DEMO 08カンファレンスレポート ARM 9内蔵のペン型コンピュータ「Pulse」
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Pulse Smartpen |
会期:1月28日~30日(現地時間)
会場:Desert Springs, A JW Marriott Resort & Spa, Palm Desert
Livescribeは、「世界初のスマートペン」を謳うペン型コンピュータ「Pulse Smartpen」を発表した。現在、米国で予約を受け付けており、出荷開始は3月。価格は1GBモデルが149ドル、2GBモデルが199ドル。
Pulseの第一の役割はデジタルペンとしてのものだ。Pulse専用のノート(1冊5ドル)には、目に見えるか見えないかくらいの微細なドットが印刷されている。一方の、Pulseの先端には普通のボールペンの芯と赤外線カメラを内蔵。光学マウスと同じ仕組みで、ペンを動かして文字などを書くと、その軌跡がカメラから読み込まれ、メモリに筆跡として記録される。このデータをUSBクレードル経由でPCに転送することで、デジタルデータとしてPCに書いたものを保存できるという具合だ。
Livescribe CEO兼創業者のJim Marggraff氏 | 専用ノートを近くでよく見てみると、微細なドットが無数に描かれているのが分かる |
この上にPulseで文字を書いていくと、内蔵カメラにより、その軌跡が記録されるので…… | PCにデジタルデータとして保存できる。文字認識機能もあるので、手書き文字でもテキスト検索ができる。ここで緑色になっている文字は、後述する音声が記録された部分を示す |
ノートの下の余白部にオーディオ制御用のアイコンがあり、これらをクリックすることで、録音した音声を再生、停止、頭出ししたりできる |
ここまでは従来のAnoto式デジタルペンと変わらないが、Pulseにはマイクとスピーカーが内蔵されている。ノートの最下部には「録音」、「一時停止」、「停止」、「再生」などのアイコンがあり、録音アイコンをクリックすると本体内のメモリに録音が開始されるようになっている。
録音終了後に再生アイコンをクリックすると、内蔵スピーカーから録音が再生されるわけだが、Pulseはペンの軌道と音声の記録と同時に時間情報も記録している。そのため、書き込んだメモの任意の場所をクリックすると、それを書いていたときに録音した音声が瞬時に再生されるようになっている。たとえば会議や学校の講義などのノートを見返していて、「あっ、この時なんてしゃべってたんだっけ?」と思ったら、その場所をクリックすることで、その部分の音声が再生されるのだ。使っている人ならマイクロソフトの「OneNote」の機能をペン単体で実現しているというとイメージしやすいだろう。
このほか、ノート下部には、音声のシークバーや、再生速度の変更、音量の変更のアイコンもあり、ペンでクリックすることで操作できる。PCにデータを転送すると、これらの操作に加え、専用アプリケーションで文字認識によるテキスト検索が可能となるほか、Web上にノートをインタラクティブFlashムービーとしてアップロードし、友人と共有する機能もある。
マイクはデュアル構成でノイズキャンセル機能を搭載。また、付属のイヤフォンにもマイクが内蔵されており、あたかも耳で聞いているような臨場感のある3D録音が可能。録音時間は1GBで最高100時間、2GBで最高200時間だが、手書きの記録とメモリを共有する。
本体サイズは、155×14~16mm(奥行き×高さ)、重量は36g。リチウムイオンバッテリを内蔵し、持続時間は最大5時間程度。充電はUSBクレードルで行なう。
もう1つガジェット好きの心をくすぐるのが18×96ドットの有機LEDディスプレイを搭載している点だ。ノートの最初と最後のページは、電卓、本体状態、セッティング、ソフトキーボードが描かれており、たとえば電卓で計算を行なうと、その結果がディスプレイに表示されるし、バッテリアイコン、時間アイコンなどをクリックすると、その情報が表示される。
Pulseのロゴの下にあるのが電源ボタン、ディスプレイの両端にマイク、その左にスピーカーがある。付属のイヤフォンにもマイクが内蔵されている | ノートの最初と最後のページには、本体の設定や、電卓、キーボード機能などのユーティリティが印刷されている | |
ディスプレイは有機LEDを採用し、屋外でも見やすい | 日付やバッテリ残量など本体情報のほか | 単語の翻訳結果なども表示できる |
そして、この製品を「スマートペン」と表現しているゆえんは、ARM 9(150MHz動作)を内蔵している点だ。Livescribeは現在、開発者向けのSDKを準備中で、すでに一部のサードパーティがPulse向けのパーティアプリケーションの開発を進めている。Pulseにはそれらのアプリケーションを追加でインストールすることができ、どんどん機能を拡張できるようになっているのだ。
その1つとして実演されたのが、Pulseによる翻訳。Pulseで普通に単語を書き、続いてノート下部にある5wayカーソルキーアイコンを使って操作することで、英単語をスペイン語や中国語に翻訳し、本体のスピーカーから発声するとともに、ディスプレイにも翻訳結果を表示していた。つまりこの時、Pulseは単体で手書き文字を認識し、その結果をスピーカーとディスプレイに出力している。同様に、標準機能として、数字と演算記号を手で書いて、その計算結果を出力することもできる。
このほか、Pulseに対応した予定帳を発表しているメーカーもある。この場合、普通の予定帳と同じように、持ち歩いて、さっと取り出し、必要な予定や連絡先を書いたり、確認したりするのと同時に、PCに取り込むことでデジタルデータとしても保存でき、いろいろなアプリケーションで活用できる。
Livescribeでは、Pulseをオープンプラットフォームとして仕様を公開し、対応製品の開発を呼びかけているとしており、今後の広がりにも期待が持てる。なお、英語以外の言語への具体的対応時期は不明だが、日本語への対応も検討中だという。
□Livescribeのホームページ(英文)
http://www.livescribe.com/
LeapFrog社長兼CEOのJeffrey G. Katz氏 |
LeapFrogも同様のAnoto式デジタルペンを使った製品「Tag Reading System」を発表した。といっても、こちらはペンとしての機能はなく、教材となる絵本の任意の箇所をクリックすると、それに応じた音声が鳴るという子供向け(対象年齢4~8歳)の学習用品となっている。
その分、価格やスペックも抑えられており、RISC CPUと16MBのメモリを内蔵し、本体価格(ペンと本1冊が付属)は49.99ドル。米国では6月に発売される予定。
使い方としては、絵本の文章の冒頭をクリックすると、本文が読み上げられ、単語をクリックするとその単語だけが発音される。インタラクティブな仕組みも用意されており、問題開始アイコンをクリックすると、ランダムで単語が発声され、その頭文字のアルファベットをクリックすると正解になるといった具合だ。また、描かれた登場人物をクリックすると、絵本には書かれていない台詞をしゃべったりするので、反応が返ってくる場所を探す楽しみもある。
単品で販売される別売の本は1冊13.99ドル。CD-ROMなどは付属せず、購入後にTag Reading System用のデータをダウンロードして、USB経由で本体に転送する。16MBで最大5冊までのデータを保存できる。
また、問題を解いていった結果をPCにアップロードする機能や、13歳までを対象とするより高度な教材も2008年後半に予定されており、親が子供の学習の進展具合を確認することができるようになる。
□LeapFrogのホームページ(英文)
http://www.leapfrog.com/
□DEMO 08のホームページ(英文)
http://www.demo.com/conferences/demo2008.html
(2008年1月30日)
[Reported by wakasugi@impress.co.jp]