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マイクロソフト、広島大と共同でアクセシビリティリーダー育成キャンプ

マイクロソフト 最高技術責任者 加治佐俊一氏

3月3日 公開



 マイクロソフト株式会社は、広島大学と産学連携で取り組んでいるアクセシビリティリーダー育成の取り組みを公開した。

 広島大学は2004年にマイクロソフトと覚え書きを締結し、障碍者や高齢者でも利用しやすく、使いやすいサービスや製品、環境を提供することができる人財を育成するプログラムを設けている。

 プログラムは5つのレベルに分かれ、アクセシビリティを知っている程度から、障碍者支援ボランティアの概論、実習、指導的立場に立つための知識や技術の学習といった全てのプログラムを学んだ学生は、「アクセシビリティリーダー」として認定される。2006年度には21人、2007年度には51人、2008年度には22人の資格取得者が誕生した。

広島大学 アクセシビリティセンター センター長 佐野眞理子 教授

 広島大学 アクセシビリティセンター センター長・佐野眞理子教授は、「広島大学では以前から障碍者向け教育に取り組んできた。2004年からプログラムを拡充し、正式に学長が認定した認定書を提供するものとなった。リーダー認定はキャリア支援の一環であり、履歴書に資格を持っていることを記載し、自分が学んだことが就職した職場でどう役に立つのか、考えて、話すことができるようにしなさいと学生には話している。今後は、資格が広く社会で認知されていくために、もっとアピールすることなども必要だと考えている」とこれまでの取り組みと今後の課題を話した。

 マイクロソフトでは、独自にアクセシビリティに対する取り組みを行なっているものの、「それだけでは十分ではない部分を埋めるために、産学連携を進めている。今回、公開したのは広島大学との取り組みだが、それ以外にも東京大学との産学連携プロジェクトも実施している」(マイクロソフト・加治佐俊一最高技術責任者)と産学連携にも積極的に取り組んでいる。

 なお、マイクロソフトでは、「障害者」の記述について、害虫など悪い意味がある「害」の字ではなく、差し障りがあるという意味を持つ「碍」を使った「障碍者」という記述を採用していく。

 広島大学との連携によって、アクセシビリティリーダーの認定資格者に対しては、合宿形態で誰にでもやさしいテクノロジの学習、企業のユニバーサルデザインに向けた取り組みや就労について学ぶ「アクセシビリティリーダー育成キャンプ」を実施。2009年は広島大学だけでなく、他の大学の学生も含めた10人の学生が参加し、3月2日から5日まで3泊4日の日程でキャンプが行なわれている。

マイクロソフト自身が進めているアクセシビリティへの取り組み 障碍者を支援するツールとして、一般的なマイクロソフトのソフトを活用した例 マイクロソフトでは、従来は「障害者」としていた表記を「障碍者」へと変更
広島大学と共同で進めているアクセシビリティリーダー育成プログラムの概要 マイクロソフトがアクセシビリティリーダー認定取得者を対象に実施している育成キャンプの概要 マイクロソフトが計画している今後のアクセシビリティへの取り組み

 このキャンプの意義を、広島大学の佐野教授は次のように説明する。

 「大学としては、学内だけでは学ぶことができない最先端技術に触れ、さらにマイクロソフトさんと連携している企業の情報も取得できる。座学が実社会でどう活用されていこうとしているのかを体験する大きなチャンスとなると考えている」。

 今回のプログラムでは、マイクロソフトでの研修に加え、富士通、独立行政法人 高齢・障害者支援機構 東京障害者職業センター、TOTOなど外部の団体の取り組みを学ぶことも研修プログラムに含まれている。

 今回公開されたマイクロソフト内部の研修では、Visioのブレインストーミング機能を活用しながら、アクセシビリティリーダーについて考える授業が講師から公開され、参加していた学生はその内容を熱心に聞き入っていた。

 マイクロソフト自身のアクセシビリティへの取り組みについて、加治佐最高技術責任者は、「Windowsの基本機能としてアクセシビリティ機能を持つために、1988年から取り組みが開始され、具体的にはWindows 95から機能として取り込まれるようになった。Windowsのマウスによる操作、グラフィカル機能の拡充によって、視覚障碍者にとってはギャップが広がってしまったといった声もあるが、マイクロソフトとしてはOSの基本機能として、障碍者と健常者のギャップを埋めていく機能を埋め込んでいく努力を続けていかなければならないと思っている。現在開発中のWindows 7についても、タッチインターフェイスのように視覚障碍者には使いにくい機能も入っているが、こうしたUIの採用は時代の趨勢でもある。このギャップを埋めていくために、現在進行形で努力を続けている」と説明している。

 Windowsの基本機能の拡充以外にも、ハードやソフトなど障碍者向けの製品を作っているメーカーとの連携、今後提供されるクラウドの先のサービスを障碍者が利用するためのコミュニケーション補助の推進、産学連携プロジェクトや自治体、NPOとの連携なども進めている。

 この3月には、発達障害者の学習を支援するためにPowerPointを活用する例をサイトで公開する計画で、4月には新たな自治体との連携の発表、5月には東京大学との産学連携プロジェクト「DO-IT JAPAN2009」の参加者募集、6月にはDO-IT JAPAN2009の開催などを予定している。

3月に公開開始予定の特別支援教育向けに拡張機能をもったPowerPoint。登録された1,162文字の書き順をアニメーションで紹介するといった、楽しみながら学べる機能を持っている
3月2日から5日まで実施された第5回アクセシビリティリーダーキャンプの授業例。マイクロソフト内で、Visioを使ってブレインストーミングを行なうための実習が1時間30分にわたって行なわれた

□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□アクセシビリティ リーダー プロジェクトのページ
http://www.microsoft.com/japan/enable/al/default.mspx
□広島大学のホームページ
http://www.hiroshima-u.ac.jp/
□アクセシビリティ リーダー育成プロジェクトのページ
http://home.hiroshima-u.ac.jp/~hiuniv/al/
□関連記事
【2007年3月15日】マイクロソフト、PCの使い勝手向上への取り組みを解説
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0315/ms.htm

(2009年3月4日)

[Reported by 三浦優子]

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