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【やじうまPC Watch】
足で操作するマウス「FOOTIME」を試す



●PCによる「ながら作業」の時代

 PCで作業をする時はそれのみに集中し、ほかの作業には一切手をつけない──というスタイルはすっかり過去の話。いまやPCの使われ方の大半は「ながら作業」の一部になっているのではないか。最近、そう思うことが多い。

 筆者自身も、昼の休憩時間には弁当を食べながらネットを見たりするし、自宅に帰ればPCでテレビを観ながら本を読んだりしている。PCに向かって襟を正して作業をする時間は限りなく減少し、PCを操作しながら並行して別の作業をする機会が増大しつつあるように思う。進化して2.0になったと噂のWebに比べ、PCの場合はハードウェアそのものが進化しているにもかかわらず、その地位はむしろ低下して0.8とか0.9くらいになったような気がしないでもない。

 そんな筆者がふと思うのが、「ながら作業」が増えてきた今、それに応じた入力機器が登場してもよいのではないか、ということだ。マウスやキーボードといった伝統的な入力機器は、両手での操作を前提に設計されており、利用中はほかの作業が行なえない。一見、片手で操作が完結しているように見えるマウスにしても、実際にはキーボードによる補助操作が必要であり、両手がふさがってしまいがちである。PCを操作しながら他の作業も同時に行なえる入力機器があれば、ひょっとするとPCの新たな可能性が切り開けるかもしれない。

 そんな中、海外で興味深い製品が発売された。「FOOTIME」という、足で操作するマウスである。これなら、たとえカップラーメンをすすりながらでも、足でPCを操作してネットを閲覧したり、あわよくばゲームを楽しむことができる。ほかにも、新聞を広げながら株を注文したり、出勤前にヒゲをそりながらネットでニュースをチェックしたりと、ものすごく局地的な用途ながらも、夢は無限に広がる。

 というわけで、ニュースリリースを目にして以来、どこか国内業者が面白がって取り扱ってくれないものかと待っていたが、どうやら各社ともスルーの方向だったようで、仕方なく個人輸入することにした。購入価格は199ドル、送料で37.95ドルかかったので実質3万円近い出費である。

●右足でカーソル操作、左足でクリック

 そんなわけで筆者宅に届いた、通称足マウスこと「FOOTIME」。さっそくハードウェアから見ていこう。

 製品は2つのユニットから構成されている。二列にわたって計5つのボタンが並んだ「ペダルユニット」と、裏面に光学センサがついた「マウスユニット」だ。ペダルユニットは左足、マウスユニットは右足で操作する仕様になっており、PC本体とはUSBで接続する。

製品パッケージ。届いてみて分かったのだが、ユーティリティCDのラベルが無地だったり、説明書に記載されている問い合わせ先のメールアドレスがなぜかGmailだったりと、いちいち不安を煽る箇所が多い ペダルユニット(左)と、マウスユニット(右)。ペダルユニットの背面に増設用USBポートがあるので、マウスユニットのUSBケーブルは直接PCに接続するのではなく、こちらに増設する形で使用する。ちなみに今回は試していないが、Mac OSにも対応している

 マウスユニットはサンダルのような構造になっており、右足で「履いて」使用する。左右クリック等の機能はペダルユニット側で行なうため、このマウスユニットは純粋にカーソルを動かす機能だけが備わっている。実際に操作する際は、付属のマウスパッドを床に敷き、その上で操作する。

 一方のペダルユニットは、マウスで言うところの左右クリックおよびホイール操作の機能を持っており、上面には二列にわたって計5つのボタンがレイアウトされている。ボタンと言っても直径約4cmにも及ぶ巨大さで、マウスの左右ボタンやキーボードとはかなり印象が異なる。スイッチはスプリング式で、ストロークはかなり深い。

 初期値では、ペダル右寄りにある3つのボタンに、左クリック、左ダブルクリック、右クリックが割り当てられている。足の指で細かい操作をすることは困難なため、ダブルクリックのような繊細な操作に専用ボタンが割り当てられているのは、ユーザビリティ的に正解だろう。

 左上に位置している黄色い2つのボタン、通称「A」「B」ボタンは任意に割当が可能である。また左下には、マウスのホイールに似た「スクロールローラー」と呼ばれるスイッチがレイアウトされている。これは左側に倒すと上スクロール、右側に倒すと下スクロールが行なわれるようになっている。

マウスユニット。サンダルの形をしており、右足に履いて使う マウスユニットの裏面。光学式マウスの底面にそっくりだ ペダルユニット。5つのボタンと、ホイールに近い機能を持つスクロールローラー(左下)がレイアウトされている
ボタンは直径およそ4cmにも及ぶ特大サイズ。どことなく「へぇ~ボタン」を彷彿とさせるデザインだ 左側面には、デフォルトのキー設定と、拡張キー設定を切り替えるためのボタンが付属している。カスタマイズしたキー割り当てを一時的に無効にし、デフォルトのキー割り当てで操作したいという場合に利用する

●具体的に何ができるのか

 FOOTIMEでは、付属のユーティリティを使うことにより、アプリケーションごとに任意のキーを割り当てることができる。今回はFirefoxでWebページを閲覧することを前提に、キーをカスタマイズしてみた。

 ひとくちにWebページの閲覧といってもいろいろな操作が考えられるが、今回はページの上下スクロール(PageUp/PageDown)と、タブの切り替え(Ctrl+PageUp/Ctrl+PageDown)、さらに読み終わったタブを閉じる操作(Ctrl+W)を、それぞれのキーに割り当てた。具体的には、RSSリーダー「livedoor Reader」において、ピンを立てたページを一気に開いたあと、記事を1つずつ読みながら閉じていく操作を想定している。

 ちなみに、ペダルユニットの左側面には、デフォルトのキー設定と、拡張キー設定を切り替えるためのボタンが付属している。そのため、カーソル移動や左右クリックといった通常操作においては、この側面ボタンをOFFにする。Firefox用にカスタマイズしたキー割り当てを使いたいという場合は、この側面ボタンをONにする、といった使い方になる。

付属のユーティリティを用いれば、アプリケーションごとにキーの割り当てが可能。ちなみにペダルユニット左側面のボタンを押すことで、デフォルト設定と任意設定を切り替えることができる Firefoxに任意のキーを割り当てた状態。ちなみに「次のタブに移動」は、Firefoxにおけるショートカットは[Ctrl]+[Tab]なのだが、このFOOTIMEのキー割当ユーティリティはTabの入力に対応しないバグがあるため、同じ役割を持つ[Ctrl]+[PageDown]を割り当てている 割り当て可能なアプリケーションは海外製品に限られる。アプリケーションの新規追加はできないようだ

●足がつりかける

 というわけで早速操作してみた。いかんせん足でPCを操作するのは生まれて初めてなもので(←当たり前)、最初は違和感があるが、しばらく使っていると操作に慣れてくる。10分ほど経てば、立派な(?)足マウスユーザーの誕生である。

 使ってみて意外だったのが、2段になったボタンを片足で押すのは、それほど苦にならないということだ。上の段は親指、下の段は母指球、つまり親指の付け根下にあるふくらみの部分で押すことにより、2つのボタンを片足だけでシームレスに操作できる。これは特に筆者が器用というわけではなく、ごく自然に行なえる。きちんとユーザビリティを考慮した結果こうなったのかは謎だが、まあ結果オーライだ。

メーカーが推奨する操作レイアウトを再現した状態。右足でマウスカーソルを動かし、左足でクリックする 押しにくそうに思えるペダルユニットのボタンだが、意外や意外、足の親指(写真左)と母指球(同右)を活用することで、かかとを動かさずに上段と下段のボタンを押すことができる
マウスユニットを装着した右足。うっかり立ち上がってどこかへ行こうものならUSBケーブルを引きちぎってしまいかねないので十分注意したい 光学センサーは赤色。純正のマウスパッドを使っているにもかかわらず、使っているとカーソルが飛ぶのはご愛嬌

 ただ、いちばんの難点は、マウスユニットにしてもペダルユニットにしても、かかとを浮かせなければ操作できないこと。車の運転を考えれば分かると思うが、アクセルとブレーキを踏み分ける際、かかとを床につけた状態で足の先だけを乗せ替えることが多いはずだ。しかし本製品では、かかとを浮かせなければすべてのボタンを押せない配置になっている。ただでさえ細かな動きが要求されるところにこのインターフェイスである。正直、足が何度もつりかけた。

 いろいろと試行錯誤した結果、右足用のマウスユニットの利用をあきらめ、ペダルユニットの5つのスイッチ+1つのスクロールローラーを、左右両足で分担して操作することにした。こうすれば、かかとをほぼ動かさない状態で、前述のFirefoxのショートカットがほぼ完璧に利用できるわけである。

 最終的に、本来の使い方とは異なるものの、読みたい記事をFirefoxのタブいっぱいに展開し、それを次々と読みすすめながら足先でタブを閉じていくという当初の目的はほぼ達成できた。タブを開くところまでは手で操作しなくてはいけないが、その後は足オンリーでの操作である。言うまでもないが、手はこの間ずっと空いたままの状態なので、本を読んだり食事を取ったり、好きなことができる。ただし、周囲からはかなりブキミに見えるらしいので、その点は要注意かもしれない。

実際に使っている様子。手前のペダルユニットは、左足で操作するというコンセプトでありながら、左足のかかとを支点にするという発想がない。5個のバスドラムを左足一本でコントロールしろと言われているようなものだ マウスユニットの利用をあきらめ、ペダルユニットの操作に両足を投入した図。これならかなり快適に使える

●デバイスと想像力

 そんなわけで、デバイスとしての使い勝手はにはまだ改良の余地があると感じたが、国内サードパーティではロットの関係もあって絶対に手を出さないであろうアイデアを商品化にこぎつけた心意気は評価すべきだと思う。価格についても実質2万円という、コンシューマレベルでも手を出せないことはない金額に収まっている。金型代を考えるとペイするかは微妙だろうが、ぜひ多くの人に使ってほしいと思う。

 ところで実はこの製品、パッケージにも説明書にも、いわゆる用途訴求がほとんどない。さまざまなアプリケーションのショートカットがプリセットされている割には、具体的にこう使うと便利ですよ、という提案はなしのつぶてである。汎用的なデバイスと言えば聞こえはいいが、もう少し何らかの訴求があってよさそうなものである。筆者のように「ながら作業」向けのマジメな入力機器として扱うか、それとも単なるおバカグッズとして見るか、基本的にはユーザの想像力任せであると言えよう。

 現実問題として、今後こうしたエッジの立った製品が続々と登場するのは(国内メーカーにおいては特に)期待薄だろう。だが、PC周辺機器の本質的な面白さというのは、こうしたエッジの立った製品によってもたらされてるところが多々あるわけで、持てる限りの想像力を駆使してこうした製品に真剣勝負を挑むのが、ユーザとして正しい楽しみ方ではないかと思う。すでに枯れたと思われているインターフェイスの市場において、今回の製品のようなチャレンジ精神を持った製品が次々と登場することを個人的に(マジメに)期待したい。

□製品情報
http://www.bilila.com/foot_mouse_slipper_mouse/
□関連記事
【アキバで見つけた変なもの】足で操作するマウス(AKIBA)
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/mono/footms.html

(2008年3月5日)

[Reported by 山口真弘]

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