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GITEX 2006レポート【ネットワーク機器編】

無線広域ネットワーク機器やPLCモデムが数多く展示

会場内のワイヤレス広域ネットワーク製品は非常に多い。写真はInfiNetが展示したワイヤレス広域ネットワーク基地局。Power over Ethernetを利用し、さらに平面アンテナを一体化することで設置の容易さをアピールする製品

会期:11月18日~22日(現地時間)

会場:UAE Dubai International Convention and Exhibition Centre



●サンヨーが実用化済みのワイヤレス広域ブロードバンドソリューションを展示

 インフラが整っていない地域や、整えることが難しい地域、整えても維持が大変な地域で高いニーズを持つワイヤレス広域ネットワーク。インフラが整備されている日本では、それほど必要とされていない上、認可が下りないという問題もあって、あまり注目度は高くないのが現状だが、GITEXが開催されているドバイ周辺の国々では、まさに上記のような事情が重なるクリティカルな話題だ。

 そうしたこともあって、通信機器展示会のGULFCOMMSのみならず、GITEX会場内でも多くのワイヤレス広域ネットワーク機器が展示されている。多くはWiFiを利用したもので、メッシュネットも構築できるように3バンドを備えた製品だ。冒頭の写真に載せたように配線をシンプルにすることで設置の容易さをアピールした製品や、平面アンテナを採用しコントローラ部と一体化したもの、内蔵モジュールを差し替えることでWiFiだけでなく将来的にWiMAXに対応させられるようにしたものが主流になっている。

 そんな中、独自のワイヤレス広域ネットワークソリューションを展示したのがサンヨーだ。「SoftAir Wireless System」と名付けられたこのシステムは、すでにマレーシアやシンガポールで導入され、運用されている実績があるのが大きな強みだ。

 6つの周波数帯を使ったWCDMA方式のワイヤレスネットワークで、データ通信のほかに、音声通信専用のチャネルを設けているのが特徴。この専用チャネルのおかげデータチャネルの通信量に関係なく高い音声品質を実現できることになる。

 また面白いのは、基地局側でアンテナの指向性を自動コントロールする機能を持っている点だ。基地局の場所によっては、特定の方角にユーザーが集中することも十分に考えられるわけで、この機能によりサービスの品質を高めることができる。

サンヨーが展示したSoftAir Wireless Systemの基地局となる「NPM 2000」。電波の指向性を自動制御する機能を持つのがハードウェア面での大きな特徴 UFOのような屋外アンテナを利用するアウトドア用ユニット「SOMAport 410」(右)と、インドア用ユニット「SOMAport 400」(左)

 ちなみに、データ転送速度は最大12Mbpsで、距離は条件次第だが、おおよそ10~15km程度。こうしたワイヤレス広域ネットワークでは、よくラストワンマイルをカバーすることが目的としてうたわれることが多いが、それよりもはるかに遠い距離で利用できることになる。これもやはり基地局を減らすことにつながるわけで、事業者にとってはコスト抑制の面でも魅力の大きいソリューションといえるだろう。

 クライアント側の装置は、アウトドア用ユニットの「SOMAport 410」と、インドア用ユニットの「SOMApoer 400」が用意される。前者はアンテナを屋外に設置することによる受信能力、後者は設置の容易さが、それぞれのアドバンテージとなる。インドア型ユニットはオプションでIEEE 802.11b/gの無線LAN機能を内蔵することもできる。

●拠点間ワイヤレスはギガビット転送も

 米Gigabeamが展示した「WiFiber」は、ポイント・ツー・ポイントのラストワンマイルを埋めるソリューションだ。この特徴は1~10Gbpsという非常に高速な通信速度にある。例えるならば、WiFiやWiMAXがメタル線の置き換えであるのに対し、このWiFiberはその名のとおり光ファイバーの置き換えということができるだろう。パネルでも示されたとおり、ネットワークのバックボーンに利用することを想定しており、広域WiFiネットワークなどのセンターから基地局までの通信などの活用も提案されている。

 光ファイバーよりも安く導入な可能な点もアピールしており、すでに光ファイバーが設置されている拠点間でも、このシステムを導入して復路化することでリスクを下げるといった使い道もあるそうだ。

 使用する周波数は71~76GHz帯と81~86GHz帯。到達距離は地域や天候などにも左右されるが、おおよそ1マイルから5マイル程度。米国ではニューヨークなどですでに導入実績があるそう。日本でのライセンスについても働きかけていきたいとしており、もし日本で導入された場合は1~3マイル程度の到達距離になると予想していた。

基地局機能とアンテナが一体となったWiFiberのユニット。1~10Gbpsの転送速度をを無線で実現する 展示パネルに示された想定利用シーン。ニューヨークなどではビル間接続が実用化されているほか、WiMAXやWiFiホットスポットの基地局までのバックボーンとしての利用も想定されている

●日本への展開も期待されるPLCモデム

 日本国内でもようやく認可が下り、これから普及が見込まれる電力線ネットワーク(PLC)。この分野の製品は、すでに海外メーカーが多くリリースしており、GITEXやGULFCOMMS会場内でも非常に多くの関連製品を見ることができる。

 パナソニックが国内で発表した「BL-PA100」もデモが実施されている。この製品はコンセントとモデム間がケーブルで接続されているが、会場内ではこの形状は非常に珍しく、ほとんどはモデムとプラグが一体化されたものになっている。もちろん、WaveletOFDMを採用した製品は確認できた限りは本製品のみで、やはりHome Plug規格へ準拠した製品が主流だ。採用されているコントローラもHome Plug準拠のIntellon製のチップが多く、85Mbpsに対応する「INT5000シリーズ」や、200Mbpsに対応する「INT6000シリーズ」といったところが多く採用されていた。

 そうした意味では、今回展示された製品が、主流が固まっていない日本でどの程度発売されるかも未知数なのだが、形状や製品の特徴などは類似製品が登場する可能性はあるだろう、

 例えば、シンガポールのShiroが展示した「HL105EW」は、プラグとモデムに加え802.11b/gの無線LAN機能までも一体化させた製品。家庭内における利用シーンでは無線LANの代替技術という見方もされるPLCにおいて、この2つが融合した製品というのは興味深い。ShiroではPLCの最長200mに加えて無線LANでさらに遠くへ飛ばせる製品だと話している。

 また、台湾のPTIが展示したユニバーサルプラグの一体型モデム、AcBelが展示したフィルタを設けることで電力とEthernetの両方を同時利用できるモデムや、ACアダプタ型のPLCモデムといった製品。また、会場での展示はなかったが、NETGEARはプラグとPLCモデム、4ポートスイッチングHubを1ユニットに収めた製品をショールームで展示し始めているといい、PLC関連製品はまだまだバリエーションが増えそうな雰囲気である。

日本でも先ごろ発表されたパナソニックのPLCモデム「BL-PA100」。写真手前のPCに保存された動画を、もう1台のPCで再生するデモを実施 Shiroが展示した「HL105EW」は、プラグ一体型のPLCモデムに無線LAN機能も実装させたもの。PLCモデムは85MbpsのHome Plug Turboに準拠する
こちらはモックアップではあるが、PTIが展示したユニバーサルプラグのPLTモデム 日本では電源ユニットメーカーとしてもおなじみのAcBelも非常に多くのPLCモデムを展示。写真中央の製品は、電源とEthernetを同時利用できるPLCモデム。ノイズを抑えるためにフィルタを実装している 同じくAcBelの製品で、こちらはACアダプタ内にPLCモデムを内蔵した製品

●ソニーはHDビデオ会議システムをデモ

 ここまでに紹介したネットワークインフラに関わる製品ではなく、しかも国内ではすでに発表されている製品ではあるのだが、ソニーの「IPELA PCS HG-90」も興味深い製品だったので、ここで紹介しておきたい。

 本製品はIPを利用したビデオ会議システムで、1,280×720ドット/60pまたは30pのHDビデオが利用できるもの。映像コーデックにはH.264が利用され、ビットレートは最大8Mbps。最低2.5Mbps程度の帯域幅が確保されていることを推奨している。テレビへの出力はHD-SDIまたはコンポーネント。

 日本ではすでに発売されているが、1セットでおよそ6万ドルとのことで、SDビデオ会議システムと比較すると4倍程度の価格になるという。敷居の高い製品ではあるが、医療機関における手術の第3者チェックなど、高解像度を要求する現場へと売り込んでいくという。

ソニーのHDビデオ会議システム「IPELA PCS HG-90」 デモはソニーブースと別のディーラーのブースとを接続して映像を送受信している。こちらの写真はディーラー側のもので、ソニーブース側カメラとの分割表示をした状態。もちろんフル画面表示も可能

 ちなみに、本製品は、ドバイではGITEXが初お披露目となる。日本に比べるとHD製品の普及は遅いが、2006年に入ってニーズが徐々に高まっているそう。会場内ではソニー、パナソニック、シャープ、東芝、日立、サンヨーといった日本の大手メーカーもフルHD液晶や、HDデジタルビデオカメラなどを数多く展示しており、新しいビジネスチャンスを生む場として、こちらの地域への注目度も高まっているようだ。

□GITEXのホームページ(英文)
http://www.gitex.com/

(2006年11月22日)

[Reported by 多和田新也]

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