AMD、ATI買収費用で通期/四半期ベースともに赤字へ
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代表取締役 森下正敏氏 |
1月24日 発表
日本AMD株式会社は24日、都内でプレス向け説明会「2007 AMD Japan Kick-off Press Meeting」を開催し、2006年第4四半期および通期の決算と2007年の展開を説明した。
●AMD単体で3%の成長を果たすもATI買収費用で赤字に
米国で24日(現地時間)に公開されたニュースリリースによると、2006年第4四半期の売上高は17.7億ドルで、経常損失5億7,400万ドルを計上した。1株当たりの損失は1.08ドルとなった。
売上高のうち、3億9,800万ドルを旧ATIが占め、残りの13億7,400万ドルがAMD単体分にあたる。経常損失は、ATIの買収費用(5億5,000万ドル)と、従業員のストックオプションに関わるコスト(2,700万ドル)、営業利益(5,000万ドル)からなる。
前年同期比では、AMD全体の売上高は13億2,800万ドルから17億7,300万ドルとなり、34%の成長となった。ATI分を含まないAMD単体分は13億7,400万ドルになり、3%の成長となった。なおATIの買収完了は10月24日。
2006年通期の決算では、売上高が56億4,900万ドルで、4,700万ドルの損失を計上した。内訳は、買収前AMD単体の営業利益(6億ドル)、買収前ATIの経常損失(1,300万ドル)、ATIの買収費用(5億5,700万ドル)、従業員のストックオプションに関わるコスト(7,700万ドル)からなる。
2005年通期との比較では、売上高が39億3,500万ドルから56億4,900万ドルになり、44%の成長となった。ATI買収分を除いたAMD単体の売上高は52億5,100万ドルで33%の成長となった。AMDの純利益は、5億4,800万ドルから5億8,700万ドルへ、7%の成長となっているが、ATI買収費用などにより相殺された形になっている。
粗利益率は40%で、前年同期の52%、直前期の57%と比較して大きなマイナスとなっている。これはサーバー向けプロセッサの平均販売価格の下落と、ATI買収費用の算入によるものとしている。
なお、2006年第4四半期のAMD単体の数値は参考値。2007年第1四半期の売上高の予測は16~17億ドルになるとしている。
●x86 CPUの好調さをアピール
取締役 マーケティング本部 本部長 吉沢俊介氏 |
同日開かれた説明会では、同社取締役 マーケティング本部 本部長 吉沢俊介氏が決算のハイライトについて説明した。
同氏は決算の数字を概観した上で、旧AMD単体の売上が第3四半期から3%成長したことをアピール。加えて、通期の比較で33%の成長を遂げ、ワールドワイドの半導体ベンダーにおいて15位から7位へ規模を拡大したと述べた。
また、x86 CPUの出荷増に言及し、2005年と比較して26%、第3四半期から第4四半期で19%向上したという。同氏は、これらの出荷増を踏まえて、「2006年すべての四半期でx86 CPUのユニットシェアを拡大した」とした。また、Turion 64及びTurion 64 X2など、モバイル向けCPUの成長が著しく、売上高が2005年と比較して85%上昇、第4四半期のみでも41%の上昇となった。
そのほか、2007年の展開をアップデートした。2007年には25億ドルの設備投資を行ない、Fab.36/38のプロセス移行や、300mmウェハへの移行を積極的に行なう。90nmから65nmへのプロセス移行は順調で、2007年第1四半期にはクロスオーバー(並立)し、2007年前半にはFab.36での移行を完了予定とした。45nmプロセスへの移行は2008年中を予定。また、GPU R600は2007年第1四半期に、ネイティブなクアッドコアCPU「Barcelona」(バルセロナ)は2007年中を予定し、まずはサーバー向けに投入し、次にデスクトップへと投入していくとした。
●マーケットを加速する“Better by Design”
また同氏は、コンシューマー市場を加速するものとして、2007 CESで公開した「Better by Design(以下BbD)」という取り組みを紹介した。
BbDは、OEMメーカーが検討/選択した機能を搭載したPCの証となるもので、対象製品にはロゴが掲示され、その性能の高さを証明するもになるという。具体的には、AMD製プロセッサに加えて、GPUにATI/NVIDIA製品を、無線機能にBROADCOM/airgo/ATHEROS製品を搭載するプラットフォームとなる。その狙いは、OEMメーカーに選択肢を提供することでOEM供給メーカーの競争を加速し、Vistaによって提供される新たな経験を快適に動作させるプラットフォームを提供することにある。
Better by Designの構成 | BbDのロゴ例 |
BbDの1例として、マーケティング本部プロダクトマーケティングの土居憲太郎氏が登場し、ノートPCをデモ機としてその優位性を紹介した。
デモ機の仕様は、Turion 64 X2 TL-50(1.6GHz)/1GB メモリ/Radeon Xpress 1150チップセットと、Core Duo T2300(1.66GHz)/1GB メモリ/Intel 945 GM Expressの2つ(具体的なマシン名は非公開)。価格はTurion搭載機の方が1万円ほど安いという。
デモは「Sam & Max:Culture Shock」と「Adobe Acrobat 8.0e」を利用した。Sam & Maxでは、945GM Express搭載機の画面で一部のテクスチャーが未適用なことやAAが適用されていないことによるシャギーを指摘し、Radeon Xpress 1150のグラフィック性能をアピール。また、Acrobatでは、PDFの2Dアクセラレーションに対応したRadeon搭載機による高速描写や、Acrobat 3DでのFPSの高さをデモしてみせた。
土居憲太郎氏 | 左がBbD対応機、右が945GM Express搭載機。砂浜にテクスチャーが未適用 | PDFの2Dアクセラレーションのデモ。同時にスタートして、描写速度の違いをアピール |
●エンタープライズで拡大するAMD CPUの採用
同社 エンタープライズビジネスデベロプメント 本部長 多田和之氏は、エンタープライズ市場での成果と展開を説明した。
2006年はワット当たり性能の訴求やAMD 64ブレードサーバの提案、AMD Vertualizationの促進により、Opteron搭載サーバー/WSの製品拡大や、ビジネス分野での導入が増えたという。
一例としてOpteron搭載サーバーは、2006年初にはHPを筆頭に、IBM、Sun、egeneraが製品を販売していた。2006年末にはDellの参入や国内ベンダーとしては初となる富士通の製品投入の他、HP/IBM/Sunのラインナップが大幅に拡大し、ブレードサーバーから1Pのタワー型WSが投入されたとし、エンタープライズ分野での好調さをアピールした。
2007年の展開としては引き続きワット当たり性能の訴求を続けるほか、増加傾向にあるデータセンターでの採用促進を目指すという。また、ネイティブクアッドコアであるBarcelonaによる優位性の確保や、仮想化技術の促進、Longhorn Serverの投入に合わせ64bitの本格的な普及を目指していくとした。
同社 代表取締役 森下正敏氏は、ATIを買収したことについて「順調にシナジーが進んでいる」とした上で、2007年の活動として、Better by Designの取り組みや、テクノロジーのAMDとして真のクアッドコアBarcelonaの投入、VistaやLonghorn Serverへの取り組みや市場の拡大、プラットフォームの安定性と長寿命化、日本リージョンでのOpteronシステムの市場拡大をあげ、「テクノロジーリーダーとして新しいイノベーションやテクノロジーをリードし、ユーザーと一緒に市場作りを行なっていきたい」と抱負を述べた。
エンタープライズビジネスデベロプメント 本部長 多田和之氏 | 2006年初のラインナップ |
2006年末の拡大状況 | 2007年度の注力項目6つ |
□AMDのホームページ(英文)
(1月24日現在、この件に関する情報は掲載されていない)
http://www.amd.com/
□i-Suppliによる半導体市場シェアランキング(PDF)
http://www.isuppli.co.jp/pdf/IS06-PR018J04Dec.pdf
□関連記事
【2006年10月19日】AMD、第3四半期は1億3,400万ドルの黒字
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1019/amd.htm
(2007年1月24日)
[Reported by matuyama@impress.co.jp]