元麻布春男の週刊PCホットライン

Mac専用小型キーボード「HHKB Lite2 for Mac」を試す




●Mac専用に改良されたHHKB

 10キーパッドやファンクションキーなど、必要最低限のキー以外を排除したコンパクトキーボードとして定評のあるHappy Hacking Keyboard(HHKB)が、2006年末に10周年を迎えた。記念して発売されたHGモデルは262,500円(アルミ削り出しフレーム版)と525,000円(漆塗りキートップ版)で、さすがに少しやり過ぎな気もするが、ヒューマンインターフェイスを担う重要なパーツであるキーボードが、ただひたすら安価になっていく流れに対するアンチテーゼとしては、意味のあることだったかもしれない。

【表】HHKB 10年の歩み
発売日製品名型番標準価格スイッチ方式対応機種(I/F)備考
'96年
12月20日
Happy Hacking
Keyboard
PD-KB0129,800円メンブレンSun、PS/2初代
'97年
11月20日
Happy Hacking
Keyboard
PD-KB0229,800円メンブレンSun、PS/2、
Mac (ADB)
Mac対応
'99年
1月12日
Happy Hacking
Keyboard
PD-KB0219,800円メンブレンSun、PS/2、
Mac (ADB)
価格改定のみ
'99年
10月13日
Happy Hacking
Keyboard Lite
PD-KB1007,800円メンブレンPS/2PC専用
2001年
4月2日
Happy Hacking
Keyboard Lite2
PD-KB2007,800円メンブレンPS/2、
USB(1.1ハブ内蔵)
USB対応、カーソルキー付
同上Happy Hacking
Keyboard Lite2
PD-KB2107,800円メンブレンPS/2上の日本語配列モデル
2001年
8月8日
Happy Hacking
Keyboard Lite2
PD-KB200/2107,800円メンブレンPS/2、
USB(1.1ハブ内蔵)
USBの日本語配列モデルと、
英語配列の黒色モデル追加
2002年
8月12日
Happy Hacking
Keyboard Lite2
PD-KB210オープンメンブレンPS/2、
USB(1.1ハブ内蔵)
日本語配列の黒色モデル追加
2003年
2月7日
MacキットPD-KB200MK1,890円N/AUSB日本語配列のLite2を
Macで利用するための
ドライバとキートップ
2003年
5月31日
Happy Hacking
Keyboard
Professional
PD-KB300オープン
(直販25,000円)
静電容量無接点USB英語配列のみ
2006年
3月24日
Happy Hacking
Keyboard
Professional 2
PD-KB400オープン
(直販価格24,990円)
静電容量無接点USB(2.0ハブ内蔵)英語配列のみ
2007年
1月25日
Happy Hacking
Keyboard Lite2
for Mac
PD-KB200/220オープン
(直販6,300円)
メンブレンUSB(1.1ハブ内蔵)英語および日本語配列

 このHHKBシリーズの発売元であるPFUが、2007年初の製品としてHHKBのラインナップに加えたのがMacintosh対応の「Happy Hacking Keyoboard Lite2 for Mac」だ。基本的なスペックは、すでに発売されているHappy Hacking Keyboard Lite2と同じ。インターフェイスはUSBのみだが、英語配列と日本語配列の両方が用意される。

 既存のHHKB Lite2と異なるのは、カラーがMac miniやiMacに合わせた白になっていること、キートップがMac向けになっていること(ただしApple純正の日本語キーボードとも異なる)、専用ドライバが付属すること、の3点。キートップの刻印は、日本語配列を選択してもカナ文字のない、いわゆる“すっきり表示”だ。純正キーボードで「カナ/かな」と表記されたカナキーも、このHHKB Lite2 for MacではKanaと表記されるし、英数キーはHHKBのロゴ表記となっている。

Happy Hacking Keyboard Lite2 for Macの英語配列モデル(PD-KB200MA) Happy Hacking Keyboard Lite2 for Macの日本語配列モデル(PD-KB220MA) Happy Hacking Keyboard Lite2(英語配列)のPC向け従来モデル(上)とMac版

 付属の専用ドライバの役割の1つは、このHHKBロゴキーと、Kanaキーをサポートし、それぞれに英数キーとカナキーの役割を割り当てることにある。Macの日本語キーボードに用意された各種特殊キーのうち、英語キーボード(Mac)と共通であるControl、alt/option、Command(Apple)キーは、それぞれPC用のキーボードにも相当するキー(同じスキャンコードのキー)が存在する(順にCtrl、Alt、Windows)。したがってPC用の英語キーボードは、Mac固有のイジェクトキー(CD/DVDをスロットインタイプのドライブから取り出す)やメディアキー(ボリュームの調整等を行なう)がない点を我慢すれば、そのまま利用できる(Windowsキーのない古いキーボードはちょっと辛い)。

 しかし、Macの日本語キーボードに固有の英数キーとカナキーは、PCの日本語キーボードに相当するキーが存在しない。確かにPC用の日本語キーボードにも、無変換キーやカタカナ/ひらがなキーなど、それに近い役割のキーが存在するのだが、スキャンコード的には別物であり、単純にキーボードを入れ替えてもこれらのキーは動作しない。

 キートップがMac用に改められているとはいえ、HHKB Lite2 for Macもスキャンコード的には従来のHHKB Lite2と同じであり、HHKBロゴのキーはPC用日本語キーボードの無変換キーと同じスキャンコードを、Kanaキーは変換キーと同じスキャンコードを発生させるため、Macの環境では利用できないことになる。専用ドライバの一義的な役割は、ソフトウェアによって、このギャップを埋めることにある。

 そして、キーのスキャンコードを差し替えるという役割を流用して、イジェクトキーやメディアキーといったPC用キーボードにない役割を他のキーに割り当てたり、さらにはキーの自由なカスタマイズ目的にも使えるように専用ドライバは作られている。HHKB Lite2 for Macは通常のHHKB Lite2より若干高い値付けになっている(直販価格でPC用の5,880円に対し、6,300円)が、差額はこの専用ドライバ代と考えれば良いだろう。キートップの表記と差額の420円が気にならなければ、HHKB Lite2 for MacをPCで使っても全く問題ない。逆にHHKB Lite2をMac用に購入しようと考えていたユーザーにとって、従来は1,890円で別売だった専用ドライバと交換用キートップが420円で入手できるのだから、割安ということになる。

 ちなみにこの専用ドライバだが、HHKB Lite2シリーズ以外のキーボードでは、たとえ上位モデルであるProfessionalシリーズでも利用できない(「専用」であるゆえん)。このため、ノートタイプのMacにHHKB Lite2 for Macを組み合わせ、ドライバを組み込んだ場合も、内蔵キーボードは影響を受けないで済む。ただ、上位の「HHKB Professinal」や同Professional 2で、専用ドライバによるカスタマイズ機能を利用したいという人も少なくないのではないだろうか。少なくとも筆者はその1人で、右Altに「カナ」、Shift+右Altに「英数」を割り当てられたりすると使いやすいのではないか、などと思う。

日本語配列モデルのスペースバー右側の修飾キー。カナキーの表記をKanaにするほど、カナ文字排除?は徹底している 日本語配列モデルのスペースバー左側の修飾キー。「英数」表記の代わりにHHKBのロゴが用いられている。また、Q、W、A、S、の各キーにイジェクトとメディアキーの機能が割り当てられている様子が見える 添付の専用ドライバによるキー割り当てのカスタマイズ。カナや英数といった日本語関連の機能キーのカスタマイズも可能

●Mac ProよりMac mini向け

 さて、今回発売になったHHKB Lite2 for Macだが、以前購入して手元にあったHHKB Lite2と比べてみたところ、機能性やキータッチとも、ほとんど変わらないことが確認できた。唯一違いが感じられたのはスペースバーを叩いたときの音で、筆者の手元のHHKB Lite2はパシャパシャというちょっと安っぽい音なのに対し、新しいHHKB Lite2 for Macのスペースバーは、叩いてもほかのキーと同じ傾向の静かな音であった。

 キータッチは、キースイッチが入ったあと、さらに押し込んでいく時にも弾力が残る、多くの人が「メンブレンスイッチ」から連想しそうなタッチのもの。現在、多くのPCに添付されている標準的なキーボードに比べて、若干重めのタッチだ。Professionalに使われている、静電容量無接点方式のスイッチのような切れ味はないが、価格差を考えればやむを得ないところ。キートップのグラつき(水平方向の遊び)が小さいため、不安定感を感じさせない点は優れている。

 現在、AppleがMac用に提供している純正キーボードは、有線と無線、日本語配列と英語配列の違いはあるものの、サイズやキータッチという点では事実上1種類しかない。この純正キーボードは、iMac向けには価格的にもデザイン的にもぴったりマッチすると思うが、Mac Proを使うヘビーユーザーにはやや力不足を感じさせる。逆に、コンパクトなMac miniに組み合わせるには、10キー付の純正キーボードはちょっと大きすぎるように思えた。今回発売されたHHKB Lite2 for Macは、比較的手頃な価格で、Mac miniと組み合わせた場合にもサイズ的、デザイン的違和感を感じさせない。多くのMac miniユーザーに歓迎されるのではないかと思う。

□PFUのホームページ
http://www.pfu.fujitsu.com/
□製品情報
http://www.pfu.fujitsu.com/hhkeyboard/lite2mac/
□関連記事
【1月25日】PFU、Mac専用のコンパクトキーボード
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0125/pfu.htm

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(2007年2月15日)

[Reported by 元麻布春男]


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