダのオリジナルドライバを利用している場合はこの限りではない)。

TwinViewを利用したデモンストレーション。これはGeForce2 MXを利用して行なわれている GeForce2 MXを搭載したビデオカードのブラケット部分。ビデオアウトが2つ、S端子が1つある TwinViewの設定画面。解像度などの詳しい設定ができる


●パフォーマンスはGeForce256と大きな差はなし

 GeForce2 MXのスペックは既に述べたように、GeForce 256とほぼ同じだが、若干異なっている点もある。表にGeForce 256、GeForce2 GTSとの差異をまとめておく。

GeForce 256GeForce2 MXGeForce2 GTS
製造プロセス0.22μm0.18μm0.18μm
テクセル/クロック448
テクセル/秒480M/秒700M/秒1,600M/秒
ポリゴン/秒15M/秒20M/秒25M/秒
TwinView機能××
Digital Vibrance Control××
搭載ビデオカードの
リテールターゲット価格
約3万3千円1万円以下約3万3千円

GeForce256との比較。ビデオメモリがどの程度搭載されているなど詳細はわからないが、この程度の差であれば、コストパフォーマンスは非常に高いと言える
 レンダリングエンジンのパイプラインはGeForce 256と同じ4つだが、1秒当たりのテクセル/ポリゴンはGeForce 256が480Mテクセル/15Mポリゴン(/秒)であるのに対して、GeForce2 MXは700Mテクセル/20Mポリゴン(/秒)となっており、計算上のクロックは700÷4=175MHzとなり、GeForce 256の125MHzに比べてクロックが向上していることがわかる。製造プロセスルールを0.18μmに微細化したため、クロックを上げることができたと考えられる。

 NVIDIAはGeForce2 MXのターゲットプライスをビデオカードの価格で、100ドル以下を目指すとしている。このため、ビデオメモリのコストを低減するために、SDRAMの場合バス幅を64bitにも設定できる。パフォーマンス的には128bitの方が有利だが、メモリの選択の幅が狭く、コストアップの要因になるからだ。なお、DDR SDRAMの場合は64bitのみの設定だ。なお、注目されるパフォーマンスだが、NVIDIAが明らかにしたデータによると、各種ベンチマークでGeForce256とGeForce2 MXの差はほとんどなく、これが100ドル以下で購入できるのであればお買い得度は高いと言える。

GeForce2 MX搭載
サンプルボード
 最後に価格と入手性について触れておこう。NVIDIAでは具体的な価格については明らかにしていないが、既に述べたようにターゲットプライスとしては100ドル(約1万円)以下としている。入手性に関しては、NVIDIAは既に出荷を開始したことを明らかにしており、まもなく各社から搭載ビデオカードがデビューしそうだ。なお、既にELSAがGeForce2 MX搭載のビデオカード「GLADIAC MX」、Leadtekが「WinFast GeForce2 MX」を発表している。共に価格などは未定ながら、ELSAは夏の終わりごろ、Leadtekは7月末には出荷する予定としている。

 NVIDIAが言うように100ドル以下と言わなくても150ドル(約1万5千円)程度で登場すれば、かなりお買い得なビデオカードになることは間違いない。コストの問題からGeForce256やGeForce2 GTSを見送っていたユーザーには気になる製品となるだろう。

□PC EXPO 2000のホームページ(英文)
http://www.pcexpo.com/
□NVIDIAのホームページ(英文)
http://www.nvidia.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.nvidia.com/News/Pages.nsf/pages/pr_062800d
□製品情報(英文)
http://www.nvidia.com/products/geforce2mx.nsf

(2000年6月29日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp