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DEMOfall08レポート

【グリーン&モバイル編】
エアコンの消費電力を25%削減する世界初のシリコン
~iPhoneを使ったカーシェアやブラウザ上で動作するOS

あまりに小さくて見えないが、Ventilumを紹介するMicroStaq社長兼CEOのSandeep Kumar氏

会期:9月7日~9日(現地時間)
会場:米国Sheraton San Diego Hotel & Marina



●シリコンチップを使った超小型膨張弁

 DEMOfall08のグリーン系セッションで登場した製品の1つが、MicroStaqの「Ventilum」というシリコンチップを使った「SEV」と呼ばれる超小型膨張弁である。

 エアコンや冷蔵庫などでは、気体状の冷媒を圧縮機で圧縮して、高温高圧にさせた後に、凝縮器で熱を放出することで、液体にする。液体となった冷媒は、膨張弁の微細な穴を通じて噴射されることで低温低圧の液体となる。続いて蒸発器へ送られ、ここで周囲の熱を吸収して、低温低圧の気体となり、再度、圧縮器に送られるという循環になっている。

 MicroStaqのSEVは、50年来使われてきた親指大の膨張弁の機械的構造を指先大のシリコンに置き換えるものである。SEVのVentilumは、電圧を制御することで弁内部の抵抗体の熱膨張を利用して、弁内部にリニアな動きを作り出し、精密な弁として動作する。結果として、機械的膨張弁よりも交換効率を大幅に向上させ、エアコンの電気代を25%削減できるという。また、信頼性や耐久性も機械的膨張弁よりも優れているとしている。

 半導体を使ったマイクロマシン(MEMS)開発の取り組みはさまざまな分野で行なわれているが、Ventilumはナノリットルクラスではなく、リットルクラスの液体制御を行なっている点も特筆されるべき点である。

 量産開始は2009年末を予定している。

ブラウン管からDLPに代わり、小型化と高性能化を果たしたのと同じように
エアコンなどの膨張弁も機械式のものから、超小型のシリコンへと移り変わる。その初の製品がMicroStaqのSEV
こちらがその実物。本体の中央にある直方体のチップがVentilum
こちらは赤外線顕微鏡による内部写真。抵抗体にかける電圧を制御することで、弁がリニアに動作する

●iPhoneを使った車両共有システム

 もう1つのグリーン系サービスが、MapflowのiPhoneを使った車両共有システム「Avego」だ。これは、運転手が同じ目的地に行く人を同乗させることで、渋滞緩和、石油燃料消費量削減、燃料費削減などを実現するものである。

 この仕組みを運転手の立場で説明すると、次のようになる。まず運転手はAvegoにユーザー登録する。この際に、自分の顔写真、性別、車種、ナンバープレートなどの情報を登録する。

 運転手は自分の車で通勤や外出する時に、iPhone上で目的地とルート、および空いている座席数を選んでAvegoに通知すると、Avegoが即座に同じ目的地まで同乗したい人をリストアップするので、同乗させる人を選ぶ。

 すると、iPhoneが内蔵GPSと音声を使って、同乗者を安全に拾える場所までナビゲートしてくれる。到着すると、iPhoneに同乗者の顔写真が表示されるので、確認した後に、目的地まで運転する。到着したら、運転手と同乗者は、5段階でお互いを評価して、Avegoに送信する。同乗者が相乗りしたことで浮いた燃料費などはAvegoが自動的に計算/分配した後に、同乗者から運転手に支払われる。

 Avegoのコンセプトは、前述の通り、使われていない座席を有効活用することで、地球環境の改善につなげようとするものだが、運転手と同乗者双方に金銭的なメリットがあることも、ユーザーにとっては、利用を促す大きなポイントとなるだろう。他人を同乗させることで報酬を得ることについては、法的な制約があると思うが、すくなくとも米国では法的問題はないという。

 知らない人間の車に乗ったり、乗せたりすることについては、不安もつきまとうが、Avegoでは、会社の同僚や、同じ学校の生徒、同じ性別の人間だけを同乗させるという設定が可能になっている。

Avegoを使ってiPhoneで出発時にルートを指定。ルートは履歴からも選択可能 同乗希望者がいると、そのことを通知
iPhoneのGPSを使って、同乗者のいる(安全に停車できる)場所が表示される 同乗者が車を降りた後は、相互に評価をつけられ、他のユーザーが参照できる

●ブラウザ上で動作するOS

 モバイル編で紹介された1つが、Ghostが開発したブラウザ上で動作するOS「G.ho.st」だ。製品の定義はWeb上で動作する仮想PCとなっているが、その見た目は、ブラウザの中で別のOSが起動している形になっている。

G.ho.stをInternet Explorerで全画面表示させたところ。これだけ見るとデスクトップOSと変わらない

 利用する方法は、「http://g.ho.st/」にアクセスするだけ。ログインするにはユーザー登録が必要だが、ゲスト利用もできる。ブラウザからログインすると、そこに表示されるのは、タスクバー、スタートボタン、デスクトップアイコンなど、OSそのもの。ブラウザを全画面表示させると、Linux系OSをローカルで起動しているのと区別がつかない。

 ユーザーインターフェイスもデスクトップOSと同じで、FLASHを使っているが、アイコンをドラッグアンドドロップしたり、ダブルクリックや右クリック、ウィンドウのリサイズなどといった操作ができる。

 アプリケーションも、ワープロソフト、表計算ソフトなどビジネス向けから、メディアプレーヤー、メールソフト、各種アクセサリまで基本的なものが一通りそろっているほか、G.ho.st上(つまりブラウザ内)でブラウザを起動することもできる(厳密には、G.ho.stではウィンドウとブラウザの区別はないようだ)。

 G.ho.stは、Internet Explorer、Firefox、Safari上で動作する。つまり、その下では、WindowsかMac OSかLinuxが必ず動いているわけで、G.ho.st単体で運用することはできない。また、まだパブリックアルファの段階である、アプリケーションは必要最低限しかないなどの点を考えても、G.ho.stをメインのOSとして運用することは考えにくい。

 だが、すでに多くのユーザーは、メール、写真、動画、音楽、ブックマークなどを各種サービスを通じて、ネット上に保存し、ブラウザ上で視聴している。G.ho.stには、メジャーなWebアプリケーション/サービスにおける各ユーザーのアカウントを使って、FlickrやYouTubeなどをデスクトップアプリケーションのように起動できる機能がある。つまり、G.ho.stは、OSの見た目を持った、Webアプリケーションの統合管理ソフト兼ランチャーと表現した方がその機能を表わしているかもしれない。

 なお、動作環境はPentium 4と512MB以上のメモリとなっており、スペックの低いマシンでも動作する。また、GUIはことなるがiPhoneやスマートフォンでも動作する。

こちらはMac OS上でSafariでG.ho.stを起動したところ。同じアカウントなら、違うPCでも常に同じデスクトップが表示されるのがメリット ワープロソフトや表計算ソフトも標準搭載している 日本語を含む各国語で利用可能

●音声認識技術を使ったiPhone用アプリケーション

 最後に、携帯端末と音声を使った製品を2つ紹介しよう。Dial Directionsの「Say Where」は、音声認識技術を使ったiPhone用アプリケーション。Googleのほか、交通系検索のTraffic.com、ユーザーレビューのYelpなど、いくつかの用途別検索エンジンがプリセットされており、それらを選んだ上で、例えば、ルート検索なら、行き先や目的地を口答で告げることで、検索結果が帰ってくる。携帯電話での文字入力が苦手、あるいは運転中など手が離せないときに、音声で手軽に検索したいといった時に便利だ。

 Asyncastの「ROCKETRON」は、携帯電話を通じて、Web上のニュースを音声で読み上げてくれるサービス。自分の聞きたいニュースのジャンルを登録しておくと、後は指定の番号にダイヤルすると、そのニュースが音声で流れる。

 最初のダイヤル以降の操作は音声でできるようになっており、次のニュースへスキップ、同じニュースをリピート、聞きたいニュースのジャンルを指定といった操作が可能になっている。また、そのニュースに音声でコメントをつけたり、他のユーザーのコメントを聞くこともできる。

 利用は無償だが、途中で広告の音声が配信される。広告の時間は7秒間なので、ユーザーのストレスは少ないとしている。

iPhone用Say Whereのトップ画面。ここで検索エンジンを選択 後はキーワードを声で入力 認識結果の一覧が表示されるので、正しいものを選択する
ROCKETRONの設定画面。キーワードやジャンルをあらかじめ指定しておけば、それに応じたWebニュースが音声で電話から流れてくる

□DEMOfall08のホームページ(英文)
http://www.demo.com/

(2008年9月11日)

[Reported by wakasugi@impress.co.jp]

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