●製品構成を高クロックへスライドさせるIntel
先週紹介した、Intelのアグレッシブなロードマップ。その中でGHzプロセッサとともに目を引いたのは、Celeronプロセッサの高クロック化だ。Celeronは、大幅に高クロック化を前倒して、一気に700MHz台に突入することになっている。だが、これはそれほど不思議ではない。それは、0.18μm版Pentium III(Coppermine:カッパーマイン)全体のプロダクツミックス(製品構成)が、高クロックへとシフトするからだ。Intelが、1GHz品を採れるようにCoppermineのプロダクツミックスを上げるなら、自動的にCeleron全体のクロックも上がるというわけだ。
この仕組みをわかりやすくするために、Intelの2000年の推定プロダクツミックスを、グラフにしてみた。下のグラフがそれだ。これは、各四半期ごとのIntelのデスクトップCPUの全生産量の中で、特定のクロック以上の製品がどれだけのパーセンテージを占めるかの推定値を表している。アスタリスク(*)が、推定の生産比率を表す。たとえば、第2四半期を例に取ると、667/700MHz以上がCPU全体の半分以上で、そのうち半数程度が733MHz以上、そして733MHz以上のチップのうち、さらに半数以下が800MHz以上だと推測している。
●第1四半期(前半)
Coppermine/Katmai | |||||||
Pentium IIIブランド | |||||||
800MHz以上 | * | ||||||
733/750MHz以上 | ***** | ||||||
667/700MHz以上 | ************* | ||||||
600MHz以上 | ************************ | ||||||
533/550MHz以上 | **************************** | ||||||
Mendocino | |||||||
Celeronブランド
533MHz以上 | .......................********
| 500MHz以上 | .......................***************
| 466MHz以上 | .......................******************
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現在の状況。Coppermineの生産量は第1四半期中に急拡大しつつあるが、まだ前半はPentium III出荷数のある程度は0.25μm版Pentium III(Katmai:カトマイ)が占める。また、Celeronはほぼ0.25μm版Celeron(Mendocino:メンドシノ)コアのまま。そのため、Intelの全CPU出荷量に占めるCoppermineの割合は、第1四半期はまだ30~50%程度だと思われる。また、第1四半期後半にはCoppermineはBステップ品が登場するが、Bステップへ移行するにはFabごとにタイムラグがあると思われる。
●第2四半期(前半)
Coppermine | |||||||||||||||||||
Pentium IIIブランド
866MHz以上 | **
| 800MHz以上 | *****
| 733/750MHz以上 | *************
| 667/700MHz以上 | **************************
| Celeronブランド
| 633/667MHz以上 | ***********************************
| 566/600MHz以上 | ******************************************
| Mendocino
| 533MHz以上 | ..................................****
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IntelのFabの0.18μmプロセス(P858)への移行が進み、Coppermineの生産量が急拡大、Pentium IIIは基本的にオールCoppermine化する。また、Coppermineも急速にBステップに移行し、800MHz以上の高クロック品の比率が拡大する。Coppermineは、Pentium IIIとして必要な量以上に生産できるようになるため、Intelは667MHz以下の低クロック品をCeleronブランドに投入し始める。そのため、Mendocinoの出荷量は急激に絞り込まれると見られる。
●第3四半期(前半)
Coppermine | |||||||||||||||||
Pentium IIIブランド
933MHz以上 | **
| 866MHz以上 | *****
| 800MHz以上 | *************
| 733/750MHz以上 | **************************
| Celeronブランド
| 700MHz以上 | ***********************************
| 633/667MHz以上 | *******************************************
| 566/600MHz以上 | **********************************************
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Coppermineの生産量はさらに拡大。Celeronも含めて、IntelのデスクトップCPUはオールCoppermine化する。また、ステッピングチェンジや製造プロセスのチューンナップを行ない、高クロック品の比率を拡大すると見られる。この時点でCoppermineはほとんどが600MHz以上へと移行するだろう。うまくすれば、全デスクトップCPUの半数以上を733MHz以上の製品が占めるようになる。
●第4四半期(前半)
Coppermine | |||||||||||||||||
Pentium IIIブランド
1GHz以上 | **
| 933MHz以上 | *****
| 866MHz以上 | *************
| 800MHz以上 | **************************
| Celeronブランド
| 750MHz以上 | ***********************************
| 700MHz以上 | *******************************************
| 667MHz以上 | **********************************************
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Intelは、さらにステッピングチェンジや製造プロセスのチューンナップを行ない、第3四半期末からは1GHz品を(出荷できる量)採れるようにすると見られる。この時点でCoppermineはほぼ667MHz以上へと移行する。うまくすれば、800MHz以上の高クロック品が、全デスクトップCPUの半数以上を占めるようになる。つまり、下半分を占めるCeleronのクロックは、667~750MHz程度になるというわけだ。
以上のグラフは公開データがないため推測したものだ。厳密な数字というより、あくまでもプロダクツミックスの変化を示す例として受け取ってほしい。
もっとも、グラフにはある程度根拠はある。まず、Intelは、同社の生産するデスクトップCPU全体に占めるPentium IIIの比率を、理想的には60%にしようとしていた。その比率が、IntelのCPUの平均販売価格(ASP)を、従来同様に200ドル強に保つために必要だからだ。しかし、同社がCeleronで激しい攻勢をかけた時期には利益も減少したので、Pentium IIIの比率はこの目標をかなり下回っていたと推測される。
今年のPentium III対Celeron比率を推測するのは難しいが、ここでは、PentiumIIIの比率を50~60%程度に見積もった。つまり、IntelがPentium IIIを700MHz以上にすると計画していれば、それは700MHz以上の製品の比率を全体の50~60%程度にしようとしているとして推定している。その他の比率は、一昨年のMicroprocessorForumのセミナーなどでの資料を参考に推定している。ただし、高クロック品の比率は、その時々で大きく変わるため、このグラフはあくまで例にすぎない。
(2000年2月9日)
[Reported by 後藤 弘茂]