●プラットフォームの互換性がなくなるNehalem世代
Nehalem世代のデスクトップPCプラットフォームがこれまでと異なるのは、ハイエンドとメインストリームでプラットフォーム間の互換性がなくなることだ。これまでも、ハイエンドのSkulltrailは、ワークステーション向けのインフラを流用したため、一般のデスクトップPCプラットフォームとは異なっていたが、Nehalem世代ではさらにその傾向が強まる。 年内に登場するCore i7プロセッサ(コードネーム:Bloomfield)のプラットフォームは、Sulltrail同様、ワークステーションとの共通点が多い。基本的に同じX58チップセット(同Tylersburg)であり、ICHを併用した3チップ構成(CPU、Northbridge、Southbridge)のプラットフォームだ。外付けだけがサポートされるグラフィックスのAP(Attach Point:接続点)は、X58チップセットが提供する。メモリの帯域が拡張されているものの、チップセットの構成が同じこともあり、全体的には既存のプラットフォームに類似している。 Skulltrailは、ハイエンドの中でもさらに頂点のみで、CPUのSKUも1つ(Core 2 Extreme QX9775)だけだったが、Core i7については色違いのロゴが発表されていることから、複数のSKUを持つことは間違いない(従来のパターンから考えて黒がアンロックされたExtremeエディションだろう)。ワークステーションと共通点を持つハイエンドのラインナップが拡張されることになる。 これが2009年に登場するパフォーマンス~メインストリーム向けのプラットフォーム(同PiketonおよびKings Creek)になると、チップセットが1チップ(同Ibex Peak)化される。SATAやUSB、Ethernet(MACコントローラ)など各種I/Oを受け持つIbex Peakを従来の分類で表せば、South Bridgeということになるだろう。従来はNorthbridgeに入っていた機能をCPUとIbex Peakに振り分けて、プラットフォームを2チップにしたわけだ。
メモリコントローラがCPUに振り分けられるのはNehalemファミリ共通の特徴だが、グラフィックスインターフェイスがCPU側にくるのがこのプラットフォームの特徴だ。グラフィックスを内蔵する場合のグラフィックスコアはもちろん、外部グラフィックスを接続するAPもチップセットからCPUへ移動する。これにより、グラフィックスAPをチップセット側に持つハイエンドとのソケット互換性は失われる。 さらにPCI ExpressインターフェイスをCPU側に持つこともあり、メモリインターフェイスも、3チャンネルのDDR3を持つCore i7に対し、4コアのLynfield(デスクトップ)/Clarksfield(モバイル)、2コアのHavendale(デスクトップ)/Auburndale(モバイル)ともにデュアルチャネルのDDR3となる。グラフィックスAPが最大で16レーンであることと合わせ、最大32レーンのハイエンドとは性能面での差別化が進む。 複数枚のグラフィックスカードを同時利用することで3Dレンダリング性能を引き上げる方式のうち、現在Intelチップセットを用いたプラットフォームで利用可能なのはAMDのCrossFireのみで、NVIDIAのSLIを利用するにはNVIDIA製チップセットを用いる必要があった。先月NVIDIAはX58用の追加チップとしてnForce 200 SLI MCPを提供し、Core i7とIntel製チップセットの組み合わせでSLIをサポート可能にすると発表した。 しかしCPUがグラフィックスAPを持つLynfieldやHavendaleのプラットフォーム向けにNVIDIAがチップセットを出すハズもなく(出してうまみがあるハズもなく)、'80年代に始まったサードパーティ製チップセットの文化はついに終焉の時を迎えそうだ。一時、互換チップセットで名をなしたVIA Technologiesも、この市場からは撤退する見込みだという。
●チップセットの機能とプロセスルールの関係 一方、現在はNorthbridgeに入っているME(Management Engine、AMT等で利用する)はNorthbridgeからIbex Peakへ割り振られる。また、CPUがグラフィックスコアを内蔵する場合、ディスプレイインターフェイス(物理I/O)だけはIbex Peakに用意される。Ibex Peakが受け持つI/Oは、相手があってこそ成り立つ世界。Intelの都合だけで仕様を変更することはできない。言い換えれば、半導体プロセス技術の都合で勝手に電圧を下げたりすることができない。45nmプロセスでは扱いにくい、高電圧のインターフェイスを受け持つのがIbex Peak、という見方もできるだろう。Ibex Peakの製造プロセスは明らかになっていないが、CPUと同じ45nmプロセスでないことは明らかだ。ちなみに従来のSouth Bridgeチップは、最新のICH10も130nmプロセスで製造されている。 さて、この見方でAtomのプラットフォームを見てみる。Centrino Atomプラットフォームで使われるSystem Controler Hub(Poulsbo)は写真で見るだけでも巨大だが、これも130nmプロセスで作られているから。5Vでピン数の多いPATAインターフェイスを始め、USBなど各種のI/Oを内蔵する以上、あまり微細なプロセスを利用することはできない。逆にグラフィックスコア等は微細化による恩恵を受けられるし、消費電力の点でも有利になるわけだが、単純に微細化をすすめることはできないわけだ。 Centrino Atomでは実装面積を抑えるため、あえてチップセットの1チップ化に踏み切ったわけだが、PC用チップセットの主流が2チップ構成のままなのは理由がある。NehalemではNorth Bridge機能の大半をCPU側に移すことで、チップセットの1チップ化が行なわれたことになる。 同様に、Atomのプラットフォームも次世代のMoorestownでは、メモリコントローラとグラフィックスコアが45nmプロセスで製造されるプロセッサ(Lincroft)へ統合される。Havendale/Auburndaleと異なるのは、ディスプレイインターフェイスがCPUに統合されていることで、内蔵液晶ディスプレイ専用ならともかく、低価格のPC(Nettop等)ではまだサポートが必要だと思われるアナログVGAのサポートが可能なのかが気になるところだ。逆にチップセットのLangwellではストレージインターフェイスとして汎用のATAではなく、SSDコントローラが採用される。これならチップセットの微細化が容易になる可能性があるものの、やはりNettop/Netbookではどうなのだろうと思う。 こうした点からMoorestownはMIDにフォーカスしたプラットフォームではないかと思ったのだが、担当のAnand Chandrasekher副社長によると、Menlowと同じで低価格PCにも対応できるという(MenlowもかなりMID寄りだと思うが)。このあたりは、最終的にはOEMが決めることであり、製品化が近くなれば答えが出るのだろう。 □関連記事 (2008年8月22日) [Reported by 元麻布春男]
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