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WinHEC2007 基調講演レポート

Windows Server 2008の製品展開やロードマップが公開

会期: 2007年5月15日~17日(現地時間)

会場: Los Angeles Convention Center



 WinHEC 2007の2日目の基調講演からWindows Server 2008関連の話題を中心にレポートしたい。WinHEC 2日目の基調講演は3つ。このうち、Bill Laing氏とMark Russinovich氏がWindows Server 2008関連のスピーチを行なった。

 Bill Laing氏は、Windows Server DivisionのGeneral Managerであり、Mark Russinovich氏は、Platform and Services Division(クライアントWindowsとLiveを統括する部署)のTechnical Fellowだが、Sysinternalsの「あの」Russinovichである。Sysinternalsは、現在ではMicrosoftに買収されて、TechNetのWindows Sysinternalsになっているが、Process Explorerやシリアルポートの通信をモニタするPortmonなどを使った方もいるのではないかと思う。

 昨年(2006年)7月にSysinternalsサイトを運営しているWinternalsがMicrosoftに買収され、TechNetに統合された。創業者の一人Russinovichは、このためにMicrosoftのTechnical Fellowとなったわけだ。同氏は、そのツールの作者として、また、Windowsカーネルの解説書であるWindows Internalsやインサイド Microsoft Windowsの著者としても有名。また、ソニーBMGの音楽用CDに含まれていたrootkitの発見者としても話題になった。

 Bill Laing氏のスピーチは「Windows Server: Advancing Your Business」で、Windows Server 2008の現状と今後の展開などについて話すのに対して、 Mark Russinovich氏の方は、「Windows Server Platform Internals」と題し、Windows Server 2008の改良点などについて話を行なった。ただし、Mark Russinovich氏のスピーチは、基調講演というよりも内容的にはセッションに近かった。

Windows Server Division、General ManagerのBill Laing氏 Platform and Services Division、Technical FellowのMark Russinovich氏

●2009年にはWindows Server 2008 R2

 Windows Server 2008は、年内にRTMとなり、その後製造が終了次第出荷の予定である。その後を含めたロードマップが、Bill Laing氏の基調講演で示された。

 まず、Windows Serverは、メジャーリリースとリリースアップデートを交互に繰り返すパターンとなる。現在のWindows Server 2003がWindows Server 2003 R2になったように、Windows Server 2008に対して、Windows Server 2008 R2が登場する予定だ。

 また、Windows Server 2008の登場後、現在のWindows Serverファミリは、段階的にLonghornベースに切り替わっていく。

 現在のWindows Server 2003 R2では、下は、Windows Home Serverから上は、Windows Server 2003 R2 Datacenter Edtionと、家庭からデータセンターまでをカバーする製品になっている。これがWindows Server 2008ベースでも継続され、さらに現在のSmall Business Server(SBS)とWindows Server 2003 R2 Standard Editionの間にMidsize Business用の製品が加わる。

 SBSは、Windows ServerをベースにExchange ServerやISA Server、SQL Serverを組み合わせた製品。Windows Server 2003 R2 Standard Edtionがベース(実際にはStandard EditionとPremium Edtionがある)で、具体的に75クライアントまでという制限がある。

 SBSの後継は、以前は、Windows Small Business Server “Longhorn”と呼ばれていたが、「Cougar」というコードネームが付けられた。順当にいけば、Windows Small Business Server 2008となるはずだ。さらに、もう少し大きな規模の企業向けのBusiness ServerとしてWindows Server “Centro”が用意される。これは、構成的には、Small Business Serverと同じで、クライアント数を増やしたものと考えられる。

 これにStorage ServerのLonghorn版を加え、3つのWindows Serverが2008年には登場予定である。

 その後の2009年には、Windows Server 2008 R2でマイナーバージョンアップが行なわれる予定だ。

 なお、Windows Server 2008のRTMと同時に、仮想環境であるWindows Server Virtualization(Viridian)のβテストが開始され、Windows Server 2008出荷後180日以内に仮想環境が正式提供される予定だ。最近のMicrosoftの呼び方だと、Future Packという形での提供になると思われる。

Windows Serverは、家庭から小規模オフィス、大規模なエンタープライズまでをカバーする製品ファミリになっている Windows Serverは、2年周期で、メジャーリリースと、アップデートリリースを繰り返すパターンとなる Windows Serverのロードマップ。2009年には、Windows Server 2008R2が登場予定

●64bitへ強制移行か

 このWindows Server 2008からは、本格的に64bitへの移行が開始される。というよりも、なかば強制的に64bitへの移行が行なわれるはずだ。

 まず、方針として、Microsoftは、Windows Server 2008の次のServer用オペレーティングシステムでは、64bit版のみを提供することにしている。それがWindows Server 2008 R2なのか、2011年ぐらいに登場するWindows Server 2012なのかははっきりとはしないが、いずれ64bit版だけになってしまうわけだ。

 さらに、CougarとCentroも64bit版のみの提供となる。これは、同梱されるExchange Server 2007が64bit版しかサポートしていないからである。また、ViridianやCluster版も64bit版のみのサポートとなる。

 ハードウェア的には、ビル・ゲイツ氏の基調講演にあったように、サーバー用のCPUは現在ではほぼ100%、64bit対応が可能であり、この点では問題はない。問題があるとすれば、デバイスドライバやアプリケーション側だろう。ただ、新規ハードウェアならば、拡張バスはPCI Expressなので、64bit対応は意外に進んでいる。レガシーなハードウェアがどうなるかだが、ある程度は、Microsoftのボックスドライバでカバーされるだろう。逆に、サーバー分野で64bitへの移行ができれば、大半のドライバはクライアント側でも利用できることになる。

●仮想化技術で大きな変化が訪れる?

 さて、基調講演では、ステージにHPのWindows Home ServerであるHP MediaSmart Serverと、NECのItanium 2サーバーであるNEC Express5800が置かれていた。家庭からエンタープライズまでをカバーするというWindows Serverの範囲を示すものだが、デモでは、Express5800を使った、ダイナミックパーティションやCPUユニットのホットスワップを実演した。

 複数のCPUモジュールを1つの論理パーティションとして実行中のマシンで、そのCPUモジュールの1つを停止、ホットスタンバイさせていたCPUモジュールを論理パーティションに追加したのち、停止したCPUモジュールを引き抜くというもの。もちろん、パーティション構成を変更する間もWindows Serverは動いたままである。

 その後、今後の方向性が示されたが、Microsoftが意欲的なのは、仮想化機能をベースにしたさまざまな展開である。Windows VistaのEnterprise版では、ライセンスを仮想環境に合わせて変更したほか、Viridianのリリースと、Virtual Server 2005 R2の提供、さらには、System Center(統合システム管理ツール)の仮想環境への対応、また、仮想マシンが利用するディスクイメージ(この中には、仮想HDDの機能と仮想マシンの状態が含まれる)VHDを介したソフトウェアの配布、XenやNovellとの協業である。さらには、SoftGrid(買収したSoftricityの製品)やターミナルサービスと仮想化技術の組合せなどがある。

 SoftGridは、仮想環境をクライアントマシンのWindows内に作り、その中でサーバーに置かれたOfficeなどのアプリケーションを実行させるもの。実行は、クライアント側で行なわれるため、ターミナルサービスや単純な仮想化環境よりも必要なハードウェアリソースが少ない。仮想環境では、ハードウェア自体を仮想化するのに対してSoftGridは、実行環境だけを仮想化し、クライアント側で動作しているWindowsをそのまま利用するからだ。

 実際、仮想化に関するセッションなどに出ても、Microsoftがさまざまな方向を考えていることがわかる。キーノートでは、このあたりのアピールが不足している感じだが、長かったVistaの開発を終え、Microsoftは、さまざまな可能性を追求し始めたようだ。

ステージには、NEC Express5800/1320とHP MediaSmart Serverが置かれていた Windows Serverによるパーティションの再構成とCPUモジュールのホットスワップをデモ

□Microsoftのホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/
□WinHECのホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/whdc/winhec/
□関連記事
【5月17日】【WinHEC】ビル・ゲイツ会長基調講演レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0517/winhec02.htm
【5月16日】マイクロソフト、次期サーバーOSの名称を「Windows Server 2008」に決定
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0516/ms.htm

(2007年5月18日)

[Reported by 塩田紳二]

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