ジム・ゼムリン氏

5月30日 開催

　Linuxの非営利目的支援団体であるLinux Foundationは30日、都内で記者会見を開催。Executive Directorを務めるジム・ゼムリン氏が同団体の今後の活動内容について解説した。

　Linux Foundationは、2007年にLinuxの普及を推進するOpen Source Development Labs (OSDL)とFree Standards Group (FSG)が合併して設立された団体。

　ゼムリン氏は「オープンソース/Linux市場が数十億ドル規模に達し、オープンな革新と共有開発の効果が広く認められた現在、Linux採用における第1段階が終わったと言える」と前置きした上で、これからの“第2段階”に向けたLinux Foundationの活動内容を説明した。

　Linuxがさらなる成長を遂げる上で必要なのは、Microsoft(Windows)との競争に勝ち抜いていくことだ。しかしそのためには、それ以前に異なるディストリビューション間などLinux内部での競争を抑え、統制された動きが必要だとゼムリン氏は分析する。

Microsoftは普及促進、攻撃、標準化において優れている

　そこでLinux Foundationは、「普及促進」、「保護」、「標準化」の3点を支柱に据えた活動を行なっていく。普及促進と標準化は、ゼムリン氏自身「Microsoftの非常に得意とするところで、同社に成功をもたらした要因」と認めている点で、これらをLinuxにも採り入れていく。

　ただし、もう1つMicrosoftが得意とする「(他者への)攻撃」については採り入れない。代わりに、特許訴訟などの脅威に対して、Linux Foundationが法的な援助を与えたり、Linuxの各プロジェクトが各国の法規制に準拠しているかどうかを確認するツールを提供することなどで、Linuxコミュニティを保護していくという。

　また、独占的地位から生じるWindows環境の選択肢のなさに対して、オープンソースで、かつ競争があるLinuxでは、競争により品質やセキュリティが向上し、アップデートも頻繁になり、価格も下がるという強みも強調している。

　普及促進については、シンポジウムなどを各国で開催し、OS開発者、システム開発者、事業者、ユーザー、政府関係者などが一堂に会し、直接対話や意見の交換などを行なえる場所を提供。また、Linuxプラットフォームに対する競合他社からの挑戦に対して、Linux Foundationが率先して反論するなどの共同体制を敷いていく。

　標準化については、検証ツールなどを提供していくことで、ディストリビューション間での互換性を高めることに努める。また、技術の標準化作業も積極的に行なうほか、認証ロゴプログラムやブランドを用意することで、開発者/ユーザー双方への利便性を高める。

Linux Foundationが目指す、品質/一貫性/性能/価格の改善→採用拡大→ソフトウェアの増大と市場の拡張→Linuxベンダーの利益性向上→Linuxプラットフォームの重要性向上の循環

　このように、Linux Foundationでは、Linux自身の強みにMicrosoftの強みを織り交ぜることで、第2段階の成長を目指す。興味深いのが、Windows Vistaが登場した今がLinuxにとっての好機と捉えている点だ。

　ゼムリン氏は、「Windows Vistaでは、10年以上前に書かれたDOSのプログラムが動くほどソフトウェア互換性に優れているが、ハードウェアについてはユーザーにアップグレードを強いている。だが、Linuxは従来のハードウェアで十分動作する。また携帯電話市場が注目される中、数千万台の端末を販売していく上で、Windowsの高いライセンス代を払いたいと思う人は少ないだろう」と語り、品質/一貫性/性能/価格の改善→採用拡大→ソフトウェアの増大と市場の拡張→Linuxベンダーの利益性向上→Linuxプラットフォームの重要性向上という循環を確立して行きたいとした。

　質疑応答で、先だってMicrosoftが「オープンソースはMicrosoftの特許を235件侵害している」との声明を出したことについて質問が及んだ。これに対しゼムリン氏は「我々はそのことを全く意に介していない。というのも、Microsoftの狙いは訴訟ではなく、Linuxコミュニティの間に恐れを喚起し、ビジネスを滞らせることだからだ」と答えた。

□Linux Foundationのホームページ(英文)
http://www.linux-foundation.org/
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【5月21日】「オープンソースの特許侵害235件」－Microsoftの公表に騒然(ENTERPRISE)
http://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/infostand/2007/05/21/10303.html

(2007年5月30日)

[Reported by wakasugi@impress.co.jp]