Macworld SanFrancisco展示会場レポート
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会期:1月6日~9日(現地時間)
会場:San Francisco The Moscone Center
2009年のMacworld展示会場は、Appleなどがブースを構えるサウスホールと、地下通路で連結しているノースホールが使われていた。昨年のサウスとウエストという組み合わせにくらべると展示スペースそのものは縮小した感じはあるが、ホール間が離れていないことで、展示を見ることのみを目的に訪れる来場者などにとっては使い勝手がいい。ウエストホールは、オープニングの基調講演と各種カンファレンスなどに使用された。
世界的な不況ばかりが要因ではないにせよ、今年はAdobeやBELKINなど常連かつ大手でも出展を見送った企業が多い。当初予定よりは出展規模を縮小したGoogleなどの例もあり、準備段階でもホール全体のフロアプランが何度も書き換えられていた。ホール内にぽっかりと空いたスペースなどは、直前で出展を見合わせたところなのだろう。そうした目で見渡せば、各社の展示自体にも企業の節約意識が垣間見える2009年のMacworldだった。
Macworldを主催するIDGはAppleの出展がなくなる2010年もMacworldを継続して開催する意向で、すでに大手の何社かは来年以降も出展を行なうことを明らかにしている。その一方で同時期に開催されているInternational CESへと出展企業の一部がシフトするのではないかという見方もあるようだ。不穏なところでは、Apple自体がCESへの出展に動くのではという説までも飛び出している。
IDGの主催とはいえMacworldである以上は、Appleはホストとしての役割を果たさなければならない。そのことがAppleの負担になっていることは紛れもない事実で、それならばより気楽なInternational CESへというのは、理屈としては成り立つ推論である。もちろんこれらは現時点では噂や推測の域を出ない話であり、2010年以降のMacworldやAppleの動向、そして出展各社の動きなどは今後の推移を見守っていくしかない。
本稿では、そうした製品以外の話題も少なくなかった展示ホールで目にしたさまざまな製品やサービスをピックアップして紹介する。
●Mac Editonが用意されるLogitech
日本市場では数年前に縮小してしまったLogitech(日本でのブランド名はLogicool)のMac向けキーボード製品だが、ここ米国では昨年から「diNovo Edge」、「diNovo Keyboard」の2モデルがMac Editionとして発売されている。いっぽうマウスなどWindows/Mac共用の製品として販売されている製品は日本でも数多くあり、Mac OS X用のソフトウェアをインストールすることで高機能な入力デバイスとして利用できる。市場規模を考えるとWindows向け製品のようにJIS配列の製品を用意しての市場流通というのは難しいかも知れないが、ASCII配列を好むMacユーザーは決して少なくないだけに、オンラインストア専売のような形でも、日本市場向けにMac向けキーボード製品の再投入があればいいと期待してしまう。
2006年以来、Macworldに出展しているLogitechのブース | 「diNovo Edge Mac Edition」。米国内での参考価格は159.99ドル | 「diNovo Keyboard Mac Edition」。米国内での参考価格は99.99ドル |
□Logitech(米国サイト)
http://www.logitech.com/index.cfm/home/&cl=us,en
●アナログ信号をiPhoneへ直接転送
Streaming Networksの「iRecord Pro」。RCAのアナログ入力によるソースをiPhone/iPodのDockコネクターを介して変換、転送できるコンバータユニット。MacworldでのデモということでiPhoneがターゲットとなっていたが、転送先はUSB接続があるデバイスに幅広く対応している。アナログソースから映像を取り込むコンバータユニットは他にもいくつかあるが、iPhoneなどに直接書き込めるのがセールスポイントらしい。トランスコードは720×480/576の解像度で30fpsまたは24fps。H.264に対応している。トランスコードはリアルタイムに行なわれるので、取り込みに要する時間はソースの再生時間に準ずる。
Streaming Networksの「iRecord Pro」 | MacやPCを介さず、ターゲットとするデバイスに直接データを記録できる |
□Streaming Networks(英文)
http://www.streaming-networks.com/
□製品情報(英文)
http://www.irecord.com/
●いろいろ壁掛けマウンター
まるでUFOのような形をしていた旧AirMac Extreme BaseStationでは壁掛けできるマウントオプションが標準で用意されていたのだが、IEEE 802.11n Draftを採用した現行の四角いモデルにはそうしたオプションがない。そうした隙間事情に答えを出す製品がこれ。AirMac BaseStationに対応する「Air Mount」をはじめ、TimeCupsule、AppleTV、Mac miniなどをそれぞれ壁掛けしてしまうマウンターが発売された。H-Squaredが出展している。同社のサイトには日本語ページも用意されており、日本への発送も可能だとのこと。現時点で国内代理店はないが、検討中とのことだ。
現行のAirMac Extreme BaseStationを壁掛けにするマウンター「Air Mount」 | もともと壁掛けオプションがあったBaseStationにとどまらず、TimeCupsuleやApple TVに対応する製品も用意されている |
□H-Squared製品情報(英文)
http://h-sq.com/
●15型MacBook Pro用ドッキングステーション
Macworldの展示会場レポートではたびたび紹介しているBookEndz。言うなれば非純正のドッキングステーション。昨年10月にリニューアルした15型MacBook Proの対応製品が早速展示会場に登場した。特徴は新たに採用されたMini DisplayPortだけでなく、DVIとVGAのポートも用意されているところ。元の入力が1つなので同時使用はできないが、変換アダプタを使うことなく現在のモニタが利用できる。13型のMacBook向け製品と一緒に2月頃から販売を始めるという。
15型のMacBook Proに対応したBook Endz。インターフェースが左側面に集中したことで旧モデルのように両側から挟み込むタイプからややシンプルになった。DVIやVGAポートも用意されている |
□Book Endz(英文)
http://www.BookEndzDocks.com/
●メガネのいらない立体視スクリーン
ゴーグルではなく、ディスプレイ装置の前に偏光スクリーンを置くことで立体視を行なうWazabeeというテクノロジー。iPhone/iPod touch向けに「3DeeShell」というケースが発表されていた。現在はプロトタイプのデモということで、偏光ガラスはスライドできるようになっていて、元のソースと立体視を確認できる。SPATIAL VIEWの提供するアプリケーションでコンバートしたコンテンツの立体視が可能となる。
写真ではちょっと立体感が希薄だが、実際にその目で見るとなかなかのもの。指さしポーズは立体視デモのお約束だ。他にMac向けの偏光スクリーンなども展示されている |
□SPATIAL VIEW(英文)
http://www.spatialview.com/en/
●超小型のプロジェクタ
MicroVisionのコンパクトなプロジェクタ「SHOW WX(コードネーム)」。118mm×60mm×14mmという本体サイズで、アスペクト比16:9、WVGA(848×480)の投影ができる。Macworldということで、iPhoneに保存されている映像をソースとするアプリケーションを使ってデモを行なっていた。会場が明るいこともあり写真では見にくいが、6インチから100インチクラスまでは投影が可能とのこと。International CESにも出展しており、CESでは3Mのブースで紹介されていた。現時点では名称もコードネーム。価格、発売時期等は未定とのこと。
横にあるiPod touchとさほど変わらないサイズ。この大きさでWVGA解像度の投影が可能 |
□MicroVision(英文)
http://www.microvision.com/
□製品情報(英文)
http://www.microvision.com/showwx/
●充電専用にできるiPhone/iPod用充電ケーブル
PCのUSBポート経由で充電はしたいけれど、いますぐ同期の必要はない。そんなとき、単純な仕組みだが実際に使ってみるとかなり便利そうだ |
これは持っているとかなり便利そうなケーブル「Tune Blocker」。MacやPCのUSBポート経由でiPhoneやiPodを充電しようとする場合、自動的にiTunesが起動してしまって面倒だった経験のあるユーザーは多いはず。この「Tune Blocker」を使うと、スライドスイッチの切り替えで「充電のみ」と「充電と同期」を選択することができる。2種類のケーブル長で3月に販売が開始される予定。
●ファンレスで柔らかい冷却台
一見、鍋敷きのようだが、実はハイテク製品の「ThermaPAK」。International CESでも出展されている |
ノートPC向けの冷却台と言えばアルミニウムとクーリングファンが定番だが、これはファブリックな「ThermaPAK」。パッドの内部にある粉末の素材が液化することでPC底面の熱を吸収する。PCを離して常温に戻れば再度粉末化するHeatShiftテクノロジーを採用しているとのこと。電源やファンなどを使用しないエコロジーな製品として紹介されている。
●15型MacBook Proも非光沢に
写真での見た目でもかなり違うのがわかるはず。交換後はMacBook Proのロゴがなくなるのはちょっと残念 |
ブースレポートでも紹介した、15型MacBook Proの光沢液晶を非光沢タイプに換装するサービス。本来はPCから家庭用ゲーム機まで幅広く修理やアップグレードを受け持つ業者とのこと。換装費用は199ドル。全米において、一晩で作業を行なうという。
●その他
GRIFFIN Technologyの「Air Curve」。スピーカーが内蔵されているiPhone専用のDockだ。ロードホーン方式にすることで、10dBほど音声出力が増幅されるという。iPhoneの仕様上、モノラル出力。無電源のパッシブ方式である | Macworld初日、街角に置かれている新聞販売機のなかでは、「San Jose Mercury News」のこんな記事が一面を飾っていた |
●日本発のiPhone App
「ZEPTOPAD」や「ZEPTOLINER」などのiPhone Appを開発、提供するユビキタス・エンターテインメントがMacworldへ初出展。西海岸をクルマで移動中に車内で開発されたばかりという新作「i書道(iShodo)」が1月4日のリリース以降、App Storeで順位を上げているということで、急遽手書きのポスターを作ってPRしていた。このブースでは同社だけではなく、日本からやってきたiPhone Appの開発者が、入れ替わり立ち替わりプレゼンを展開して日本生まれのiPhone Appを来場者に紹介していた。
こうした日本のiPhone App開発者は、TypePadなどで知られるSix Apartの協力により同社の会議室を使用して、米国のPressやBloggerにもPRする機会を持つなど、積極的な活動を行なっていた。
□Macworld Conference&Expoのホームページ(英文)
http://www.macworldexpo.com/
(2009年1月13日)
[Reported by 矢作 晃]