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第10回 HDDを搭載した「Eee PC 900HA」速攻レポート




「Eee PC 900HA」


 24日に発売されたASUS Eee PC 900HA製品版をレビューする。900HAは、8.9型液晶の900シリーズとしては初のHDD搭載モデルとなる。日頃、8.9型でSSD搭載の901-Xや10型でHDD搭載の1000H-Xを使っている筆者にとって、とても気になる存在だ。2台と比較しながら、いろいろ触ってみたい。

●HDDだけではない、Eee PC 901との違い

 冒頭で書いたように、900HAの一番の売りは8.9型液晶の900シリーズとしては初めて160GBのHDDを搭載したことだ。SSDの搭載が900シリーズの特徴だっただけに、かなり大きな変更点だ。

 そのほかの仕様は、Atom N270プロセッサ、メモリ1GB、1,024×600ドット(WSVGA)液晶、Windows XP Home Edition(ULCPC版)など、従来の900シリーズとCPUスペックを除いて概ね共通だが、細かいところでは、内蔵カメラが130万画素から30万画素へ、微妙にスペックダウンしている。

付属品一覧。本体のカラーバリエーションに、このプラムレッドが加わった インスタントキーやタッチパッドの周囲に金属が無い分、スッキリした感じだ ネジを4本外せば、メモリとHDDにアクセスできる。HDDはSeagate「Momentus 5400.5」
本体左側面。奥にあったロックポートが無くなっている 本体右側面。電源入力があった場所にロックポートがある。電源入力は後ろ左側に移動した 900HA(左)を901-Xと並べるとかなり違うことがわかる

 届いてから2日間使ってみて、一番違いを感じたのはキーボードだった。キートップのデザインも従来の900シリーズから変わっており、1000H-Xのキーボードをそのまま小さくしたような感じだ。

 刻印された文字は大きめで、数字の「1」、「6」と上下キーは白黒反転されている。そして、キータッチのフィーリングが随分変わった。まずストロークが深く、結構押し込む必要がある。更に、ピッチ自体は同じなのだが、キートップの面積が気持ち広くなっており、結果、横のキーに触れてしまうことが増えた。個人的には、従来の901-Xの方が入力しやすい。日頃901-Xを使っている筆者だけに余計そう感じるのだろう。この点については慣れの問題だと思われる。また901-Xもそうなのだが、キーボードが全体的にたわんでいるのはマイナスポイントだ。

900HAのキーボード(左)。901-Xと比べると『@^\;:,.[]』キーのサイズや文字サイズ、Enterキーの形、そしてキートップの形など相違点が多い

 違いがわかりやすいよう、バッテリ駆動時間(mAh)、液晶パネル、サイズ/重量、価格などを表にまとめると以下の通りだ。

機種名901-16G 900HA1000H-X
液晶8.9型8.9型10型
ストレージSSD 16GBHDD 160GBHDD 160GB
Bluetooth×
バッテリ駆動時間8.1時間4.5時間6.9時間
サイズ
(mm、幅×奥行き×高さ)
225×175.5×22.7~39225×170×20~34266×191.2×28.5~38
重量約1.1kg約1.12kg約1.45kg
店頭価格例54,800円44,800円54,800円

 表をみるとわかるように、900HAは、SSDモデルの901-16Gと比較して若干であるがサイズは小さく、重量はほぼ同等で価格差は1万円だ。HDDモデルの1000H-Xは液晶パネルが10.2型と大きくなる分、重量も増え、価格差は更に開く。ただ残念なことに、900HAは、バッテリ駆動時間が一番短くなっている。これは付属のバッテリが901-16Gや1000H-Xが6,600mAhなのに対して、900HAは5,200mAhになっているからだ。バッテリ全体のサイズも小さくなっており、従来機種のものは流用できない。

1000H-X(左)と比べると、大きさは異なるが、キーボードの雰囲気が似ている バッテリの比較。従来機種用は6,600mAh(黒)、900HA用は5,200mAh(白)。大きさは同じに見えるが900HAのバッテリの方が小型だ。電圧は同じ7.4V

●「StarSuite 8」のバンドルがなくなる

 ソフトウェア面で変わった点は、「StarSuite 8」が付属しないこと、そして「Norton Internet Security(60日期間限定)」がプリインストールされ、初回起動時に設定するようになったことだ。

 筆者は「StarSuite 8」は、OpenOfficeがあるので不要と思っているので、削除する手間が省けてありがたい。デフォルトの壁紙も変更され、随分落ち着いた雰囲気になった。これ以外特に変わった部分も無く、ソフトウェア面ではEee PCシリーズとして統一性がとれている。

 HDDは160GBで、Cドライブ79.88GB、Dドライブ61.20GB、EFIとして39MB、そしてリカバリ用のイメージに7.81GB割り当てられている。Cドライブに余裕があるので、Dドライブは空の状態だ。

 リカバリイメージに関しては、従来通り付属の「900HA XP サポートDVD」にも入っている。もし他のOSをインストールしてHDDの構造を変えてしまったり、ドライブをSSDと交換しても、USB接続のDVDドライブさえあれば完全に初期状態に戻すことができる。

工場出荷状態のデスクトップ。StarSuite 8のショートカットが無くなり、Norton Internet Securityのショートカットが増えた。また壁紙も変更されている
HDDのパーティション構成。FAT32の7.82GBにリカバリイメージが入っている。CドライブとDドライブの容量の割り振り方は、ちょっと中途半端な気がする

●ベンチマークテストはネットブックの水準

 ネットブックは、仕様面での制約がきびしいため、ほとんど速度差は出ないと予想されるが、念のためHDBenchとCrystalDiskMark 2.2を使って軽くベンチマークテストを行なった。

 結果は予想通り。手持ちの機材では、900HAのHDDがSeagate Momentus 5400.5、1000H-XのHDDはSeagate Momentus 5400.4と異なるので、そこだけ値が違っているものの、全体的には瓜二つの状態だ。

HDBench 900HAの結果 HDBench 1000H-Xの結果。HDDのみ機種が異なるためか、多少結果に差が出ている。そのほかの項目は、ほとんど変わらない
CrystalDiskMark 2.2 900HAの結果 同じく1000H-Xの結果

●SSD化とWindows 7をテスト

 900HAは普通の2.5型HDDを搭載しているため、簡単にSSD化できる。そこでSSD化とWindows 7ベータのインストールを試してみた。SSDは手持ちの「SAMSUNG MMCRE64G5MPP-0VA」を使った。低価格の64GB MLCタイプで、公称値はリード90MB/sec、ライト70MB/secという、ちょっと前の製品だ。

【お詫びと訂正】初出時にSSDの製品名を誤って記載しておりました。お詫びして訂正させていただきます。

 ブートデバイスの順番を変更しようとBIOS画面を見たところ、CPUのメニューに「Hyper-threading ON/OFF」する項目が無くなった程度で、基本的には他のEee PCと同じ。HDDの交換は、冒頭の写真にもあるように、裏のネジを4つ外し、HDDを取り出し、マウンターを取り付けて戻すだの簡単な作業となる。

 Windows 7のインストールは約15分。やはり速い。デバイスマネージャを見たところ、900HAでは無線LANのデバイスが認識され(デバイスマネージャを見ると「Atheros AR5007EG」となっている)、ACPIと有線LANのデバイスのみ組み込まれなかった。

 はじめから無線LANを認識した関係で、インストール時、SSIDを選択する画面が表示され、起動直後からネットワークに接続された状態になる。組み込まれなかったドライバは、リカバリDVDから有線LANドライバ、ACPIドライバのSETUP.EXEをそれぞれ実行すればOKだ。この状態で機能しないファンクションキーは音量とディスプレイの切り替えぐらいで、ほぼ前回の901-Xでのテストと同じ状態になった。

Windows 7のデバイスマネージャ。イーサーネットコントローラーと不明なデバイス(ACPI)のみWindows 7標準のドライバが未対応だ Windows UpdateにGMA 950の最新ドライバがあった。前回記事を書いた時にはこのUpdateは無かった。最近になって登録されたのだろう
Windowsエクスペリエンス インデックス。前回試した901-Xは、「プライマリーハードディスク」が2.0だったが、900HAは1000H-Xと同じ5.9になっている。ほかは2.2/4.4/2.1/3.0とあまり変化なし CrystalDiskMark 2.2の結果は、全項目で初期搭載のHDDを上回った 32GB SSDにXPをリカバリした状態。CドライブDドライブ共に12.92GBとなっている。EFIの容量は同じだが、リカバリ用のパーティションはなぜか半分近くに減っている

 メモリは増やさず1GBのままで使ってみたがSSD化の効果もあってか、結構快適に動く。Windows 7で改善されたユーザーインターフェイスにも慣れてきたので、XPに戻りたくない気分になるほどだ。しかし、XPへ戻ると、動作のキレがいいので、どちらがいいかは微妙なところではある。

 ついでに、SSDに換装した状態で、「900HA XP サポートDVD」からリカバリしてみたところ問題無くリカバリされた。

 もちろんCドライブとDドライブの容量や割り振り方もも変わっている。詳細は画面キャプチャを見て頂きたいが、リカバリプログラムがドライブの容量などを判断し調整しているのだろう。

●人に勧めやすくなった900HA

 これまで、900系のEee PCは、901-Xは4GB、900は8GB、901-16Gは16GBと、Cドライブの容量が少なく、運用にはある程度知識が必要なため、正直初心者には勧めにくかった。とはいえ、HDD搭載の1000H-Xは、大きく重い(約1.45kg)、というユーザーも多かったと思う。900HAは、うまく、その中間を埋める存在になっている。

 900HAは、901にHDDを搭載したものではない。4G-Xの色合いを濃く残していた900とも異なる。あえて言えば、1000H-Xの液晶を8.9型にし、それに伴いボディやキーボードの小型化、そしてBluetoothなどあまり使われない機能を削除したという印象を受けた。

 1000H-Xの廉価版的な面もあるが、主な機能やベンチマークテストでは差はない。HDD搭載のEee PCを選ぶのであれば、バッテリ駆動時間は劣るもののサイズを優先して900HAとするか、画面が大きくキーボード入力しやすい1000H-Xを選ぶか、ユーザーの好みでチョイスして良いだろう。

 901に比べると、バッテリ駆動時間の短縮やBluetoothの非搭載というデメリットがあるが、HDD搭載によって、初心者には使いやすい製品となった。また、慣れたユーザーに取っても、SSDの拡張が専用製品に限られる900系に比べ、900HAは、2.5インチサイズのSSDへの換装が簡単なので、最新のSSDを組み合わせて使うという楽しみもある。

 Eee PC初期の構想からは、ややはずれてきた気もするが、現時点で市場から求められている「わかりやすく、安いノートPC」という要求に対しては、900HAうまく対応している。広い層に安心してお勧めできるネットブックと言って良いだろう。

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【1月21日】ASUS、160GB HDDを積んだ「Eee PC 900HA」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0121/asus.htm
【1月20日】【本城】Eee PCでWindows 7を試してみた
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0120/honjyo009.htm
ネットブック/UMPCリンク集(ASUSTeK)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/umpc.htm#asus

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(2009年1月26日)

[Reported by 本城網彦]


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