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Windows 2000 発表会レポート SF編

ビル・ゲイツ会長、待望の「Windows 2000」発表会
ハイエンド市場でも市場独占を狙う?

会期期間:2月15日~17日
基調講演会場:Bill Graham Civic Auditorium

 Microsoftのビル・ゲイツ会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクトは現地時間の2月17日、米サンフランシスコで開催された「Windows 2000 Conference & Expo」の基調講演で、待望の「Windows 2000」の正式発売を発表した。世界100都市で盛大な発売イベントが行なわれる中、ゲイツ会長の講演を聴くために早朝から大勢の観客が押し寄せ、長蛇の列を作った。

 今回の基調講演は、俳優やコメディアン、人気歌手のサンタナなど多彩なゲストを招いての華やかなものとなったが、それにもましてWindows 2000のスケーラビリティと安定性を示すデモに、会場は何度も大きな拍手を送った。また、今回発売される「Professional」、「Server」、「Advanced Server」の3つのバージョンの他にも今後の製品ラインナップを発表、ハイエンド市場への本格参入を果たした。

●Windows 2000:業界全体にとって歴史的

ビル・ゲイツ氏とパトリック・スチュワート氏

 まず、基調講演の開始とともに、ステージの中央に設置された12メートルの高さの巨大なノートブックPCの蓋が開けられた。そこから登場したのは、「スタートレック ザ・ネクスト・ジェネレーション」でお馴染みの人気俳優、パトリック・スチュワート氏だった。同氏は「未来のビジネスが今まさに始まりを告げている。非常にエキサイティングだ! 皆さんの中には、私が将来について何を知っているのかと思っている人もいるかもしれない。しかし、私はそこに行ったことがあるのだ」と語り、会場を笑わせた。

 同氏に紹介されて登場したゲイツ会長は、MicrosoftのOSの歴史を振り返り、Windows 95はコンピューティングの未来を変革したと述べ、それと同時期に登場したインターネットは通信およびビジネスの未来を大きく変革するものであると語った。インターネットは、単なる情報提示からEC取引へ、さらにはXMLを使用した複雑なウェブアプリケーション、ASPへと急速に進化しており、こうした環境に適応するOSを作る目的でWindows 2000が開発されたと述べた。

 同氏は「既存のビジネスをデジタル・プラットフォームにシームレスに移行したWindows 2000は、Microsoftだけではなく、業界全体にとり歴史的なものになる」と語った。ここで、喜びを隠しきれない様子で「今日の発表だけで優れた機能のすべてを紹介することはとても不可能だが、さまざまな企業がすでにWindows 2000をビジネスに最大限に活用しているのを見ると、きっと驚くことだろう」と語った。

●ハイエンド市場に本格参入

 ゲイツ会長は、「インターネットは、今後さらに大量の処理を必要とするようになる。これに対応するためには、複数のWindowsサーバーか、1台の高価なUNIXまたはMDSメインフレームのどちらを選べばよいか、人々はジレンマに陥っている。しかし、Windows 2000がその答えを出したのだ」と語った。

 同氏は「我々は、PCサーバーをいくつも組み合わせることにより、これまでにないレベルの処理を行なえるソフトウエア・アプローチを採った。これにより、簡単に処理パワーを増加させることができる」と語り、ハイエンド市場参入への大きな自信を見せた。Windows 2000は安定性、スケーラビリティ、コストパフォーマンスの面で他のプラットフォームよりも優れていると主張するゲイツ会長は、安定性を測定するのは難しいとしながらも、Ziff-Davis Labsの安定性を測定するテストで、Windows 2000が優れた結果を出していると述べた。

 高い処理能力を必要とするアプリケーションを多数走らせることにより、安定性を測定するこのテストでは、Windows 95は2.1日、Windows NT Workstation 4.0は5.2日でクラッシュした。Windows 2000の場合は、2倍~4倍の期間クラッシュしないものと予測されていたが、実際には約18倍の90日間以上クラッシュしなかった。さらに、この記録は現在も続いているという。

基調講演の会場、Bill Graham Civic Auditoriumでは、早朝から長い列ができていた 会場内の風景。2階席はMicrosoftの社員

●UNIXの3分の1の値段で同等の処理

 ゲイツ会長は、デスクトップおよびノートブック向けの「Professional」はナレッジワーカーのためのデスクトップであるとし「Professionalは、Windows 95、Windows 98、Windows NT Workstation 4.0を使用しているすべてのビジネス・デスクトップとノートブックの代わりになるものだ」と述べた。

 同製品のデモを行なった同社のダグ・グロンキー製品マネージャーは、デスクトップとノートブック間のファイル転送や、モデムのPlag & Play、赤外線によるファイル転送を行ない、こうした機能がプロダクティビティを大幅に高めるものになるとした。Giga Information Groupの調べでは、Windows 2000を導入した企業のうち80%以上が12カ月以内にROI(リターン・オブ・インベストメント:投資に見合った効果)を得ているという。

 また、ローエンド・サーバー向け「Server」は特にセキュリティ面で優れており、暗号技術「Kerberos」と公開鍵システムを使用している他、コードやドライバーがどこから来たかを確認できる。Microsoftのリッチ・カプランITプロフェッショナル・マーケティンググループ・ゼネラル・マネージャーは、システム管理者がActive Directoryのポリシー設定を使用して、文書の閲覧から、販売契約書、またビデオクリップにいたるまで、ファイルのアクセス権を設定できるデモを行なった。

 「Datacenter Server」ベータ版のデモでは、16基のプロセッサを内蔵したメインフレーム「Unisys ES7000」に航空チケット・アプリケーション「Amadeus/ITA」を走らせたデモを行なった。Datacenter Serverでは処理にあたるプロセッサを追加したり外したりといった操作が行なえ、大量の情報を分散処理することができる。これにより、マシンの利用を最適化し、1日に85億件の処理を行ない、UNIXシステムの3分の1の値段で同等のパフォーマンスが得られるとしている。

 現在、PCメーカーは、245種類のPCにWindows 2000をプレインストールする計画を立てており、65,000台のPCがProfessionalを開発環境に使用、MotorolaやTelexは7000台のデスクトップにWindows 2000をインストールしているという。

●1年間の取引を2日間で済ませる処理能力

 よりハイエンドな「Advanced Server」の紹介では、General Motors(GM)のラルフ・シジェンダ副社長兼CIOが登場し、GMのECアプリケーション「GM TradeXchange」について語った。これは、GMと提携パートナー企業がインターネットで製品の売買やオークションをリアルタイムで行なうためのアプリケーションで、「過去4年間、我々はB2C、B2B、B2E(社員向け)の分野でEビジネスの導入を積極的に行なってきた。我々は現在、Eビジネスで優位に立っているが、大きく変貌を遂げる自動車産業では、素早いビジネス展開が必要になる。10万人のサプライヤー、12,000人のディーラーを抱えるGMのITインフラの中核をなすのは、こうしたニーズに柔軟に対応するWindows 2000だ」と語った。

 同サーバーがいかにスケーラブルかを証明するデモでは、前述のグロンキー氏が35台のサーバーと500台のデスクトップを使い、1日16億ページのリクエストを金融情報サイト「CBS MarketWatch」に送った。グロンキー氏は、新しいサーバーをネットワークにつないで、Advanced Serverが自動的にそのサーバーの環境設定を行ない、大量の情報を素早く分散処理するデモを行なった。

 TPCベンチマークでは、Advanced ServerとSQL Server 2000を12台のCompaqマシンで走らせた結果、227,079 tpmを記録したという。ゲイツ会長は「これは、'99年に行なわれたすべてのオンラインショッピングの取引を2日間で済ませてしまう処理能力に匹敵する」と語る。

 Credit Suisse First Bostonのヘンリー・ナッシュ氏は、ビデオの中で「我々は、Sun UNIXサーバー・システムから、Windows 2000へと移行している。これにより、コストパフォーマンスを30倍高めることを期待している」と語った。

会場の両側にも500台のデスクトップが並ぶ GMと提携パートナー企業がインターネットで製品の売買やオークションをリアルタイムで行なえるECアプリケーション「GM TradeXchange」のデモ 35台のサーバーと500台のデスクトップを並べたデモでは、金融情報サイト「CBS MarketWatch」に1日16億ページのリクエストを送った

●歴史上、最大のソフトウエア開発計画

サンタナが巨大ノートブックの下から登場、会場は大いに盛り上がる

 最後に、Windows 2000のクリエイティブな使い方が披露された。ESPNは、デジタルカメラやビデオで「Winter X Games」を撮影し、Adobe Premiereのプレビュー版を使用して、リアルタイムのストリーミングビデオ放送を実現している。

 ゲイツ会長は「1000社以上のパートナ企業、10億ドルの開発費、5000人のエンジニアの協力により、未来のビジネス・プラットフォームが誕生した。これは、業界全体にわたる大きなプロジェクトであり、歴史上、最大のソフトウエア開発計画だといえる」と語った。

 基調講演の最後のデモとして、ゲイツ会長は、巨大ノートブックに表示されている「Windows Media Player」をクリックした。メディアプレイヤーからサンタナが流れだすと、本物のサンタナが巨大ノートブックの下からバンドメンバーとともに登場、バンドの演奏する「Smooth」(アルバム「Supernatural」収録)に会場は大いに盛り上がり、Windows 2000発表会の幕が閉じた。

(2000年2月18日)

[HIROKO NAGANO, CA]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp