会期:2月3~6日(4日間)
会場:Las Vegas コンベンションセンター
今年のPMAは、デジタルカメラショーと言っても過言ではないほど、多数の新製品が続々発表され、会場は終始賑わいをみせていた。今回はそのなかから、目立った新製品についてレポートしよう。
●「EOS Kiss」ベースのデジタル一眼レフを参考出品したキヤノン
PMA前日に予告のあった新型デジタル一眼レフが、ようやくそのベールを脱いだ。
同ブースで今回参考出品されたのは、普及クラスの35mm一眼レフである「EOS Kiss」をベースにしたデジタル一眼レフだった。出展はアクリル越しで、説明も小さなパネル一枚のみ。それ以上の情報についてはすべてノーコメントとなっており、詳細情報といえるレベルのものは一切公開されていない。
公式発表の内容としては、AF一眼レフであり、レンズマウントは従来のEOSと同じEFマウントで、レンズの互換性もあるという。画素数に関して、会場情報では300万画素オーバーとしか記載されていないが、日本語のリリースでは「300万画素を超える大型撮像素子」となっている。もちろん、正確な画素数や受光素子の形式やサイズも公表されていないわけだ。
だが、常識的な範囲で考えれば、レンズシステムがある程度共用できる“大型撮像素子”とすれば、センサーのサイズは「ニコン D1」と同じAPSサイズに近いものである可能性は十分にある。
また、出品されたボディの外観から分かるものも多い。まず、ベースはEOS Kiss系であること。これは実用十分な機能を備えているという判断での採用と考えられるが、それ以上に、かなりローコストな線を狙ってくる可能性が高いことも、容易に想像できる。
記録媒体は、ボディ横に「CF Card」という文字が見えるので、これはCF(たぶんCF Type2)であるのは確実だ。このほか、ストロボ内蔵で、AFは多点測距タイプ。EOS Kiss系にはないサブ電子ダイアルを備えており、光学ファインダーにはきちんと視度調整機能が備わっているなど、一眼レフとしての基本機能はかなり充実しているようだ。
しかも、カメラのスタイリングから分かるように、従来のデジタル一眼レフのような、ボディ下部のでっばりがなく、ごく普通の一眼レフと同じ高さに仕上がっている点も要注目。これは、本機が当初からデジタルカメラとして開発/設計されていることを示しており、大型のバッテリーを搭載しなくても実用レベルの撮影枚数が確保できることの証といえそうだ。
発売時期は2000年秋。価格はまったく未定だが、会場ではほぼ同時に発表された「富士写真フイルム FinePix S1 Pro」(3,995ドル)の前後か、それ以下では……という憶測が飛び交っていた。
しかも、今年はデジタル一眼レフの晴れ舞台であるオリンピックの開催年であるため、本機とは別に、より本格的なデジタル一眼レフがそれまでに登場する可能性も十分にある。となれば、キヤノンは一気に、デジタル一眼レフをラインナップとして揃えられることになるわけだ。
昨年の「D1」でデジタル一眼レフが従来に比べて手頃になったわけだが、今回のモデルが適価で市場に投入されれば、まさにデジタル一眼レフの時代が一気に訪れそうだ。
□ニュースリリース
http://www.canon.co.jp/pressrelease/sonota/pma.html
PMA初日の朝、ペンタックスブランドで有名な旭光学とHewlett-Packard(HP)の提携が正式にアナウンスされた。PMA前日レポートでは、デジタル一眼レフや高画素モデルの噂について紹介したが、まさにその噂は真実だった。
今回、ペンタックスとHPは、それぞれのブースで、一眼レフとコンパクトカメラタイプの2機種の新型デジタルカメラを参考出品した。
まず、同一機種のダブルブランドモデルである「ペンタックス EI-2000」と「HP C912」は、一眼レフファインダー搭載の2/3インチ224万画素モデル。スタイリングはまさに35mm一眼レフ的だが、レンズ交換はできず、光学式3倍ズーム専用機となっている。
ファインダーは一眼レフタイプで、写真ではわかりにくいが、ボディ背面のフーァインダ部は、ボディの左端にアイピース(覗き口)が設けられている。
本機の注目点はCCD。画素数的には総画素数224万画素タイプだが、サイズが2/3インチと大きい点が特徴。このスペックの素子としては、現在知られているものでは、フィリップスのFT(フレームトランスファー)方式のものしかなく、おそらくはそれを採用しているものと思われる。このFT方式は、ポピュラーなインターレース式に比べて受光部の開口効率が高いため、ダイナミックレンジが広く、実効感度も高い。そのため、同じ画素数のものと比較しても、階調や色再現性に優れた画質が得られる可能性が高い。とくに今回は、このあたりの絵作りをHPが担当してこともあって、かなりハイクオリティな画像が期待できる。
また、操作部を見ると、ペンタックスの35mm一眼レフと同じような、被写体別モード切替ができるようになっており、十分に本格的な撮影に耐えるモデルに仕上がっているようだ。
一方、「ペンタックス EI-200」、「HP C618」は、コンパクトカメラのスタイリングをしたモデル。こちらは211万画素モデルの光学3倍ズーム機だが、CCDサイズが1/2.7インチと現行の200万画素系CCDよりも一回り小型のものを搭載している。
こちらのデバイスもまだ製品化されているモデルはなく、実力も未知数だ。もちろん、CCDサイズが小さいため、実効感度やダイナミックレンジの点ではやや不利だが、その分、レンズやボディを小型化することができ、カメラのコストも低めに抑えられるといったメリットがある。しかも、比較的コンパクトであり、出展機を見る限りボディの質感も良好で期待できる。
残念ながら今回は両機種ともに、ガラス越しの展示のみで、実機に触れることができなかったが、どのようなポテンシャルを秘めたモデルに仕上がっているのか、大いに楽しみだ。
HPブランドの両機 |
□旭光学のニュースリリース
http://www.pentax.co.jp/japan/news/2000/200005.html
□HPのニュースリリース
http://www.jpn.hp.com/Corp/pressreleases/fy2000/hc04ptx.html
CyberMax 35 | CyberMax 35MP3 | |
DIGIMAX 130Z | DIGIMAX 210SE |
韓国のSAMSUNGは今回、200万画素の3倍ズーム機から、世界初のMP3対応VGAモデルまでのフルラインナップを一挙に公開した。
まず、フラッグシップとなるのが、コダック以外の海外勢で初めての、200万画素級ズーム機となる「DIGIMAX 210SE」。比較的コンパクトな光学3倍ズーム機で、デザインもなかなか良好。記録媒体はこれまでの同社モデルがスマートメディアだったのに対し、本機ではCFカードを採用している。価格は549ドルとこの手のモデルとしては安めの設定だ。また、ほぼ同じボディを採用した130万画素3倍ズーム機「DIGIMAX 130Z」。こちらは399ドルとより手頃なレベルになっている。
さらに同社は今回、VGA(640×480ピクセル)モデルを2機種出品。「Cyber MAX35」は例のiMacカラーのスケルトン調の小型モデル。単焦点レンズで固定焦点式。しかも、液晶モニターもなく、メモリも内蔵式(2MB)のみとシンプル。だが、パッと見た感じが実にフレーバーな印象で、なかなか好感が持てた。価格は149ドルとまずまずのレベル。
そして、「CyberMax35 MP3」は、名称からも分かるように、上記モデルのMP3プレイヤー機能内蔵モデルだ。もちろんこちらは、メモリカードタイプになっており、ヘットフォンも標準添付されているという異色のモデル。もっとも、デジタルカメラが本来備えているパーツを使えば、MP3化することは十分に容易なわけだが、それを製品化してしまうところがユニークだ。価格は199ドルと、MP3搭載のVGA機としては、それなりに手頃なレベルとなっている。
一昨年のPMAで発表され話題となった35mmカメラ用デジタル撮影アダプター「imagek EFS-1」。それが今回、SiliconFilm社から「e-film」の名称で正式に製品化された。
これは、普通の35mmカメラの中に、フィルムの代わりに装填し、デジタル撮影ができるというユニークなもの。これさえあれば、本機の対応機種であれば、手持ちの35mmカメラがデジタルカメラに早変わりするわけだ。なお、対応機種については同社サイトに掲載されているが、主立った35mm一眼レフはほぼカバーしている感じだ。
ただ、当初は35mmフィルムサイズのCMOS素子と報じられたが、今回製品化されたものは、9×12mmサイズのもの。画素数は130万画素となっている。
今回のパッケージでは、e-Film本体と、そのデータを転送するためのe-boxやe-portがワンパッケージになっている。つまり、e-film自体は内蔵メモリ式で、24枚の撮影が可能になっている。なお、撮影速度は秒間1コマとなっている。
データの転送や記録方法はいくつかあり、同梱のe-portにセットすることで、PCカードリーダーかUSBでデータ転送することができるシステムになっている。さらに、e-boxを使えば、そのデータをCFカードに記録することもできるので、外出先でPCを持っていなくても、CFカードに順次ダウンロードすれば撮影を続けられるわけだ。価格は699ドルを予定しており、今夏の発売を予定しているという。
発表当初は、まだ高画素デジタルカメラがさほどなかったこともあって、きわめて注目度が高かったが、これだけ安価に130万画素クラスのズーム機が入手できるようになった現在では、やや魅力薄な製品という感もある。また、CMOSのサイズが小さいため、35mmカメラにセットしても、望遠撮影しかできない点も気になるところ。だが、用途によっては、普通のデジタルカメラでは撮影できないようなケースもあるため、アイデア次第では結構便利に使えそうだ。
富士フイルムは今回のPMAで、スーパーCCDハニカムを搭載したデジタルカメラを始めとしたデジタルイメージング製品を一挙に公開。会場でもかなり話題となっていた。
なかでも注目度が高かったのが、ハニカムCCD搭載の「FinePix S1 Pro」だ。ブースには実機が数台あったが、手にするのにかなり待たなければいけないほどの人気ぶり。やはり、ハニカム画素数6.1メガピクセルで、しかも価格が4,000ドル以下という点が高く評価されているようだ。
ブースにはS1 Proで撮影されたプリントが多数展示されており、そのクォリティーの高さには目を見張るものがある。また、解像度の高さはもちろんのこと、写真関係のイベントだけに、従来のデジタルカメラが苦手としていた階調再現性の広さにも注目が集まっていた。
また、ブースには「FinePix4700Z」も出品されており、こちらもなかなかの人気を博していた。
今回のPMA取材は、「FinePix4700Z」をメインに使ったのだが、撮影中に質問責めにあうことも多く閉口してしまった。とくに、質問が多かったのが、実際のCCD画素数について。実際に富士フイルムは日米とも、本来のCCDピクセル数を公表されていないこともあって、ライバル他社からもその表記について疑問を抱いているという話が多かった。
このほか、同社ブースでは、130万画素3倍ズーム機「FinePix1400Z」も出品されていた。アメリカ市場をメインターゲットにしたモデルであり、価格的にも499ドルとなかなか手頃なレベル。アメリカ市場は、高画素や高機能よりも、手頃なコストであることが重要な大きなポイントになっているだけあって、実際の市場では高画素機よりも、今後はこのようなモデルが中心となって行くことは確実だ。
MVC-FD95 | |
MVC-FD85 | MVC-FD90 |
ソニーはPMA直前にCyber-shot Sシリーズを3機種発表したが、今回のPMAではさらに、アメリカできわめて人気の高いデジタルマビカシリーズの新モデルを3機種も発表した。
今回の新デジタルマビカに共通した特徴は、フロッピーアダプターを使うことで、メモリースティックへのデータ記録ができる点だ。なにしろ、デジタルマビカも高画素化されており、すでにフロッピーでは数枚しか撮影できず、現実的ではないケースが多くなっており、今回の対応はそれに応えたものだ。
今回のデジタルマビカシリーズのフラッグシップといえるのが、211万画素で光学手ブレ補正機能付きの光学10倍ズーム搭載機「MVC-FD95」だ。本機は85万画素の「MVC-FD91」の後継機であり、「Cyber-shot DSC-D770」に近い業務用途にも耐えるモデルとして企画された本格派モデルだ。
デザインは実に個性的で押しが強く、堂々としたもの。機能的にもほとんどフル機能で、Cyber-shot S70を越えるレベルだ。ファインダーは2.5インチの液晶モニターと液晶ビューファインダーも搭載されており、一眼レフ的な感覚での撮影もできる。しかも、メモリースティックの対応により、211万画素でも撮影枚数の点で不満のないレベルになっており、必要に応じてFDDで撮影することもできるため、使い勝手も良さそう。もちろんパーソナルユースではあまりにヘビー過ぎるが、仕事用カメラとしてはかなり魅力的な実用機といえそう。価格も999ドルと意外に手頃だ。
このほか、デジタルマビカ系では、130万画素3倍ズームの「MVC-FD85」(699ドル)、160万画素8倍ズームの「MVC-FD90」(799ドル)」も同時発表された。これらは従来機よりも横幅が狭くなり、コンパクト化が図られている点が大きな特徴という。
UP-DP10 |
また、スタイリッシュで高画質なパーソナル向け昇華型プリンタ「UP-DC10」を発表。4×6インチサイズの、縁なしプリントが可能なモデルで、縦置きでの使用もできるスペース効率のいいもの。解像度も300dpiと高く、耐久性もオーバーコート式のため、上々だ。さらに、オーバーコート時に、プリントの表面を光沢とマット、絹目調にすることができる点が特徴だ。
ペーパーはロールではなくシートタイプで、最大25枚までセットできる。プリント時間は1枚80秒。インターフェイスはUSBとパラレル。残念ながら、メモリカードからのダイレクトプリントには対応していない。
価格は389ドルと、このクラスのプリンタとしてはかなり手頃なもの。しかも、プリントサンプルを見る限り、画質はクラストップレベルで、表面のテクスチャーもよく、紙もやや厚手のため、仕上がりはまさに銀塩カラープリントに近い雰囲気を備えている。
インクジェット式と違い、縦置きできるため、PCのそばにおいておいてもスペースをとらない点も便利で好感が持てる。日本国内での発売が待ち遠しい魅力的なフォトプリンタだ。
ビクターは事前告知があった新型デジタルカメラをPMAで正式発表した。
本機は、米国名「GC-QX1」、日本では「GC-X1」と呼ばれる、334万画素の2.3倍ズーム機だ。サイズ的は3メガピクセルクラスのズーム機としては、なかなかコンパクトにまとまっており、ボディの質感も高く好感が持てる。
ブースに出展されているものは、まだ試作段階のようで、シャッターは切れるが、記録や再生機能が働かないというレベル。そのため、注目の静止画機能や細かな操作感についても、未知数の段階だったのが残念。
ただ、ブースで触れた感じでは、操作性に関しては、デザイン優先で使い勝手が今ひとつでは……という印象もあった。同社は以前、VGAの10倍ズーム機で一度、デジタルカメラ市場に参入しているが、その後音沙汰がなく、今回は事実上の再参入にあたる。それだけに、その実力が大いに期待されるニューモデルだ。
コダックは今回、新型デジタルカメラの出品はない。
だが、APSコンパクトカメラにVGAのCCDと液晶モニターを付加した「プレビューカメラ」を参考出品していた。
APSの2.6倍ズーム機で、シャッターを押すと、フィルムと同時にCCDでも撮影し、その画像を背面の液晶モニターでプレビューすることができる。しかも、液晶表示がプリント時の仕上がりに近くなるようなアルゴリズムを備えた処理がなされているため、プリント時のイメージをその場で掴むことができるという。そして、ユーザーはそれを見て、プリント枚数をカメラに指定することができる。その情報はAPSフィルムに磁気情報として記録され、プリント時に反映されるというわけだ。
ただし、本機はあくまでもプレビューカメラであり、撮影されたデジタルデータを保存する機能は備えていない。つまり、デジタルカメラとしては使えないわけだ。この点は理解に苦しむところだが、もともとの発想がフィルムカメラ寄りなのと、コストの関係で仕方がないところなのだろう。ちなみに価格は300~350ドルとAPS機としては結構高価なものになっている。この価格なら、いっそ、デジタルカメラを買った方がいいのでは……というのが素直な感想だ。
最後に、かわいいカメラを紹介しよう。
ACHIEVRというメーカーが出品していた、きわめてコンパクトなVGAモデル。価格も78ドルとなかなか手頃なもので、とにかくかわいい。カラーリングも豊富で、写真のようなスケルトンタイプもある。
外観から想像できるように、すでに日本国内でも発売されている某玩具メーカーの低価格モデルの姉妹機。そのため、電源をOFFにすると、撮影されたデータも消えてしまうというわけだが、これだけコンパクトになると、オモチャ感覚で楽しめそう。残念ながら、日本国内での発売は未定だが、アクセサリー感覚で楽しめるモデルとして注目される。
□PMA2000のホームページ(英文)
http://www.pmai.org/
■注意■
(2000年2月7日)
[Reported by 山田久美夫]