開催期間:3月1日
会場:Microsoft本社プレゼンテーションホール
今年のGamestockは、Microsoftのエンターテイメント事業を統括するEd Fries氏の講演「ゲームがこれから必要としているものとは?」から始まった。氏は「ゲームが必要としている最も重要なものの1つにエモーション(感情)があると語った」 |
「Gamestock」は毎年行なわれており、これまでにも最新のゲームやネットワークゲーム、新しいアイデアを駆使したゲームデバイスがいち早く発表されてきた。また、「Age of Empire」シリーズの生みの親、Bruce Shelley氏やWing Commanderで有名なErin Roberts氏など有名ゲームデザイナーが集うことでも年々注目を集めている。参加メディアも多種多彩で、CNNなどのTVメディアからヨーロッパのゲーム専門誌まで数多くの記者が集まっていた。
■ 今年の注目コントローラは「SideWinder Strategic Commander」?
「Tilt(SideWinder FreeStyle Pro)」、「Zulu(SideWinder Dual Strike)」と毎年必ずこのGamestockではユニークなコントローラが公開されるが、今年公開されたのはその中でも問題作ともいえる「Strategic Commander」だった。
Strategic Commanderは丸い形をしたデバイスで、手を乗せる丸い上部に7つ、側面に4つのボタンが付いているほか、デバイス側面にはボタンとスライドスイッチが設置されている。また、手を乗せる部分がグリグリと左右に回る仕組みになっている。これらのギミックだけではどういったゲームに活用できるのか不明だが、Microsoftの開発意図としては製品名の通りストラテジーやシミュレーションゲームで使用することが目的のようだ。
ストラテジーゲームなどでは操作する項目やコマンドが多くそのたびにキーボードに手を伸ばさなければならない。この不便さを解消したのがこの製品で、右手にマウス、左手にStrategic Commanderというのが正しいスタイル。コマンドをボタンに割り振ることにより、簡単な操作でコマンド入力が可能なほか、上部の手を乗せる部分を左右に回すことでマップの移動をすることが可能だ。また、ズームボタン、マップボタンを装備しており、ボタン1つでこれらの操作を行なうことができるという。
さらに、デバイス下部の側面ボタン(ボタンには[REC]と書かれている)を押すことでコマンド登録ができる。従来のコントローラではゲームを終了させコントロールパネルで設定しなければならなかったが、このコントローラではゲーム中にコマンドをプログラムできる。
インターフェイスはUSBで、対応OSはWindows 98以降。2000年10月に米国で発売する予定で、価格は59.95ドルとしている。日本での発売は未定。
このコントローラの問題は対象ユーザーをかなり限定すること。活躍するのは「Simcity」などのシミュレーションや「Age of Empire」といったリアルタイムシミュレーションだろう。このほかにも「MechWarrior」のようなロボット操縦シミュレーションや、数は少ないが戦車シミュレーションのように走行と上半身のコントロールが分離しているゲームの場合、威力を発揮できると考えられるが、DirectInputの仕様上、2つのコントローラに操作を割り振ることは不可能とのことで、現在では使用することはできない。一部のゲームカテゴリーのためのデバイスということで、ストラテジーゲームユーザーは期待してもいいかもしれない。
■ オンラインゲーム中のチャットはこれからはボイスチャットで
もう一つの注目はオンラインゲーム中にボイスチャットを行なうことができるマイクとスイッチがセットとなったデバイス「SideWinder Game Voice」。
Game Voiceを使いUnreal TOURNAMENTをプレイしているところ | コントローラ部分。大きさは直径15センチくらい。ボタンは押すとグリーンに光っていた |
今回発表されたGame Voiceを使えば、チャットは音声で行なうことができるので、好きなだけ会話することができる。USBに接続された音声コントロールボックスにはいくつかスイッチがあり、“ALL”ボタンを押すとネットワークにつながっているユーザーすべてと会話することができるほか、“TEAM”ボタンを押すとチーム内で、チャンネル指定することで1人1人と個別に話すことも可能。さらに、音声認識エンジンも搭載しており、音声だけでゲームを操作することも可能だという。プレゼンテーションではトランプゲームなどに利用しているムービーが流されていた。インスタントメッセージなどにも対応しているという。なお、同時に話すことができる人数は64人まで。インターフェイスはUSBだが、これとは別にPC側に音声のやりとりを行なう音声出力端子とマイク入力端子が必要。対応OSはWindows 98/2000。発売は2000年10月で、価格は69.95ドルを予定。ソフトは多国籍言語に対応しているが、日本での発売は未定。
実際に使用してみた感じでは少々ノイズの入るラジオといった感じで、ふつうに使えばそれほど支障なく会話を聞き取ることができる。今回は4人で使用したが、64人というのは技術的には問題なくても、実際使うことはそう多くはないだろう。ただ、ゲーム以外にも使い道がありそうな点がこの製品にお得感を加えているが、結果的にはゲームに利用するだけかも。
ブルブル震えるジョイスティックの新型「SideWinder Force Feedback 2」 |
■ 注目のゲームは米国版「紅の豚」? 「Crimson Skies」
ゲームソフトに関しては「Age of Empire II」、「Flight Simulator 2000」といった大作がリリースされた直後だけに少々不安視されたが、実際にはなかなかおもしろそうなものが出品されていた。
まず、もっともリリース時期が近いものとして注目されるのは、空想の世界を舞台としたフライトコンバットゲーム「Crimson Skies」があげられるだろう。空賊などが登場する、“古き良きアメリカ”を舞台にしており、宮崎駿氏のアニメーション映画「紅の豚」や、ガイナックスが制作中といわれる「蒼きウル」などを思い起こさせる機体のデザインとアクションが特徴。
ゲームはミッションクリア型で、敵機を打ち落とせといったフライトコンバットものにありがちなものから、走っている列車の上にいる女性を救うといった、アクション映画さながらのシナリオまで用意されている。今回体験プレイをした感覚では、敵機への当たり判定などが甘めに設定されており、爽快感を得ることを目的としたゲームバランスとなっているようだ。
開発チームは「ハードなゲームばかりではなく、空想の世界でかっこいい機体で飛んでみたいと思ったために作った」とコメント。ミッションをクリアすることで雑誌や新聞に自分の活躍をたたえる記事が載り、これらを集めるコレクション性も備えている。とにかくミッション内容がおもしろく、飛行中の戦闘機を盗むといった奇想天外なものが用意されている。日頃ゲームをしない人でもアクション映画を楽しむような感覚で楽しめるといった点で注目作だろう。
「カッコイイ飛行機に乗っていろいろなことがしたい!」というコンセプトを熱く語っていた制作者 | ゲームのベースとなったボードゲームやコミックなども展示されていた | 機体デザインは日本人的には「紅の豚」を思い浮かべる人が多いかもしれない |
■ シームレスなゲーム進行が魅力、Diabloっぽい「Dungeon Siege」
今回開発初期のものながら、なかなか期待の持てるタイトルが発表された。
「Dungeon Siege」は基本的には俯瞰タイプのロールプレイングゲームで、そういった意味では見た目はDiabloのような印象を受ける。操作方法も似ており、キャラクタを選択しマウスで移動したい場所をクリックすることで移動。戦闘は、攻撃したいキャラクタを選択するだけで自動的に行なってくれる。武器や魔法の設定によりプレーヤーの能力だけでなく、性格まで変わっていくという。いろいろな武器を取り、試していくのもいいし、1つの武器を使っていくのもプレーヤーの自由というわけだ。
グラフィック的にも面白く、フィールド内にあるダンジョンに入っていくとふわっと周りの地面が消えダンジョン内が表示される。これに関して制作を担当したChris Taylor氏は「こういったシームレスな展開は高校時代からの夢だったんだ」というほどで、かなり力が入っている。キャラクタのズームアップも可能。現在グラフィックエンジンの開発が進んでいる段階のようだが、かなり期待が持てそうだ。
フィールド内にはマジシャンや、遠距離攻撃が得意なキャラなどいろいろなキャラクタが登場し、仲間にして行動をともにしてもいいし、殺すことも可能。登場キャラクタは10人まで同時に操作できる。これらキャラクタを個別に操作し、攻撃対象を指定して戦うこともできれば、すべてまとめて同じ行動をとることもできる。ただ、単に歩くだけでもキャラクタによっては歩くスピードが遅いなど、細かに設定されているようだ。
まだ、開発の初期段階でゲーム内容は変わっていくかもしれないが、凝った内容のゲームになる予感がする。注目しておいて損はないだろう。
まだまだ開発中。デモの合間もデバックモードで各種操作中 | デモではこのようなグッとキャラクタに近づいた視点も披露された(その後の個別でもプレイではこういった視点はなかったのだが……) | 俯瞰モード。操作方法は現状ではDiabloのようだった |
■ 「Combat Flight Simulator 2」、「StarLancer」など期待作続々
このほかの期待作といえば、1つは第2次世界大戦当時のフライトコンバットを再現したシリーズ第2作目となる「Combat Flight Simulator 2」。
現在初期開発中だが、テクスチャの向上で金属疲労といったグラフィックもリアルに再現できている。またグラフィックだけでなく、戦闘中にパイロットがどういった感情を抱いているのかといった点まで再現するべく現在開発中だという。この点に関しては、米国の極秘資料などの研究まで行ない、かなり入念に行なっているようだ。このほかにも、戦友の死によりストーリーが変化し、プレーヤーが窮地に陥るなど、結果を重視したシナリオとなっているという。
ちなみに今回は18機の新機種が追加され、零戦のほか紫電改などの日本製戦闘機も登場するという。
日本の零戦。日本人としては操縦したい機体の1つだろう | 機体のリアルさは目を見張るものがある。また、アニメーションも強化されている | メニュー画面。アメコミ調の画面に若干の違和感も感じるが…… |
Gamestock '99でも取り上げたのだが、Digital Anvileが制作中のスペースフライトコンバットゲーム「StarLancer」の完成が近づいている。すでにムービーなどがオンライン上では公開され、かなり期待が高まっている。体験プレイをした感じでは'99年のE3からまたバージョンがあがっており、ゲームのクオリティは上がっている。諸般の事情で、日本のマイクロソフトからは発売されることはないようだが、完成版がリリースされた段階では是非ともプレイしてほしい一品だ。
圧倒的な美しさが印象的だったゴルフゲーム「Links 2001」。ハイレゾで描かれたグラフィックはリアルワールドと比べても遜色ないほど。3Dグラフィックエンジンのさらなる強化でオーバーハングなども判別できるようになるという。今回の作品はゴルフゲームの決定版とするべく制作中とのことで、コースをプレーヤーが創ることができるほか、プロと同じ体験ができるようにとオンライントーナメント大会を開催し、実際に賞金を得ることができるという(日本では開催されない予定)。
前作は日本での発売が見送られたバイクゲームの続編「Motocross Madness 2」も出展されていた。選手のポリゴン数を前作の4倍にするなどグラフィック的に進化しているが殺風景なコースをまわるだけでなく、電車が走っているコースなどいろいろなオブジェクトが追加されたコースも登場する(データは前作の9倍にもなるという)。エンデューロも追加され、今回は日本でも発売されるという。
この他にもバトルテックの要素を取込んだシリーズ最新作「MechWarrior 4」や、'99年も出展されていた、賞金稼ぎとなり荒廃した世界で各種アクションをこなす3Dアクション「Loose Cannon」などが人気を集めていた。
StarLancer | Links 2001 | Motocross Madness 2 |
MechWarrior 4 | Loose Cannon |
最後にAge of Empireシリーズの生みの親、Bruce Shelley氏はどうしているのだろう? 今回発表がなかったので、直接確認したところ「E3で4作品ほどプロジェクトを発表できるだろう」ということで、もう少しの辛抱だ。また、期待ばかりが先行しているが、いっこうに全貌が見えてこないDigital Anvileの「FreeLancer」だが、今回ムービーが公開された。その密度の濃さは驚きだが、はてさていつ頃完成することやら……。
□Gamestockのホームページ
http://www.microsoft.com/games/gamestock2000/default.asp
Copyright(C)2000 Microsoft Co.,Ltd. All Rights Reserved.
(2000年3月2日)
[Reported by funatsu@impress.co.jp]