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JEITAとBAJ、リチウムイオンバッテリの安全利用を目指す手引書を作成
~国際化を目指しIECへの働きかけも

JEITAのノートPCリチウムイオン電池安全利用者特別委員会 委員長山本正巳氏

4月25日 開催



 社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)と社団法人電池工業会(BAJ)は20日付けで、「ノート型PCにおけるリチウムイオン二次電池の安全利用に関する手引書」を公開した。これに関連して、両団体は25日、都内で記者会見を開き、その策定経緯と狙いを説明した。

 同手引書は、BAJがバッテリセル(単電池)の、JEITAがバッテリ(組電池)の重要点を洗い出し、JEITA技術検討ワーキンググループが中心になり、両団体が連携してとりまとめたガイドライン。異物混入を防ぐ設計/製造方針や、異物混入がおきても破裂/発火に至らない設計/評価の指針、セルを安全に動作させるバッテリやPCの設計/評価指針などをメーカーに提供し、ユーガーがリチウムイオンバッテリを搭載したPCを安全に利用可能にすることを目的としている。

 ワーキンググループは、カシオ計算機、セイコー・エプソン、ソーテック、ソニー、東芝、NEC、日立製作所、富士通、パナソニック、三菱電機、レノボ・ジャパンの12社で構成。最高の技術者が参加したことで、「業界最高の手引き書になった」という。

取り組み方針 手引書とりまとめの経緯

●準拠を強く推奨するガイドライン

 記者会見冒頭では、JEITAのノートPCリチウムイオン電池安全利用者特別委員会 委員長山本正巳氏が挨拶。

 「委員会は今後の利用方法の検討委員会であって、事故対策委員会ではない」と釘を刺した上で、「半年の成果を技術事項を含めて正しく理解していただきたい。ノートPCの安全を追求し、リチウムイオンバッテリが発火にいたるような重大事故を起こさない、ゼロにすることが目的」と語った。

 手引書の位置付けについては、メーカー各社に「準拠を強く推奨する」ものとし、業界団体が発表する手引書には拘束力がないものの、「この表現は業界団体の文書の中では最大限の表現。これは我々の強い意志の表われで、参加していないほかのメーカーにも推薦していく」とした。

BAJの小型二次電池部会 部会長 中谷謙助氏

 また、BAJの小型二次電池部会 部会長 中谷謙助氏は、手引書について、「治療ではなく、その前、予防が狙い。それを踏まえて各社の技術者が集まり、作る側と使う側がノウハウを出して討議した。性能評価をする規格ではなく、高い安全性のためにあるべき姿はどうであるかを考慮した。BAJとしては、国際規格化を図り、世界中で安全に使っていただく助けとしたい」語った。

 国際規格化については、現在IECに2つの評価試験の導入を提案中で、詳細なスケジュールは確定していないが、審議のスタートが認められた状況だという。

●重大事故ゼロを目指す手引書

 手引書は3章仕立てで、リチウムイオン二次電池(充電池)の設計、リチウムイオン組電池(バッテリパック)の設計、試験および判定基準をそれぞれ説明。記者会見では、1章と2章について説明しながら、その都度3章について触れる形式で行なわれた。

BAJのリチウムイオン電池安全性および安全仕様特別委員会 委員長 世界孝二氏

 BAJのリチウムイオン電池安全性および安全仕様特別委員会 委員長 世界孝二氏が1章について説明。

 1章は、リチウムイオン充電池の破裂/発火の主な要因として、1. 内部短絡 2. 過充電 3.外部短絡 4.外部過熱の4つを挙げる。特に内部短絡による熱暴走は、単電池(バッテリのセル)への異物の混入や、バッテリを構成する各セルの電圧バランスのくずれ、一部のセルへの高い充電電圧の印加など、複数の理由があると推測。

 そういった問題への対策として、第1ステップとしてセルへの異物混入がおきない製造環境や、異物混入の確認、第2ステップとして異物が混入しても内部短絡に至らない設計や材料の採用といった指針を提言している。また、安全性の観点から、セルが許容可能な放電と充電の上限/下限の設定や、充電電圧と温度について可逆上限領域の下限にその上限を設定するといった指針が挙げられている。

 その評価基準には、従来のIEC 62133とJIS C8712に加え、標準温度域の上限と下限の環境下にて上限充電電圧で最大充電電流で充電した後、圧壊/外部短絡/外部過熱の試験を提案(基準は破裂と発火がないこと)。また、強制内部短絡試験として、充電済みの電極群に対し異物を挿入し、外部からの圧力を加えて強制的に内部短絡を発生させて、発火しないことを確認する試験を検討中という。

手引書のアジェンダ リチウムイオンバッテリ改善のステップ
セルを安全に利用する領域の設定 温度と電流の関係

JEITAのノートPCリチウムイオン電池安全利用特別委員会 技術検討ワーキンググループ主査 中尾健治氏

 2章では、JEITAのノートPCリチウムイオン電池安全利用特別委員会 技術検討ワーキンググループ主査 中尾健治氏が、リチウムイオンバッテリパックの設計における留意点を説明した。

 同氏は、「バッテリパックはセルを合わせた構造になっているため、セルをどう物理的に組み込むかが大事」とし、セルと基板の設計や、落下/振動/衝撃への対策のほか、温度制御、過充電/過放電への保護、劣化対策の6点について説明した。

 対策として、セルの熱暴走が起きた際に、周囲のセルへの拡大を防ぐため、スペースを設けたり、トップカバーの配向に留意することのほか、発熱した電解液の蒸気を排出する口を設けることが提言されている。そのほか、素材として難燃グレードのV-0を採用すること(現在はV-1以上)が挙げられている。

 落下/振動/衝撃への対策については、大容量バッテリなどPCに装着した際に露出するタイプについては、その試験を実際にPCに装着して行なったり、シミュレートして行なうことが挙げられているほか、バッテリのラベル上でユーザーに注意を喚起することが挙げられている。「できるだけ厳しい基準で、ユーザーの環境に近い状態でテストするのがコンセプト」とした。

 そのほか、バッテリの制御についても触れ、バッテリパック内の温度のばらつきが劣化のアンバランスを起こすため、5度以内に保つことを推奨。劣化については、不均等に劣化が発生するため、そのアンバランスが引き金になることもあるとし、ユーザーが安全に使用できるようにPC上での表示などの提言を行なっている。

 質疑応答にて、手引書に沿ったバッテリの投入時期は各社の製品次第とし、各社の製品計画もあるためばらばらになるだろうとした。経済産業省の消費生活用製品安全法との関連については、同部会に手引書を通達済みで、その後は部会の対応次第とした。また、携帯電話やそのほかのコンシューマーエレクトロニクスへの水平展開は予定しているが、詳細なスケジュールは立っていないとした。

設計における6つの留意点 リチウムイオンバッテリの構造
バッテリパックへの記載でユーザーに注意を喚起する PC上でバッテリの情報を表示

□JEITAのホームページ
http://www.jeita.or.jp/
□ノート型PCにおけるリチウムイオン二次電池の安全利用に関する手引書(PDF)
http://it.jeita.or.jp/perinfo/committee/pc/battery/070420.pdf
□BAJのホームページ
http://www.baj.or.jp/
□関連記事
【4月24日】JEITA、リチウムイオンバッテリの安全利用に関する手引書を公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0424/jeita.htm
リチウムイオン充電池問題 リンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/link/lithium.htm

(2007年4月25日)

[Reported by matuyama@impress.co.jp]

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