Demo Fall 2007レポート【アミューズメント&Webコミュニケーション編】
指先でつまんでリラックス状態を作るデバイスなど
会期:9月25日~26日(現地時間) 会場:Sheraton San Diego Hotel & Marina ●アミューズメント用途にアプローチする製品・サービス 「We Just Wanna Have Fun」と名付けられたセッションでは、3社が、楽しむことをテーマとした製品などをデモンストレーションした。 最初に登壇したVyro Gamesは、「PIP(Personal Input Pod)」と呼ばれるデバイスを紹介。このデバイスはたまごっちを一回り小さくしたような形状をしており、中央の両面に指先を接触されるエリアを備える。この部分はバイオセンサーになっており、体温や指の表面の乾燥具合などを見て、その人のリラックス状態とストレス状態を分析できる。 PIPはBluetoothを利用して、PCやモバイル機器などと接続することが可能。そして、このデバイスを利用してゲームなどを楽しむことができるのだ。しかし、ゲームを楽しむというよりはリラックス状態を作り上げ、自分でコントロールできるようになるという視点に立っているソリューションという点に特徴がある。 このPIPを利用したアプリケーションとして、ファンタジー系キャラを利用したレース(競走)ゲームが紹介された。リラックスとストレスの状態に応じてキャラが移動し、完全にリラックスした状態になるとゴールするというもの。プレイ中はPIPをつまんで、じっとしているだけで、プレイヤーの動作はほぼ発生しないが、その状態で画面をじっと見つめていると確かにリラックスできそうな雰囲気は漂っている。 このほか、ストレス状態では雨が降っており、PIPをつまんでリラックス状態になったら晴れの映像に変わるというアプリケーションも紹介された。PIPを利用したソフトウェアの開発環境はフリーで提供される。 続いてのデモはNcursionの「MyGladiator.com」というサービスである。グラディエイターの名称からもわかるとおり、これは一言でいえば剣士同士が戦う一種のオンラインゲームである。しかし、現在アメリカで4,000万人を超えるユーザーを持っているソーシャルネットワークサービス「Facebook」上で展開される点に特徴がある。Facebookのアカウント、つまり自分自身が剣などを装備して剣士になるというイメージになるわけだ。 利用自体はフリーになるそうだが、剣などのパーツを購入する際に料金が発生する。剣士には奴隷からEMPERORSまでの階級があり、剣を購入したり戦いに勝ち抜くことでランクを上げていくことになる。またFacebookに登録しているほかのユーザーは、剣士同士の戦いを観戦し賭けることもできる。ここでも事実上現金のやり取りが発生することになる。 ゲーム自体はWebブラウザ上で動作するシンプルなグラフィックであるが、オンラインゲームとソーシャルネットワークを組み合わせたビジネスモデルを提案したデモといえる。
このセッションの最後に登場したのは、WMS Gamingである。同社は「MONOPOLY Super Money Grab slot machines」というスロットマシンを登場させたが、これにはTransmissive Reels Technologyと呼ばれる技術が搭載されている。 Transmissive Reels Technologyとは、従来的なメカを利用したリールの上に液晶パネルをオーバーレイして配置し、リール周辺は一般的な画面として、リール上は透過した状態で液晶に画面を映し出す。そして、この液晶パネルはタッチパネルになっている。これによって、スロットマシンをよりインタラクティブなものにするという。 今回のデモではMONOPOLYをモチーフとした製品で行なわれており、フィーバーするとリール上を含めた形でコインが降り注いだり、ワイルドカードを示すマークをリール上に重ねたりしていた。今後はATIのグラフィック技術を利用した3Dグラフィックスなどや、ドルビーやBOSEなどの技術を利用したオーディオ機能へもフォーカスしていくとした。
●Web上に広がる知識・頭脳を集約する技術の数々 「The Wisdom of Many, Many Individuals」と名付けられたセッションでは、Web上に存在する情報や、同じ目的に向かう人々、知識やアイデアを持った人々を集めたコミュニティや対話の場を作る技術・サービスの紹介が行なわれた。ここで登場したのは8社である。 1社目はDiicoによるデモで、ブックマークサイトを構築するWebサービスの紹介を行なった。このサービスは、情報は人に集まるものという概念で作られたというもの。プラグインを利用して、Web上で気になった情報をドラッグ&ドロップで簡単にブックマークしたり、特定の情報を集めたブックマーク集に対して、ユーザーを招待することで同じ趣味や頭脳を持つユーザーによるコミュニティを構築できる。 また、画面上のデザインはカスタマイズが行なえるほか、Internet Explorerのサイドバーやツールバーも提供され、情報の収集やコミュニケーションをより行ないやすくしている。
2社目はcoComment。ブログなどに投稿されるコメントは、自分が興味あることに対する対話の場となり有用であるが、コメントが増えてすべてに目を通してレスポンスするのに時間を要するのが問題と指摘。そこで同社は、コメントから対話を作り出す、という概念のサービスを展開しており、今回はそのバージョン2.0のデモンストレーションが行なわれた。 コメントを寄せてくれたユーザーにフォーカスし、必要な情報を持つ人とコミュニケーションを作ることを目的としたサービスを提供。コメントを寄せてくれた人を自分のコミュニティに招待したり、新しい対話の場を作ったりすることができるツールとなっている。
3社目はAttendiである。同社は独自のサーチエンジンを提供する会社で、Attendi.comというサービスを展開している。従来のサーチエンジンは、ヒットするWebページは検索対象の定義などが中心であったのに対し、Attendi.comは検索対象を利用した、検索対象について思うことなど、検索対象に対する人の経験を探るサーチエンジンと位置付けられている。 このサイトでは、ユーザーアカウントを作成し、興味あることを登録しておくことで、ほかの人が自分の興味あることを検索したときに自分のアカウントがヒットするようになる。そこからチャットを申し込むことができ、自分が興味あることに対する経験を持っている人と対話する場が設けられることになる。
4社目はRelevantMindで、さまざまな製品に対してユーザーがディスカッションを行なっている情報のリンクを提供するサービスの紹介をした。これは、インターネットで特定の製品情報を調べようと思ってもノイズが多すぎて正しい情報が得られにくいという問題に対するソリューションである。 情熱的なユーザーが活発に議論を行なっている場こそ製品のことをもっともよく知るための情報源と定義。そうした掲示板のスレッドなどに厳選してバーティカルサーチを行ない販売サイトにリンクを貼ることで、ユーザーは購入前にインターネット上の膨大な情報のなかから正しい情報を引き出しやすくなるとしている。 5社目はFluid Innovationで、「Virtual Ventures」と名付けられたWebサービスについて紹介した。これは、ベンチャー企業が技術に対して投資を受け、市場に製品を投入し、それをいかに投資者に還元できるかをシミュレートする一種のゲームである。 ゲームとはいっても、ここに本物の技術を提案すれば、それに対して市場や投資に対して厳しい目を持つ人々からは受けられるであろう投資額を知ることができ、提案した技術に対する投資家やユーザーからの声を基に提案内容に対する問題点や市場規模を広い視野で探ることも可能。その技術が市場においてどの程度の金額を回収できるものなのか、ということを想定することができる。ベンチャー企業がインターネットを通じて、生の声を聞く場を設けるといった目的を強く感じるサービスである。
6社目はAdvantaで、同社が展開する予定の「ideablob」の紹介が行なわれた。このideablobも自分が持つさまざまなアイデアを提案するという点では先述のVirtual Venturesに似ているが、こちらは投資云々ではなく、提案内容に対する良し悪しをideablobのコミュニティ内で審査する点にフォーカスが当てられている。 そして、そのコミュニティ内で人気投票のような形でポイントが付けられていき、月間最高得点を出したアイデアに対して、Advantaから1万ドルの賞金が贈られることになっている。同社にとっては新しいアイデアの発掘を行なう場と捉えているサービスなのである。
7社目はspigit。同社もアイデアを提案し、それをコミュニティのユーザーが評価しているサービスを提供している企業だ。今回デモが行なわれたspigit Enterpriseと呼ばれるサービスは、提供したアイデアを市場の製品として投入するにあたり、製品の評価などをユーザーや投資家から受けるだけでなく、実際に製品を投入する企業としての枠組みを作っていくところからシミュレートしていく。 そして、その経過やアイデア自体の価値を、得られたフィードバックとSpigit独自の解析アルゴリズムにかけて、最終的に市場内の独自通貨である「Spigits」でアイデアに対する株価が数値化される。前者二つがアイデアの価値を決める要素が強かったのに対し、この製品は製品を投入するプロセスを重視している点と、製品価値の評価がユーザーの評価だけで決まらないところがユニークなサービスといえる。 最後に登壇したのは、Glam Mediaである。女性向けWebサイトのGlam.comを展開し2,000万以上のユーザーを集めているという同社が、今回新しいサービスをデモンストレーションした。それは、適切な広告を適切なユーザーに配信するためのOpenAPIのプラットフォームを構築するというものだ。そして、そのプラットフォームで動作するいくつかのウィジェットを提供する。 例えば、Glam Vertical Searchと呼ばれるウィジェットでは、ユーザーが検索した対象を、Glamが持つネットワーク内の情報のほか、Googleなどのサーチエンジンから必要な情報のみをフィルタリングしてバーティカルサーチを行なうというもの。また、Glam Curatorでは、Glam関係のサイトの満足度を登録しておく一種のレーティングシステムが提供される。これにより、より濃度の高い情報を得ることができるようになるというものである。こうしたウィジェットによって、同社のGlam.comは登録ユーザーと大手サーチエンジンやメディアとの懸け橋となっていくとしている。
□関連記事 (2007年9月27日) [Reported by 多和田新也]
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