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Vintage Computer Festivalレポート【展示編】

LINCの実動展示やApple I復刻版など

LINCのコンソール部分。手前上がLINC Tape、その下がアナログ入力ユニット、写真奥の上がCRTディスプレイ、下が制御ユニット

会期:11月3日~4日(現地時間)

会場:カリフォルニア州マウンテンビュー
    Computer History Museum



 Vintage Computer Festival(以下VCFと略す)の2日目は、現地の日曜日になる。イベント的には、この2日目のほうが盛況なようだ。この日は、アメリカでサマータイム(デイライトセービングタイム:DSTという)が終わる日。日曜日の午前2時に時間を1時間戻す。つまり、1時が2回来るのである。というわけで、日曜日の朝からの予定は、前日の土曜日と同じでも1時間後ろにずれることになる。

 VCFは、午前中の講演と午後の展示、マーケットプレースから構成されている。今回は、この展示などについてレポートする。

●動作するLINCが出展

 展示も、個人やユーザーグループなどが機材を持ち寄って見せる形となっており、中にはなかなか珍しいものもある。今回の目玉は「LINC」だろう。LINCは、'62年にMITのLincoln研究所(MITと国防省の共同施設)で開発されたコンピュータで、「PDP-8」とともに世界最初のミニコンピュータであり、おそらく世界最初の「パーソナル・コンピュータ」であった。このLINCは、のちにDEC(現HP)やSPERY(現在のUnisys)で商品化された。このLINCは、開発スタッフの1人が自宅のガレージに保存しており、これを再生して今回の展示が行なわれた。

CPU自体は、この大きなキャビネットの中にある

 LINCの本体は大型冷蔵庫ほどで、これに机の上にのるコンソールやLINC Tape Unitなどが接続される。CRTが装備されており、ここに文字やグラフィックスが表示可能で、音を出すインターフェイスやアナログ入力などがあった。これはもともと米国の国立衛生研究所のために作られ、おもに医学的な研究に使われた。

 このLINCは、DECが製品化していたロジック回路モジュール「DEC Module」を使っている。これは、基板上に数個のゲートを構成した基板であり、LINC内部にはこのモジュールが多数装着されている。

 会場では、このLINCを実際に動かしていた。いまから45年も前のコンピュータが動くというのも感動的ではあるが、すでに45年も前に現在のPCのようにCRTとキーボード、外部記憶、サウンド出力といったハードウェアを備えたコンピュータが作られていたというのには感動を覚える。

●微分解析機

 その他、会場には、Differential Analyser(微分解析機)が展示されていた。これは、メカノと呼ばれる金属パーツを使った組立玩具を使って作られたものだ。モーターによる回転で関数(SIN関数など)を発生させ、微分方程式などを解くために使われる。簡単にいうと、機械を使ったアナログコンピュータである。

 このマシンのポイントは、機械式の積分機である。回転する円盤に対して半径方向に動く軸で小さな円盤が接触しており、その接触位置を動かすことで関数を表現し、その積分値を回転として取り出すことができる。小さな円盤のほうは、大きな円盤の半径上を移動するが、円周の外側にいくほど回転数が上がる。大きな円盤の回転角度をxとすると、小さな円盤の位置が関数f(x)を表し、この円盤の回転がf(x)をxで積分した値となるのである。出力は、回転として表現されるが、これを紙の上などにプロットしていくことで関数のグラフが得られる。

微分解析機。計算結果は、グラフとして表示することもできるし、手前にあるカウンタの数値として読み取ることもできる 積分機の部分。水平に置かれた透明な円盤が回転し、これに対して半径方向に動く小さな円盤が接触していてその位置により関数値を積分した回転が取り出せる

●200個のTTLで作られたCPU

 「Magic-1」は、200個のTTLを使って作られたCPUから組み立てたコンピュータシステムで、Minixを動かすことができる。ボードは5枚からなり、ラッピング(専用工具を使ってピンにケーブルを巻き付ける配線方法。おもに試作用などに使われる)で配線されている。そもそもTIの「TTL 74」シリーズなどは、メインフレーム用に開発した部品を汎用化して販売したもであり、かつては、TTLでコンピュータを作っていた。日本でも、TTLでCPUを作るような記事がハードウェア雑誌に掲載されたことがある。

CPU自体を200個のTTLで作ったMagic-1。Minixが動作する CPU部分。実際には、基板部分は5段重ねになっている

●復刻マシン

 会場では、古いコンピュータだけでなく、古いシステムを復刻した製品も展示されていた。ただし、部品などが入手困難になっているものもあり、オリジナルのままではなく、現在の状況に合わせてアレンジされている。

KIM-1の復刻版となるMicro-KIM(Briel Computers)。99ドルのキットとして販売されている Apple Iの復刻版であるreplica I(Briel Computers)。キーボードや電源は、PC用のものが使えるように変更してある Altairのレプリカである「Zaltair 8800」。基板だけでなくケースまでも復刻。S-100バスを備える

●そのほかいろいろなマシン

 会場には、いろいろなマシンがあったが、その中で有名どころや気になったものなどを紹介しよう。マシンとしては初期のワンボードから、SUNや3B2(AT&TオリジナルのCPUを使ったUnixワークステーション。一時はUnix System Vの標準プラットフォームだった)といったワークステーションなども展示されていた。たしかにUnixワークステーションも初期のものは懐かしい状態だが、8bitマシンとなると、いまではほとんど見ることができず、知らない方も多いかも知れない。

Processor Technologyの「SOL-20 Terminal Computer」。'76年発売。CPUは8080。キーボードやビデオ出力を持ち、現在のPCの形態をなしている。サイエンスの別冊で紹介されたこともあるのでご記憶の方もいらっしゃるかもしれない TRS-80。モニタの下にあるのが拡張ユニット。'77年発表。Z-80を使い最初のモデルのメモリは4KBだった。のちにMicrosoft製のLevelII BASICを搭載した IMSAI 8080(下)とAltair(上)。Altairは8080を使った最初のパーソナルコンピュータ。IMSAIは、そのライバルという位置付けだった。IPLやBIOSも搭載されておらず、フロントパネルからメモリに直接プログラムを書き込んで実行した
HPのモデル9830A。同社のカテゴリではCalcurator(計算機)というカテゴリになるコンピュータ。独自仕様のBASICを搭載、アルファベット表示が可能な1行のディスプレイを備える。記憶装置としてデジタルカセットを内蔵し、オプションでプリンタやFDなどを接続できる。'72年に発売された HP-75。BASICを搭載したハンドヘルドCalcurator。'82年に発表。手前の大きなキーはスペースキーでその横のミゾは、短冊型の磁気カードのスロットで、ここに細い短冊型の磁気カードを入れて読み書きを行なう
MOS Technologyの6502を使ったワンボードコンピュータKIM-1。'76年発表。キーボードと7セグメントLEDを装備し、機械語入力ができた。もともとは、6502プロセッサの評価キットだったが、ホビイストにも人気があった RCA COSMAC 8bit CPUの評価キット。COSMACは、人工衛星に搭載するためにCMOSで作られた8bit CPU。汎用レジスタが多く8080などに比べるとプログラミングしやすかった。初期バージョンは、レジスタユニットが別になった2チップ構成になっていた

●マーケットプレース

 マーケットプレースは、簡単に言えば古いコンピュータや周辺機器、書籍などの即売会である。中にはジャンクのようなものから、CRAY-2などのメモリボード、廃棄されたウェハなどもある。割とゲーム関係のものが多く、Atariのビデオコンピュータシステムなどのカートリッジや古いゲームコンソールなどが販売されている。筆者としてもいくつか気になるものがあったが、なにせ、飛行機に乗って帰らなければならず、大きなものは断念せざるを得なかった。

 午後からの来場者の中にはこれを目当ての人も多く、始まったばかりだというのに、いくつも箱を抱えて回る人もいた。

マーケットプレースには、こんな感じで雑多な品物が並ぶ マーケットプレースで売られていたCRAY-3のメモリボード。そのほか、CRAY-1などのロジックボードもあった

□Computer History Museumのホームページ(英文)
http://www.computerhistory.org/
□Vintage Computer Festivalのホームページ(英文)
http://www.vintage.org/
□関連記事
【11月5日】Vintage Computer Festivalレポート【初日編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1105/vcf01.htm

(2007年11月6日)

[Reported by Shinji Shioda]

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