【やじうまPC Watch】
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スタジオのオープンを記念してテープカットが行われた |
3月15日 開催
川崎5スタジオの外観。元々、撮影用スタジオとして建てられたものではないだけに、見た目はいたって普通のオフィスのよう |
映画・ドラマ「私立探偵濱マイク」シリーズの監督・林海象氏が率いる映画製作会社 映像探偵社は15日、神奈川県川崎市に開設した撮影スタジオ「川崎5スタジオ」のオープニングセレモニーを開催した。
地域と密着した映画製作をキーワードとするスタジオだけに、地元川崎市の行政関係者、同じ神奈川県にある日本映画学校の佐藤忠男 学校長などがセレモニーに参加し、新スタジオへの熱い期待を語った。その中、1人異彩を放っていたのがマイクロソフトの眞柄泰利執行役専務である。マスコミ関係者の中からも、「何故、マイクロソフトが?」と疑問の声もあがり、眞柄執行役専務自身も冒頭の挨拶で、「1人だけITベンダーが参加しまして」と話すほどだった。
川崎5スタジオを設立した映画監督の林海象氏 | マイクロソフト 眞柄泰利 執行役専務 | 日本映画学校 佐藤 忠男 校長 |
「ボロボロだった建物がこうして蘇ったのはうれしい限り!」とJFE都市開発資産活用部長の藤森隆氏 | テープカットに続き行われたシンポジウムは、インターネットでも公開されている「探偵事務所5」で実際に使われているセットで行われた |
挨拶の段階では、「今回の仕事は後方支援」と話していた真柄執行役専務に、今回のプロジェクトに関わるきっかけを聞いてみた。
「実際に何かのシステム、機材を納めるという話しではない。川崎市と地域活性化をテーマに、教育支援などのテーマでお話をさせてもらっていた中で、今回のプロジェクトを聞き、協力することとなった。おそらく、本格的に5スタジオが活用されていけば、情報共有などマイクロソフトの提供する技術を使ってお手伝いすることが出てくるだろう。それについても協力していくことができればと考えている」
マイクロソフトでは、地域活性化を目的として、ブロードバンドを教育現場で活用する「ブロードバンドスクール コンソーシアム」などの活動を行なっている。今回の川崎5スタジオへの協力も、そうした地域活性化というところから行なわれていることのようだ。
確かにこのスタジオ設立には、地域活性化を狙いとして川崎市が協力している。元々川崎市は、平成13年(2001年)の映画館1スクリーン当たり入場者数が、13の大都市の中でトップとなる14万2,000人と映画館が地域活性に大きな力を果たす街。今回のスタジオ開設によって、映画製作による地域活性を目指して川崎市が協力している。
スタジオを作った林海象監督によれば、「映画製作を始めるとスタジオを建てる木材も必要になるし、スタッフのためのお弁当も必要になる。地域と関わらないでは、作業が進まないのが映画作り」だという。
セットをよく見ると、かかっている肖像画は宍戸錠さんのようだ | 「探偵事務所5」では貫地谷しほりさんの部屋という設定で使われたセット | 貫地谷しほりさんの部屋という設定ではあるが、さすがセット! 裏にまわるとベニヤで作られている |
インターネットで配信されている「探偵事務所5」シリーズは、パナソニックのデジタルハイビジョンカメラ「AG-HVX200」で撮影されている。撮影されたものを即ノンリニア編集できるような設備も設けられている。使われているのはMacintoshでマイクロソフト製品ではなかった | これぞ映像の裏舞台、美術部の制作場所 | デジタル化でコストが下がったことから、試写室も作られた |
また、教育という側面では、川崎市にある日本映画学校と川崎スタジオ5が協力関係を持ち、人材育成を行なっていくことも計画されている。
日本映画学校の佐藤忠男校長は、「かつての日本の映画会社は、独自に人を育てて名映画監督を生んだ。つまり、撮影所こそ学校であった。しかし、現代の映画会社は余裕がなくなり、人を育てる機能を全く持っていない。撮影所=貸しスタジオ化してしまっている。しかも、撮影所を閉鎖するケースも起こり、日本映画学校で実習場所とさせてもらっていた松竹の大船撮影所は閉鎖されてしまった。このスタジオで実習させてもらうことができると本当に有り難い」と話す。
林海象監督にとっても人材の育成というのがスタジオを構える目的の1つでもあり、「やはり映画のスタッフは映画を作っていく中で育つという面がある。少ない人数ではあるが、演出、脚本、美術の常駐するスタッフがおり、人材育成も進めていきたい。また、アマチュアで映画を撮っている人にこのスタジオを活用してもらうことも考えたい」という。
こうした話を聞いて眞柄執行役専務も、「人が育ち、地域が活性化していくエコシステムが出来上がりつつあるのだと話を聞いていて痛感した」と満足そうな様子を見せた。
また、このスタジオは1912年、日本鋼管(現・JFEスチール)が創立した場所でもある。スタジオになった建物は、かつて労使会館として使われていた場所だ。JFE都市開発資産活用部長の藤森隆氏は、「労組開館というだけに、建設された1970年代は最も熱く、会社の中心となって活用されていた場所。建物がボロボロになっても壊すべきかどうか、内部でも議論となっていた。今回、こうして撮影スタジオとして新たに蘇ることになって感無量」と満面の笑顔を浮かべる。
実はこのスタジオ以外にもJFEスチールの所有地は映画をはじめ、TVなどの映像撮影に活用されていて、公道では撮影が難しい事故シーンの撮影などに敷地の一部が使われている。林海象監督がこの夏に撮影予定の宍戸錠さん主演の映画では、「上海の話なのだが、JFEスチールの敷地内に上海を作ってしまおうと思っている」というほど。
眞柄執行役専務はこうした話にも、「マイクロソフトは歴史が浅い会社だけに、ここが1912年、日本鋼管設立の場所だったなんて聞くと、それだけでもワクワクする」と笑顔を見せた。
オープニングセレモニー終了後は、スタジオ見学が行なわれた。実際に撮影で使われている部屋や、衣装や大道具などがしまわれている部屋が公開され、眞柄執行役専務はこうした撮影の舞台裏にも興味津々の様子であった。
屋上から見ると、JFEスチールの敷地の大きさをあらためて実感。確かにこれなら撮影で活用しがいがありそうだ | 正面に置かれた「探偵事務所5シリーズ」の出演者、スタッフの写真が飾られたパネルだけは、「これは落ちていたものじゃなくて、ちゃんと作ったものです!」と林海象監督。ただし、撮影の時には邪魔になるので、どけられてしまう |
現在は「和室スタジオ」となっている場所は、元々は組合関係者の仮眠室として使われていた場所。「普通の会社スペースとは違い、色々なタイプの部屋があるので、映像スタジオとして活用するのに魅力的だった」というのがスタジオスタッフの感想 |
「落ちているものは拾ってきて、色々と活用しています!」とスタジオスタッフ。あちこちに落ちている廃材を作り直して、映画に登場する新しい乗り物が生まれるケースもあるのだとか |
□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.co.jp/
□映像探偵社のホームページ
http://www.eizotantei.co.jp/
(2007年3月16日)
[Reported by 三浦優子]