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FPD International 2006レポート高画質、大画面、低消費電力へと突き進むTV用液晶パネル会期:10月18~20日 会場:パシフィコ横浜 展示ホール 前回のレポートではPCディスプレイ用を中心に「FPD International 2006」の出展物を紹介した。今回はTV用の大型液晶パネルを概観しよう。 液晶TVは世界全体で急速にその台数を伸ばしている。液晶パネルベンダーによると、2005年に全世界で液晶TVは2,000万台前後が出荷された。今年の出荷台数は前年の2倍以上、4,500万台に達するとされる。 TV用液晶パネルの大手ベンダーはPC用と同様に、韓国と台湾の企業で占められている。韓国LG.Philips LCD、韓国Samsung Electronics、台湾Chi Mei Optoelectronics、台湾AU Optronicsが上位4社である。日本のシャープは5番手にくる。FPD International 2006には、これら上位企業がすべて出展していた。 TV用液晶パネルの展示からは、高画質化と低消費電力化を両立させつつ、画面寸法をさらに大きくしようというベンダーの強い意志を感じた。今回、印象に残った変化は以下の3点である。 (1)表示色数を従来の1,670万色(8bitカラー)から、10億7,000万色(10bitカラー)に増やしたこと (2)従来60Hzだった駆動周波数を2倍の120Hzに上げ、液晶の応答時間を短縮して動画表示における画像のぼやけ(Motion Blur)を低減したこと (3)バックライト光源にRGB3原色の発光ダイオード(LED:light emitting diode)を使い、LEDを動的に制御してコントラストの飛躍的向上と消費電力の低減を両立させる技術がこぞって登場したこと 以下は、上記3点に関連したTV用液晶パネルの展示を紹介していこう。 韓国Samsung Electronicsは、表示品質の高い70型フルHD(high difinition)TV対応TFT液晶パネルを開発し、実物を出品した。色再現範囲がNTSCの105%と広い、表示色数が10億7,000万色と多い、液晶の応答時間が8ms(中間色)と短い、といった特徴がある。 会場ではこの液晶パネルの隣に、昨年の「FPD International 2005」にも出品された82型フルHD対応液晶パネルが展示されていた。両者を比較すると、70型液晶パネルの方が表示画像の品質が高いことが素人目にも分かる。2007年の初めには、この70型液晶パネルの量産を開始する計画である。 また同社は、フルHD対応の57型液晶パネルを出品し、120Hz駆動のパネルと60Hz駆動のパネルで動画像のぼやけの違いを実際に示してみせた。120Hz駆動での応答時間は8ms、60Hz駆動での応答時間は15msである。 韓国LG.Philips LCDは、100型と巨大なフルHD対応液晶パネルを展示した。表示画面の大きさは2.2×1.2mに達する。外形寸法は2,280×1,332×64mm(幅×奥行き×高さ)である。表示色数は10億7,000万色と多い。ダイナミックコントラスト技術によってコントラスト比を3,000:1に高めている。 またSamsung Electronicsと同様に、動画像のぼやけ(Motion Blur)を抑えたパネルを展示した。ただしこちらはSamsungと違ってフルHD対応ではなく、解像度が1,366×768ドットのHD対応42型TFT液晶パネルである。MPRT(Motion Picture Response Time)は4.6msと短い。42型のプラズマディスプレイパネルと並べて画質の違いを表示してみせた。 なお液晶の応答時間を表す指標には、輝度が10%から90%になるまでの時間(液晶そのものの応答時間)、表示が濃いグレーから薄いグレーを経過して濃いグレーに戻るまでの時間(GTGあるいはGray-to-Gray)、そしてMPRTがある。 単に応答速度あるいは応答時間と呼称しているときは、輝度が10%から90%になるまでの時間を示すことが多い。3種類の指標の中ではこの時間が最も短い。しかし動画像表示との関連が弱く、TV用液晶パネルの画質を評価するには問題が残る。次に厳しいのがGTGで、最も厳しいのがMPRTになる。MPRTは動画像表示におけるエッジのぼやけ幅を応答時間に換算したもので、動画像表示が主体であるTV用液晶パネルを評価するのに適した指標だとされている。
●LEDバックライトの動的制御で高画質と低消費を実現 液晶TVの将来を見通す上で非常に興味深いのが、LEDバックライトの動的制御(ダイナミック制御)技術である。赤色(R)と緑色(G)、青色(G)のLEDアレイをバックライトの光源に使用する。動画像データを表示前にあらかじめ解析し、1画面の中で局所的にRGBのLEDを独立に制御する。例えば1画面の中で、明るい部分ではLEDの輝度を上げ、暗い部分ではLEDの輝度を下げる。また例えば、画面の中で草が生い茂る部分では緑色(G)のLEDを発光させる。画像の状況に応じ、LEDの駆動回路と液晶パネルの駆動回路を適切なタイミングで動的に制御するのである。こうすると、コントラスト比が非常に高い表示画像を得られる。 LEDバックライトはもともと、従来普及していた冷陰極管(CCFL:cold cathode fluoresecent lump)バックライトに比べると色再現範囲が広く、液晶ディスプレイの高画質化に適している。しかしLEDはCCFLに比べて発光効率が低い。適切な輝度を得ようとすると、LED光源ではバックライトの消費電力が増大してしまう。 ところがLEDバックライトの動的制御(ダイナミック制御)技術を使うと、LEDは不要なときにはOFFになる。すなわち非常に高いコントラスト比と広い色再現範囲を得つつ、消費電力を低減できる。FPD International 2006では、TV用液晶パネルの大手ベンダーがこぞってこの技術を展示していた。 そのなかでも最も進んでいたのが、LG.Philips LCDのパネルである。RGB LEDバックライトの動的制御と液晶のRGBカラーフィルタを適切に組み合わせることで、色再現範囲をNTSCの120%に高めてみせた。通常のLEDバックライトで得られる色再現範囲はNTSCの100~105%である。LEDバックライト動的制御がコントラスト比の向上だけでなく、色再現範囲の拡大にも効果があることを示した。 LG.Philips LCDは37型のHD対応TFT液晶パネル(解像度は1,366×768ドット)に29×14=406個のRGB LEDユニットを設け、画像データとバックライトのLEDユニットを連動して制御した。その結果、20bit相当の表示色数(パネルが8bit、バックライトが12bit)、ほぼ無限大のコントラスト比、NTSC比で120%の色再現範囲という、相当にインパクトのある性能を達成できた。ちなみに輝度は500cd/平方m。視野角は水平垂直とも180度である。 また台湾のChi Mei Optoelectronicsは、LEDバックライトの動的制御が消費電力の低減に効果的であることをアピールしていた。CCFLバックライトの47型液晶パネルとLEDバックライトの47型液晶パネルを左右に並べ、消費電力をリアルタイムでモニターした結果を見せていた。CCFLバックライトの半分近くにまで、消費電力を低減できていた。
(2006年10月20日) [Reported by 福田昭]
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