NVIDIA、「GeForce 7 Series mGPUs for Intel」を発表
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GeForce 7 Series mGPUs for Intelの説明を行なう、Product ManagerのDavid Ragones氏 |
9月25日(現地時間)発表
米NVIDIAは9月25日(現地時間)、同社にとって初めてのIntel向け統合型チップセットとなる「GeForce 7 Series mGPUs(Motherboard GPUs) for Intel」を発表した。今年3月にドイツで開催されたCeBIT 2007の会場において数社が展示を行なっていた「MCP73」の開発コード名を持つ製品だ。10月より各社から搭載マザーボードや搭載PCが登場すると見られる。
●ワンチップで提供される統合型チップセット
「GeForce 7 Series mGPUs for Intel」(以下、GeForce 7 for Intel)は、NVIDIAにとって初めてのIntelプラットフォーム向け統合型チップセットとなる製品だ。製品名からも分かる通り、GeForce 7世代のグラフィックコアを搭載し、メモリコントローラやサウスの機能を統合してワンチップで提供される。
ワンチップの製品ではあるが、製品名称はグラフィック製品のブランドあるGeForceとチップセット製品のブランドであるnForceが併記される格好となる。製品名は少々ややこしいが、すでに発売されているAMD向けチップセットであるGeForce 7050 PV+nForce 630aなどと同じ形式となる。
今回投入される製品のラインナップと価格帯は下記の通り。主なスペックは表にまとめている。シリコンはTSMCの80nmプロセスで製造される。
・GeForce 7150+nForce 630i:70ドル
・GeForce 7100+nForce 630i:60ドル
・GeForce 7050+nForce 630i:(不明)
・GeForce 7050+nForce 610i:50ドル
・nForce 630i:(不明)
GeForce 7150+nForce 630i | GeForce 7100+nForce 630i | GeForce 7050+nForce 630i | GeForce 7050+nForce 610i | nForce 630i | |
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対応CPU | Core 2シリーズ/Pentium D/Pentium 4/Celeron D | ||||
対応FSB | 1,333/1,066/800/533MHz | ||||
対応メモリ(最大) | DDR2-800 | ||||
HDMIサポート | ○ | ○ | × | × | n/a |
HDCPサポート | ○ | ○ | ○ | × | |
DVIサポート | ○ | ○ | ○ | × | |
グラフィックコアクロック | 600MHz以上 | 600MHz | 500MHz | 500MHz | |
PCI Express | PCI Express x16×1/PCI Express x1×2 | ||||
シリアルATA | 4(3Gbps転送対応) | ||||
パラレルATA | 1ch(2ドライブ) | ||||
RAID | RAID 0/1/5/10 | ||||
LAN | Gigabit Ethernet | Ethernet | Gigabit Ethernet | ||
USB | 10ポート | 8ポート | 10ポート |
ラインナップを眺めると分かるが、3種類のグラフィック機能、2種類のサウス機能を組み合わせて構成されていると考えると理解がしやすい。なお、基本的には上記リストの内、価格を表記した3製品が主力となるようだ。ただ、価格が不明な2製品に関しても特定のOEMベンダーなどに向けて出荷されるようで、これらのチップセットを搭載したマザーボードや採用PCが登場する可能性はある。
CPUは1,333MHz FSBまでサポート。Core 2 Quadへの対応も可能とのことで、利用できるCPUの幅は広い。このほか、サウス機能の違いはサポートされるLAN機能とUSBポート数が主な違いとなる。
GeForce 7 Series mGPUs for Intelのチップ。グラフィック機能とノース/サウス機能がワンチップに統合されている | デモンストレーションで利用された、GeForce 7150+nForce 630i搭載のリファレンスマザーボード |
GeForce 7150+nForce 630iのブロックダイヤグラム |
GeForce 7100+nForce 630iのブロックダイヤグラム |
GeForce 7050+nForce 630iのブロックダイヤグラム |
GeForce 7050+nForce 610iのブロックダイヤグラム |
●シングルチャネルメモリでVista Premiumの要件を満たす
この製品の性格を表す上で最も特徴的なスペックがメモリの仕様ではないかと思う。昨今のチップセットでは主流となっているデュアルチャネルメモリインターフェイスを実装しておらず、シングルチャネルのみとなる。が、シングルチャネルによるアクセスであっても、Windows Vista Premiumの要件を満たせるというのが、本チップセットで大きくアピールされているポイントなのである。
本チップセットのライバルとなるのは、同じIntelプラットフォームの統合チップセットであるIntel G33やG35などとなる。それらをシングルチャネルで利用した場合、Windows Vistaのエクスペリエンスインデックスの測定に使われる性能測定ツール「WinSAT」において、メモリメモリが1.6GB/secの帯域幅を確保できないという。
これは、統合型チップセットの場合、メインメモリのアクセスがビデオメモリのアクセス速度ともなるため、Windows Aeroを動作させるのに必要なビデオ性能が確保できないと言い換えてもいい。つまり、Intel G33/35をシングルチャネルで利用する場合は、Windows Vista Premiumの要件を満たせないということになるわけだ。
一方のGeForce 7 for Intelでは、シングルチャネルアクセス時でも2GB/sec程度のアクセス速度となるという。これならば、Vista Premiumの要件を満たせる。
このセグメントの製品にとって、この違いは小さくない。デュアルチャネルの場合は言うまでもなくメモリモジュール2枚が必要となる。つまり、Intel G33/35でVista Premiumを謳おうとするならば、メモリモジュール2枚を搭載したシステムを作らなければならない。しかし、GeForce 7 for Intelならばメモリモジュール1枚でVista Premiumを実現できる。
ちなみに、NVIDIAのリファレンスマザーでは2つのDIMMスロットを持ち、容量は最大4GB。例えば1GBモジュール1枚を基本構成として、空きスロットを残した状態で販売してもVista Premiumの要件を満たすというのは、ユーザーにとってはうれしいポイントだ。
メモリインターフェイスはシングルチャネルとなるが、WinSATにおいて2GB/secのアクセス速度を発揮。Windows Aeroの動作に求められる1.6GB/secのビデオメモリアクセス速度を可能とすることで、Vista Premiumの要件を満たすことになる | 後述するデモ環境においては1GBモジュール1枚の構成となっていた |
●GeForce 7世代のグラフィック機能、PureVideoには非対応
GeForce 7 Series for Intelのグラフィック機能は、製品名からも分かる通りGeForce 7世代のコアをベースとしたものだ。よって独立型シェーダのアーキテクチャとなり、シェーダユニットはピクセルシェーダ2基、バーテックスシェーダ1基の構成となる。ビデオメモリはメインメモリとの共有で、最大256MBまで割り当てられる。
GeForce 7150/7100はHDMI出力もサポートしており、ワンチップ製品であることから映像と音声の同期はチップセット内で行なうことが可能となっている。また、いずれの製品も外部ビデオカードを増設することができ、その場合はチップセット統合グラフィックと同時に利用して、4画面出力を行なえる。
コアクロックは採用するOEMベンダーによって異なるが、最上位モデルのGeForce 7150において600MHzを超える動作が可能となっている。AMD向け製品の最上位モデルとなるGeForce 7050 PV+nForce 630aのコアクロックは425MHzであったことを考えると、Intel向け製品では最廉価モデルでも500MHz動作が可能というのはパフォーマンス面での期待がかかる。ただ、今回の製品は3Dパフォーマンスに関して大々的にアピールされておらず、そのパフォーマンスデータも現時点で公表されていない。
発表に先立って行なわれた説明会においては、環境を統一したIntel G33のPCとの比較で、Google EarthやAdobe Readerのレンダリング性能が優れている点などをアピールした。
Windows Vistaにおいて主要30タイトルの動作状況をNVIDIAが調べたところ、Intel G33は正常動作したものが36%に留まり。37%はゲームを開始することができなったのに対し、GeForce 7 for Intelでは90%が正常動作したとしている。
また、セカンドライフにおいても、セカンドライフのWebに記載されている「動作しない可能性が高いグラフィック製品」のリストに“Intel”の文字があるが、GeForce 7 for Intelは問題がないことも訴えた。
この製品においてNVIDIAが重視しているのは、パフォーマンスではなく、Windows Vistaにおける一般的なアプリケーションの性能や互換性の問題にあるようだ。
なお、GeForce 7 for IntelはPureVideoに対応していない。この理由についてProduct ManagerのDavid Ragones氏は「この製品が対象とするマーケットセグメントにおいてはビデオ再生支援機能が製品選択の動機になりにくい」とする。しかし一方で、来年の登場予定の新しい統合型チップセットではPureVideo HDをサポートする予定であるともしている。
このほか、Ragones氏は今後の製品計画についても言及。先にも少し触れた来年に登場が予定されている統合型チップセットの新製品では、グラフィックコアがDX10対応になる。NVIDIAはGeForce 8発表以降、常々「Top to BottomでDX10対応製品を提供していく」と語ってきたが、Bottomの部分にDX9を残してしまっていることになるわけで、新チップセットの投入によってようやく公約が果たされる格好といえるだろう。
このほか、ローコストな統合型チップセットと、そのマザーボードに追加搭載したビデオカードの組み合わせでSLIを構築するHybrid SLIについても紹介があった。パフォーマンスを必要としないときにはチップセットに統合されたグラフィック機能を利用することで消費電力を抑制し、パフォーマンスが必要なときに両方のグラフィック機能を有効にし、GPGPUとしての応用も可能というもの。
ただし、Hybrid SLIに関しては、現時点で具体的な製品計画や時期は語られていない。省電力に関するメリットを持つ以上、モバイルプラットフォームへの投入も期待されるが、モバイル向けチップセットに関する予定も何もコメントされなかった。
●Intelプラットフォームのシェア獲得に向けた製品
NVIDIAのチップセットというと、AMDプラットフォーム向け製品という印象が強いと思う。実際、AMDプラットフォームにおけるマーケットシェアは62%に達しているという。ただ、AMD向けチップセットにおいてもライバルの存在であったATIがAMDに買収されたことで、NVIDIAにとってAMD向け製品への注力に対するリスクは高まっていると考えるのが自然だ。実際、AMDはすでに次期チップセットであるRD790をCOMPUTEX TAIPEIで披露しているのに対し、NVIDIAのAMD向け次世代チップセットの話は現時点で具体性の高い話が聞こえてこない。
一方のIntel向けプラットフォームに関して、NVIDIAのシェアは0.6%に留まっているのが現状だ。Intel向けチップセットとしてはハイエンド製品であるnForce 680i SLIなどを提供してはいるが、統合型チップセットはこれまで提供してきていなかった。Ragones氏は、IntelプラットフォームにおけるIntelのシェアがほかを圧倒しているのは統合型チップセットの存在が大きな要因であるとしており、NVIDIAは今回のGeForce 7 for Intelを持って、ここに切り込んでいく格好となる。
AMDプラットフォームではマーケットリーダーとなっているNVIDIAだが、今後は、現状0.6%に留まっているIntelプラットフォームのシェア獲得を目指す | GeForce 7 for Intel搭載マザーを発売予定のベンダー。登場は10月が予定されている |
□NVIDIAのホームページ(英文)
http://www.nvidia.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.nvidia.com/object/io_1190676485302.html
□ニュースリリース(和文)
http://www.nvidia.co.jp/object/io_1190660547749.html
□製品情報(英文)
http://www.nvidia.com/object/mcp_intel_page.html
□関連記事
【3月16日】【CeBIT】MSIがNVIDIAの次期GPU「G84」「G86」を展示
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0316/cebit05.htm
(2007年9月26日)
[Reported by 多和田新也]