WinHEC 2007
ビル・ゲイツ会長基調講演レポート
会期: 2007年5月15日~17日(現地時間) 会場: Los Angeles Convention Center ●WinHECの15年を概観 WinHEC初日の基調講演は、Microsoft会長のビル・ゲイツ氏が行なった。タイトルは、「Platform Innovations for Today and Tomorrow」。すでに引退することが決まっているゲイツ氏だが、今年のCESといい、このところの基調講演では、昔を振り返る話から始まる。 今回は、WinHECが16回目ということで、最初のWinHECが行なわれた'92年、Windows 3.1から2007年のWindows Vistaまでの流れと、その中でのWinHECの役割について概観した。 たとえば、USBはコンセプトが発表されてから、普及までに長い時間がかかった。しかし、その前には、たとえばシリアルポートのポートアドレスの衝突といった問題があった。こうしたUSBなどによるPCの改良の中心にWinHECがあったとした。 ゲイツ氏は、現在の大きなトレンドとして、「ハードウェアの性能向上」、「ワイヤレス、ポータブル、タブレットPC、携帯電話」、「サービス指向アーキテクチャ」、「デジタルワークスタイル、ライフスタイル」、「デジタル化された経済」、「ソフトウェアのブレークスルー」を挙げた。 こうしたトレンドを動かすのは、ソフトウェアとハードウェアの進歩と、この両者を一緒に動かすための標準化だという。このハードウェアの標準化をさまざまな分野で促進したのがWinHECだったと、これまでの15年を総括した。 そして、こうした革新の積み重ねが現在のVistaとそれが動くプラットフォームに繋がっているのだという。続いて、Vistaの世界同時発売の模様を記録したビデオを上映した。ゲイツ氏にすれば、引退モードで、少し昔を懐かしむ気持ちなのかもしれないが、来場者の目は、将来の方に向いている。 その後、現在のWindowsの姿として、Microsoftが進めているWindows Rallyのデモを行なった。これは、各種の周辺機器の設定を簡単に行なえるようにする仕組みである。デモでは、Vistaに無線ルータが簡単に繋がり、さらにWi-Fi装備のデジタルカメラからの画像を簡単にコピーするといったものや、買ってきたばかりのメディアブリッジでリビングのTVを接続し、メディアセンターで動画を再生する様子などを見せた。 ●Windows Home Serverに数社が対応
次に、今年のCESで発表されたWindows Home Serverのデモを行なった。これは、Windowsのネットワークに簡単に接続できるNAS用のOSである。1月の時点では、HPが製品を発表したのみだったが、今回は、ハードウェアメーカーとして、Gateway、LaCie、Medionが参加。さらに対応ソフトウェアメーカーとして、Diskeeper、Embedded Automation、F-Secure、Iron Mountain、Lagotek、PacketVideo、Riptopia、SageTVの8社が参加したことを発表した。 Windows Home Serverは、Windows Server 2003 R2をベースにした、れっきとしたサーバー用OSである。しかし、家庭で一般ユーザーが使えるようにほとんどの設定作業を自動化し、Web経由での簡単な設定や状態表示のUIを持つだけだ。 ベースがWindowsであり、.NET Frameworkが搭載されているため、C#などで専用のアドインプログラムを作ることができる。こうしたアドインにより、Windows Home Serverは機能を拡張することができる。すでにSDKの配布も始まっている。 ●最大のニュースはLonghorn Serverの正式名称? 次に、ゲイツ氏は、現在βテスト中のWindows Server Codename Longhornについて話を始めた。これは、今年の終わりに、製造を開始する予定で、同じ時期にViridianと呼ばれる仮想技術のβ版をリリースする予定だという。 そして、ついに、今回最大のニュースとでもいうべき、Longhorn Serverの正式名称を発表したが、やはり、大方の予想通り、Windows Server 2008だった。なお、スライドでは、Vistaと同じ角が丸くなったパッケージ(色は白)も公開された。 ちなみに、展示会場は前日からオープンしており、その時はコードネームである「Windows Server codename Longhorn」だったものが、基調講演後に会場に行ってみると、すべて「Windows Server 2008」に変わっていた。また、Webサイトなどもそうで、ゲイツ氏の基調講演終了にタイミングを合わせて、準備していたとこが伺われる。 基調講演では、その後、Windows Server 2008のデモが行なわれた。これは、NAP(Network Accesss Protection)を紹介するものだ。NAPは、ネットワーク認証技術であるIEEE 802.1xやWindowsのポリシー管理を組み合わせ、認証されていないクライアントからのネットワークアクセスや、認証されたクライアントであっても、許可されたデバイスのみ接続可能とするといった設定を行なうことができる。これを使うことで、盗難されたノートPCからのアクセスを防いだり、USBメモリへのデータのダウンロードなどを防ぐことができる。
最後に「前方を見る」として、ゲイツ氏は、今後の方向性を示した。それは、「64bitマシンの増大」、「将来のハードウェアデザイン」、「ソフトウェア+サービス」、「VoIPと統合コミュニケーション」、「自然なユーザーインターフェース」の5つ。 64bitに関しては、Microsoftは移行を急いでおり、WinHECの参加者に64bitドライバの開発を呼びかけた。
IDCの予測によれば、2008年には、モバイル向けのCPUもほぼ100%、64bit対応になるという。現在のWindowsでは、大規模な用途に限っていえば、メモリ空間の問題に行き当たっていて、これを解決するには、64bitへ移行するしかない。現在は、64bitへの移行途中で、すでにハードウェア自体は、64bit化が可能になっているので、後は、ドライバやソフトウェアを64bit対応にする時だとした。 全体として、Tomorrowよりも、Todayが中心となっていて、さすがにWinHECの参加者には、物足りない感じがあった。 明日は、急遽、基調講演が1つ追加されることになった。ゲイツ氏のスピーチに対する不満を解消するため、というわけでもないだろうが、新たに「Windows Vista and the Commitment to Innovation」というタイトルでWindows Product ManagementのMike Nash氏が登場。Windows Server DivisionのBill Laing氏、Platform and Services DivisionのMark Russinovich氏とともに基調講演を行なう。 □Microsoftのホームページ(英文) (2007年5月17日) [Reported by 塩田紳二]
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