MemCon Tokyo 2007レポート【DRAM編】
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MemCon Tokyo 2007の会場風景 |
会期:11月13~14日
会場:東京コンファレンスセンター・品川
「MemCon(メムコン)」は、米国のDenali Softwareが主催する半導体メモリ専門の講演会である。同社は米国、アジア、日本などの世界各地で開催地名を冠した「MemCon」を主催してきた。「MemCon」にはDRAMベンダーやフラッシュメモリ・ベンダー、業界団体などが講演者として参画してきており、来場者が半導体メモリに関する最新情報を入手できる場となっている。
主催社のDenali Softwareは展示会運営が専門というわけではなく、半導体メモリ業界では非常に良く知られた、ソフトウェア開発企業である。同社が開発したメモリ・コントローラのIPコアやメモリのシミュレーションモデルなどは、半導体開発やシステム開発などで標準的に使われている。
「MemCon Tokyo 2007」レポートの第1回である本稿では、DRAM関連の講演に関するトピックスをご紹介する。
●デジタル家電とモバイルの比率が増加
DRAMベンダーの大手5社といえば、韓国のSamsung ElectronicsとHynix Semiconductor、ドイツのQimonda AG、日本のエルピーダメモリ、米国のMicron Technologyである。今回の「MemCon Tokyo 2007」は、大手5社の中でエルピーダメモリと、Qimonda AGの日本法人であるキマンダジャパンが講演し、DRAM製品とDRAM市場の最新動向を説明した。
エルピーダメモリとキマンダジャパンの講演はともに、DRAM市場でもPCではなく、日本のエレクトロニクス企業が得意とされるデジタル家電用途を強く意識したものだった。
エルピーダメモリは、DRAM市場を「DCE(デジタルコンシューマエレクトロニクス)/Mobile Phone」と「Server」、「PC」の3分野に分けて論じた。DRAM市場(メモリ容量ベース)全体に占めるDCE(デジタルコンシューマエレクトロニクス)の割合は2007年現在で約13%であり、これが2010年には20%近くに増えると予測した。日本市場における主力製品はDSC(デジタルスチルカメラ)とDTV(デジタルTV)で、DSCの一眼レフ品には1Gbit品が4チップ(合計で512MB)、DTVには512Mbit品が4チップ(合計で256MB)、それぞれ搭載されているという。デジタルコンシューマでも、相当に大きな容量のDRAMを搭載していることが分かる。
エルピーダメモリはPCを含めて用途別に、DRAMのどの品種がどのような割合で採用されていくかの予測も示した。デスクトップPC向けでは2007年現在、DDR2-667が主流である。DDR3の採用は今年中に始まっているものの、本格的な普及が始まるのは2008年で、ノートPCを含めてDDR3が主流となるのは2009年とエルピーダメモリは予測している。
DCE(デジタルコンシューマエレクトロニクス)分野では2007年現在、SDRAMが大半を占める。ここでは3つの流れがあるという。1つは、主流である16bit、TSOP封止のSDRAMである。もう1つは、32bit、1.8V低電圧の流れだ。これはデジタルスチルカメラが開拓した。ここではLP(Low Power)-SDR/DDRが使われている。2つ目は、DDR2-667/800やXDRを使う大容量高速品の流れである。こちらはデジタルTVやDVD、TVゲームなどに使われる。
携帯電話機分野では最近になってDRAMの採用が進んだ。2007年現在の主力は32bitのDDR、1Gbit品である。フラッシュメモリと積層して1個のパッケージに封止する場合が多い。
エルピーダメモリ デジタルコンシューマDiv. エグゼクティブマネージャーの吉富安雄氏 | DCE(デジタルコンシューマエレクトロニクス)向けDRAMの市場予測。縦軸の単位は100万MB。横軸は西暦年 | データプロセッシング分野(デスクトップPC、ノートPC、サーバー)でのDRAM搭載比率の予測 |
デジタルコンシューマエレクトロニクス分野でのDRAM搭載比率の予測 | 携帯電話機分野でのDRAM搭載比率の予測 |
デジタル家電におけるDRAMの使い方の特徴に、バッファ(一時記憶)がある。デジタル信号処理やグラフィックス処理などで一時的にデータを格納しておくときに、DRAMを利用する。処理の内容ごとに要求仕様が違うので、1台のシステムの中に数種類のDRAMを搭載することになる。
デジタル家電が扱うデータの分量は増える方向にあり、リアルタイム性が要求されることから、ハイエンド品はデータ転送速度のより高いDRAMを積んでいく。このため、エルピーダメモリではDDR3やXDRなどの高速DRAMを適切なタイミングで用意していくという。
HDTV(高品位TV)やSTB(セットトップ・ボックス)、DVDレコーダーなどにおけるDRAMの使われ方 | エルピーダメモリにおけるDRAMの品種展開。2008年には32bit構成の512Mbit DDR2-800/1333品を用意する |
●次期低消費DRAMはLP-DDR2
続いてキマンダジャパンの講演概要を紹介しよう。同社の親会社であるドイツのQimonda AGは、2006年5月に大手半導体ベンダーInfineon Technologiesのメモリ事業部門が分離独立して設立された。2006年におけるDRAM市場での順位は売上高と容量(bit数)ともに3位である。
キマンダは、PC以外の用途に向けたDRAM製品に注力している。デジタル家電やモバイル機器などの用途がDRAM市場に占める比率が高まってきたからだ。この傾向は今後も続く。例えばbit換算で表示したDRAM市場は、2006~2011年の5年間に年平均52%で成長する。この52%を上回る伸びをみせる用途は、ポータブルGPS(59%成長)、多機能プリンタ(65%成長)、モバイルPC(70%成長)、モバイルハンドセット(72%成長)、携帯型ゲーム機(80%成長)だとした。
●コントローラと物理層の境界を標準化
「MemCon」のDRAM関連情報で重要な位置を占めているのが、コントローラである。PC/サーバー以外の機器はIntel系のプロセッサを積んでいるわけではないので、当然ながらPC用のチップセットが使えない。組み込み系マイクロコントローラを搭載した機器でDRAMを使うには自前でコントローラを用意する必要がある。機器設計者がコントローラを設計するか、システムLSIベンダーやFPGAベンダー、IPコアベンダーが供給しているコントローラのIPコアに頼ることになる。
「MemCon Tokyo 2007」では、システムLSIベンダー(SoCベンダー)を代表して富士通VLSIがDRAMコントローラ開発をテーマとして講演したので、少し紹介したい。
DRAMが性能向上の過程でSDRからDDRへと進化したときに、DRAMコントローラには大きな変化があった。DDR DRAMのときに、コントローラの物理層(PHY)がIPコアとして分離したのである。取り扱う電気信号の高速化により、機器設計者がコントローラの物理層を設計することが困難になったからだ。物理層「DDR IF PHY」の設計は、SoCベンダーやFPGAベンダー、IPコア・ベンダーなどの仕事になった。
ここで問題となるのが、コントローラ(物理層を持たない)と物理層「DDR IF PHY」の境界である。ベンダーごとに物理層の設計内容は異なるので、機器設計者はベンダーごとにコントローラの設計を変更しなければならない。これは非常に面倒である。
そこでDenali Softwareが中心となり、コントローラと物理層の共通インタフェース仕様「DDR PHY Interface (DFI)」が策定された。2007年1月には最初のバージョンであるRev 1.0が公開された。Rev 1.0はDDR/DDR2 DRAMの物理層に対応した規格仕様であり、現在は、DDR3の物理層に対応したRev 2.0を策定中である。
富士通はすでに、DFIに準拠したDDR PHYマクロを提供中である。この11月にはDDR2に対応したマクロの供給を始めるという。
富士通VLSI テクノロジ開発統括部 プロジェクト課長の加藤好治氏 | DDR SDRAMコントローラとDDR SDRAMの関係。SoCのI/Oセルとコアロジックの間に入り、SDRAMとコマンドやデータなどをやり取りする | DDRコントローラと物理層の共通インタフェース仕様「DDR PHY Interface (DFI)」と、DFIに対応した物理層「DDR IF PHY」 |
DFIの動作タイミング波形 | DFIに対応した物理層「DDR IF PHY」の検証作業。DFIインタフェースの単体検証、PHYの検証、SDRAMとの接続検証の3段階で実施する |
SDRAMとの接続検証。コントローラ、DFI、PHY、I/O、SDRAMモデルを接続し、SDRAMのアクセス動作を確認する | 富士通におけるDFI準拠PHYの供給状況。DDR対応品を供給中である |
□Denali Softwareのホームページ(英文)
http://www.denali.com/
□MemCon Tokyo 2007のホームページ
http://www.denali.com/memcon/tokyo2007JP.html
□DDR PHY Interface (DFI)のホームページ(英文)
http://www.denali.com/ddr-phy/home.html
(2007年11月16日)
[Reported by 福田昭]