元麻布春男の週刊PCホットライン

高機能メールソフト「Shuriken 2007」β版を試す




●メールソフトにShurikenを使う理由

 昨今、「PCの用途」というと必ず真っ先に挙がるのが「インターネット」だ。ここで言う「インターネット」が、Webのブラウズと電子メールを指していると思ってよいだろう。WindowsにはWebブラウザとしてInternet Explorer(IE)が、電子メールソフトとしてOutlook Expressが添付されており、特に他のソフトウェアを入手しなくても、「インターネット」が可能だ。新しいWindows Vistaでも、WebブラウザのIEが添付されるし、電子メールソフトもOutlook Expressをベースに改良が加えられたWindowsメールが添付される。特に他のソフトウェアを入手する必要はない。

 にもかかわらず、IEやOutlook Express以外のソフトウェアを、わざわざインストールする人がいる。かくいう筆者もその1人で、特に電子メールソフトについては、有償のアプリケーションを購入して使っている。利用しているのはジャストシステムの「Shuriken」である。

 なぜShurikenを使っているのか。言い換えればShurikenを使うメリットはどこにあるのか。おそらく皆が認めるであろうメリットの1つはセキュリティだ。Windowsに無償添付されるOutlook Expressは、考えるまでもなく、世界で最もユーザーの多い電子メールソフトである。ユーザー数が多いということは、それだけ悪意あるソフトウェア(マルウェア)の作成者にも狙われやすい。

 逆に国産ソフトであるShurikenは、(少なくとも今のところ)日本語版のみがリリースされている。海外のマルウェア作者に狙われるリスクは当然小さい。これだけなら単にマイナーなソフトの利点のようにも思えるが、HTMLメールの表示オプションを細かく設定できたり、Outlook Expressでは極めて弱かったスパムメールのフィルタ機能(学習型フィルタ機能)が充実しているなど、セキュリティ面以外での機能的な充実もある。

 さらに複数メールアカウントの管理や、使い分けられる4種類のフラグ、データバックアップの自動化とバックアップデータを用いた環境移行の容易さなど、Shurikenには使い始めると手放せなくなる機能が少なくない。新しいノートPCを使い始める際、Shurikenをセットアップしてネットワークドライブ上のバックアップデータをロードすると、アカウント情報やメール本文だけでなく、仕分けルールやスパム設定などを含めてすべて同じ環境にできるのは便利だ。もちろん企業であればOutlookとExchangeサーバーの組み合わせというのが便利かもしれないが、個人には荷が重い。むしろ、Exchangeサーバーのない環境でOutlookを使うくらいなら、Shurikenを使った方が幸せになれるのではないかと思うくらいだ(この場合、カレンダーなどOutlookが持つほかの機能をどう補うかがポイントになるのだが)。

●GUIを改良したShuriken 2007

Shuriken 2007

 そのShurikenが、久しぶりのメジャーバージョンアップを行ない、「Shuriken 2007」となる。発売元であるジャストシステムの代表的アプリケーションである一太郎は、Windows Vistaの発売に合わせ、一足先の2月9日にVista対応版の一太郎2007へと生まれ変わるが、Shurikenのバージョンアップは、それから1カ月遅れの3月9日に予定されている。残念ながら一太郎2007に合わせて発売されるジャストシステムのアプリケーションスイート「JUST Suite 2007」には間に合わず、旧版のShuriken Pro4/R2が収録されるが、JUST Suite 2007の購入者にはShuriken 2007が無償でダウンロード提供される。ここではShuriken 2007のβ版を元に、その特徴を見ていくことにする。

 Shuriken 2007における最大の特徴は、見た目を含めたユーザーインターフェイスを改めたこと。ただ、配色やアイコンのデザインなど、旧バージョンとは明らかに異なるものの、旧バージョンのユーザーがとまどったり違和感を感じるようなものではない。筆者が最も違和感を感じたのは、フォルダ一覧や見出し一覧の行間スペースが広くなったことだが、そのうち慣れるのではないかと思う。

 細かく見ていくと、ツールバーに検索ウィンドウが加わったり、迷惑メール登録のボタンとごみ箱を空にするボタンが加えられていることなどに気づく。いろんなアプリケーションに検索ウィンドウがつくのは今の流行だが、Shuriken 2007の検索は、見出し、差出人、宛先/CC、本文をそれぞれ指定して検索できるようになっており、その検索速度と合わせ実用性は高い。

現行バージョンであるShuriken Pro4/R2 Shuriken 2007(β)の画面。Pro4/R2に比べフォルダ一覧やメール一覧の文字が大きく、行間が広くなった。いずれのバージョンも、HTMLメールの再現性に難がある
このメールの送り主であるMicrosoftの製品(Outoook 2003)なら、HTMLメールの再現性に問題はない AppleのMac OS X付属メールソフトでも、再現性は問題ない。むしろフォントの関係でこちらの方がきれい

 上でも述べたようにShurikenは、学習型の迷惑メールフィルタを備えているのだが、これまでは迷惑メールの登録は、設定メニューから選択するか、メールを右クリックして選択する方法のみが提供されていた。複数のメールを一括で迷惑メールとして登録できること(意外なことにこれができないメールソフトは結構多い)と合わせ、専用のボタンが用意されたことで、より簡単に使えるようになった。

これで迷惑メールの着信にわずらわされることがなくなる

 この迷惑メールがらみの機能として、着信監視が迷惑メールを除外してくれるようになったのはありがたい。これまでは、迷惑メールを含むすべてのメール着信で、ポップアップが表示されていたが、Shuriken 2007では迷惑メールと判断されたメールの着信時にポップアップを表示しないというオプションの設定が可能になった。

 もう1つ大きな改良は、仕分けのルール作りが簡単になったことだ。特にフォルダへ移動させる仕分けルールの作成は、メールをドラッグ&ドロップでフォルダへ移動させれば、その条件に基づいた仕分けルールのテンプレートを含むダイアログが表示される。その内容を確認して、ルールに名前を付ければ、仕分けルールが完成する。仕分けをする、しないは個人の好みもあるが、あまり1つのフォルダ(受信箱)を大きくしすぎると、検索にも時間がかかるから、ある程度は仕分けした方が良いかもしれない。

●さらに改良を望む部分

 こうした改良の一方、今回のバージョンアップでも手が加えられなかった部分もある。たとえばHTMLメールの再現性の問題だ。セキュリティの懸念もあり、ShurikenはデフォルトではHTMLメールを表示しない。だが、表示するように選択しても、メールによってはレイアウトが著しく乱れることがある(特にフレームを用いたもの)。デフォルトで表示しないのは良いとして、表示すると決めた際にはきちんとしたレイアウトが再現されて欲しいと思う。

 もう1つ以前から気になっていたのは、フォルダ構造についてだ。Shurikenでは、受信したメールと送信したメールを1つのフォルダで扱う(メールを送受信箱として扱う)か、個別のフォルダで扱う(独立した受信箱と送信箱で扱う)かを選択することができる。そして、これらのメールをさらに仕分けルールによってユーザーが作成したフォルダへ振り分けることが可能だ(ただし、実際はインデックスファイルとデータファイルの対であり、フォルダというのは仮想的なもの)。

 それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらの形式が一概に優れているとは言えないから、ユーザーが選択できる点は良いと思うのだが、この選択があまりにも簡単にできてしまう点が問題だと感じている。実際、フォルダ構造の変更は、フォルダを右クリックして表示されるメニューの一段目、フォルダメニューの直下にあり、間違えて選択してしまうことがある。この作業は、単にビューを切り替えるだけでなく、インデックスやデータファイルの作り替えを伴うから、数万件のメールを抱えていると、うんざりすることになる。

 ましてや、何らかの理由で作業を中断させてしまう(意図的なものでない場合も含む)と、簡単には元に戻せなくなってしまう。筆者は、これにハマリ、何度かユーザーサポートに電話したことさえあるくらいだ。できればメニューからフォルダ/ファイル構造の変更を伴うこのコマンドを抜いてしまいたいのだが、そうしたカスタマイズはできない。

 送受信箱を使うか、送信箱と受信箱を使うかでは、仕分けのルールも違ってくる。それほど気軽に、かつひんぱんに切り替えるものとは思えない。送受信箱を使うか、分離した送信箱と受信箱を使うかは、ユーザーとして大きなポリシーの変更であり、熟考して決断するものだと思う。そうであれば、切り替えコマンドは設定メニューの奥深いところにしまわれていても、一向に差し支えないと思うのだが、いつもこのコマンドはメニューの浅いところに潜んでいて、筆者が間違えるのを待っているのだ。と、ついグチが出てしまったが、それも筆者がShurikenのリアルユーザーである証でもある。

右クリックすると現れる恐怖? の「送受信箱フォルダを使う」コマンド メールをドラッグ&ドロップするだけで、仕分けルールのテンプレートが表示されるよう設定することも可能

 さて、このShuriken 2007だが、久しぶりのメジャーバージョンアップといっても、その主眼はWindows Vistaに合わせたデザインの変更であり、使い勝手などで大きく変わったところはない。細かな部分で、使い勝手を向上させる改良も施されており、特に迷惑メールで通知のポップアップが出なくなっただけでも、筆者はバージョンアップしようと思うが、基本的に既存のユーザーが戸惑うような変更はないと考えて良いだろう。アップグレードインストールしても、既存の設定や環境はすべて維持される。

 では、改良を望むことはないのか。HTMLメールや一部コマンドの扱いなど、細かな点でさらに詰めて欲しい部分はあるにせよ、メールソフトとしては、かなり完成しており、大きな機能追加を行なう余地はそれほどないようにも感じる。

 ならば、メール以外の機能を追加して欲しい。筆者が最も追加して欲しいのは、カレンダー/予定表の機能だ。かつてジャストシステムには、SasukeというPIMソフトがあったが、提供されなくなって久しい(今でもShurikenのユーザー管理ツールに、Sasukeの管理を行なうためのボタンが残っている)。Windows VistaのWindowsカレンダーや、Googleカレンダーとの連携、ようやくわが国でも普及の兆しのあるスマートフォンと同期できる予定表ソフトには、需要があるのではなかろうか。ToDoまでサポートしたのだから、次のShurikenに予定表が統合されても、おかしなことはない。世の中にはOutlookを使いたくないと考える、筆者のような人種もかなりいると思うのだが。

□ジャストシステムのホームページ
http://www.justsystem.co.jp/
□Shuriken 2007の製品情報
http://www.justsystem.co.jp/software/dt/shuriken2007/
□関連記事
【1月23日】ジャストシステム、GUIデザインを一新した「Shuriken 2007」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0123/just.htm
【2003年8月21日】【元麻布】「Officeなし生活」の次は、別のOSを検討してみたい
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0821/hot275.htm

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(2007年2月1日)

[Reported by 元麻布春男]


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