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COMPUTEX TAIPEI 2007レポート

【冷却パーツ編】
開発中クーラーや各社の今夏~今秋の主力製品など
~静かに進歩を続けるファンにも注目

日本でも人気のCPUクーラー「ANDY SAMURAI MASTER」を手に写真撮影に応じてくださったのは、Scytheのブースで説明員として常駐するアンディさん。述べるまでもなく、パッケージに描かれているANDY SAMURAIのモデルその人

会期:6月5日~9日

会場:Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/2/3
   Taipei International Convention Center


 例年、COMPUTEX TAIPEIの会場内には多くの冷却関連製品が展示される。今年は、小型の水冷キットが一気に減った印象は受けるものの、空冷製品を中心に多くの新製品や開発中のプロトタイプ製品を見ることができた。

 ここでは主要メーカーの製品を中心に会場内に展示された冷却関連製品を紹介していく。


●Scytheブースには今年第3四半期後半予定の新製品が多数

 300mmファンを利用したCPUクーラーのデモを行なったScytheのブースでは、今年秋に発売が予定されている製品や、開発中の製品を見ることができた。

 「Zipang」は、140mm角ファンを利用するのが特徴。ヒートシンクは下部にダイキャスト、上部にフィンを利用したものを重ねるように配置しており、ヒートパイプで連結されている。このクーラーの性能は相当高いそうで、定評あるInfinityに迫る性能を見せるという。トップフロー方式で高性能なクーラーを求める人は気になる製品だろう。発売は8月~9月ごろの予定となっている。価格は未定。

 また、以前から話題だけは上っていた「Ninja Cu」だが、初代Ninjaの発売から3年が経過した記念としての発売を計画しているとのことで、登場する可能性が高まっている。ヒートシンクだけで970g、クリップやファンを含めて1kgを超える重量となることから、現在クリップの改良などを進めているところだという。

 発売未定の開発中製品は、CPUクーラー「Hybrid」、GPUクーラー「Sasuke」、チップセットクーラー「Komachi」(いずれも開発コード名)が展示されている。Hybridではヒートレーンとヒートパイプの両方を使った熱移動、SasukeとKomachiは100mm角の薄型ファンと、それぞれに特徴のある製品となっているので、今後に期待したい。

 また、いずれも発売は未定とされたが、ファンも新製品が展示された。「Kaze Jyuni」は、風量:回転数比の向上をコンセプトとして開発された製品。羽根の枚数や形状、軸の小型化などの工夫を施している。風量は、500rpm時28.56CFM、900rpm時51.40CFM、1,200rpm時68.54CFM、1,500rpm時89.80CFMとなっており、現在手軽に入手できる120mm角ファンと比較しても、その大きさが分かる。

 もう1つは「Kaze Maru」で、こちらは135mm角で利用されるファンを利用し、ハウジングを丸く加工することで、120mm角ファンとネジ穴の位置で互換性を持たせたものとなる。つまり、120mm角ファンを利用するCPUクーラーやケースなどに取り付け可能になっているのだ。風量は1,200rpm時に70.87CFM。

 そのほか、今月中にも発売が予定されているメモリヒートシンク「Kama Wing」や、HDDクーラー「X-Zero HDD BOX(3.5”Version)」などの製品が同社ブースでは展示されている。

300mm角を使った超大型CPUクーラーのデモ。もっとも展示用の特別製作品で、性能もあまり高くないそうだ。だが、“もう少し小さい”程度の大型クーラーは発売を考えているそうだ 今年の秋には日本でも見ることができそうな「Zipang」。トップフローが好まれてかAndyの売れ行きが好調だそうで、140mm角ファンを使ったZipangも人気製品になるかも知れない Ninjaのフィンを銅製に変更した「Ninja Cu」もいよいよ発売が見えてきた。利用時に1kgを超える重量の問題を解消中
ヒートパイプとヒートレーンという2つの熱移動パーツを使った「Hybrid」。これは試作品とのことだが、改良は続く見込みで、発売されるときはまったく違う姿になっているかも知れない ビデオカードクーラーの「Sasuke」。写真では80mm角ファンが使われているが、Komachi用に開発した薄型の100mm角ファンへ変更する予定とのこと チップセットクーラーの「Komachi」。この製品のために開発された100mm角ファンが特徴
より低い回転数で多くの風量を出せる120mm角ファン「Kaze Jyuni」。25mm厚の製品となる。横に写っている製品と比べても軸の大きさなどに明らかな違いがあるのが分かる。ちなみにベアリング部はスリーブ構造 「Kaze Maru」は、135mm角ファンを利用しつつ、ハウジングを円状にすることで120mm角のネジ穴へ取り付けできるのが特徴 今月中にも登場する見込みのメモリヒートシンク「Kama Wing」。価格は不明だが、1,500円以下のはず、とのこと
開発中のHDDクーラー「X-Zero HDD Box(3.5" Version)」。静音は追及していないそう 「Infinity」は次回生産分から「Mugen」という製品名へ変更されるそうだ。中身はInfinityそのままだが、パッケージも変わるそうなので購入時は注意されたい

●山洋電気が制振にこだわったファンを展示

左が従来のファン、右が新開発ファン。画面が振動センサーのグラフ、下の数字ノイズレベルであるが、その違いがよく分かる

 Scytheのところで形状の工夫で性能を向上させたファンの話題を挙げたが、国内のファンメーカーである山洋電気のブースでも、見た目は一般的な軸流ファンながら、振動の抑制と静音化を図ったファンが展示された。

 これは、ハウジングの強度や羽根、ファン回転の制御方法などを見直すことで実現されたもの。写真撮影禁止だったため、振動センサーのグラフのみの掲載となってしまうが、そのブレ幅の小ささが分かるだろう。実際、そのファンと通常ファンを手に取らせてもらえたが、震えが収まっていることが明らかに体感できた。ただし、単体での発売予定はいまのところなく、秋葉原などに並ぶことがあるとしても、かなり先になる見込みとのこと。

 ちなみに、今回の展示では50mm角ファンを利用したものだが、現在120mm角ファンまでラインナップが揃っている。こうした制振ファンは、電子機器の発熱が増える一方で、機器のわずかなブレも許されない医療現場やAV機器用途などで需要が飛躍的に高まっている。ファンは劇的なブレイクスルーがない分野ではあるが着実に技術は進歩しており、こうしたニーズに刺激されて今後も似たようなアプローチの製品は増える可能性がある。

●Thermalrightが全身ヒートシンクのケースを展示

 Thremalrightのブースでは、ケースそのものをアルミフィンで囲ってしまったインパクトのあるケースが展示されている。「HSC」シリーズと名付けられたこれらの製品は、ATX用、microATX用、HTPC用、Mini-ITX用がラインナップされ、価格は500ドル以下。

 構造は、CPUやチップセット部と接触する部分とケースをヒートパイプで接続し、そこからケースを構成するアルミフィンへ熱へ移動。対流によって熱を空気中へ逃がすといったもの。ケース外部のアルミフィンにもヒートパイプが貫通しており、これによる熱移動で表面積をかせいではいるが、これほどの長さだとヒートパイプを使っても一部にしか熱は伝導しないと思われる。ただ、アプローチとしては面白い製品だ。

 今回展示したものはエンジニアリングサンプルとのことだが、来月にも量産を開始したいとしている。

 このほか、同社ブースでは、銅製のパイプ内に水を通す水冷用ラジエータも展示された。細いパイプを使うことで空気と触れる面積を増やしているのが構造上の特徴といえるが、エンジニアリングサンプルということもあってか見た目は無骨。とはいえ、こちらも来月には発売の見込みを立てたいとしている。

全体をアルミフィンを使ったヒートシンクで覆うという発想のファンレスケース。写真はATX対応のタワーケース こちらはmicroATX用のもの。デスクトップ状のケースだが、上に物を置くのは禁物かも知れない
写真右がATX対応のHTPC向け製品。左がMini-ITX用。Mini-ITX用のみ天板と底面は通常の板になっている 銅製の細いチューブを利用した水冷用ラジエータ。もう少し短いバリエーションモデルも展示されていた

●Zalmanブースでは水冷ケースやビデオカードクーラーの新型など

 Zalman Techといえば、ファンレスケースとして有名になった「TNN500」シリーズや、Reseratorのような大型ヒートシンクなど、常識を打ち破るような巨大な冷却ソリューションを出してきた。そのZalmanは今回、ケースの側面を水冷のラジエータとして利用する製品を展示している。

 ケースの両側面の内側に、金属製のパイプを設置。5インチベイ部にタンクとポンプをそれぞれ設置し、CPUやGPUなどへ水を送る。そして、ケースの左側面を通ってケース背面のラジエータへ行き、さらにケースの右側面を経由してタンクへ戻るといった仕組みだ。

 ケースファンを利用したラジエータが背面に備え付けられており、完全にファンレスを狙った製品ではないものの、ケース側面もラジエータとして利用することによる冷却性能の向上には期待できそうだ。

 また、Cebit 2007で展示されたReserator XTと同じインジケータがケース前面に埋め込まれており、水温やファン回転数、ポンプ吐出量の監視や、吐出量とファン回転数をコントロールして騒音を調整する“ボリューム”コントロールが行える。発売は年内が予定されている。

 このほか、Zalmanブースでは、ビデオカードクーラーの新製品も2つ展示された。1つはGeForce 8800などでの利用を想定したハイエンド向け製品「VF1000 LED」で、80mm角相当のファンを備える製品。最大1,400rpm/18~28dBAのファンを利用して、100Wの冷却が可能という。

 さらに、本製品ではGeForce 8800シリーズで利用するためのキット「ZM-RHS88」をオプションで用意しており、同ビデオカードで利用する際には、これを同時購入する必要があるとしている。GeForce 8800の場合100Wの冷却能力では足りないのが理由だろう。

 ちなみに、このZM-RHS88はマウンタも兼ねているそうで、VF1000 LEDはこのパーツを取り換えることで将来に渡ってあらゆるビデオカードへ対応できるようになる、としている。価格はVF1000 LED本体が55ドル前後、ZM-RHS88が30ドル前後となる予定。韓国では6月18日の発売が決まっているそうで、日本でも早ければ月内には発売できるかも知れないとのこと。

Zalman Techが展示した水冷ケース。側面部に金属製のチューブを取り回すことで冷却性能を向上しているのが特徴。タンクとポンプは各々独立しており、5インチベイの上下に配置される Reserator XTと同じ仕組みのインジケータを内蔵。ポンプの吐出量に着目したコントロールが特徴 ハイエンドビデオカード向けビデオカードクーラー「VF1000 LED」は、マウンタ兼補助ヒートシンクにより、今後のハイエンドビデオカードにも対応できるとする製品

●そのほか気になる冷却製品

 COMPUTEXの会場内では、これまでに紹介してきたもの以外にも、さまざまな冷却関連製品が展示されている。最後にまとめて紹介しておきたい。

ThermalTakeは同社製CPUクーラーのメインコンセプトとなっている「Orb」シリーズを拡充。Super Orbは過去に同名製品が存在したが、今回別の形状で展示されており、120mm角と思われるファンを取り付けた大型の製品になっている。発売は今年第4四半期を予定 ThermalTakeの「DuOrb for VGA」。半円状のOrbを2つ連結されたような形状で、ファンを2つ装備 こちらはCPU用の「DuOrb for CPU」。これらDuOrbシリーズは3週間以内に出荷を開始したいとしている
GIGABYTEの「VOLAR」。ヒートパイプによって接続されたヒートシンクが45度傾いているのが特徴で、これによりファンの風をVRM部の冷却にも役立てる GIGABYTEではタワータイプのCPUクーラー「TALOS」シリーズも今秋発売予定。TALOS(写真下)は92mm角、TALOS Pro(写真上)は120mm角ファンを、ヒートシンクの中に埋め込んでいる 同じくGIGABYTEのビデオカード「V-Power」。GeForce 7900 GTXのリファレンスクーラーに酷似した形状だが、表面パネルをメッシュ状にすることで性能向上を図っている
写真左がクーラーマスターの新製品「GEMINII S」。従来のGEMINII(写真右)の小型版となる。小型化とはいっても120mm角ファンを1基取り付け可能なほどのサイズ。また、付属のマウントパーツを利用して90mm角ファンを2基取り付けることができ、GEMINIIの発想が本製品にも譲られている クーラーマスターの「Hyper 212」は、ツインタワー状のヒートシンクで、両側面に120mm角ファンを取り付け可能 FOXCONNが展示を行った「CCU-4PM-NBBS-01-01」。全銅製のヒートシンクと90mm角ファンを組み合わせた製品。展示品は試作品でファンの一部がはみ出しているが、これは製品化前に修正される予定とのこと。発売時期などは未定
Zawardが展示したファンレスチップセットクーラー「TwinTower」。片方のタワーの軸は360度回転するようになっており、ビデオカードなどとの干渉を避けられるのが大きな特徴。早ければ7月にも発売したいとしている Zawardブースでは、同社製品でおなじみの「ゴルフファン」をモチーフにしたノートPC用クーラー「Golf Laptop Cooler」も展示。ノートPCの通風口に取り付けて冷却能力を増すもの。発売は9月以降

□COMPUTEX TAIPEIのホームページ(英文)
http://www.computextaipei.com.tw/
□関連記事
【2006年6月12日】【COMPUTEX】冷却機器編
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0612/comp17.htm

□COMPUTEX TAIPEI 2007レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/link/comp.htm

(2007年6月11日)

[Reported by 多和田新也]

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