秋葉原電気街の展示用PCで“活エネ”
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「ワールド・コミュニティ・グリッド」のプログラムが動いている状態のPC。下に表示されている棒が計算の進行状況を示している |
6月30日~7月6日 開催
キャンペーン実施中の店舗の一つ、オノデン |
6月30日、秋葉原電気街振興会とNPO法人 産学連携推進機構、日本アイ・ビー・エムは共同で、秋葉原にあるPC販売店5社の展示用PCを、IBMが全世界で進めているワールド・コミュニティ・グリッドによりワシントン大学の研究活動に利用するキャンペーンをスタートした。それにともない、報道関係者向けにキャンペーン概要を説明した。
今回のキャンペーンは、6月30日から7月6日までの一週間、石丸電気 本店、オノデン本店、ソフマップ 本館、ソフマップ パソコン総合館、九十九電機 パソコン本店、九十九電機 ツクモDOS/Vパソコン館、九十九電機 ツクモex.、ラオックス本店の展示用PC計100台を使って、従来よりも強い抵抗力をもち、大量収穫が可能で、栄養価が高い新種のコメを作るための計算を行なう。その計画はワシントン大学が進めている「栄養価が高いコメを世界に」という理念に基づいている。
100台のPCには、IBMがワールドワイドで進めている、休止中のPCの処理能力を利用することでスーパーコンピュータ並の計算を行なう社会貢献プロジェクト「ワールド・コミュニティ・グリッド」のプログラムをインストール。このプログラムは、PC上にスクリーンセイバーが現れると稼働する仕組み。スクリーンセイバー駆動時の処理能力6割程度を利用する、軽くセキュリティに配慮したプログラムとなっている。
秋葉原電気街振興会の小野一志会長(株式会社オノデン 代表取締役社長)によれば、「電気街として、4年ほど前から省エネ家電の販売推進など、省エネルギー化への取り組みを実践してきた。展示している家電商品についても、お客様がいない時間帯には展示用TVの電源を消すといった取り組みを行なっていたが、PCに関してはお客様が来てから電源を入れると、立ち上がるまでに時間がかかるため、電源を入れたままにせざるを得ない状況となっていた。今回、3月にキャンペーンの話を頂き、電気街振興会に加盟する5社が賛同し、キャンペーンに参加することとなった。有効活用出来ていなかったPCを使い、社会貢献ができるというのは大変素晴らしいと考えている」とコメント。展示しているPCの有効活用の1つの方法として、キャンペーンに参加したという。
秋葉原電気街振興会 小野 一志 会長 | オノデン店頭のポップ。一両日中に、日本語での説明に加え、英語、中国語の説明文も展示予定 |
オノデンの店頭で実際にキャンペーンに参加している店頭展示用PC |
また、「海外から日本に来る観光客のおおよそ1割が秋葉原を訪れると言われる。今回のサミットの参加者、取材者の中にも秋葉原を訪れる方がたくさんいらっしゃると思うが、そういう方にも我々の取り組みを見てもらうことができれば有り難い。また、例の6月の秋葉原での不幸な事件によって、『秋葉原=怖いところ』という報道もあった。秋葉原では今回のような社会貢献活動も進めていることも是非、色々な方に知っていただきたい」と、秋葉原のアピールにもプラスになると説明している。
今回のキャンペーンを推進したNPO法人 産学連携推進機構の狩野慎太郎特別研究員は、「秋葉原電気街では小野会長の説明のように、省エネ商品の普及、啓蒙、販売活動や、『エコハバラ』として秋葉原での省エネ活動の促進といった活動が行なわれてきた。しかし、店頭で商品を展示する家電量販店の場合、省エネ活動にも限界がある。そこで、当機構の理事長である妹尾堅一郎が『活エネ』という新しいことばを生み出し、新しい社会貢献の方法を提唱した」と説明する。
実際にキャンペーンを実施するにあたってプログラム提供などの協力を行なった日本IBMの社会貢献 藤井恵子係長は、「IBMがワールドワイドで進めているワールド・コミュニティ・グリッドには、全世界40万人、100万台のPCが参加し、その結果167TFLOPSのパワーが生まれている。今回のキャンペーンでは、栄養価が高いコメを世界にというコンセプトで計算を行なっているが、それ以外にもいくつものプロジェクトが進められている。今回、食糧問題が身近になっていることから、新しいコメを作るための計算に協力することとなった」としている。
NPO法人 産学連携推進機構 狩野 慎太郎 特別研究員 | 日本IBM 社会貢献 藤井 恵子 係長 |
キャンペーンは1週間という短期間で終了してしまうため、会見では「それで本当に社会貢献となる活動といえるのか?」という意見も出た。
それに対し、電気街振興会の小野会長は、「販売店店頭のPCを別な用途に活用するというのはこちらとしても初めての試み。果たして実験がうまくいくのか、トラブルが起こった際にはどう対処するのかといった検証は、実際に実験をしてみなければわからない。今回のキャンペーンの結果を踏まえて、その上で今後の対応を決めたい」としている。
NPO法人 産学連携推進機構の狩野氏も、「キャンペーンの成果についてはきちんと公表していきたい」としており、秋葉原のPCがどの程度貢献したのかなども公表される見込みだ。
実際にキャンペーン開始前に日本IBMと参加する販売店で協議したところ、店頭展示用PCはネットワーク接続されていないものが多いことが判明。通常、グリッドコンピューティングでは計算した結果を随時オンラインで本部のサーバーに送り込む仕組みとなっているが、計算そのものはオフラインで行なえることから、結果のみを回収することとした。
「今回は短期のキャンペーンということで、4人の担当者がボランティアで店頭をバックアップする仕組みを作った。万が一、トラブルが起こった際には日本IBM側に連絡してもらうようになっている」(日本IBM・藤井係長)
オノデンでは店頭で展示されているPC全てを実験に参加するのではなく、一部のみを活用することとした。オノデンの社長である電気街振興会の小野会長は、「実際に試してみなければ、どんな状況になるのかはわからないと考えたため。店頭を訪れるお客さんの反応も、キャンペーンが始まった段階なのでわからないが、日本語に加え、英語、中国語の案内を置いて、広くアピールしていきたい」と展望を語った。
□秋葉原電気街振興会のホームページ
http://www.akiba.or.jp/
□産学連携推進機構のホームページ
http://www.nposangaku.org/
□日本IBMのホームページ
http://www.ibm.com/jp/
□ワールド・コミュニティ・グリッド
http://www-06.ibm.com/jp/company/society/odc/wcg/
(2008年6月30日)
[Reported by 三浦優子]