11n標準化は9カ月遅れて2009年7月制定に
12月18日 開催 米Atheros Communicationsは11月8日(現地時間)、IEEE 802.11nドラフト対応無線LANチップ「AR9280」と「AR9281」を発表した。その日本法人であるアセロス・コミュニケーションズ株式会社が開催した国内向け発表会で、代表取締役社長 大澤智喜氏は、IEEE 802.11n(以下.11n)の標準化スケジュールに言及。2007年7月時点のスケジュールから9カ月遅れている現状を説明した。 最新の標準化スケジュールでは、2009年3月にワーキンググループがドラフト4.0の承認を行ない、同7月にIEEE 802.11nを正式に制定する見込み。あわせて、Wi-Fiアライアンスも、2009年4月に最終テストプランを作成し、2009年7月に.11nの認証プログラムを開始する。 2007年7月時点のスケジュールでは、2008年10月の標準化を予定し、ドラフト2.0の技術的課題やコメントを解決してドラフト3.0の策定に向けた文書投票を実施(2007年5月)。それを承認し、次いでドラフト3.0をスポンサー投票にかけるための文書投票を実施した(2007年9月)。しかし、84%のメンバーが賛同したものの、議長は90%の賛同を望んだため、ドラフト4.0を策定する運びとなった。 アセロスの大澤氏はスケジュールの遅延について、「ドラフトのバージョンアップにともない、コメントや技術課題が減少、またクリティカルな部分はなくなってきている。.11nの仕様は安定しており、議論は収束に向かっている」と語った。 なお、Wi-Fiアライアンスは、2007年6月よりドラフト2.0での認証をフェーズ1として開始。フェーズ2は最終仕様に則り2009年7月より開始する。また、IEEEのドラフト3.0はWi-Fiアライアンスに影響せず、Wi-Fiアライアンスとして定めたドラフト2.0の機能について変更はない。 同氏は、Atherosの.11n対応製品は議論の中心になっているCCAに関して柔軟な対応が可能で、ドラフト3.0のCCAについても、ソフトウェアの変更で対応可能。またドラフト4.0以降においても、ドラフトの完成度と同製品の柔軟な構造によりソフトウェアで対処可能で、「スケジュールの遅れは心配していない」とした。仮に最新仕様に準拠出来なかった場合にも、相互接続テストなどの成果により接続は可能である、と自社製品への自信を見せた。
●最大300Mbpsの転送速度を備えた.11n対応チップ
同日開いた発表会では、.11nドラフト対応チップを発表。上位モデルのAR9280は、2.4GHz/5GHzに対応し2×2構成(送受信それぞれ2ストリーム)となっている。また下位モデルはローエンド向けにIEEE 802.11gの置き換えを目指す製品で、2.4GHz帯に対応し、1×2構成となっている。各ストリームは最大150Mbpsの転送速度で、2ストリームの場合は最大300Mbpsの転送速度をワイヤレスで提供する。 新チップは現在サンプル出荷中で、2008年第1四半期に量産出荷を開始する。新チップを搭載した製品の登場は、2008年の夏の手前頃になるという。 機能面では、データ量に応じてMIMOのモードを1×1に切り替える「Dynamic MIMO Power Save」や、APとPCを同期させ、通信を最適化することでPCのスリープモードを長く保つ「Unscheduled Automatic Power Save Delivery」、無線LAN使用時にPCのホストCPUをスリープモードに保つ「Wake-On-Wireless」など、省電力性を高める機能を特徴としている。 新製品は、QFNパッケージにより、業界最小の10×10mmサイズを実現するとともに、コスト効率を高めた。また、Half MiniCardサイズのリファレンスデザインを提供し、超小型PCにも搭載可能にするなど、幅広いノートPCラインナップに.11nを搭載可能としている。接続バスはPCI Express。 このほか、同日にはGPSチップを開発するu-Nav Microelectronicsを買収する正式契約を締結したと発表。買収の完了は12月中を予定。この買収により、ワイヤレス通信技術を軸に展開してきたラインアップと合わせ、通信系を広くカバーするソリューションが提供可能になるとしている。また同社は、新たにEthernet用チップを展開しており、ASUSTeK向けに製品を供給することでビジネスを拡大していることを明らかにした。
□Atheros Communicationsのホームページ(英文) (2007年12月18日) [Reported by matuyama@impress.co.jp]
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