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X68000シリーズのBIOSやOSが無償公開
――満開製作所はX68Kから撤退

4月1日発表



 ニフティ株式会社が運営するインターネットサービス「@nifty」上の、「シャーププロダクツユーザーズフォーラム(FSHARP)」において、X68000シリーズのOSやBIOSを無償公開した。なお、無償公開ではあるが、ダウンロードできるのは@niftyの会員のみのため、その料金は発生する。

 第一弾として公開されたのはX68000 EXPERTのIPL-ROMイメージ、独自OS「Human68k for X680x0 Version 3.02」、シェル「SX-WINDOW Ver.3.1」(システム/アプリケーション/辞書/拡張ディスク)と開発キットツール集。なお、4月15日には第2弾の公開が予定されている。

 今回の公開は、シャーププロダクツユーザーズフォーラムが、シャープ株式会社、株式会社ハドソン、株式会社計測技研、株式会社アクセス、株式会社アイエヌシーの5社に働きかけ、各社が公開許諾したことで実現した。公開条件の詳細はWebで確認して欲しいが、大まかには以下のようになる。

 まず、使用権の許諾であること(著作権などの移転ではない)。公開されたソフトウェアの複製、改変は自由だが、成果物は無償配布のみが許可される。改変した場合は、そのソースコードも公開しなければならない。なお、アセンブラ、デバッガ、コンパイラなどの開発支援ソフトは、非営利の配布は自由だが、解析、改変は認められない。

 X68000シリーズは'87年春に初代機が販売開始。当時は、そのMPU(モトローラ 68000)や、グラフィック性能などの高さにより「パーソナルワークステーション」と位置付けられていた。ビジネス用パソコンとして勢力を築いていたNECのPC-98シリーズと対比する形で存在感を示し、ホビー系パソコンフアンの憧れのマシンだった。現在では、すでに商業的な製品の開発や発売は、ほとんどなくなってしまったが、熱心なユーザー達によって、今だに活用が進められている。

 早くからPC/AT互換機での統一が進んだ米国と異なり、日本では、X1、MZ、X68000のシャープ、PC-88、PC-98のNEC、FMシリーズの富士通、日立、ソニー、松下などのMSXといったように、8/16ビット時代には各社がその独自性を競っていた。

 そのため、現在でもそれらの機種には根強いフアンがいるが、ハードウェアを保存していてもどうしても劣化するため、また新たなユーザーを獲得する意味でも、エミュレータの開発が盛んに行なわれている。しかし、エミュレータを使用する際に問題となるのが、BIOSなどのシステムプログラムだ。それらのプログラムには著作権があるため実機を用意して吸い出すか、著作権を無視してインターネットからダウンロードするしかない。そのため、エミュレータ自体が、どうしてもアンダーグランドな雰囲気が拭えなかったのも事実だ。

 また、そういった点を払拭するため、ユーザーグループがシステムプログラムの無償使用を求めても、権利関係が複数社に渡っていることも多く、交渉が難航することも多かった。そのため、今まで機種固有の有償OSや、BIOSが無償でユーザーに公開されることはなかった。

 その点で、今回ユーザーグループの呼びかけに5社が応じて、世界で初めて有償のOS、機種固有のBIOSプログラムが無償公開されたことの意味は大きい。これによりX68000以外の、各社の商業的には見限られた機種のプログラムや情報の無償公開が進むことを期待したい。

 なお、4月1日付けで、X68000シリーズ用のハードウェアやソフトウェアの開発、販売を手がけている「満開製作所」が、今夏をめどにX68000関連事業から完全撤退することを明らかにした。一部ハードウェアについては、他社に継承されるとしているが、今回の無償公開もあわせて、事実上X68000が完全に、商業からユーザーにバトンタッチされたといえるだろう。


□ニフティのホームページ
http://www.nifty.com/
□「シャーププロダクツユーザーズフォーラム」のページ
http://www.nifty.ne.jp/forum/fsharp/
□「満開製作所 事業縮小のお知らせ」
http://www.mankai.co.jp/tettai.htm

(2000年4月3日)

[Reported by furukawa@impress.co.jp]


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