Demo Fall 2007レポート【携帯電話とコンテンツ編】 カーソルキーを利用する新スタイルの携帯端末入力方式など会期:9月25日~26日(現地時間) 会場:Sheraton San Diego Hotel & Marina ●携帯電話を利用したモバイルライフスタイルを創造する技術 「Life Is Mobile」と名付けられたセッションにおいては、主に携帯電話を利用した技術やサービスのデモが行なわれている。 Kannuuがデモを行なったのは、携帯電話向けの文字入力ユーザーインターフェイスである。モバイルデバイスのヒューマンインターフェイスは、その入力の難しさからモバイル向けのサーチエンジンサービスの発展を妨げる要因であるとし、この入力速度を大幅に改善するものであるとしている。 これは一種の予測入力技術と考えていいものだ。あらかじめ登録された英文の辞書があり、特定の文字を入れると利用頻度が高い次の文字の候補が表れ、次々に文字を入力していける。また、入力していくうちに一気に複数の文字を入力する候補も表示されるようになる。T9とPOBoxを組み合わせたイメージに近いが、その入力をカーソルおよびセンターキーのみで行なうという点に特徴がある。 その入力の様子は動画を用意したので、そちらをご覧いただきたいが、一文字入力するたびに上下左右のキーに次の候補が現れ、数文字入力すると複数文字をまとめた候補が登場。文字数が多くなるに連れて加速度的に入力速度が速くなっているのが分かる。カーソルキーに表示された候補が目的の文字(文字列)と異なる場合はセンターのボタンを押すことで別の候補が表示される。また、この予測入力の辞書は切り替えも可能で、地名や曲名辞書を用いることで特定のジャンルの単語を入力しやすくすることもできる。 ちなみにこのアプリケーションはJavaで書かれているので応用もしやすいという。Kannuuでは携帯以外にも、メディアプレーヤーやセットトップボックスのリモコン、デジタルカメラなど、入力デバイスを持つスペースを持たないがカーソルキーは持っているデバイスを対象に広くアピールしていくとのことだ。
RedSquare Venturesが紹介したMixGetというアプリケーションは、複数の携帯電話を利用して1つのサウンドを演奏するというもの。現在、音楽を演奏できる携帯電話は広く普及しており、それらを集めて友人同士で楽しくバンドのように音楽を演奏できるとする。 デモでは、PC上で動作するソフトウェアを利用し、MP3音声を音の種類に応じて分割する。例えばボーカル、ギター、ドラムなどの種類によって別々のファイルを作成し、これを携帯電話へ転送。同時に再生することで、バンドのように音を出せる、という仕組みになる。 ただし、これはあくまでデモであって、実際のサービスにおいてはパートごとの音楽配信という形でサーバー側から携帯電話へ転送し、そこにビジネスを作り出す考えのようだ。また、現状では出力されるファイルを利用できる携帯電話が限られるが、今後対応範囲を広げていきたいとしている。
Global Mobile Technologiesがデモを行なった「Push-IT」は、PCで見ているあらゆるインターネットコンテンツを携帯電話で“そのまま”見るためのソリューションである。サーバー側、携帯電話側でそれぞれソフトウェアを導入することで、サーバー側からメッセージのような形でWebページを配信。 ユーザーは画像や動画、音楽などのリッチコンテンツを含むWebページを最小限の容量で受け取って、それを見ることができる。受信する側の携帯電話では配信されたWebページを再構成するので、表示可能な1ページの容量に制限がある場合でも問題なく表示できるという。 これまで、携帯電話向けにテキストベースのWebページを作ったり、わざわざプレーンテキストに設定したメールを送る必要はなくなる。こうしたリッチコンテンツを含むWebページを利用することで、より理想の広告や出版物を携帯電話へ配信することができるようになるとアピールしている。
●ブラウザ保護や静止画認証など信用技術の数々 「Building Trust」のセッションでは、個人情報保護や情報の信用確保を行なうためのソリューションの紹介が行なわれた。日本においても情報漏洩や内部統制が企業の重要な課題となっているだけに注目されるセッションだ。 Checkpoint Software Technologiesは、「ZoneAlarm ForceField」と呼ばれるセキュリティツールを紹介。このツールは、Webブラウザを仮想化することでセキュリティを強固にする技術だという。危険なサイトは、行ってしまってからでは取り返しがつかないこともあるが、Webブラウズセッションを仮想化することで実際の環境への影響をなくすことができる。 また、デモではログイン情報やクレジットカード情報などを入力する際に、通常であれば文字列がそのまま表示されるわけだが、この表示を行なわずに作業を進めるデモを紹介。キーロガーが入力文字を把握するのを防ぐ機能だ。いわば、ブラウザを仮想化することで悪意あるアクセス者を騙す技術といえる。
CodaSystem France S.Aがデモを行なったのは、「Shoot & Proof」という携帯電話向けの写真撮影&撮影画像認証システムである。保険の事故調査などを意識したシステムで、携帯電話に内蔵されたGPSによる位置情報とともに撮影した画像を保存。そのデータをサーバーへアップする際の経路中では暗号化して送信される。PCへは、そのサーバーからダウンロードして参照する。 PCにおいては、画像の参照やGPSが記録した撮影地点のマップをGoogleMapを連動して表示できる機能を搭載。さらに画像の認証システムをオンラインで提供しており、同社サイトへアクセスして任意の画像を検査することができる。また、この認証システムはビューワも兼ねているので、オンライン上で画像の参照とGoogleMapとの連動も可能だ。
EncryptaKeyがデモを行なったのは、セキュリティ環境を作るためのソリューションに関するものである。同社が展開しているサービスは、クライアント・サーバー型のネットワーク環境を作って、そこでセキュリティを保つ。デモではクライアントに利用するUSBデバイスが示され、USBデバイスに搭載された独自OSで起動する画面様子を紹介。USBデバイスには指紋リーダーが搭載されており、利用者は必ず指紋認証する必要がある。また、環境上で作成したデータはすべて暗号化されサーバーへ転送される。 このソリューションのメリットとして同社は、セキュリティ機能とアプリケーションをレイヤーに分け、それぞれに機能を追加しやすくしている点を強調。非常にセキュアで企業ニーズに合わせた柔軟性を持っているのが特徴と語っている。
●広告業界向けのリッチコンテンツ作成ソリューション 「Your Media, Your Way」のセッションでは、Webでリッチコンテンツを配信する仕組みを数社がデモした。これらは主に広告業界をターゲットにしたものだ。 Real Time Contentがデモを行なった「Adaptive Media」というアプリケーションは、Webブラウザ上に表示する動画を自動的に生成するというもの。動画にメーカーロゴなどを表示したり、ユーザごとに表示する動画を変更するような仕組みを提供する。製品のブランディング効果を高めたり、ユーザーの嗜好性に沿った動画を表示することによる広告効果アップを狙っている。 サーバー上には動画やエフェクト、音声などを用意してデータベースを構築。このデータベースに登録したコンテンツを基に、スクリプトを組んで動画を構成していき、Webブラウザでページを見た時に動的に動画を生成してくれる。
MuseStormの「MuseStorm Content Engagement Platform」は一言でまとめると、ウィジェット作成アプリケーションである。Web上で動作するウィジェット、Google Gadgetなどのデスクトップウィジェット、モバイル端末上で動作するウィジェットなどを、非常に簡単なプロセスで作成することができる。 作成できるウィジェットは動画やスライドショー、テキストやオーディオなどを表示するシンプルなものだが、スキンやサイズなども指定できる。このサービスはエンドユーザーが利用できるものではなく、主に広告業界に向けて簡単にウィジェットを利用した広告を配信することを可能とするもの。ウィジェットの利用調査も行なわれており、ウィジェットを利用したユーザー数や、どの種類のウィジェットが使われたか、利用されている国などの調査結果をサービスの利用者に対して提供される。 □Demo 2007 Fallのページ(英文) (2007年9月28日) [Reported by 多和田新也]
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