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CeBIT 2000レポート パーツ編

ATI、ArtXのグラフィックコアを使った統合型チップセットをデモ
カノープスは低価格DV編集カードを3月に発売


ハノーバ
Hannover Messe
会場:Hannover Messe

開催期間:2月24日~3月1日

 CeBITには実に多くの台湾メーカーが参加しており、台湾メーカーブースが多くあるHall 13やHall 9などはさながらCOMPUTEX TAIPEIヨーロッパ版のようだ。このレポートではそうした台湾メーカーや米国メーカーなどによるPCパーツの話題をお届けする。



●ATI Technologiesが統合型チップセットの開発意向を表明

 毎年この時期には新しいビデオチップが発表されることもあり、CeBITで新しいビデオカードがデビューということも少なくない。昨年ではRIVA TNT2、Matrox G400の発表時期に当たったため、各社からそれらを搭載したビデオカードがいくつも展示され注目を集めていた。しかし、今年はどこからも新しいビデオチップが発表されなかった。
 ビデオカードベンダの関係者によると、3月を目指していたNVIDIAのNV15は4月にずれ込んだと言われている。また、ATI Technologies(以下ATI)のRage6は今年の中頃に、Matrox GraphicsのG450も今年の中頃と期待のチップが軒並み後ろにずれ込んだ。結局CeBIT直前に発表されたビデオチップは1つも無く、ハッキリ言ってグラフィックス関連の話題は非常に低調だった。その中で3dfxがVoodoo4ないしはVoodoo5を搭載したPCでゲームのデモなどを行なっていたが、展示会場には「Voodoo」と書かれているだけで、その搭載マシンがVoodoo4なのかVoodoo5なのかもわからない不可解な状況だった。

ビデオカードベンダ各社のブース。左上からATI Technologies、Diamond Mutimedia Systems/S3、ELSA、Matrox Graphics、3dfx。各社とも新製品の展示はなく、話題に乏しい展示だった

 しかし、こうしたグラフィックスメーカー関連で唯一注目を集めたメーカーがあった。それがATIだ。ATIは先週3DビデオチップメーカーのArtXの買収を発表した。この買収がどういう意味を持っているのか注目を集めていたが、どうやらそれが「統合型チップセット」という方向性であることが明らかになった。というのも、ATIは自社ブースにおいて、ArtXの3Dグラフィックスコアをノースブリッジに統合したP6バス用(Pentium III、Celeron用)チップセットを搭載したマシンを展示したのだ。説明のボードに書かれた詳細によると以下のようになっており、実際にゲームが動作していた。

  • 128ビットのグラフィックスエンジン
  • ハードウェアT&Lをサポート
  • Celeronに最適化

     ATIの関係者によれば、このデモはあくまでテクノロジデモであり、実際の製品ではないということだ。なお、P6バスのチップセットを製造するには、Intelからライセンスを取得しなければならない。ATIの関係者は「現在Intelと交渉中」と述べ、現時点ではP6バスライセンスは取得していないことを明らかにした。さらに詳細について質問をぶつけてみたが、返ってくる答えは「何も決まっていない」ばかりで、パートナーとなるチップセットのメーカーもまだ決まっていないということだ。ArtXは既にSocket 7向けのチップセットではALiと協力していることを考えるとALiが最も有力ではある。しかし、ALiは既にP6バスチップセットではNVIDIAとの協力体制にあり、それと競合する製品にチップセット技術を提供するかは微妙なところだろう。

    □ニュースリリース(英文)
    http://www.ati.com/na/pages/corporate/press/2000/4283.html

    ATIのブースに展示されていたP6バス用の統合型チップセットのデモ。現時点ではArtXのコアが利用されていたが、将来的にはRageシリーズになる可能性もあるようだ。ATIによればこれはあくまでテクノロジデモで、実際にこのままの形で製品としてでてくることはないということだ

     そのほか、先日SPECTRA 7400 DDRを出荷したばかりのカノープスは、CeBITで新しいDV編集カードのデモンストレーションを行なった。新しいカードの名前は「EasyDV」で、簡単に言えば既存製品であるDVRaptorからアナログビデオのオーバーレイ部分を取り除き、安価にしたローコストな製品だ。カノープスの山田社長は「単なるIEEE-1394のカードではない。搭載されているOHCIのチップも、ビデオカメラに使われているものを使っている」と述べ、既存のIEEE-1394インターフェイスカードとは異なり、DV編集に特化し、取り込み時にドロップフレーム無しで取り込め、ソフトウェアでフルフレーム表示が可能であることを強調した。価格は米国で249ドル(日本円で26,000円ぐらい)と、単なるIEEE-1394インターフェイスカードと比較するとやや高価になっている。日本では3月ぐらいの発表を予定しているという。

    カノープスのブースでデモされていたDV編集カードのEasyDV。日本では3月にリリースされる見通し とある台湾のビデオカードベンダのブースには見たこともないSiS 305と書かれたビデオチップを搭載したカードがあった。いやはやSiSは謎が多い会社だ


    ●SiS 540やAladdin TNT2などを搭載したマザーボードも登場

     昨年発表はされたものの、搭載したマザーボードをさっぱり見かけることが無かったSocket 7向け統合型チップセットのSiS 540とP6バス向けのAladdin TNT2だが、CeBITでは細々といくつかのブースで展示されていた。例えばASUSTeK ComputerはAladdin TNT2を搭載したマザーボードとしてCUAを展示している。この他、BIOSTARはSiS 540を搭載したマザーボードを展示していたが、マザーボードメーカー側もこの両チップセットに対する扱いは小さかった。

     MSIはCOMDEX/FallでGIGA-BYTE Technologyが展示していた、2つのSocket 370が搭載されたソケットースロット変換アダプタを展示した。GIGA-BYTEによれば、1つのスロットに対して2つのCPUソケットが搭載されているモジュールは、Intel 820搭載マザーボード専用であるという。Intel 820はAPIC(デュアルCPUで動作させるために必要なチップ)を内蔵しており、このような1つのスロットに2つのCPUを挿した状態でも動作することを応用した製品であるということだ。ただ、これはCeleronでは動作せずFC-PGAのPentium III用であるということで、出荷はIntelがデュアル動作をサポートしたFC-PGAのPentium IIIをリリースした後になるという。

     ABIT Computerは同社のIDEインターフェイスカードの最新版としてHot Rod 100を展示している。これはその名の通り、Ultra ATA/100に対応したインターフェイスカードで、PCIバスに挿して利用する。従来のHot Rod 66ではHighPointのHPT366というチップが採用されていたが、本製品ではHPT370というUltra ATA/100に対応したチップに変更されている。ABITによれば出荷は5月を予定しており、価格も現在出荷されているHot Rod 66と大差がないレベルに落ち着くそうだ。

    ASUSTeK ComputerのAladdin TNT2搭載マザーボードのCUA。この他にもいくつかのベンダでAladdin TNT2搭載マザーボードが展示されていたが、あまり多くはなかった BIOSTARのM5SAH。SiS540を搭載したSocket 7マザーボード。フォームファクタはFlexATXで、SiS540は現在SiS530が使われている大手メーカーのローエンドマシンなどで置き換えを狙う
    MSIのMS-6905 Twin。FC-PGAのPentium IIIを利用してシングルのIntel 820マザーボードでデュアルプロセッサを実現する。ただし、現在のFC-PGAのPentium IIIはデュアル動作をサポートしていないので、利用できない ABIT ComputerのHot Rod 100。Ultra ATA/100に対応していないマシンでも、Ultra ATA/100に対応したハードディスクを使えるようになる


    ●驚速!Seagateが15,000回転/分のCheetahをデモンストレーション

     Seagate Technologyは先日発表したばかりの、世界で初めて15,000回転/分を実現したハードディスク「Cheetah X15」のデモを行なっている。これまで最も回転数が高速なハードディスクは同社のCheetah で、10,000回転/分だったが、今回のCheetah X15はそれを50%も高速化したドライブとして注目されている。実際にハードディスクの外側の転送速度は実に48MB/秒という速度を実現している。Seagateによれば、同社の15,000回転/分のドライブは従来の10,000回転/分のドライブと同等の振動・発熱ですむように設計されており、従来の10,000回転/分のCheetahを利用している環境でれば今回のCheetah X15に交換してもそのまま利用することができるという。今回のデモでは従来の10,000回転/分のCheetahと並べられて展示されており、実際に両方に触ってみることが可能になっていたが、振動や発熱は大差がなかった。

     なお、インターフェイスはUltra160とFibre Channelという。現時点ではIDEインターフェイスに対応したドライブの予定は無いようだが、将来的にIDEがシリアルATAなどより高速なインターフェイスに対応した時には対応することもあり得るとしている。

    Seagateの発表したCheetah X15のデモ。右側にある1万回転のドライブと比較して遜色ない静かさと低振動を実現 富士フィルムのブースに展示されていたDVD-RAMの片面4.7Gバイト、両面9.4Gバイトのメディア。日立製作所のブースでは4.7Gバイトに対応したDVD-RAMドライブが展示されていた


    ●FlexATXのケースが多数展示

     今回のCeBITで目立ったのは、ケースメーカーがFlexATXに対応したファッショナブルなケースを多数展示していたことだ。FlexATXは昨年2月のIntel Developer Forumで発表されて以来、より見た目の良いPCを作るための規格として注目を集めてきたが、ケースの方がなかなかそろってこなかった。しかし、今回のCeBITではそこかしこにFlexATXに対応したケースが展示されており、それぞれ個性的なデザインになっている。

     既にFlexATXのマザーボードに関しては、いくつかのマザーボードベンダが生産を行なっており、入手可能な状態になっているが、今回CeBITで展示されたようなケースが秋葉原でも出回るようになれば、IntelがConceptPCとよぶファッショナブルなPCが自作できるようになるかも知れない。

    会場には様々なFlexATXのケースが展示されていた。秋葉原に投入される日も近いか?

    □CeBIT 2000ホームページ
    http://www4.cebit.de/index_e.html

    (2000年2月28日)

    [Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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    ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp