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TSMCシンポジウムレポート

液浸露光で28nmを加工した微細なSRAMセルを試作

「TSMCテクノロジー・シンポジウム」の講演会場風景

10月20日 開催

会場:パンパシフィック横浜ベイホテル東急



 半導体ファウンドリ(受託生産)サービスの最大手企業である台湾TSMCの日本法人TSMCジャパン株式会社は20日、顧客向けの技術講演会「TSMCテクノロジー・シンポジウム」を開催した。同社は毎年秋に、顧客向けの技術講演会を日本で開催しており、今回は第11回にあたる。

「TSMCテクノロジー・シンポジウム」のプログラム

 当日は午前中に台湾TSMC幹部が主要な技術の動向を説明し、午後にはシンポジウムとは別に報道関係者向けの記者会見が開催された。本レポートでは、両者の概要をご報告する。なお技術講演会は今回、報道関係者を含めて撮影と録音が一切禁止されていた。このため写真の非常に少ないレポートとなっているが、どうかご容赦されたい。

 講演会ではTSMCジャパン代表取締役社長の小野寺誠氏が「Welcom & Japan Update」のタイトルで開催の挨拶を述べた。小野寺の挨拶によると、シンポジウムの来場者はTSMCが招待した方に限定されており、10月17日時点での登録者数は594名、所属社数は130社だった。招待者限定のシンポジウムなのは過去と同様であり、TSMCテクノロジー・シンポジウムの開催は、事前には一般に広報されていない。

●半導体産業はファブレスとファブライトに向かう

 続いてTSMC本社の会長(President)兼最高経営責任者(CEO)を務めるRick Tsai氏が、「Corporate Overview & Business Update」と題して講演した。始めに半導体市場の動向を説明した。'85年~'95年には年平均で21%もの急激な成長を遂げてきた半導体市場だが、'95年~2005年には年平均5%成長、2005年以降は同6%成長とゆるやかだが確実な成長トレンドへと変化した。ただしファブレス半導体企業に対する投資は依然として活発だとした。

 現在、半導体の市況は厳しい状態が続いているが、市場拡大の機会はまだ十分にある。コンピュータ、ワイヤレス、コンシューマ、ワイヤライン、そのほかの分野で成長するとの見通しを示した。世界の地域別では、北米と西欧、日本の先進諸国の比重が減少し、アジアそのほかの地域(新興国)の比重が増していると述べていた。例えば2008年におけるPCの世界出荷台数の40~45%をアジアそのほかの地域が占める。携帯電話機だと、世界出荷台数の約3分の2を、アジアそのほかの地域が占めるようになってきた。

 製品別では、メモリを除けば半導体市場は最近でもかなり高い成長を実現してきたと述べた。2001年~2007年の世界半導体市場(メモリを除く)の年平均成長率は数量ベースで13.6%、金額ベースで9.3%だった。

 このように依然として高い成長を達成してきた半導体産業だが、研究開発投資コストの著しい増加が大きな負担となってきた。最小加工寸法が0.25μmの半導体製造技術開発に必要な費用を仮に「1」とすると、最小加工寸法が45nmの製造技術の開発費用は「12」、すなわち12倍に達している。生産設備投資負担の増大も著しい。300mmウェハを月間3万枚処理する生産ラインを構築するための費用は、90nm技術ですでに25億ドルに達している。これが32nm技術になると、2倍の50億ドルに増加すると予測していた。

ファブレス半導体企業への投資額推移
半導体製造技術の開発投資額推移(最小加工寸法0.25μmを「1」とした相対値)
設備投資金額の推移

 製造技術の開発負担と設備投資負担の増大により、設計と製造の両方を担う垂直統合型の半導体メーカー(IDM)では利益率が低下しているとTsai氏は述べた。2004年には平均すると21%の営業利益率だったのが、2007年には16%に低下したという。TSMCのような半導体ファウンドリに生産の一部を委託することで、IDMは全体として設備投資を軽減する傾向にある。「ファブライト」または「アセットライト」と呼ばれる方向である。

●将来の露光技術はEUVと電子ビームの両方に期待

 続いてTSMCのY.J.Mii氏が「Technology Overview & Outlook」と題して講演した。TSMCは最先端の半導体として45nm技術と40nm技術の半導体製品を量産中である。45nm技術で米QualcommのCDMA携帯電話用半導体の量産を始めたのに続き、40nm技術で米AlteraのFPGAデバイスの量産を始めた。

 40nmプロセスには低消費電力版の40LPと高性能版の40Gがある。40LP技術は1層多結晶シリコン、10層金属配線(銅配線とExtreme Low-k膜、kは2.5)、ひずみシリコンなどの要素技術で構成される。SRAMセルの大きさは0.242平方μm、論理ゲート密度は1平方mm当たり200万ゲートである。40G技術は多結晶シリコン/シリコン酸化窒化膜、銅配線とExtreme Low-k膜、ひずみシリコンなどの要素技術で構成される。

 45nm技術と40nm技術の半導体製造にはいずれも、ArFレーザーの液浸露光技術を使用している。すでに良好な歩留りを得ており、欠陥密度を下げていく習熟曲線は過去の世代よりも短期間で低い欠陥密度に達した。20社を超える顧客企業が現在、45/40nmプロセスを利用した半導体製品を設計中である。

 次世代の32nmプロセスは、高性能版の32G技術を2009年第4四半期~2010年第3四半期に量産化する。40G技術をベースに改良を施す。低消費電力版は32nmを省いて28nmプロセスの28LPT技術(注:Tはトリプルゲート酸化膜の意味)へと移行する。量産開始は2010年第2四半期~2011年第1四半期になる。28nmプロセスでは高性能版の28HPも容易する。2010年第3四半期以降の量産開始となるもよう。

 高性能版の28nmプロセスである28HPでは、TSMCとしては初めて、高誘電率ゲート絶縁膜と金属ゲート電極のプロセス(High-k/Metal-Gateプロセス)を導入する。2MbitのSRAMセルアレイを試作しており、電子顕微鏡写真を講演で示した。SRAMセル面積は0.15平方μmである。静的雑音余裕(SNM)は電源電圧が0.9Vのときに210mVを超えており、十分な雑音余裕があることを見せていた。PBTI (Positive Bias Temperature Instability)測定(電源電圧1.26V)による寿命は10年を超えており、トランジスタ・レベルでは実用的に十分な寿命をすでに達成している。

 またさらに微細な22nm技術によるFinFETとSRAMセルを試作し、電子顕微鏡写真を示していた。SRAMセルの面積は0.125平方μmと非常に小さい。また静的雑音余裕を見積もるためのバタフライ曲線の講演スライドも見せていた。

TSMCのリソグラフィ技術ロードマップ

 そして40nm以降のプロセス技術の要となる、リソグラフィ技術のロードマップを示した。28nmプロセスまではArFレーザーと液浸露光の組み合わせで実現する。既存技術の延長である。その次の22nmプロセスでは、液浸露光とEUV(Extreme Ultra-Violet)露光、マルチ電子ビーム直接描画が争うという構図である。その次の15nmプロセスになると液浸露光は限界に達し、EUV対電子ビームという図式になる。

 午後の記者会見には、TSMC本社CEOのRick Tsai氏と日本法人社長の小野寺誠氏が出席した。始めに小野寺氏が、TSMCの現在の組織図を説明した。TSMCは全体的にフラットな組織となっており、CEOのRick Tsai氏が直属上司となる部門が非常に多い。この組織だとTsai氏の業務量が膨大なものになってしまいそうで、いささか心配である。

 さてそのTsai氏だが、記者会見で述べた内容の大半は午前中の講演のダイジェスト版であり、ここでは省略する。ただ、生産能力の確保に対する投資はきちんと継続していくと強調していたことを追加したい。

SMC本社CEOのRick Tsai氏(左)と日本法人社長の小野寺誠氏(右) TSMCの現在の組織図

 最後に、今回のTSMCシンポジウムで事務局は「過去のシンポジウムでも一貫して報道関係者による撮影を禁止してきた」と主張して講演スライドの撮影を全面的に禁止したが、例えば2005年のTSMCシンポジウムのレポート記事では講演を撮影した写真が掲載されている。また、筆者自身も他誌で2006年のTSMCシンポジウムでは講演スライドを撮影したレポート記事を執筆している。

 TSMCシンポジウムのような技術的な詳細が含まれる講演会では、撮影と録音が禁止されていると速記の取材メモだけに頼らざるを得ず、記事内容に誤りを含む可能性が高まる。来年のシンポジウムでは、撮影と録音が解禁されることを望みたい。

□TSMCのホームページ
http://www.tsmc.com/
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0804/tsmc.htm
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【2005年9月14日】TSMC、テクノロジー・シンポジウム 2005を開催~90nmの歩留まり向上は過去最短
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0914/tsmc.htm

(2008年10月22日)

[Reported by 福田昭]

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