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CeBIT 2000レポート

Cyrix III初登場。AMDがデスクトップ版K6-2+を断念


ハノーバ
Hannover Messeの入口
会場:Hannover Messe

開催期間:2月24日~3月1日

 世界最大のIT(Infomation Technology:情報処理技術)イベントであるCeBIT 2000がドイツのハノーバーにあるHannover Messeで2月24日~3月1日の1週間に渡り開催される。COMDEX/FallがPC業界にとって冬商戦に向けた秋のビックイベントであるのに対してCeBITは春のビックイベントと言え、米国や台湾など多くのヨーロッパ外のベンダも参加しており、注目の新製品が続々と展示されている。



●移動にバスも利用するとにかく広大な会場

 CeBITの特徴はとにかく会場が広大であることだろう。残念ながら正確な広さなどは解らないが、幕張メッセの3区画分の会場が20近くあると言えば、その広大さが理解していただけるだろうか? その広大さはCOMDEX/Fallの比ではなく、とにかく広いという感想につきる。どのぐらい広いかと言えば、例えば最も入り口に近いところにあるHall13から最も遠いところにあるHall1まで歩いて利用しようと思うと、余裕で20分以上はかかる。とても歩いていける距離ではなく、移動には構内を走るシャトルバスを利用することになる。

 なぜCeBITがCOMDEX/Fallなどに比べて広いかと言えば、それはCeBITがIT関係の全てのジャンルを網羅したイベントだからだ。COMDEX/FallはIT関連のイベントでも、特にハードウェア関係にフォーカスが当てられている(このためソフトウェアのベンダはそれほど多くない)。ではそれ以外のネットワークなどはどうしているかといえば、Networld+InterlopなどCOMDEX以外のイベントがカバーしているわけだ(つまりアメリカではイベントの分業が進んでいるわけだ)。これに対してCeBITではハードウェアもあれば、ソフトウェアもあれば、ネットワーク、携帯電話もあるなど、それこそおよそITと名の付く展示は何でもある。COMDEX/Fall+Networld+etc……となるわけで、規模が巨大になるのも自明の理なのだ。

 しかし、その広大さや参加企業数の多さから参加者の数も非常に多く、ホテルの確保には一苦労というのが現実で、毎年参加者から不満の声が挙がっている。実際にハノーバーの街にはCeBITに参加する参加者を十分に収容するほどの十分な数のホテルはなく、またあっても事前に予約するには法外といってよいほどのデポジット(予約金)を要求されるとあって、はっきり言って評判はよろしくない。例えば筆者がメーカーのブースを回っていると必ずといっていいほど「どこに泊まってる?」という話題になり、「本当にここには二度と来たくない」という話になる。このあたりはコンベンション先進国アメリカの便利さ(周辺に十分なホテルがあり、さほど高いわけではない)に慣れている多くのメーカー関係者に共通する認識だ。
 しかしながら、昨年もそういっていたメーカー担当者でも、やっぱり今年も来ていたのを見ると、「個人的には二度と来たくないが、仕事には非常に役に立つイベント」として認識されているということなのだろう。

会場内の様子。PCメーカーやコンポーネント系のメーカーなどのブースがところ狭しと並んでいる
会場内の地図。1つのHallで幕張メッセの3区画分ぐらい。そんなのが25近くのあるのだから、気が遠くなりそうだ ハノーバー地方の天候は雨時々曇りで、天候はあまりよくない。ここから入り口までは徒歩で10分近く。とにかく本気で移動するにはバスを使わないと移動だけで疲れてしまう


●Super 7ユーザーに衝撃!デスクトップ向けK6-2+消滅!

 さて、CeBITはメーカーにとってプレスやエンドユーザーなどにアピールする良い機会であり、あちこちでプレスカンファレンス(記者懇親会)などが開かれており、我々報道する側も把握するのが大変なほどだ。

 そうした中でAMDもプレスカンファレンスを開催し、CeBITに参加している報道陣に向けて同社のアップデートされたロードマップなどを公開した。Athlonに関しては大きなアップデートなどは特になく、Thunderbird、Spitfire、Mustungなど従来通りのロードマップになっていた。

 しかし、Super 7(Socket 7)向けCPUでは今回大きな変更点が説明された。それによると、これまで2000年の前半に計画されていたK6-2+のデスクトップ版の計画は破棄され、K6-2+は今後モバイル版のみが開発されていくことになるという。K6-2+は製造プロセスルールが0.18μmとなり、128KバイトのL2キャッシュがオンダイとなったいわば「ハーフキャッシュのK6-III」と言えるような製品で、元々2000年の前半中に出荷されることが予定されていた。筆者がOEMメーカーなどに独自に取材した内容によると、AMDは昨年冬の時点でK6-2+を第1四半期中、つまりは3月までに出荷すると説明していたのだが、最近になった延期が伝えられていた。

 AMD コンピュテーションプロダクトグループプロダクトマーケティングディレクターのスティーブ・ラピンスキー氏は「当社はローエンド向けAthlonであるSpitfireを第2四半期の終わりにリリースする予定だ。顧客の強い要望によりこちらの方に注力することにした。今後K6-2+はモバイル向けとして開発されていく」と述べ、OEMメーカーからの要求によりデスクトップ版のK6-2+を取りやめ、第2四半期の終わり(ということは6月か?)にAthlonコアをベースとして低価格用PC向けに投入を予定している、ソケット型(Socket A、別のソースによれば462ピン)のSpitfireに全力を注ぐということを明らかにした。

 AMDは既にK6-III+(0.18μm版のK6-III)をモバイルのみにリリースするということを明らかにしており、今回の決定はそれに次ぐものだと言える。これによりデスクトップ用のSuper 7プラットフォームの新規CPUは、今後既存のK6-2のクロック向上版以外はリリースされないということが確実になったわけで、いよいよSocket 7の寿命も年内という可能性が高くなってきた。となると、現在Super 7ベースの低価格マシンをリリースしている大手メーカーもSpitfireなりIntelのCeleronなりに乗り換えることを真剣に検討しなければいけなくなる。SpitfireとCeleronのいずれを選ぶにせよ、マザーボードなどのプラットフォームを完全に一新しなければならない。AMDにとってはいかにスムーズにSpitfireに移行させるか、IntelにとってはいかにCeleronへ移行させるかが勝負の鍵となるだろう。今年の後半には再びローエンドCPUの主導権争いが激化しそうだ。

 また、自作派のSuper 7ユーザーでK6-2+によるアップグレードの可能性は無くなるわけで、いよいよAthlonやPentium IIIへの移行を真剣に検討する時期に来たといえる。

AMDのロードマップに関して説明を行なうAMD コンピュテーションプロダクトグループプロダクトマーケティングディレクターのスティーブ・ラピンスキー氏


●FICがTransmetaのCPUを採用したサンプルマシンを展示

 先月の発表以来注目を集め続けているTransmetaだが、残念ながら今回のCeBITには出展していない。しかし、台湾のマザーボードベンダとして知られるFIC(First International Computer)は、同社が試作したTransmetaのCrusoeを採用したプロトタイプを公開した。そのマシンは具体的なノートパソコンやインターネット専用端末というわけではなく、小型のPCといった感じのプロトタイプで同社によればこれがこのまま製品化されることはないという。今回採用されているCrusoeは上位のTM5400で、将来のノートブックPC化を睨んだものである可能性が高い。CPUには冷却装置は何も付いていなかったが、きちんとWindows 98(英語版)が動作していた。

 実際にFICがTM5400を搭載したマシンをリリースするのかと質問をぶつけてみたところ「現時点では検討しているとしか言えない」(FIC プロダクトマーケティング部門 PCDマネージャ ヨセフ・コウ氏)という答えが返ってきた。つまり現時点では何の決定もされていないということだが、少なくともFICのようなOEMベンダにCrusoeのサンプルが渡されてテストしているということが明らかになったのは、本当に製品化されるのかという疑問が呈されることが多いTransmetaにとってはよいニュースだと言える。なお、「もちろんTM3120を搭載したものも検討しており、将来的にはインターネット専用端末などもTransmetaをベースに作っていきたい」(コウ氏)とのことで、TM3120の方がリリースされる可能性もあるようだ。

 さらに、VIA Technologiesは同社が先日プレスリリースで発表したばかりの、これまでコードネームJoshuaで呼ばれてきたPGA370(いわゆるSocket 370)用CPUであるCyrix IIIに関するデモを行なっている。ただし、Cyrix III自体は、明日にプレス発表会を控えていることもあり、デモは今のところあまり派手ではなく、Cyrix IIIが搭載されているマシンでQuake Arenaがデモされている程度だ。「Cyrix IIIに関する詳細は明日の発表会で明らかにする」(VIA Technologies関係者)とのことで、明日に期待したい。

FICによるCrusoe搭載マシンのデモ。こちらは全くのプロトタイプで、実際に製品かされるものではないという。DVD-ROMやFDなども外付けにされており、このまま液晶ディスプレイとキーボードなどをつければすぐにノートブックPCになりそう。少し触ってみたが、Quake IIもプレイでき、意外なほど完成度は高かった FICのプロトタイプに搭載されたCrusoe。上位のTM5400であるそうだ VIA TechnologiesのCyrix III(コードネームJoshua)を採用したデモマシン。QuakeIII Arenaがインストールされており、実際にプレイできた VIAのCyrix IIIのリアルサンプル。詳細については明日明らかになる

□CeBIT 2000ホームページ
http://www4.cebit.de/index_e.html

(2000年2月25日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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