[an error occurred while processing the directive]

ISSCC 2007レポート

シャープ、ワンセグ受信チップセットの技術内容を公表

シャープのワンセグ受信フロントエンド「VA35JZ9910」

カンファレンス会期:2月12日~14日(現地時間)

会場:米国カリフォルニア州サンフランシスコ
   Marriott Hotel



 シャープは、地上デジタルテレビのワンセグ放送受信用チップセットを開発し、その内容をISSCC 2007で発表した(講演番号11.4)。このチップセットとUHF帯フィルタ、デカップリングキャパシタ、水晶デバイスを組み合わせ、外形寸法が9×9×1.4mmと小さなワンセグ受信モジュールを構成してみせた。受信モジュールの感度は-109.6dBm~-105.2dBm、消費電力は77mW~105mWと低い。ノートPCやPDAなどのUSBポートに差し込むタイプのワンセグ受信アダプタに応用できる消費電力である。

 シャープはこの1月23日に、外形寸法が9×9×1.5mmの小型ワンセグ受信モジュール「VA35JZ9910」を開発し、1月30日から量産するとのニュースリリースを報道機関向けに配布していた。このリリースによると「VA35JZ9910」の感度は-109dBm、消費電力は95mWである。このモジュールが内蔵した半導体チップと、ISSCCでシャープが発表したチップセットは同じものである可能性が高い。

 チップセットは、RF ICチップとベースバンドICチップの2チップ構成である。

 RF ICチップは可変利得の受信アンプ(RF VGA)、ミキサー、中間周波フィルタ、中間周波用可変利得アンプ(IF VGA)などを内蔵する。チップ寸法は3.4mm角。0.5μmのシリコンゲルマニウム(SiGe)バイポーラCMOS技術で製造した。電源電圧は2.9V、消費電力は87mWである。

 ベースバンドICチップはベースバンド処理回路、FEC(Forward Error Correction)回路、適応制御ロジック回路などを内蔵する。チップ寸法は4.3mm角。0.13μmのCMOS技術で製造した。電源電圧はコア部が1.2V、I/O部が1.8V。消費電力は18mWである。

ワンセグ受信用チップセットの回路ブロック。ISSCCのTechnical Digestから引用(講演番号11.4) ワンセグ受信用チップセットのチップ写真。ISSCCのTechnical Digestから引用(講演番号11.4)

 最大の特徴はベースバンドICの適応制御ロジック回路で、この回路によってRF ICのバイアス電流を最適に制御し、消費電力を抑えている。受信信号がそれほど弱くない領域ではバイアス電流を下げられるので、消費電力の低減に効果を発揮する。例えば受信信号の強度が-90dBmの場合、RF ICの消費電力は59mWに下がる。元々の消費電力が87mWなので、18mWほど削減されたことになる。受信信号の強度が-100dBmの場合は、RF ICの消費電力は77mWとなり、消費電力の削減効果は10mWに弱まる。受信信号の強度がほぼ受信限界である-105dBmになると消費電力は87mWとなり、バイアス電流をまったく下げられなくなることが分かる。

 バイアス電流を下げた場合は、雑音電波に対する耐性が低下するという問題が生じる。そこで雑音電波による干渉を検知してベースバンドICに伝える回路をRF ICに搭載した。雑音検出時は適応制御ロジックがバイアス電流をいったん、最大値にリセットする。

 試作したチップセットで実際にワンセグ放送を受信し、バイアス電流の適応制御がどの程度の効果を上げるか確かめた。受信実験を実施したのは東京の山手線電車内、東京タワー直下、名古屋市東山である。山手線と東京タワーでは、それぞれ11.3mW、17~18mWの電力削減効果があった。一方、雑音が強いと推定される名古屋市東山では、電力削減の効果は3~4mWとわずかにとどまった。

 なお、このチップセットで試作した受信モジュールの仕様は前述のほか、受信帯域470MHz~770MHz(UHF帯の13~62チャンネルに相当)、チャンネル帯域幅430kHz、最大利得103dB(13チャンネル)、雑音指数2.7dB(13チャンネル)である。

□ISSCCのホームページ(英文)
http://www.isscc.org/isscc/
□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/070123-a.html
□関連記事
【1月23日】シャープ、業界最小のワンセグ受信フロントエンド(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20070123/sharp.htm

(2007年2月14日)

[Reported by 福田昭]

【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp
お問い合わせに対して、個別にご回答はいたしません。

Copyright (c)2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.