昨年(2007年)、キヤノンのImageFORMULA DR-2510Cのレビューを行なった。今回は4月に発売されたImageFORMULA DR-2010C(以下DR-2010C)のレビューを行なってみたいと思う。 ●商品構成の差はごくわずか DR-2510CとDR-2010Cの間に違いはほとんどない。キヤノンの製品ページによれば、両製品の差は ・超音波重送検知に未対応 の2点のみである。ただどちらもオープン価格になっており、実売平均価格を調べてみると6月初旬の時点で DR-2510C:\45,000弱 と価格差は4,000円ほど。最安値を比較してもDR-2510Cが41,000円弱、DR-2010Cが37,000円弱で、やはり価格差は4,000円ほど。この金額ならDR-2510Cの方がお買い得かな? という気はしなくもない。 さて、パッケージなDR-2510Cとほとんど変わらない。同梱されるものも、DR-2510Cとほぼ同じだ(写真02)。蓋の印刷はちゃんとDR-2010Cとなっているが(写真03)、折りたたみ機構(写真04)や全開時の構造(写真05、06)、背面の配置(写真07)などはDR-2510Cと全く同じであった。
●懸案事項は解決 さて、ソフトウェアのインストール方法などはDR-2510Cの場合と全く変わらない。インストールされたソフトウェアであるが、ドライバは1.0.10710.16001(写真08)、ジョブ制御ユーティリティは1.0.7.1009で、以前と変わらない。なので、改良はもっぱら本体側のファームウェアと思われる。(※) さて懸案事項の「スキャン終了の認識ミス」である。まずスキャン中にキャンセルボタンを押して(写真10)スキャンを中断すると、数枚ほどスキャンした後でちゃんと「キャンセル」になった(写真11)。またスキャン中に強引にカバーを開けると、ちゃんと正しくダイアログが出る(写真12)。(※) 欲を言えばScanSnapの様に、カバーをあけた後で原稿をセットしなおして再開できたりするともっと良い(*1)のだろうが、これはちょっと欲張りすぎかもしれない。いずれにせよ、これらについては実用上問題ないところまで改善できたことは確認できた。 ちなみにそれ以外の部分での変更点はほとんどないようで、(懸案事項以外の)使い勝手はDR-2510Cと全く変わらなかった。 (*1)例えば雑誌をバラしてスキャン中に、背糊が取りきれてなく、まとめて複数枚取り込まれてしまう場合がある。こうしたときに一度スキャナを開けて原稿を引っ張り出し、背糊を剥がしてからスキャンを再開させる事が、ScanSnapではスムーズに出来る。
●スキャン性能 実は前回の原稿掲載後に指摘されたのが、PDFのスキャンオプションが高圧縮になっていたことだ(写真13)。これがスキャン画質を損なっているという事なのだが、なにしろこれが標準設定だから、一般のユーザーはこのまま使ってしまうと筆者は考える。ただ指摘は指摘なので、今回はちょっとオプションを変えてみた(写真14)。 テスト環境はKODAK ScanMate i1120の回と同様に CPU:Sempron 2800+ という構成。取り込んだ原稿も全く同じである。
(1) カラー原稿30P(両面原稿で60P) さてまずは、インプレスジャパンの「DOS/V POWER REPORT」2008年1月号の特集1である。取り込みの条件は ・色数:自動認識 となっている。取り込み時間とファイルサイズを表1に、実際の取り込んだ結果を写真15~21に示す。ファイルサイズにいえば、大まかには解像度の2乗に比例して大きくなるという、至極当然な結果になっており、それほど違和感はない。 問題は画質とファイルサイズである。まず画質は、100dpiはともかく150dpiでもかなりまともになっており、200dpiでも実用的か? と思わせるほどになっている。ただしその分、ファイルサイズは肥大化している。DR-2510Cの時の結果を表2にまとめてみたが、1ページあたりのサイズは2倍~6倍だし、処理時間もかなり増えている。処理時間に関しては利用したCPUがだいぶ異なるから、こうした影響も多分にあるとは思うが、ファイルサイズに関しては余り関係ない。今回の原稿を300dpiの高圧縮でスキャンした結果は9,825KB。1ページあたり163.8KBほどになる。これは通常圧縮の100dpiよりも少し多い程度で、なるほど通常モードだと画質が良いのも当然と言える。 今回のクオリティであれば200dpi程度でのスキャンでも十分に思えるが、ファイルサイズは高圧縮の400dpiのときより大きくなるわけで、どちらを選ぶべきかは非常に微妙にも感じる。ファイルサイズをとるなら高圧縮400dpi、スキャン時間を取るなら標準圧縮200dpiという感じだろうか。
【表1】
【表2】
(2) 白黒原稿50枚(片面原稿で49P) やはり前回同様、Intel 64 and IA-32 Intel Architecture Software Developer's Manual Volume 3A:System Programming Guide, Part 1のChapter 3の50ページ分をモノクロレーザープリンタでコピー用紙に印刷し、これを読み込ませた。取り込みの条件は(1)と全く同じままである。 取り込み時間とファイルサイズを表3に、取り込んだ結果を写真22~28に示す。100dpiは論外として、150dpiが意外に良い感じである。ただ200/240dpiはそれほどでもなく、確実なのは300dpi以上といったところ。面白いのは、DR-2510Cでスキャンした時よりファイルサイズが減っている事で、PDFの高圧縮が白黒2値ではむしろ裏目に出ているのかもしれない。また600dpiでDR-2010Cの読み取り速度が遅いのは、CPUが遅くなったためであろうと想像される。 とりあえず白黒2値に関しては、圧縮率とは無関係に300dpi以上が望ましいと言える。
(3) 白黒画像 これも前回同様、300dpiモノクロで印刷したビビちゃんとワーズさんである。読み取り条件は同じだが、PDFに加えてJPEGの出力も行なった。この場合、色数に自動認識が指定できないので、8bitのグレースケールを明示的に指定している。 結果であるが、表4にPDFとJPEGの場合のファイルサイズを、また取り込んだ結果を写真29~42に示す。ファイルサイズや実際の画像から判るとおり、PDFは白黒2値での取り込みになったようだ。もっとも白黒2値でも400dpi以上だとかなりまともな画像になるわけだが、(多少眠たいとはいえ)グレースケール100dpiの方がまともな出力になっているあたりは、どちらを選択すべきかは微妙なところ。BBちゃんの髪の毛のグラデュエーションの再現性などで判断する限り、グレースケールのグレースケールの200dpi以上をお勧めしたいところだ。
【表3】
【表4】
ちなみにページ全体を ・解像度を72dpiに変更 したのが写真43~49となる。
●まとめ DR-2510Cの時に指摘したスキャン終了ミスに関しては、完全に払拭されたと言って良いだろう。ただこれがどうも本体側のファームウェアで実現されているっぽいところがちょっと気になる部分。旧来のユーザーに対するファームウェアバージョンアップなどは現時点で同社のソフトウェアダウンロードのページには掲載されていないようだ。(※) 【2008年6月25日編集部追記】上記(※)をつけた箇所について、前回のDR-2510Cの記事を受け、キヤノンが検証を行なった結果、こうした「スキャン終了の認識ミス」や「120秒待たされる」という現象は発生しなかった。事実、現象が発生していないことから、キヤノンでは、ファームおよびドライバの変更は行なっていないことが確認できた。にも関わらず、筆者の検証で、DR-2510Cにて現象が発生し、DR-2010Cで発生していないのは、それぞれのテスト時のPC環境が違うためで、DR-2510Cのテスト環境特有の現象であった可能性が高いことを付記させていただきます。 とりあえずこれは措いておくとして、その他の部分はというと、こちらはDR-2510Cと全く違いがなかった。なので、「かなり良い線まで来ているが、まだScanSnap S510にはちょっと及ばず」という評価にならざるを得ない。今回は特に本文では言及しなかったが、今一歩感は変わらない感じだ。 それとお値打ち感がいまいち、というのもネガティブな点だろう。Acrobat 8 Standardが付属するDR-2510Cとの価格差が4,000円程度では、やはりDR-2510Cをお勧めしたくなる。もう少し値段が下がれば、Acrobat以外のPDF編集ソフトと組み合わせるという形でお勧めすることも出来るのだが。このあたりがちょっと残念ではある。 □キヤノンホームページ (2008年6月20日) [Reported by 槻ノ木隆]
【PC Watchホームページ】
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