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Lenovo、新ワークステーションブランド“ThinkStation”を発表
~2008年1月に2つの新製品を投入へ

発表会の会場となったAT&TウィリアムズF1チームのファクトリー

11月6日 発表



 米Lenovoは11月6日(英国時間)、同社がスポンサードを行なっているF1チームであるAT&Tウィリアムズの本拠地、英オックスフォード州グローブで記者会見を開催し、同社が2008年1月に投入予定の新しいワークステーションのブランド名“ThinkStation”の発表を行なった。

 Lenovoは、2005年にIBMからPCビジネスを買収したあと、主にデスクトップPCとノートブックPCのビジネスを中心に展開してきたが、“ThinkStation”のブランド名を携えて新たにワークステーションのビジネスに乗り出すことになる。その背景には、同社が得意とするアジア太平洋地域におけるワークステーションへの高い潜在的なニーズがある、と同社は説明している。

●アジア市場での大きな成長が望めるワークステーションビジネスに新規参入

 よく知られているように、Lenovoは2005年にIBMからPC部門を買収し、それまでIBMが販売していたデスクトップPCの“ThinkCentre”とノートブックPCの“ThinkPad”を受け継ぎ、その開発と販売を続けてきた。IBMは、これとは別にPCサーバーの“xServer”とPCワークステーションの“IntelliStation”というPCの技術に基づいたサーバー/ワークステーションの製品を持っていたが、これはLenovoへ譲渡されたビジネスには含まれておらず、これらに関しては引き続きIBMがビジネスを継続している。このため、中国などの一部地域を除き、Lenovoはサーバーおよびワークステーションビジネスを展開していなかった。

Lenovo 副社長兼エマージングビジネスユニット ジェネラルマネージャのPeter Schrady氏(右)とIntel EMEA担当セールスディレクターのBernadette Andrietti氏(左)

 しかし、Lenovoは今回発表した“ThinkStation”によりワークステーションビジネスへ新規参入することになる。Lenovo 副社長兼エマージングビジネスユニット ジェネラルマネージャのPeter Schrady氏は同社がワークステーション市場に参入する理由として、「これまで弊社の顧客からそうした製品を提供してほしいという声が多数寄せられていた。また、ヨーロッパのような成熟市場ではワークステーション市場は2~4%程度の成長に過ぎないが、アジアのような成長市場、特に中国やインドなどでは2倍にものぼる成長率が予想されている。ワークステーション製品はPCに比べてマージンも大きくビジネスチャンスがあると判断した」と説明した。

 なお、IBMからPCビジネスを購入したLenovoだが、そのIBMと競合するビジネスに参入することに障壁はないという。「我々のIBMとの契約に、サーバー/ワークステーション市場での制限は何もない。だから我々はワークステーション市場にも、サーバー市場にも、ストレージ市場にも自由に参入できる」(Schrady氏)と述べた。

●シングルソケットの「S10」とデュアルソケットの「D10」がラインナップ

 今回発表されたThinkStationには、2つのラインナップが用意されている。1つは「ThinkStation D10」で、Xeonベースのデュアルソケットワークステーションとなる。もう1つが「ThinkStation S10」で、こちらはCore 2 Extreme/Duoのシングルソケットのワークステーションとなる。

 いずれの製品も、11月12日(米国時間)に発表される予定のIntelの45nmプロセスルールに基づいたプロセッサが搭載されている。発表会にはIntel EMEA(ヨーロッパ/中東/アフリカ地域)担当セールスディレクターのBernadette Andrietti氏も同席しており、「45nmプロセスルールの製品をいち早く投入することで、エンドユーザーにも大きなメリットをもたらせるものと確信している」と述べ、45nmプロセスルール製品がThinkStationに搭載されることをアピールした。また、GPUに関してはNVIDIAのワークステーション向けのものが採用されることも明らかにされた。

 なお、今回の発表ではD10およびS10の詳細は発表されなかったが、Schrady氏によれば「EPAのEnergy Star 4.0に対応した製品を用意するほか、ワークステーションの移動時に簡単に移動できるようにする取り外し可能なハンドル、システムに簡単にアクセスできるラッチなど管理性を高める工夫もしている。また、静音性にも注意を払っており、他社のワークステーションに比べれば相当静かな製品になるはずだ」と述べた。

 また、ThinkPadシリーズやThinkCentreシリーズでサポートされる高い管理性を実現する“ThinkVantageテクノロジー”もThinkStationシリーズでもサポートされ、バックアップソフトウェアの「Rescue and Recovery」、クライアントPCのセキュリティを管理する「Client Security Solution」などのソフトウェアも利用できるという。

 会場にはD10、S10の両製品が実際に展示されており、発表会では具体的に明らかにならなかったスペックなどがある程度わかった。D10シリーズは、発表通りXeonプロセッサが2つ搭載できるデュアルソケットとなっており、メモリにFB-DIMMが採用されているところを見ると、チップセットは開発コードネーム“Seaburg”で知られるIntel 5400ではないかと推測される。PCI Express x16のスロットが2つ用意されており、複数のビデオカードを挿入して利用することもできるようだ。ほかには64bitのPCI-Xスロットが2スロット、PCIスロットが2スロットという構成になっていた。

ThinkStation D10は、Xeonプロセッサを2つ搭載したワークステーション。Extended ATXフォームファクタのマザーボードを採用している

 S10の方は、通常のDIMMが搭載されていたので、おそらくチップセットはX38だと推定される(サウスブリッジはICH10で、Gen2のPCI Expressをサポートという説明がされていたのでX38以外にはあり得ないと考えられる)。

 なお、今回はあくまでブランドの発表のみで、両製品の正式な発表や出荷は2008年1月が予定されているという。販売はLenovoのWebサイトのほか、Lenovoのビジネスパートナーなどを通じて行なわれる。なお、ヨーロッパでの予価は、S10が829ユーロ(日本円で約137,000円)から、D10が1,199ユーロ(日本円で約198,000円)からとなっている。Lenovoの関係者によれば、日本を含む世界中の地域で販売される予定だが、日本での具体的な価格などに関しては未定であるとのことだ。

ThinkStation S10は、Core 2 Extreme/Duoを搭載したシングルプロセッサのワークステーション。こちらはスタンダードなATXフォームファクタのマザーボードが採用されていた

●製品発表時にはCADやCAMなどのプロ向けソフトウェアの認証を獲得予定

Lenovo アジア太平洋地域担当ディレクター Chris Kelly氏

 Lenovoでは、ワークステーション市場で最も重要なポイントとなるCADやCAMといったプロフェッショナルユーザー向けのソフトウェアを提供するソフトウェアベンダからの認証を獲得するべく、各社との協力体制を構築中であるという。Lenovo アジア太平洋地域担当ディレクターのChris Kelly氏は「現在我々はAdobeやAutodesk、SoftImageといったソフトウェアベンダと協力して、それらのベンダから認証をいただけるように努力している。製品の発表時にはおそらく26のアプリケーションから認証をいただけると考えているし、発表後にも努力を続けていく予定なので、さらに認証されるソフトウェアは増えるだろう」と話し、認証だけではなくそれらのソフトウェアベンダと共同でマーケティングプログラムを行なうなど、より強固な協力体制を作ることでエンドユーザーが安心して利用できる環境を作ると述べた。

 ワークステーションと同じようなコンポーネントを利用しているという意味では、サーバー市場にLenovoがどう取り組んでいくかということにも注目が集まる。この点に関してKelly氏は、「我々は常に成長することを目指している。中国以外の市場でサーバービジネスを展開するかなどに関して興味を持って見守っている段階だ。今のところ何の判断も下されていないが、ワークステーション市場への新規参入がその第一歩となる可能性はあると考えている」と、現在は中国向けだけに留まっているPCサーバーを、今後は日本や米国などの他の市場に展開することも十分あり得るという認識を明らかにした。

□Lenovoのホームページ(英文)
http://www.lenovo.com/us/
□ニュースリリース(英文)
http://www.lenovo.com/news/us/en/2007/11/thinkstation.html
□レノボ・ジャパンのホームページ
http://www.lenovo.com/jp/ja/
□ニュースリリース
http://www.lenovo.com/news/jp/ja/2007/11/1106.html
□関連記事
【2004年12月8日】米IBM、PC事業をLenovoに売却
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1208/ibm.htm

(2007年11月7日)

[Reported by 笠原一輝]

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