DEMOfall08レポート 【次世代Web編】
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報道記事にもっと透明性をと訴えるSpinSpotter CEOのJohn Atcheson氏 |
会期:9月7日~9日(現地時間)
会場:米国Sheraton San Diego Hotel & Marina
「次の時代のWebを定義する」と題されたセッションでは、自らのサイトにユーザーを誘導しようとするのではなく、自分たちのサービス/製品を他のサイトへも広げていく必要があるという考えの下、ユーザーがもっとも望む方法/形で利用できるサービスなどが紹介された。
●メディアの偏向を探し出すSpinoculars
SpinSpotterは、ブラウザ用プラグイン「Spinoculars」を発表した。このプラグインは、日々のニュースが客観的で正確かなどを読者がチェック、またはそれに対して意見し、かつ共有することを目的としている。
同社はSpinocularsを開発するにあたり、ジャーナリストやジャーナリズム学校の教授、ジャーナリズム倫理協会などの助力を得て、文章の中から俗語で“Spin”と呼ばれる偏った意見や主張を指し示すような言葉のデータベースと、それらの言葉を探し出すアルゴリズムを創り出した。
Spinocularsをインストールすると、ブラウザに専用のツールバーが追加される。SpinocularsをONにした状態で記事を表示するとSpinと思われる場所に“S”のアイコンが表示される。そこでユーザーは、それが「リポーターの主観である」、「公平性に欠ける」といったSpinのルールに基づいて、Spinであるというフラグを立てることができるほか、Spinマーカーと呼ばれる「ここはこのように表現すべき」という自らのコメントを残すことができる。
Spinマーカーを表示する設定にすると、例えば、「計画がどのように納税者を守るか」というニュースの原文タイトルに取消線が引かれ、代わって「金融業界の2人の人間は、この買収計画が納税者を守ると信じてる」という具合にSpinマーカーが表示される。
Spinocularsをインストールして、とあるサイトを開いたところ。Spinであると思われるところは赤く表示される | ユーザーがこれはSpinであると思ったら、その種別のフラグを立てられる | Spinを他のユーザーのコメントに置き換えて表示もできる |
他のユーザーは、それらのフラグやSpinマーカーに対して評価付けを行なうことができるし、評価の高いSpinマーカーだけを表示させることも可能となっている。また、この評価付けがSpinocularsのデータベースに反映されていく。
SpinSpotterによれば、米国人の66%はメディアの報道が偏っていると感じており、そうした報道に透明性をもたらすのがSpinocularsの目的と語っている。なお、現在用意されているのはFirefox版のみで、追ってInternet Explorer版がリリースされる。
●検索キーワードに意味を付加するSemantiFind
Semantiは、既存の検索エンジンを背後で拡張し、検索精度を高めるFirefox用プラグイン「SemantiFind」を発表した。
SemantiFindをインストールすると、Googleなど既存の検索エンジンでキーワードを入力する時に、キーワードの意味を選択するためのプルダウンが自動表示されるようになる。
通常、キーワード検索を行なうと、その意味とは関係なく、文字として合致するキーワードを含むページが返される。例えば、“Car”と“Mileage”というキーワードで検索を行なうとする。Mileageには、走行距離と燃費の2つの意味があるので、車の燃費を調べたくても、走行距離に関する情報も表示されてしまう。
SemantiFindを使うことで、同じキーワードでも、例えば“車の走行距離”と“車の燃費”を、または“果物のApple”と“Macを作るApple”とを区別して検索できるようになるのである。
SemantiFindのメリットは、検索エンジン自体を乗り換える必要がない点。検索結果については、SemantiFindが意味を加えることで抽出された結果が画面の上位にまとまって表示されるが、ユーザーの想定しない意味を含む検索結果もグレーアウトした状態で表示自体はされるようになっている。
また、意図した通りのページに行き着いた際に、「Semantify」ボタンを押すことで、そのページに重み付けすることができるほか、その重み付けを他のSemantiFindユーザーと共有する機能もある。
SemantiFindをインストールすると、検索キーワード入力時にその単語の意味の一覧が出るので、そこから1つを選択する | SemantiFindを使って入力したキーワードは灰色の楕円で囲まれる | 検索結果。画面の上位にSemantiFindによる結果が表示され、通常の結果はグレーアウトされ下に表示される |
●研究者向け検索エンジンInfovell
InfovellのCEOであるWilliam Park氏が引用したカリフォルニア大学バークレー校の調査によると、Googleなど一般的検索エンジンがインデックスしているのは全Web上の情報の0.2%に満たないという。同社ではこの検索に引っかからない99.8%を“Deep Web”と呼んでいる。
Deep Webが検索に引っかからないのには、そのサイトのコンテンツが構造化されていないためインデックスできない、そのサイトへのトラフィックが少ないためランクが低くなる、ユーザー登録が必要でクロールできないといった理由がある。しかし、同社は0.2%の“表面的なWeb”に比べ、Deep Webには数倍の有用な情報が眠っているとしている。こういった情報を探し出すのが、同社の同名の検索エンジンだ。
一般的検索エンジンのキーワード検索は、少ない数のキーワードに対しては多数の結果を返すが、同時に目的とは異なる情報が多数ひっかかることも多い。逆にキーワードが多くなると、検索精度は上がるものの、結果の数もぐっと減る。実際、Googleには32語までという制限がある。そのため、場合によってはユーザーが目的の情報にたどり着くために、時間をかけてキーワードを試行錯誤する必要がある。
これに対し、Infovellでは、独自の検索エンジン開発にゲノム研究者を起用した。ゲノムには膨大な量のデータがあるが、有用な情報は限られる。また、遺伝子にはキーワードは存在しない。Infovellはこのゲノム研究の技術を言語に当てはめることで、Deep Webにおける精度の高い検索エンジンを生み出したという。
Infovellでは、「KeyPhrase」と呼ばれる技術を使い、単語だけでなく、文書内のあらゆる単語の組み合わせも記録する。また、さまざまな学術論文をデータベースに持つほか、キーワードの数の上限が2万5千個と事実上無制限である、英語以外の言語はもちろん、数式や楽譜などの記号も検索できるという特徴を持つ。
なお、Infovellは有償のサービスで、9月22日から30日間の無償利用ができる。
●他のサイトの一部だけを切り出すツール2種
SitScapeの「Situational Web Remixer」は、Webページを大胆かつ強力に編集する機能を持ったツールだ。
同ツールをインストールすると、Webページの任意の場所をマウスのドラッグで囲み、その範囲だけを抽出できる。抽出した範囲は、SitScapeが用意するダッシュボードページに、好きな配置で並べたり、ブラウザの右に専用のペインを表示させて、そこに配置することもできる。
これにより、A社の株価チャート、B社の天気予報、C社のストリーミング動画などといった具合に、任意のコンテンツを1つの画面に表示できる。
ユーザーにとっては便利なツールだが、一方でサイト運営者からしてみると、サイト全体のデザインや価値を損ねると判断されかねないため、何らかの反感を買うことも予想される。
Situational Web Remixerをインストールすると、Webページの任意の場所を切り出せる | 切り出したところに名前などをつけて保存すると |
ウィジェットとして好きに並べて1画面に表示できる | ブラウザに普通にページを表示しながら、右ペインにウィジェットを表示することも可能 |
似たような機能だが、iWidgetsの同名のサービスは、もう少しおとなしい。同社はCBSと協業し、Facebook、MySpace、iGoogleといったSNS内に、CBSのコンテンツをウィジェットとして貼り付けられるサービスを開始した。
iWidgetsのページでは、ウィジェットのサイズやレイアウト、内容などを細かくカスタマイズでき、ユーザー独自のウィジェットを作成できる。
iWidgetはFacebookやiGoogleなどのSNS内にCBSのコンテンツ(ここでは画面中央)をウィジェットとして貼り付けられる | iWidgetはブラウザ上でデザインなどを事細かく設定可能 |
□DEMOfall08のホームページ(英文)
http://www.demo.com/
(2008年9月12日)
[Reported by wakasugi@impress.co.jp]