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Googleの開発者イベント「Google I/O」
初日基調講演レポート
~AndroidやOpen Socialをデモ

会期:5月28~29日(現地時間)

会場:米国サンフランシスコ モスコーニコンベンションセンター



 米Googleは、5月28日、29日(現地時間)の両日、米国サンフランシスコ市で、開発者向けのイベント「Google I/O」を開催する。会場は、サンフランシスコ市内のモスコーニコンベンションセンター。IntelのIDFやAppleのWWDCなどが開催される場所として有名なところだ。

朝8時から受け付け開始だったが、ドアが空くと同時に多くの来場者がレジストレーションに並んだ

 Google I/Oは、Googleとしては3回目の開発者向けコンファレンスとなる。昨年5月に開催されたときには単純にDevelopers Conferenceだったが、今回、Google I/Oという名前が付けられた。なお、このイベントを皮切りに、各国でも開発者向けコンファレンスが開催される予定だという。

 Google I/Oは、2日間で、朝に基調講演があり、その後は、5つのトラックと、実際にプログラミングを行なうコードラボ、Tech Talks、Fireside Chat(井戸端会議)と呼ばれるトラックの計8つのトラックが同時進行する。

 6つのトラックは、「AJAX & JavaScript」、「APIs & Tools」、「Maps & Geo」、「Mobile」、「Social」である。

 筆者が参加したこれまでの米国内でのイベントと比べて変わっている点は、昼食の間もセッションが行なわれていることだ。昼を挟んで30分ほどの休みはあるものの、昼食の時間中もセッションが続く。また、ちょっと贅沢なことに昼食会場は3つあり、それぞれで違う料理が出ることだ。もちろん、どれも、セルフサービス形式のものだが、3種類別々に会場を用意しているのは珍しい。Google本社の食堂は豪華という話も聞くが、それ故のこだわりなのだろうか。

●メインフレーム、PC、そしてインターネット

Googleエンジニアリング担当副社長、Vic Gundotra(ガンドトラ)氏

 基調講演に登場したのは、Googleエンジニアリング担当副社長、Vic Gundotra(ガンドトラ)氏である。講演のタイトルは、「Client, Connectivity and the Cloud」である。

 最初に、同氏は、これまでのコンピュータをメインフレーム、PC、インターネットの時代と大きく区分し、それぞれで、「計算とストレージ機能」、「開発のしやすさ」、アクセスのしやすさ(Accessibility)、配置の容易さ(ease of deployment)、機能性(functionality)の4つの点で評価した。メインフレームの時代、マシンは1つだったため、計算とストレージの点では良かったが、ユーザーが使うのはターミナルであったために、アクセスしにくく、また、機能も低かった。しかし、すべてが一カ所に集中していたために、システムの設定などは一カ所で済み、配置は容易だった。

 PCの時代になると、アクセスはしやすくなり、機能は向上した。しかし、多数のマシンを管理する必要があり、配置が難しくなり、また、性能は全体が順次にしか向上せず、大容量のストレージが使えるようになるまでには時間が必要だった。

 インターネットの時代になると、サーバー側で処理を行なうことにより、また、メインフレームの時代と同じような傾向を示すことになる。さらに、PCの性能が上がり、これをクライアントとすることで、アクセスの容易さも向上する。こうしたシステムを「クラウド」という。クラウドとは「雲」のことだが、よくインターネットを表すのに雲のような絵を描くことから来ているという。

 Gundotra氏は、クラウドコンピューティングこそ、Googleであり、そのために、クライアントの機能を上げ、接続性を向上させるさまざまな試みを行なっているという。

基調講演のテーマは、Client, Connectivity and the Cloud。アイコンでしめされる3つのサービス/技術について語り、Googleのクラウドコンピューティングの方向性を示す Gundotra氏は、コンピュータをメインフレーム、PC、インターネット(クラウド)の3つの時代に区分、その使い勝手や配置の容易さなどを評価した クラウドコンピューティングは、進化したPCを高性能なクライアントとし、同時にアクセシビリティを向上させるという

●クラウドのための6つの技術

 基調講演は、その後、Client、Connectivity、Cloudの3つのテーマに沿って、6つの技術を紹介した。紹介されたのは、Google Gear、Android、App Engine、Data API、Google Web Toolkit(GWT)、Open Socialである。

 Google Gearは、クラウドコンピューティングをオフラインでも可能にするための技術である。簡単にいうとローカルにサーバーやデータベースを置き、オフライン時でもサーバーに接続しているのと同じような処理を可能にする。ただし、このためには、Google Gearを使ってシステムを作る必要がある。今回、米国のソーシャルネットワークであるMySpaceがこのGoogle Gearに対応したことを発表した。これにより、MySpaceのメールサービスなどがオフラインでも利用できるようになるという。

 また、この日、Google GearがWindows Mobileにも対応することが発表された。こうしたモバイル機器は、持ち歩くために、デスクトップPCなどに比べるとオフラインとなる可能性が高い。こうした機器にGoogle Gearが対応すると、クラウドコンピューティングで機能を拡大した上に、いつでも、どこでも使えるというメリットが出てくる。

 次に紹介されたのが携帯電話の共通プラットフォームであるAndroidである。今回は、デモ機を持ち込み、その動作を見せた。指で操作でき、ページをスライドさせるような感じは、AppleのiPhoneに似ている。しかし、Androidは、ARMベースのプロセッサ上で動作し、Linuxカーネルを利用する。デモ機は、グラフィックスアクセラレータを搭載しているとのことだったが、かなりスムーズな動作を見せた。また、Google MapのStreet View機能(道路に沿って撮影した画像を加工し、その中で前後の移動や回転を可能にして、実際に通りを歩いているように見せる機能)でデモ機を動かすだけで、画像がその動きに追従するところを見せた。デモ機には、電子コンパスの機能が搭載されていて、その向きを検出することができるようだ。

Androidのホーム画面。ページを左右に動かして複数のページを表示できる。また、ページには、アイコンやガジェットを自由に配置できるようだ
AndroidのWebブラウザのデモ。拡大鏡(矩形の領域)を動かし、止めたところでその部分が拡大表示される Google Map Street Viewのデモ。デモ機を左右に動かすと、それにつれてStreet Viewの映像も動く。写真は、右から左に動かしたもので、最初の画面左側のビルが2枚目の画面では、中央へ移動している

 GoogleのApp Engineは、Googleのインフラを使って、アプリケーションのホスティングを行なうサービス。負荷やデータ量、トラフィックに応じて自動的にスケーリングさせることが可能で、Googleのさまざまな機能を使ってアプリケーションが構築できる。この日、Googleは、このサービスの正式な開始をアナウンスした。これまでは、4月に募集したプレビュー版のユーザーのみが利用できた。有償のサービスながら、月に500万ページビュー以下の典型的なアプリケーションであれば無料だという。

 Google Web Toolkit(GWT)は、Javaで作成したアプリケーションをAjaxを使うWebアプリケーション(JavaScript)に変換してブラウザで実行させる仕組みである。簡単にいうとJavaのプログラムをコンパイルして、JavaScirpt(とHTML)を出力させるようなものだ。Ajaxを使うと、リアルタイムに動く、ローカルアプリケーションのようなWebアプリケーションを作成できるが、コードがかなり複雑になることと、ブラウザで動作させるためにJavaScriptを使う必要があった。

 今回は、GWTを使った例としてLombardi Blueprint(ビジネスプロセスモデリングソフトウェア)を紹介。これは、28,500行のJavaプログラムから作られたWebアプリケーションだが、ローカルアプリケーションと遜色なく動く。しかも、これを利用するにあたって、ソフトウェアのインストールも不要になる。

 最後は、Open Socialである。これは、SNSを構築するための基盤となるAPIセットで、これを使うと、SNS自体やSNSのサービスを利用するミニアプリケーションなども構築できる。Open Socialは、IDにOpenIDを、認証によるリソースアクセスの制御にOAuthを使うGoogle Friend Connectも発表している。これらはSNSの機能をオープンにし、SNSの機能を使いインターネット内で「知り合い」だけがアクセスできるミニアプリケーション(ガジェット)など作ることを可能にする。

 1人のユーザーから見たとき、知り合いすべてが、同じSNSに参加しているとも限らず、複数のSNSでメッセージやコメントをチェックするのも大変だ。SNSのメッセージの有無をチェックするようなガジェットを作るのに、SNSごとに個別のAPIやそのやり方に対応しなければならないというのも開発者にとっては負担が大きく、限界がある。こうした問題を解決するのがOpen Socialなのだが、GoogleのOrkutよりも、FaceBookのほうが人気などの政治的な部分もあり、その他のSNSを連合させてFaceBookに対抗するためのものと見ることもできる。

GWT(Google Web Toolkit)は、Javaで作ったアプリケーションをAjax(JavaScirpt)のWebアプリケーションに変換する Google App engineは、正式サービス開始となり、有償のサービスとなった。ただし、月500万ページビュー以下ならば無料で利用できる Open Socialに賛同するSNSや企業の一覧。日本からはmixiが対応を表明している

 新規のサービス発表はなかったものの、既存のサービスやAPIの拡張や、Google外での応用など、いくつかの発表が行なわれた基調講演だった。これを見ると、Googleが、インターネットを使うクラウドを本格的なアプリケーションプラットフォームにしようとしていることがわかる。そして、Google Gearにより、それをオフラインにまで広げ、Androidで携帯電話の環境にまで広げようとしている。Gundotra氏は、「Googleは、クラウドを誰もが入手可能なものにする」と述べた。基調講演では、Microsoftへの対抗などについては何も触れられなかったが、かつてPCでMicrosoftが行なったことをクラウドで実現しようとするGoogleの動きは、完全にMicrosoftと向き合っているといってもいいだろう。

□Googleのホームページ
http://www.google.com/
□Google I/Oのページ(英文)
http://code.google.com/events/io/
□関連記事
【2月13日】ケータイ用語の基礎知識:Android とは(ケータイ)
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/keyword/38448.html
【2007年12月3日】「OpenSocial」推進するGoogleの狙い、将来的には広告収益も(INTERNET)
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/12/03/17716.html

(2008年5月30日)

[Reported by 塩田紳二 / Shinji Shioda]

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