世界最大の半導体企業であるIntelが創業したのは1968年のこと。2008年は同社にとって40周年となる節目の年だ。Santa Claraで設立された同社は、最初の工場を本社からほど近いMountain Viewに開設する('80年閉鎖)など、文字通り「シリコンバレー」の中核企業でもあり続けてきた。
だが、実際に「シリコン」を大規模に量産しているIntelの工場は、シリコンバレーどころかカリフォルニア州内にも存在しない。すぐ隣、Sunnyvaleに本社を構えるAMD(同社は2009年に40周年を迎える)も、この地域での量産を止めてしまっている。Intelと同じSanta Claraに本社を持つNational Semiconductorの製造拠点も、東海岸のメイン州や南部のテキサス州であり、シリコンバレー地区ではない。 現在シリコンバレーを支える半導体企業の多くはファブレスで、製造は台湾やシンガポールのファウンダリ企業に委託することが大半だ。現実にはカリフォルニア州は、米国の中でも物価が高い地域であり、工場の建設や運営に適した場所とはいいがたい。数年前には電力危機も起こっており、今や製造業にはあまり向かない場所だ。 それでもIntelは、現在までSanta Claraの本社に隣接した場所に開発用の工場であるD2を維持してきた。200mmウェハの工場であるD2は、基本的には量産技術の開発を行なう工場であり、一部、小規模な製品の製造を行なっている。だが、どうやらその伝統も40年で終わりを告げる。 ●分社化によるD2での製造終了 Intelによると、現在D2ではMarvell向けの製品出荷、新会社Numonyxに統合されるNOR型フラッシュメモリ関連の製造が残っているとされる。Intelは2006年6月に組込み向けのプロセッサビジネスをMarvellに売却している。PDAやスマートフォンに使われているXScaleアーキテクチャのプロセッサ事業で、どうやらその一部がD2で製造されていたようだ。このある種の委託製造が2008年第1四半期中に完了する見込みだという。Marvellはファブレス企業であり、おそらく今後は台湾のTSMCなどへ製造を委託するのだろうが、製造体制を移行するには1年以上の時間(事務手続き等も含めると2年近い時間)が必要だったことになる。 ST Microelectronics、Francisco Parnersとの合弁であるNumonyxに統合されるNOR型フラッシュメモリ事業は、BIOSやファームウェア等を収納するための不揮発メモリ。ST Microelectronicsが、NAND型フラッシュメモリ事業もNumonyxへ移管させるのに対し、IntelはNAND型フラッシュメモリの量産をMicron Technologyとの合弁であるIM Flash Technologiesで行なっている。
筆者はIDFがシリコンバレー地区のSan Joseで開かれていた2000年前後に、D2の見学会に参加したことがある。その時の説明では、D2の役割としてNOR型フラッシュメモリの量産プロセス開発が挙げられていた。D2はIntel本社の建物(創業者の名前をとったRob Noice Building)に隣接というより、ほとんど一体化しており、NOR型フラッシュメモリ事業をNumonyxに移したからといって、その開発拠点であるD2をIntel本社から分離することは難しそうだ。Numonyxへの事業移管が完了する時点で、D2からNOR型フラッシュメモリ関連事業がなくなるのは避けられなかったことだと考えられる。これが今年の第3四半期に終了する計画だ。 つまりこの2008年第3四半期をもって、Intelのシリコンバレー地区におけるシリコンの製造は、試作のような小規模なものも含めて完全になくなることになる。D2のクリーンルームは、2009年から半導体のマスク・オペレーションの拠点になる見込みだ。 北米におけるIntelの製造体制は、開発がオレゴン州、量産がアリゾナ州とニューメキシコ州に集約される(オレゴン州には1カ所だけ量産工場であるFab 20が存在するが、200mmウェハを用いており最新の量産拠点ではない)。これにアイルランド、イスラエルを加えた2カ所でプロセッサの量産を行ない、2010年に操業開始予定の大連でチップセットの量産を行なうというのが、当面のIntelの製造体制になりそうだ。 □関連記事 (2008年2月1日) [Reported by 元麻布春男]
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