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MACWORLD Expo/Tokyo 2000
スティーブ・ジョブズ基調講演レポート
世界同時発売となるMac OS Xの日本語環境を初披露

期日:2月16日 11:00~

会場:幕張メッセ


■怒濤の新製品発表に沸いた来場者

 空こそ晴れ渡っていたものの冷たい風が吹く中、今年も幕張メッセには熱心なファンが早朝から続々と詰めかけた。開場まで2時間以上ある8時30分頃には、すでに数百人単位の来場者が正式なCEOとなったスティーブ・ジョブズ氏の講演を聴くために長い行列を作っている。先頭にいたっては、昨夜から並んでいるという強者である。10時30分過ぎに入場が始まると会場は瞬く間に一杯になり、まだ公式な発表はなされていないが、昨年同様に6,000人を超える入場者を集めたものと予想される。

 開始予定の11時をややまわったところで、場内が暗転してジョブズ氏がステージに姿を見せた。昨年は日本法人の原田社長から紹介があっての登場だったが、今年はいきなりジョブズ氏がステージにあらわれた。場内の喝采に軽く応えてからおなじみの業績報告で講演がスタート。前四半期の出荷台数については1月のサンフランシスコと同様に135万台をアナウンス。6秒間あたり一台のMacが、世界のどこかで販売されている計算になるという。このこと以上にジョブズ氏が強調したのは、iMacとiBookの購入者に占めるビギナーの割合。iMacにおいては、米国で30%、日本では約50%が初めてコンピュータを購入するユーザーにあたるという。またiBookについても、日本では56%のユーザーがビギナーにあたるという統計を明らかにした。同時に、日本では7.8%の市場シェアを達成し国内第4位に躍進したことに触れ、最前列に座っていた原田社長ほか、日本のスタッフを称えることも忘れなかった。

 続いて製品マトリクスを示しながら、矢継ぎ早に新製品の発表が行なわれた。メモリ、ハードディスクを倍増させた『iBook』を皮切りに、Jobs氏が「素晴らしいマシン」と称えるiMac DV Special Edition同様のグラファイトカラーを採用した『iBook Special Edition』。こちらもお気に入りなようで、講演後は同製品を手に取って、報道陣向けに写真撮影の機会を自ら用意してくれたほど。そして今回もっとも期待の高かったプロフェッショナル向けのポータブル製品『PowerBook G3』。インターネット上では、他の製品同様にトランスルーセントボディへの大幅なデザイン変更が噂されたが、実際には、外観は前モデル同様で、内部構造を最新アーキテクチャに一新しての発表となった。プロフェッショナル向けのデスクトップ『PowerMac G4』も、搭載しているPowerPC G4をそれぞれ400MHz、450MHz、500MHzにスライドさせてパワーアップ。これは当初発表された構成に戻っただけという厳しい見方もできるが、4つの製品群のうち3つまで同時にラインアップを一新したのはすごい。これらはいずれも今週の金曜日、2月18日から出荷がスタートする。新製品についてのスペックの詳細は、既報のレポートに目を通して欲しい。


■日本での講演にふさわしく日本語を意識したMac OS Xのデモ

 さて、これまで新製品のアナウンスといえば、講演の最後にもったいぶって披露するというのがお決まりのパターンだったが今回は違っている。つまり、それ以上に大切なことがこの後に控えているというわけである。そしてiMac DVに搭載されている「iMovie」の紹介へと移る。内容については、これまでもiMac DVの発表会などで披露されてきたものだが、デモンストレーションにはかなりの時間が割かれた。ここから、今年Apple Computerがハードウェアの新製品以上に注力しているのが、iMovieをはじめとする「デスクトップ・ムービー」のソリューションと、この後に登場する「Mac OS X」であることが想像できる。

 次に、今回の講演で唯一のゲストが登場してデモンストレーションを披露した。意外かもしれないが、今回の講演のなかで、最大の喝采を浴びたのはこのデモンストレーションが成功したときだったと思える。製品名は「ViaVoice ミレニアム for Macintosh」。PCではおなじみの音声認識ソフトである。すでに米国では英語版が発売されているが、今回デモンストレーションを行なった日本IBMの担当者は、今年上半期中の日本語対応版出荷を明らかにした。先行して、2月25日から日本国内でも英語版を12,000円(税別)で販売するという。

 そしてトリは、やはり「Mac OS X」がつとめることになる。サンフランシスコで発表したように、シングルOSという構想のもと、今年1月のアナウンスから約1年をかけてX(テン)への移行をすすめるという姿勢を改めて示した。そのデモンストレーションは、今週からデベロッパーに向けて配布が始まった「Developer Preview 3」を元に行なわれたが、随所にMac OS Xにおける日本語環境が披露される非常に興味深い内容になっていた。なかでももっとも注目すべき点は「Mac OS Xは、英語や日本語を含む全世界向けの製品が単一のCD-ROMで提供される」ことである。これは全世界同時のリリースを意味するほかに、Mac OS XがマルチリンガルOSであることの証明でもある。デモンストレーションのなかでも、それまでプライマリスクリプトとして英語が使われていた環境から、マシンを再起動せずに、ログインするユーザーの変更(ジョブズ氏から原田氏)だけでプライマリスクリプトを英語から日本語に変更してみせている。さらにプライマリスクリプトだけでなく、アプリケーション単位でも使用言語が設定できるので、英語環境においても日本語対応のアプリケーションが使用できる。気が付きにくいが、講演で紹介された日本語の表示は、ほとんどが英語環境でデモンストレーションされていたものだった。
 もうひとつの注目点は、大日本スクリーン製造と提携し、同社の日本語フォントを標準フォントとして採用するということである。インストールされるのは、同社のヒラギノフォントをベースにしたもので、ウェイトの異なる明朝が2書体と、ウェイトの異なるゴシックの3書体。さらに丸ゴシックが1書体で合計6書体に及ぶ。特に、明朝とゴシックの5書体については、文字数を最大1万7,000字に拡張したもので、従来は表現の難しかった旧漢字などもサポートした。これらはUnicodeに準拠し、OpenTypeフォーマットで提供される。これらをまじえたMac OS Xのインターフェイス「AQUA」は、来場者のほとんどが初めて目にするとあって、ひとつひとつの機能が紹介されるたびに、歓声と驚きの声が漏れていた。

 ほぼ予定通り1時間30分で講演は終了したが、昨年とはうって変わって非常に内容の濃いものになったと言えるだろう。終了後もジョブズ氏は上機嫌で、報道陣の前に姿を現して写真撮影のリクエストに応えていた。

サンフランシスコのレポートでの予測がズバリ当たり、新たにThink differentに加わった日本人映画監督は世界のクロサワこと故「黒澤 明」氏 iMovieのデモンストレーションは、ジョブズ氏自らがiMac DVの前に腰掛けてじっくりと行なわれた 「ViaVoiceミレニアム for Macintosh」の音声認識で入力された文章。開発途上とはいえ完璧に入力されており、講演のなかでも最大級の喝采を浴びた
Mac OS Xにおけるムービーのプリファレンスパネル。表示されているシステムフォントは、現行のOsakaフォントをMac OS X向けにカスタマイズしたもの Mac OS Xのネイティブ環境であるCocoaで動作するメールクライアント。OSに標準添付されるこのアプリケーションもすでに日本語対応が行なわれている リッチテキストフォーマットの日本語文書を表示。メニューバーが英語表示であることからも、プライマリスクリプトが英語環境であることがわかる
17,000字に拡張される日本語フォントでは、こうした旧漢字も表示させることができる。ちなみにこれは「喜太郎」。人名関連で有効に使えそうだ 何度も紹介されているPDF書類のデモンストレーションにも日本語フォントを加えた。今回はこうした日本向けの工夫が随所に見られる 原田氏のログインネームで再度ログインすると、プライマリスクリプトが日本語に切り替わる。メニューの表示内容もこのとおり


MACWORLD Expo/Tokyo 2000ホームページ
http://www.idgexpo.com/MACW/
アップルコンピュータのホームページ
http://www.apple.co.jp/
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【2月16日】MACWORLD Expo/Tokyo 2000が開幕
~ グラファイトiBook Special Edition、PowerBookなどが公開 ~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000216/mwet01.htm
【2月16日】アップル、iBook、PowerBook、Power Mac G4を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000216/apple1.htm

(2000年2月16日)

[Reported by 矢作 晃]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp