11月5日　開催

　マイクロソフト株式会社は11月5日、開発者向けイベント「Microsoft Developer Forum 2008」を開催した。米Microsoftのスティーブ・バルマーCEOが登場し、開発者向けにプレゼンテーションと質疑応答を行なった。

　バルマーCEOは前日に来日し、日本には2日間のみ滞在。一部の個別取材に対応したようだが、公の場に登場したのはDeveloper Forum 2008のみだった。

　プレゼンテーションの冒頭、バルマーCEOは、「さまざまなデバイスが登場し、インターネットが活用されてはいるが今でもなお、ソフトは中心にある。デバイスに魔力を与え、魅力的にするのはソフトの力だ」とソフトウェアの重要性を強調した。

　その上で、クラウドと呼ばれる、インターネット上のサービスからさまざまなアプリケーションを利用する時代においても、ソフトウェアを開発するためのプラットフォームが重要な存在であり、米国で開催された「PDC 2008」で発表したクラウド用プラットフォーム「Windows Azure」について、「クラウド時代のプラットフォームとして第一級のコンセプトをもったものだ」と持ち上げた。

　同様のコンセプトのクラウド向けプラットフォームは、Google、amazon.comも開発を進めているが、「さまざまなデバイス、軽量のアプリケーションから大規模エンタープライズシステムまでの開発が包括的に行なえるツールを提供しているのは我々の強み」と、開発環境が整っている点がクラウドコンピューティング時代においても大きな強みとなっていくと説明した。

　その一方で、「世界中、全てのシステムが一気にクラウドに移行するわけではない」とも釘を刺した。段階を踏んで移行が進んでいく中で、徐々に移行が進むとの見解を示した。

Officeシリーズがリッチなユーザー体験を提供する	Windows Azureによるクラウドプラットフォーム	既存のアプリケーションプラットフォームと合わせて選択と柔軟性を提供

●Q&Aでは技術者のモチベーションやXbox 360に言及

スティーブ・バルマーCEO

　プレゼンテーションの後は会場に集まった開発者からの質問を受けた。

　会場から、「クラウドコンピューティングなど新しい可能性が急速に広がっていることから、いくら開発効率の高いツールが提供されても、それを上回るスピードで環境が進展し、いつまでたっても追いつけないのでは?」という質問があがると、ツールのさらなる機能強化などと共にソフトウェア業界には新たな考え方が必要であるとの見方を示した。

　「我々の競合であるセールスフォースドットコムのサービスはアプリケーションの上に企業が必要なものを載せ、効率的に必要なシステム構築が行なえることで、アプリケーションが一種の開発プラットフォームとしての役割を果たしている。すでに評価されているアプリケーションをプラットフォームとして活用することで、クラウドをより利用しやすく、効率的にアプリケーションを構築できる。こうした試みを業界挙げてしていくべきではないか」と答えた。

　また、「日本ではコンサルタントやプロジェクトマネージャといったシステム開発の上流工程に携わる技術者が重視され、実際のプログラム開発を行なう技術者はなかなかモチベーションが保てない。マイクロソフトはどのように技術者のモチベーションを高めているのか?」という質問があがると、ソフト会社のトップらしい率直な回答を述べた。

　「マイクロソフトの技術者の場合、自分達が作ったものがどう使われているのか間近で見るチャンスがあり、他のソフトウェア会社よりは恵まれていると思う。ただし、ソフト開発会社にとっては規律の遵守、開発部門の強化、研究強化という3つの要素を、どうバランスよく進めていくのかは難しい課題。ある時期には規律が甘くなり、開発者の意見が尊重された結果、製品完成時期が予定よりも延びてしまう。逆に規律ばかり厳しくしすぎると、その期間にリリースされたソフトはつまらないものばかりになる。このバランスを保つためには、ユーザーが完成したソフトをどれだけ大切に使っているのかという原点に立ち戻って考える必要がある。また、マイクロソフトの場合には、開発者のモチベーションが下がっていると感じられた時は私が怒鳴るようにすることで、モチベーションが瞬時にあがるという特別な方法もある」。

　ゲーム開発者からは、「Xbox 360の新サービス『コミュニティゲームズ』が日本で開始されたことには感謝したい。ただ、その一方で日本ではXbox 360は依然として苦戦を続け、米国ではXNA Game Studio 3.0でZune向けゲームの開発ができるようになったのに、そのZuneは日本で発売されていないといった状況の違いもあり、今後マイクロソフトとしては日本でのゲーム戦略をどう考えているのか?」という率直な質問が飛びだした。

　それに対しバルマーCEOは、「Xbox 360については、ベストを尽くしているにもかかわらず日本でのシェアは依然低いままだ」と苦笑した。「ただ、ゲームのプラットフォームとしてはXbox 360だけでなく、PC、Windows Mobileという2つも重要なプラットフォームだと考えている。ゲームの中にはPCでゲームする方が向いているものもあり、Xboxのさらなる発展に努力していくが、それ以外のプラットフォームについても展開を強化する」と話した。

□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□Microsoft Developer Forum
http://www.microsoft.com/japan/powerpro/mdf/

(2008年11月6日)

[Reported by 三浦優子]