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塩田紳二の

LinuxWorld Conference & Expo in New York Cityレポート

Jacob Javits Convention Center
2月1~4日 開催(現地時間)

会場:Jacob Javits Convention Center




●Crusoe搭載ノートPC発見!

 データベースメーカーSybaseのブースに、メーカー名の入っていないノートPCが2台。それは、TransmetaのCrusoueを使った試作機であった。Sybaseは、Transmetacを支援する契約を結び、ワイヤレスネットワーク接続を使ったデータベースアクセスのデモ(Linux上で動作する)を展示したのである。

 展示機では、RedHat版のLinuxが動作しており、ちょっとさわったところ、パフォーマンスはそこそこといった感じだった。推測は難しいが、少なくともPentium II 200MHz以上は達成している印象。

CrusoeノートPC。薄型で、ファンらしきものが見あたらない以外は、ふつうのノートPCと変わらない。銀とグレーの2色あり、キーボード手前部分のデザインが違っている。横に飛び出しているのは、無線LANカードで試作機とは無関係



●サーバー向け中心のハードウェア展示

 これ以外のハードウェアでは、Pentium Xeonの8プロセッサマシンや、RAIDドライブ、高速ネットワーク機器などサーバー向けの機器が中心。

 気になったのは、VXA Technologyのテープドライブ。8mmビデオテープ(テープ自体は、蒸着テープを使用)を使い。独自フォーマットで非圧縮33GB、圧縮時66GBと、最近の巨大化するハードディスクにここしばらくは対応可能な容量を持ち、ドライブがストリートプライスで899ドル程度という。Exa-Bytesのものとはフォーマットが違うとか。

VXAの66GBテープドライブ Pengin Computingの8way Xeonマシン。8つのプロセッサがフロントパネルの後ろに並ぶ


●WindowsをエミュレートするVMware など

 ソフトウェア関連では、LinuxやWindows NTの上に仮想マシンを作り、さまざまなOSを動作させることができるVMwareが出展していた。このソフト、Windows 2000のインストール画面のスクリーンショットが撮れると最近、PC関連の出版社では人気のソフトでもある。仮想マシン内からネットワークを使えるように仮想ネットワークカードの機能を組み込むなど、実用性も高い。

 このほか、古くからUNIX用のオフィスソフトを手がけるApplixwareが、Office for Linux 5.0をデモしていたり、IE、Netscapeに続き、第三のWWWブラウザとの呼び声も高いOperaのデモが、Troll Tech(LinuxのKDEデスクトップ環境で使われているQtというGUIライブラリの開発元)にあるなど、全体としてLinuxのデスクトップ環境も進歩しつつあるようだ。

 なお、日本からは、日本Linux協会などが日本ブースとして展示を行なっていた。

VMwareのブース。狭いが、多くの来場者で混んでいた。画面は、Linuxの中でWindows 98を動かしているところ


●VA Linuxの基調講演

 2日目(2月3日)の基調講演は、LinuxシステムベンダーのVA Linux SystemsのCEO Larry Augustin。前日のLinus Torvaldsほどではないが、多くの観客を集めた。同社は、Linux関連企業では、Red Hatに続いて2社目にIPO(株式公開)を成功させ、業界での注目度は高い。ひとしきりOpen Sourceとビジネスについて述べたあと、同社が協力しているプロジェクトでもあるTrillianのIA-64用Linuxをデモ。

 そのあと、オープンソース情報を提供しているANDOVER NETの買収を発表した。このANDOVER NETは、昨年6月にオープンソースの情報提供サイトであるSlashDotを買収し、IPOを成功させたところ。

 VA Linuxは、昨年、Linux.comドメインを買い取り話題を呼び、さらにオープンソースの情報提供サイトも持っている。同社は、ハードウェア中心だったが、その意味では、サービス系への進出という予兆はあったのだが、すでにIPOを果たしたANDOVER NETの買収とは、ちょっとびっくり。業界では賛否両論という感じ。

VA Linux SystemsのCEO Larry Augustin 舞台にならぶ、ANDOVER NETのメンバーたち。急遽買収が発表された


●ディストリビューション各社の展示

Conectiva Linuxのブース。説明員もラテン系でのりがよかった
 Conectivaは、ブラジルなど南米を中心に人気のあるディストリビューションである。特徴は、やはり南米で使われているスペイン語などに対応したところ。米国では、こうした「ラテン系」住民も増えており、こうした住民向けのテレビ放送もある。意外に米国での人気も高まるのかも。

Open LinuxのCalderaブース。日本語版の紹介のパネルになぜか閉じ鍵かっこだけが……
 CALDERAは、最近国内でも販売開始されたOpen Linuxの開発元。いち早くグラフィックベースのインストーラーを開発し、インストール中にゲームか楽しめるなどの特徴も。

slackwareのブース。開発者自ら、説明にあたっていた。日本のファンの中には思わず記念写真を取る人も
 Slackwareは、初期のところからあるディストリビューションの1つ。このディストリビューションでLinuxを始めたユーザーも多いだろう。しばらく、配布が止まっていたが、昨年、久々に配布が行なわれたところ。復活なるかというところか。

フランスのMandrakeのブース。次期バージョンでは、日本語対応も行なわれるとか
 Mandrakeは、フランスを中心に人気のあるディストリビューション。最新版では、国際対応して、インストール時に表示言語の選択も可能になった。実際、会場でためしたところ、ちゃんと日本語も表示できた。今後の世界各国での展開が楽しみ。

SuSEのブース。Compaqのほか、Motorolaなどとも提携。Power PCにも移植するのだとか。また、配布メディアにDVDを採用
 緑のカメレオンが目立つのがSuSE。これは、ドイツを中心にしたディストリビューションで、ドイツ式に「スゼ」(あるいはスーゼという人も)と読む。最近、Compaqと提携して、やはり世界進出をねらう。

Storm LinuxのStormix社。比較的新しいディストリビューションだが、注目度も高い
 カナダのSTORMEも、インストーラーがグラフィック化されており、Debianをベースにしている。日本人の社員も多く、次バージョンでは日本語対応なども取り入れる模様。

かなり大きいRed Hatのブース。開発ツールで有名なCygnusを買収し話題になったばかり
 Red Hatは、世界的にも人気の高いディストリビューションで、多くの商業用ディストリビューションがベースに採用する(前述のConectivaやMandrakeなど)。昨年より、日本法人も設立され、ようやく国内でも本格的な活動が始まったところ。

Corelのブース。デモは、ブース内のミニシアターが中心で、じっくりとはものをみることができなかった。デモをみる限り、WordPerfect officeはかなり完成しているよう
 Corelは、昨年3月のLinux Worldで、ディストリビューションとLinux版Corel WordPerfect Officeを発表したが、Corel Linuxは米国で出荷が始まり、今回WordPerfect Officeのデモを行なった。

 これで、SUNのStar OfficeやAplixのLinux Officeと併せ、Linux用オフィススウィートが3つそろうことになる。

TurboLinuxのブース
 Turbo Linuxは、日本から登場したディストリビューションといえ国内でも人気が高い。今回はさまざまな機能を展示。


●アメリカのショウに着ぐるみは必須?

 アメリカのショウにいくと、日本のように商品も理解していない、コンパニオンのお姉さんがいない代わりに、着ぐるみを着た人がかならずいてチラシなどを配っている。

 会場では、LinuxのシンボルのペンギンやSuSEのカメレオン(カエルみたい)、Hackerに人気のマンガ“User Freindly”(大きな毛玉というか、隣のトトロの真っ黒黒助といった感じ)、BSDのアイドル悪魔がいた。このほか、トンガラシの格好をした人も。また、会場で宣伝の入ったTシャツの配布は当たり前、中には「現金つかみ取りマシン」まで持ち込んでいるところもあった。

□LinuxWorld Conference & Expoのホームページ
http://www.linuxworldexpo.com/

(2000年2月7日)

[Reported by 塩田紳二]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp